Skebでご依頼いただいた、不遇な侍女が冷酷な皇帝に皇妃としてとろとろに愛されるお話です
「ジャクリーン・ド・シヴィル第二王女殿下に置かれましては、この冬ゲインズブール帝国へのお輿入れが決定いたしました。お相手はヴィンセント・ゲインズブール――かの国の皇帝陛下です」
自室でその言葉を聞いた瞬間、主であるジャクリーン様が甲高い歓喜の声を上げたのをよく覚えている。
キラキラした金髪を振り乱し、自らが大国へ嫁ぐことが幸せなのだと信じて疑っていないような――そんな無邪気な笑い声に、話を伝えに来た侍女がにっこりと微笑んだのも記憶に新しい。
「……おめでとうございます、ジャクリーン様」
「ずっとお父様にお願いしていた甲斐があったわ! ふふ、これで私も大国の妃……喜びなさい、お前は皇帝妃の侍女になれるのよ」
クスクスと微笑む主に、私もあいまいな笑みを返す。
――きっと、唯一の肉親である叔父にこの話をしても同じような反応が返ってくるのだろう。
これを機に給金を上げてもらえだとか、そういう話が出てくるかもしれない――私が稼いだお金をすべてポケットに入れてニヤニヤと笑う叔父の姿を思い出しつつ、内心でそっと溜息を吐いた。
(でも、本当に大丈夫なのかしら……)
ほう、と息を吐いた私の様子に気付くこともなく、ジャクリーン様は王都で流行している化粧品とドレスを片っ端から持ってくるようにと命じてきた。
「これからガエルのところに行くわ。帝国に嫁ぐんだもの、博識な彼からたくさんお話を聞かなくちゃ」
「え、えぇと――ガエル卿の元に、ですか? 恐れながらジャクリーン様、本日ばかりは御控えになった方がよろしいかと……」
「オルガの癖に私に楯突くなんて、いい度胸をしているのね。納得できるだけの理由を述べなさい」
私が余計な口を出すと、ジャクリーン様は綺麗に整えた眉をきりりと吊り上げ、心底汚らわしいものを見るような表情で私を睨みつけてきた。
……ガエル卿はこの国の貴族だが、同時にジャクリーン様の愛人でもある。
彼女が皇帝に嫁ぐことが決まった以上、その関係はできるだけ清算しておいた方がいい――恐らくこの城に務めている人間ならば、皆口をそろえてそう言うだろう。
「ゲインズブール帝国の皇帝陛下に嫁がれる御身が他の殿方と密会を重ねていたとなれば、あらぬ噂を招きかねません。ただでさえ、彼の国のヴィンセント陛下は厳格なお方と聞きます……ガエル卿とお会いになりたい気持ちはお察しいたしますが、今はどうかお控えいただきたく……」
「生意気ね。侍女の癖に王女の行動に口を出すなんて――不敬極まりないわ。一体、お前の親はどんな風にお前を育てたのかしら」
「ッ……申し訳、ございません」
両親のことを口に出され、更にジャクリーン様が愛用している扇で頬を打たれた。
痛みはそれほど強くはなかったが、親を引き合いに出されたのには心が痛む。もう両親が死んで何年も経つのに、この瞬間だけはいつも引き絞られるように胸が苦しくなった。
「しかしながら、どうか――伏してお願いいたします。ここでヴィンセント陛下の不興を買えば、我が国は……」
「あぁもう、わかったわよ! じゃあ今日は行かない。その代わり、彼を講師として王城に招聘するわ。それなら文句はないでしょう」
「……はい」
絞り出した声が生意気だと言われて、もう一度頬を打たれたが――大国の皇帝に不興を買って国を攻め滅ぼされるよりはマシだろう。
なにかと奔放なジャクリーン様は男性関係も派手で、彼女が『講師』として招聘する相手はその時のお気に入りだというのは有名な話だ。
王族として他国へ嫁ぐため、ジャクリーン様は本来高度な妃教育を受ける必要がある。
だが、彼女はそのほとんどから逃げ出し――しがない侍女である私が、身代わりとしてその講義を受けさせられていた。
(困った……これまでの講義内容、ジャクリーン様に全部教えないといけないなんて……)
王女が講義を受けないのは、側近である私の力不足。
そう言われて主の代わりに講義を受けさせられ、更にその内容をジャクリーン様にお伝えしなければならないのだが――とにかく彼女は人の話を聞いてくれなかった。
私が没落した男爵家の出身で、宮勤めをするにしても身分が低いということも要因の一つではあるかもしれない。流行病で両親を亡くし、叔父の口利きで城で働きだしたものの、本来王女の側仕えをするのはもっと身分の高い家の娘たちであることが多い。
それでも私がこうして働けているのは、ひとえにジャクリーン様のそばで働くことができる人間が他にいないからだ。
(先月雇ったメイリンも、その前に雇ったアンジェリカも辞めてしまった。側仕えの人間が長続きしないことだって、帝国に知られたらなにを言われるか――)
これで本当に、大陸一の強国であるゲインズブール帝国へ嫁ぐことができるのだろうか。
数年前まで凄惨な皇位争奪戦を繰り広げていた帝国は、現皇帝に代替わりしてから国力を大きく伸ばしていた。
内戦でボロボロになった国内財政を立て直すために商人ギルドの権限を限定的に広げたり、新たな航路を開いたりなど、新皇帝となったヴィンセント陛下の手柄は枚挙にいとまがない。
当然ながら、そんな国で皇妃として求められる資質は相当に高いはず――今のジャクリーン様が、帝国が求める妃としての水準を超えられるとは到底思わなかった。
そして、私のそんな不安は――その年の冬、見事に的中することになったのだった。
「嫌よ! あんな恐ろしい男に嫁ぐなら死んだ方がマシだわ!」
「ジャクリーン様、どうか落ち着いてくださいませ……! ば、馬車で暴れてはいけません!」
「うるさいうるさい! 侍女の癖に私に指図するなッ! お前はどうせ、私があの男に殺されればいいと思っているんでしょう!」
元居た国から、皇帝の花嫁として華々しく送り出されたジャクリーン様は、帝国へ向かう馬車の中で荒れに荒れていた。
先日、ヴィンセント陛下は先帝時代に手腕を振るっていたある貴族を断頭台送りにした。自分の父に仕えていた臣下をも無情に殺す……そのことを知ったジャクリーン様は、どこかで自分が同じように殺される可能性があるということに思い至ったらしい。
「大丈夫です、どうか……ゲインズブール皇帝が、ジャクリーン様を殺すわけがありません」
「嘘よ! あの男はとても恐ろしくて、他国から献上された姫を寝台の上で殺して血を啜ると聞いたわ! 氷のような冷たい美貌も、女の血を全身に浴びているからだって……ガエルが言っていたもの!」
馬車の中で大粒の涙を流しながら頭を抱えて泣き叫ぶジャクリーン様を必死で宥める。
だが、彼女が私の話を聞いてくれるはずなどなかった。
結局、国を出てから国境が近づくまで泣きわめき続けていた彼女の心を宥めるために、私たちは国境のすぐそばにある宿に一泊することになった。
明日には帝国の兵士がこの宿にやってくる。そうすると、私たちはいよいよ帝国の民としての扱いを受けることになるのだが……どうやらジャクリーン様はそれすら恐ろしいらしく、八つ当たりに私を罵倒し、ガエル様に会いたいと騒ぎ続けた。
「――は」
そうして翌日。もうすぐ帝国の兵士たちがやってくるというのに、ジャクリーン様は自らの部屋から出てくる様子がなかった。
旅の疲れが出て起きられないのかと思って部屋に入ると、そこはもぬけの殻――大量に持ってきたドレスや宝飾品もなければ、そこに人がいた痕跡も見当たらない。
嫁ぐ予定の姫君がいないということで宿内は大騒ぎになった。
「だ、誰かジャクリーン様の行方を知っている方はいないのですか! このままでは、帝国の兵士が昼過ぎに到着してしまいます……!」
「オ、オルガ様が知らないのに、俺たちが知ってるわけないじゃないですか!」
「待ってください――新兵のワットがどこにもいません! もしかしてアイツ、姫様をどこかに連れて行ったんじゃ……」
ざわつく兵士たちの言葉に、私は足元から血の気が引いていくのを感じた。
――終わりだ。もうじきここには、ヴィンセント陛下の命令を受けた兵士たちが花嫁を迎えに来る。
ジャクリーン様はどこにもいないし、新兵の姿もない。恐らくジャクリーン様がその新兵に命令を出して宿から逃げ出したのだろうが、結果だけを見たら王女と新兵が駆け落ちしたようにも見えるだろう。
そんなことをされては、大国の面子は丸つぶれだ。皇帝ヴィンセントを虚仮にしたと判断されて、この場で全員が切り伏せられても文句は言えない。
「じょ――冗談じゃない! 俺は逃げるぞ!」
「俺もだ! そもそもあんな我儘女の護衛なんかやりたくなかったんだよ!」
「国境までの安全な仕事じゃなかったのか!? い、今なら逃げられるぞ! 帝国兵が来ていない今のうちなら――」
口々にそう叫んだ兵士たちが、散り散りになっていく。
私は唖然としたまま、その光景をただ眺めていなければならなかった。
「ま、待って……あっ、お待ちくださっ――」
まさしく脱兎のごとく、兵士たちはあっという間に逃げ出してしまった。
鎧を着ていた者はそれを脱ぎ捨て、剣を携えていた者はそれすらも捨て去っていく。
私は一人宿の中に残されたまま、ただ立ち尽くすほかない――本当は逃げたくて逃げたくて仕方がなかったが、ジャクリーン様がここにいない状況を説明する人間が、絶対に一人は必要になるのだ。
「……おい、これはどういうことだ? なぜ宿の中に誰もいない――ジャクリーン王女はどこだ!」
なにが起こったのかもよくわからないまま立ち尽くす私が我に返ったのは、そんな怒号を聞いたからだった。
「貴様、王女の侍女だな? ジャクリーン王女をどこへやった!」
「っ、そ、その――じ、事情を説明させてくださいませ……!」
兵士が宿の中をしらみつぶしに探しても、ジャクリーン様の姿はどこにも見当たらない。
あちこちから聞こえてくる怒号と罵声に身を竦めながら、私は兵士たちの中でもっとも立場が高いと思われる男性の前で懇願した。
「部隊長、王女の姿が見当たりません……! やはりどこかへ遁走したものかと」
「なんだと? 皇帝陛下との結婚を控えておきながら――おい貴様、詳しい事情を説明しろ。しっかりと、皇帝陛下の御前でな」
「は――」
ゾ、と背筋を冷たいものが走り抜けた瞬間、体の両脇を兵士たちに固められる。
まるで罪人のような扱いに驚いたが、王女様がどこにもいないこの状況で私が彼らから逃れる手立てはなかった。
そうして私は一人ぼっちで帝都へと向かう馬車に乗せられ――結婚を控えていたはずの王女様がなぜここにいないのかを、あろうことかヴィンセント陛下の前で説明しなければならなくなったのだった。
(し、死ぬ……私、殺されるんだ……)
国境から帝都までは馬車で数日。
その間私には逃亡や自死を防止するために監視の兵士をつけられ、自由な行動は一切許可されなかった。
だが、帝都で王女様の脱走を申告すれば待ち受けているのは間違いなく死――そう思うと恐ろしくて夜も眠れず、ろくに食事もとれなかった。
「よし、ここで待て。許可が下り次第、貴様は皇帝陛下の御前に進み出て経緯を説明するのだ」
そうして、刑執行……じゃない。謁見の日がやってきた。
とはいえ、私は一国の姫ではなくしがない侍女だ。許可が出たらほとんど蹴り飛ばすような勢いで謁見の間へと引っ立てられ、多くの官吏たちが居並ぶ中、兵士に周囲を固められて皇帝陛下の御前へ出ることとなった。
「貴様、名をなんという」
床に膝を付き首を垂れ、従属の意志を示す私の耳に飛び込んできた声は、皇帝のものではなかった。
そのそばに控えていた、分厚い鎧を着た屈強な軍人――地響きに似た低い声の男性に名を尋ねられ、震える声でそれに応える。
「オルガ……オルガ・マリア・クロフォードと、申します」
「クロフォード? はて、この国にやってくるのはジャクリーン・ド・シヴィル王女殿下と聞き及んでいたのだが……なぜ王女殿下はこちらにいらっしゃらないので」
言葉を継いだのは、軍人とはまた違う初老の男性だった。
彼はこの国の宰相だ。ジャクリーン様の代わりに受けさせられていた妃教育で、その辣腕と共に名を聞いたことがある。
「ぅ……そ、それは」
「よもや、王女殿下がどこぞの男と駆け落ち……などということではございますまい?」
静かな問いかけに、体がガクガクと震えた。
脂汗が浮かび上がり、顎から滴り落ちて床に染みを作る――息が詰まってろくな呼吸もできないまま、私はただその場に伏すことしかできなかった。
「どうなさいますか、陛下。聞くところによると王女殿下が逗留していた宿はもぬけの殻で、この侍女一人が残っていたとのこと」
「……宰相殿、それはまことか? 護衛の兵士もいないわけがないだろうに」
「ロジェ将軍……聞くところによると、王女殿下には国境近くに居を構える愛人がいるだとか……大方そこに逃げ込んだのでしょう。兵士を数人連れていったか、忠誠心の薄いものから逃げ出したかは存じませぬがね」
宰相と将軍――先ほどの軍人の男性だ――が言葉を交わす中、私はこみ上げてくるものを抑え込むので必死だった。
バレている。王女様がどこへ向かったのかも……当代皇帝が持つと言われる大陸最高峰の情報網を逃れることは、如何な他国の王族と言えど不可能なのだと思い知らされた。
「この婚姻はシヴィライエット王国から是非にと請われたものであったのでは? 自分たちから娘を差し出すと一方的な話をしておいて、これではな――」
「将軍のおっしゃる通り。これは帝国に……ひいてはヴィンセント陛下の顔に泥を塗る行為ですぞ。これを放っておけば他国にも示しがつきませぬ。相応の対応をせねばなりますまい」
「この娘の首を落とし、塩漬けにして件の国に送りつけたらどうだ」
「貴族ならばまだしも侍女の首など何の価値がありましょうか。……しかしここで見逃すこともできませぬ。陛下、どのように美しく仕立てた服も、小さな綻びから解け落ちるものです。何卒、厳粛なご判断を」
恐ろしい会話が頭上で繰り返されており、顔を上げることもできない。
ここで首を落とされて死ぬのか、見せしめに磔刑に処されるのか――ガタガタと小刻みに震えながら沙汰を待つ私の名が呼ばれたのはその時だった。
「オルガといったな。……顔を上げ、私が納得いくだけの弁明をしてみせよ」
――もし、静謐という言葉を声にしたならばこのような声だろう。
低く、感情を滲ませることがない声。決して声音は大きくないのに、どこまでもよく通るその声につられて顔を上げた。
「は……」
玉座には、まるで人形のように美しい王が坐していた。
極悪非道と呼ばれるその名からは想像ができない、雪原の王のように白く美しい顔立ち――色素の薄い金髪は、銀密陀と呼ばれる古の色によく似ていた。
瞳の色は、私の場所からひどく深く昏い色に見える。その目に宿した冷たい視線が、まるで射手が放つ矢のように私のことを刺し貫いていた。
「は、っ……あ、あの」
「畏くも皇帝陛下からのご下問であるぞ」
宰相の言葉に、いよいよ頭が回らなくなってくる。
息ができないし、頭も痛い――息を吐こうとしても不格好な音が喉から出てくるだけで、体の震えが止まらなかった。
……それでも、このまま黙っていることはできない。絶対的に非がこちらにある以上、説明の責任を果たさねば首を落とされるのは私だけではすまなくなってしまう。
(最悪の場合、挙兵されて国諸共……)
母国は私にとって、決していい思い出のある土地ではない。
大好きな両親が亡くなり、叔父が後見人となってからは搾取ばかりされる毎日だった――王城での務めだって理不尽なばかりで苦しいことの方が多かったが、だからといって無辜の民を巻き込んで戦を起こすわけにはいかない。
「っ……こ、皇帝陛下に、申し上げます」
歯の根が合わずカチカチと小さな音を立てながら、私は無様に震えた声でそう述べ、今一度床に伏した。
「許す。覚悟して答えよ」
「お、お慈悲に感謝いたします――こ、このっ……此度の一件、王女ジャクリーンが国境付近で遁走したという旨につきましては、もっ、申し開きのない、事実でございます」
そう口にした瞬間に、ザワッ……と周囲がざわめいた。
だがここで「いずれやってくる」などの嘘がつけるはずがない。この方はこの帝国における唯一にして絶対の王者――侍女一人が彼を謀り、出し抜くことなど不可能だ。
「宰相閣下、並びに将軍閣下のおっしゃる通り……全ての非はこちらにございます。だ、断罪も、然るべきことかと」
「……侍女風情が、己の命が主君の代わりになるとでも?」
淡々とした、感情が感じられない質問だった。
だがその言葉の裏には、私の命などでは贖えないほどの問題が二国間に発生したことを説いている。
当たり前だ。一国の皇帝、それもよりによって大陸でもっとも強い力を持った皇帝が妻に逃げられたなど、帝国内どころか諸外国から指をさされて笑われかねない。
非難も批判も断罪も、すべて受け入れて然るべき――だが、それを成すためには私の命にはあまりに価値がなかった。
「発言を、お許しくださいませ」
「……許す。だが、そう長くは待たんぞ」
「っ……こ、皇帝陛下のお怒りを贖うに、わたくしの命程度では到底足りぬことは存じております。しかし、っ……しかしながら、伏してお願い申し上げます」
どうせ、この場で私は殺されるに違いない。
無抵抗に首を差し出すのはやぶさかではなかったが、それでも母国の民を一方的に蹂躙されることだけは勘弁してもらえないか――どうせ不敬と断じられるのならば、もう一つくらい無礼が増えたって同じだろう。
全身が小刻みに震え、声を無様にひっくり返しながら、私は更に深く頭を下げた。
「我が国は、ゲインズブール帝国と比べるべくもない小国でございます。へ、陛下がひとたび……ひとたび兵を挙げれば、我が国は一昼夜のうちに滅びることで、ございましょう……」
兵力も国力も、母国はなにもかもが帝国に劣っている。
国民は牧歌的と言えば聞こえはいいが、これまで戦争らしい戦争を経験したことがない国だ。王様だってろくに兵を率いたことのない国が、こんな大国に攻め立てられたらあっという間に滅んでしまう。
「しっ、しかしながら――罪科を贖うべきはわたくしどもであり、たっ、民ではございません。争いとなれば、傷つくのは国ではなく、民となります……どうか、わ、わたくし程度の命で贖えるものならば、なんでもいたしますっ……」
はっ、はっ、と息がどんどん浅くなって、目の前が暗くなってくる。
それでも反射的に、舌だけはうまく回っていた。
「どう、どうか……陛下のお慈悲を、賜りたく……謹んで、お願い申し上げます……」
「私に慈悲を乞うか。貴様、私がなんと呼ばれているのかを知らぬわけではあるまい」
声につられるようにして顔を上げると、こちらを冷たく見下ろすヴィンセント陛下と目が合った。
こちらを冷たく見下ろす瞳は、まるで刃のようだ。
二つの刃が心臓を刺し貫いてくるような錯覚を覚えながら、私は聞こえてくるであろう彼の沙汰を待つ。
――最低でも、おそらく殺される。こちらの立場は向こうにしてみれば塵のようなものだし、もし温情があるとしても私の身分は更に貶められるだろう。
(でも、そんなこと……今更だもの。ここで殺されたって文句はないわ……)
叔父に生家を乗っ取られ、貴族としての立場を失って王城勤めが決まった時、自分の足元が音を立てて崩れ去っていく悲しみを知った。
生まれ育った家が他人のものになり、優しかった父と母との思い出がどんどん上塗りされていくことに比べたら――死の痛苦なんて、ほんの一瞬の出来事だろう。
「……よかろう。宰相、あの女の身柄をウェリントン宮へ運べ――己が身で罪を贖うというのならば、是非やってもらおうではないか」
「は――よ、よろしいのですか? 恐れながら申し上げますと、この者はただの侍女で……」
「構わない。役目が果たせなければそこまでだし……万が一にも今宵を越えられたのなら、そうだな。王女の件は不問としてもいい」
低い声は私ではなく、傍らに立つ宰相に向けられたものだった。
だが、私は確かに聞いた――もし今宵一夜を耐えれば、この件は不問とする。
さぞかし凄惨な拷問を受けさせられるのかと身構えたが、ヴィンセント陛下はそれだけを言うとすっと立ち上がり、どこかへ行ってしまった。
床に伏した私は再び周囲を兵士に囲まれ、その場で立つようにと命じられる。
「ここで殺さぬとは、陛下はなんと慈悲深いお方か。……オルガとやら。これより貴様――いや、貴殿の身柄は王宮の奥、ウェリントン宮へと移される。そこで沙汰を待つがよい」
「は、はい……」
人の出入りがある王宮で血を流すのはまずいのか、身柄は内宮であるウェリントン宮へと移されるらしい。
万が一のことがないようにと目隠しをさせられ、両手首を麻縄でくくられた私は、時間をかけて指定された場所へと連れていかれることとなった。
「アードリ殿、後はよしなに……その、身分は侍女であるのだが、陛下たってのご希望で」
「かしこまりましたわ。それでは、ここから先は我らの仕事でございますから……殿方にはお下がりいただきたく」
目元を覆われているので顔を見ることはできなかったが、ある程度歩いた辺りで若い女性の声が聞こえてきた。
そこに立ち止まると目隠しを外され、自分がある部屋に連れてこられたことに気が付く。
「オルガ様でございますね? ウェリントン宮へようこそ……わたくし、こちらの宮にて侍女頭を仰せつかっております、アードリと申します」
「は……オ、オルガ・マリア・クロフォード、です」
立ちすくむ私の前にやってきたのは、白いお仕着せを着た上品な女性だった。
内宮の侍女頭ということは、実質的にこの場所を取り仕切っているのが彼女ということなのだろう。屈強な兵士たちは皆アードリさんの前では体を小さくし、男は下がれという彼女の命令に従って次々と部屋を出ていった。
「さて、と――お話は宰相様より聞き及んでおります。陛下も人が悪……こほん、何よりもまずはお風呂に入りましょうか。陛下も気が長いお方ではございませんから、ここから先は我ら内宮の侍女たちにお任せいただきたく」
「は、はい……?」
なにを言っているのかよくわからないが、アードリさんを筆頭としたウェリントン宮の侍女たちはあまりに仕事が早かった。
状況が理解できないうちに裸に剥かれた私は、そのまま乳白色の湯船に突っ込まれ、さらに肌には精油を塗り込められる。
東方には戦いに向かう戦士が化粧をするという文化があったはずだが、この国には罪人に精油を塗り込む文化などなかったはず――何が起こっているのかわからないまま体を磨き上げられた私は、最後にアードリさんの手によって白くシンプルな形のドレスを着せられた。
「陛下は青がお好きですから、本当は青いドレスにしたかったのですが……こればかりは決まりでございますので。それでは、あとはこちらでお待ちくださいませ」
――嵐に飲み込まれたかと思うほどの怒涛の時間だった。
これから死にゆく者への手向けなのか、体をピカピカに磨き上げられた私はある一室にて待つようにと命じられた。
豪奢な天蓋のついたベッドに、天板に精緻な彫刻を施した机やキャビネットが備えられたその部屋は、明らかに貴人の私室といえた。私が仕えていたジャクリーン様の部屋にも、程度は違うが似たようなものが置いてある。
(な、んで……? ここで処刑されるの?)
まさか、罪人にこんな部屋を宛がうはずがない。
ゾッとしながら部屋の隅で立ちすくんでいると、やがて部屋の扉が開いた。
「……そこで何をしている」
「ひぃっ!」
足音を立てることもなく部屋の中に入ってきたのは、先ほど玉座からこちらを見下ろしてきた――皇帝、ヴィンセント・ゲインズブール陛下だった。
部屋の隅っこで立っている私のことを怪訝そうな顔つきで一瞥した彼は、ずんずんと大股でこちらに近づいてくる。
ここで斬られるのかと息を詰めるが、彼は不機嫌そうな顔を浮かべると不意に私の手首を掴んで歩きだした。
「ひ、ぁ、あのっ……ヴィンセント陛下……?」
「なぜそんなところに立っている。アードリから、ここで私を待てと言われたはずだ」
仰々しい軍服ではなく、ゆったりとしたつくりの部屋着に着替えていたヴィンセント陛下は、そう吐き捨てると腕を引いて、私の体をぽいっと寝台の上へと放り投げた。
「う、ぁっ――え、あのっ……しょ、処刑が行われるんじゃ……」
「処刑? 私が一言でも、今ここでお前を殺すと宣言したか」
相変わらず不機嫌極まりないという表情を浮かべながら、ヴィンセント陛下は深く息を吐いた。
……そういえば、宰相閣下も「ここで殺さぬ」とは言っていた気がする。
だが、それは『王宮では処刑を行わない』という意味だと思っていたのだ。
「オルガといったな」
「は、はいっ……」
低い声で、名前を呼ばれる。
……そう言えば、こうしてまともに名前を呼ばれるのは随分と久しぶりだ。
普段ジャクリーン様には「お前」とか「それ」とか呼ばれていたし、護衛のための兵士が私の名を呼ぶのも、そういう記号で呼ばれているだけのような気がしていた。
じっと目を見て名を呼ばれるのなんて、もう何年ぶりだろう。
「わ、わたしは……何をすれば……」
「お前は今宵一晩、王女の代わりに私に抱かれることになる。身代わりとして一晩務めを果たせば、ジャクリーン王女の件についての訴追は行わないと約束しよう」
「は……そ、それはっ――務めを、果たせなかったら」
「即時進軍する。我ら帝国としても、シヴィライエットのような小国に舐められたとあっては面子が立たん……たかが面子と笑ってくれるなよ? 国家の間では、それがなによりも肝要だ」
ヴィンセント陛下の言っていることは、容易に理解ができた。
これだけ大きな国を動かすということは、皇帝はそれにたる人物であると内外に知らしめなければならない。国を守るために畏怖の対象であらねばならない彼が花嫁に逃げられたとなれば、敵対する国々はそこをあげつらってくるだろう。
「っ……陛下のおっしゃることは、ごもっとも、かと。私どもは、っ……こ、皇帝陛下のご威光に傷をつけるような真似を、行いました。これがなによりも、陛下の……ひいてはこの国の民への侮辱であるという、理解はできております」
「――王女よりも侍女の方が利口なようだな」
震えながらなんとか言葉を紡ぐが、返ってきた答えは至極短いものだった。
「子どもではないんだ、褥の知識くらいはあるだろう。せいぜい楽しませてみせろよ」
軽い口調でそう言い放ったヴィンセント陛下が、ドレスの裾をめくり上げてすりすりと腿のあたりを撫でてくる。
そのような場所を他人に触れられたことなどなく、私の口からは情けない悲鳴が上がった。
「ッひ……や、めっ……」
「情けない声を上げるな。あまり面倒をかけると、本当にそこの窓から放り投げるぞ」
そこ、と刺された先は、大きな出窓があった。
先ほどまでは死ぬ覚悟もあったというのに、ここに来て放り投げられるのが怖くて口を押えてしまう。
だが、それを見たヴィンセント陛下はゆっくりと頷くと、体を屈めて私の耳元に唇を当ててきた。
「そうだ――大人しくしていろ。私が満足したら殺さないという約束は、しっかりと守ってやる」
そもそも何をどうしたら彼が満足するのかの条件も示されていないのに、あまりに一方的すぎる契約だ。
いや、王族というのは一方的なものなのかもしれない。脳裏によぎるジャクリーン様の声を思い出し、私はただされるがままにきゅっと目を閉じた。
「ん、ぅ……」
大きくかさついた手には、剣胼胝が目立っていた。
触れられるとその部分だけ皮膚が分厚いので、彼が剣術の熟達者であることがわかる。
「あまり固くなっていると、こちらも興ざめだ。喘ぎ誘ってみろとは言わんが……多少は興がほしいな」
「きょ、ぅ……?」
恐れ多さと恐怖でガチガチに固まった体を撫で、ヴィンセント陛下はチッと小さく舌打ちをした。
そんなことを言われても、私に一国の皇帝を歓ばせるための技術などありはしない。
「――自らドレスを脱いでそこに横たわれ。後は私がするから、お前は舌を噛まないようにだけ気を付けていろ」
「は、ぇ……?」
「二度は言わん。早く脱げ」
ぶっきらぼうに服を脱げと命じられ、私はこくこくと頭を上下に動かして一度体を起こした。
私が暮らしていた国では、ガラス細工のように華奢で繊細な女性こそが美しいと尊ばれる――ジャクリーン様はまさしくその典型のようなお方だったが、私はと言えば胸が大きく膨らんでしまって、娼婦のようではしたないと眉を顰められたこともあった。
それ以来、お仕着せも体の線が出ないものを選んでいたのだが、このドレスではどうやったってそれを隠すことはできない。
(でもっ……ここで脱がなかったら――)
ゴク、と喉をならした私は、思い切って着ていたものを脱ぎ捨てた。
じっと視線を向けられながらドレスを脱ぎ、更に下着に手をかける――ここでは私の尊厳など、ないに等しいのだ。
(いや――尊厳がないのは、今までも同じか……)
侍女といっても、その扱いは道端に転がっている小石のようなものだった。
そう思うと少しだけ羞恥心が薄れて、少しは冷静な状態で下着を取り去ることもできる。
丸く膨らんだ乳房が外気に晒され、誰にも晒したことがない秘処がにわかに震える――衣擦れの音だけが響く室内で、ヴィンセント陛下は特に言葉を発することもなく、私の姿をじっと見つめていた。
「っ……これで、よろしいでしょうか」
「あぁ――精油はアードリに塗られたな? 花の香りがする」
すん、と鼻を鳴らしたヴィンセント様だったが、私の体については特に言及がなかった。
てっきり、以前のように嘲笑されるものだとばかり思っていた私は、その様子にぽかんと口を開けてしまう。
「……なんだ」
「い、いいえ……その、見苦しくはないかと、思いまして」
全裸でぺたんとベッドの上に座るのは、酷い罪悪感がある。
にわかに声を震わせながらそう呟くと、彼は眉根を寄せたまま首を傾げた。
「見苦しい? 別に――風呂に入っていないわけでもないだろうに」
「その、っ……む、胸が……あまり、ひ、平たくなく、て……」
「……あぁ、そうだったな。シヴィライエットはそういう風土だった――が、帝国では別に、乳房の大きさ小ささで優劣が決まるわけでもない」
クッと顎を持ちあげたヴィンセント陛下は、すっと目を細めると再び私の体を寝台へと押し倒す。
遠目から見た彼の瞳はとても昏い色に見えたが、その実深い紫か藍色のような、複雑な色をしているのが見て取れた。
「だが、隠すなよ。今この時、お前の体は私の所有下にある」
そう命じられると、私は本当に体を手で隠すこともできなくなる。諦めて体から力を抜くと、彼は寝転んだ私の足を何度か撫でてきた。
「そうだ……従順な分、眠っている人の上に跨って勝手に腰を振る女よりはよほどいい」
「は――」
なんだそれ、と言いたくなったが、ともかく私は一切の抵抗を禁じられている。
何をされるのかと戦々恐々としていると、彼は私の足を軽く持ち上げて膝を立てさせた。
「あ、の……へ、陛下?」
「このままだ。このまま――その様子からすれば、まだ男を知らんのだろう。苦痛を和らげたければ無駄な抵抗はしないことだな」
……つまり、抵抗をしたらひどい目に遭うということだ。
こくこくと頷く私の下半身をするりと撫でながら、ヴィンセント様はゆっくりと足の間に手を滑り込ませてくる。
「う、っ……」
「息を吐け。知らぬのというのなら、ここが何をする場所なのか教えてやる」
命じられるがまま、ゆっくりと息を吐く。すると彼は膝を立てた足を大きく広げ、隠すもののない割れ目をくちっ……と指で広げてきた。
「んぅっ……」
「濡れていない、が――当然か。しばらくこのまま、足を閉じるなよ」
そういうや否や、ヴィンセント陛下はそっと身を屈め、あろうことか秘部に唇を寄せてきた。
おまんこにふぅ……♡と吐息がかけられると、思わずびくりと腰が跳ねる。
「ッひ、やっ……!」
「足を閉じるな。……いい子だから、このままにしていろ」
少しくぐもった声と温かい吐息が蜜口にかかって、ひく……♡と小さくおまんこが疼き始める。
ヴィンセント陛下はそれを見計らったように舌を伸ばし、くち♡くち♡♡と小さくその場所を舐め始めた。
「ひ、ぅ……ぅ、ああっ……♡♡」
ただの侍女が、一国の皇帝になんということをさせているのだろう。
今の自分がどんな体勢で何をされているのかを考えたら、混乱で頭が沸騰して死んでしまいたくなった。
「んんぁ、ぁ♡やっ……♡ん゛、ッ♡♡」
ちゅ♡ちゅぷ……♡ちゅう♡♡ぷちゅ♡ちゅ、ぅっ♡♡♡ぢゅっ♡
柔らかい舌が閉じた淫裂を舐め、緊張が解けた頃合いで浅い場所を抉じ開けてくる。
指先ではなく舌での刺激を繰り返されて、徐々に下半身全体が熱くなってくるようだった。
「あ♡あ、っ……や、い、いけませ――ぁあっ♡♡」
これまで他人に触れられたことがない場所を、これほど高貴な方に舐られ、暴かれていく。
逃げ出したくて咄嗟にシーツを掴んだが、彼しっかりと私の腰を掴んでいるので刺激から逃れることもできなかった。
ただ念入りに処女穴を刺激され、未知の感覚を植え付けられていく――下腹部がじぃんと痺れるような、図りがたい罪悪感のようなものがこんこんと込み上げてきた。
(こんな、とこっ――舐められるなんて……)
恥ずかしくて泣きそうなのに、にわかな快感を覚えている自分が憎らしかった。
「っふ、ぁ♡♡お、おやめくださ――あ♡ぁ、あ♡だめ♡♡そこ、ぉっ……♡♡」
「――慣らさねば苦しいだけだ。……これが快感だとしっかりと覚えこめ。私の舌が与えるこの感覚が気持ちいいことだと、体で記憶しろ」
「っ……き、もちいぃ……?」
それは例えば、寒い冬の日に温かいお湯に浸かるあの感覚だとか、愛しい人と抱擁を交わす瞬間だとかに覚える者ではないのだろうか。
舌で執拗におまんこを刺激され、もどかしさに身をくねらせるこれが本当に「気持ちいい」ものなのかがわからず、私はただその言葉を繰り返すだけだった。
「そうだ。何も泣きわめく女を無理矢理抱く趣味はない……しっかり覚え込み、一晩私を愉しませろよ」
「ッひンっ♡♡」
一瞬顔を上げたヴィンセント陛下は、目元だけで笑うと再びぢぅっ♡と淫口に吸いついてきた。
薄い唇で陰唇を食まれ、舌先がくちっ♡くちっ♡と浅い場所を舐るだけで、自然と腰が揺らめいてきてしまう。
「ん、はっ……あ♡あ♡や、ぁあ……♡♡」
あれほど恐ろしい人が、私の下腹部に顔を埋めてねっとりと蜜口を舐めている――その事実を理解したくなくて目を閉じ、ギュッとシーツを掴んで快感に耐えていると、やがてちゅっ♡と音がして唇が離れていった。
(お、なか――熱い……♡ジンジンして、変な感じする……♡♡)
これが、彼の言う「気持ちいい」なのだろうか。
ようやく飽いてくれたのかと思って目を開けると、ヴィンセント陛下はじっと私の顔を見下ろし、不機嫌そうな表情を浮かべていた。
「なぜ目を閉じる」
「……え?」
「目を見開き、私を見ていろ。これから自分を犯す男が誰なのかを、しっかりと――この目に、焼き付けておけ」
大きな手が伸びてきて、そっと頬に触れられる。
意外だったのは、その手が思っていたよりもずっと熱かったことだ。先ほど体に触れてきた時よりもずっと高くなっている体温に、思わず胸が跳ねる。
「オルガ、返事は」
「は、はいっ……」
名を呼ばれ、思わず是と答えてしまった。
そして、そう答えた以上は目を閉じることは許されない。頬に触れていた指先が鎖骨をなぞり、丸く張り出た乳房の頂点へと滑っていく光景を、私は視線で追いかけることになった。
「胸が大きいのが見苦しいと言っていたが……柔らかいし、形も綺麗だ。それに――」
「そん、ぁっ……♡ンぁ、っ♡♡ぁ、ひっ……♡♡」
形のいい爪が、カリッ♡と乳首を引っ掻いたのはその時だった。
おまんこを舐められる感覚とは違う、妙なむず痒さのようなものが胸から放射状に広がっていく。
「ん゛、ッ……♡」
「感度の方は良いようだな。少し触れただけですぐに硬くなってきたぞ」
「――ぁ、も、申し訳、っ……んんっ♡や♡ご、ごめんなさ、ぃっ♡♡ンぁ♡な、なんで乳首っ♡♡」
ぴんっ♡ぴんっ♡♡と指先で乳首を弾かれるごとに、唇からは甘ったるい声が漏れた。
私の指よりも太い彼の指先がくにくにと朱蕾を捏ねまわし、爪の先で引っ掻くような刺激を与えてくると、次第に全身が熱くなって下腹部が潤む感覚を覚えた。
「ン、ひぃっ……♡やぅ、ぅっ♡ん゛ッ……♡♡」
カリカリカリ♡こりゅっ♡こり♡♡こり♡ぴんっ♡ぴんっ♡♡ぴんっ♡♡♡
長い指で両方の乳首を転がされ、ぐっ……と背中が反りあがる。
するとヴィンセント陛下は左の胸を弄うのを一時的に止め、その手を下半身へと伸ばしてきた。
「ぅ、あ……♡」
「多少は快感を知ったか? 乳首も赤くなってきたし――こちらも、しっかりと濡れてきた」
「っ、んんっ♡♡あ♡や、っ……さ、さわっちゃだめ、っ……♡」
くちゅんっ♡と小さく音を立てて、彼の中指が膣口のごく浅い場所へと挿し込まれる。
先ほど舌でほぐしたところを、それよりも固い指先でぬ゛ち♡ぬ゛ち♡♡と刺激され、私の意志とは関係なく腰が跳ね上がる。
「んひ♡ひ、っ♡♡ぁ゛♡そこ触っちゃ、ぁっ……♡んぁ♡き、きたない、っ♡♡汚いから、っ♡♡おまんこ触っちゃダメ、ぁ゛ッ……♡♡」
「ここに触れなければなにもできんだろうが。ほら、また足を閉じている――縄で縛られながら抱かれたいのか?」
流石にそれは嫌だ、と首を横に振ると、ヴィンセント様はやや深いところまで中指を突き立て、まるでかき混ぜるように指先を動かし始めた。
体の奥に感じる異物感は強くなったが、それ以上に羞恥心と、得体の知れない快感が自分の内側でどんどん大きく膨らんでいく。
「っは♡ぁ゛、ッ……♡♡あ♡ぁ、んっ♡♡あ、ぁあっ……♡」
つぷ♡つぷ♡とおまんこを慣らすように刺激され、右の乳房は感触を楽しむかのようにやわやわと揉みしだかれる。
両方の手にはそれほど力が入っていないので痛みなどはなく、ただただ逃れがたい快感だけが体の奥に降り積もっていくようだった。
「ッふ、ぅ♡ぁ゛♡へ、いかっ……♡♡ヴィンセント、へーかぁっ♡♡ぁ゛♡や、これっ……♡♡おっぱいだめ、です♡あんっ♡♡乳首コリコリされた、ら♡腰うごいちゃう♡♡ん゛ッぉ♡♡ゆ、るしてぇ♡♡ぁ゛♡あっ♡♡」
特に乳首への刺激は甘美で、しこってきた小さな蕾を親指と人差し指で扱かれるのが一番気持ちよかった。
私が甘い声を上げるたびにヴィンセント陛下はかすかに指先へと力を籠め、悦いと言ったところを執拗に責め立ててくる。
「なんだ、涙を堪えながら慈悲を乞うていた時より、ずっといい顔をするじゃないか。顔を真っ赤にして、快感に蕩けたこの表情――悪くないぞ。褒美に一度、乳首だけでイかせてやる」
「え? あ、ぁぁっ……♡やぁっ♡♡ん゛ッあ♡♡ぁ゛♡や、ち、乳首両方だめぇっ♡♡♡」
低く笑ったヴィンセント様が、「褒美」と称してぎゅうぅぅっ♡と乳首を摘まんできた。
それまでおまんこをほぐしていた手で再びおっぱいを持ち上げ、愛液に濡れた指先でシコシコ♡と先端を扱かれる。
突然増えたその刺激は、初めての快感を味わう子の体にとっては過ぎたものだった。おっぱいを揉まれながら乳首を扱かれたり、引っ張られた理を繰り返しているうちに、ガクガクガクッ♡と腰が揺れ動き始める。
「あ♡ンぁあ、ぁ♡♡♡や、っ……く、るぅっ♡ん゛ァ♡なんか、きちゃうっ……♡♡あ♡あ♡♡やだ、っ♡♡や、怖いっ……ンぁ♡ア、ッ……♡♡」
がくっ♡がくっ♡♡と不随意に腰が揺らめき、お腹の奥からなにかがせりあがってくる。
未知の感覚が恐ろしいと泣き叫ぶ私の体を弄ぶまま、ヴィンセント様はそっと小さな声で囁いてきた。
「――イく、と言うんだ。快感に堪えきれず、その……『きちゃう』時は、誰に、どんな風にされてイくのかをしっかり口にしなければならない」
「は、ぇっ……♡イ、イく、ぅ♡♡ん、っ♡♡ぁ゛あ♡イく♡イきま、すぅっ♡♡♡あぁっ♡ヴィンセント陛下、にっ♡おっぱいいじめられてイく♡♡ん゛っ♡♡ぁ゛、ああっ♡イく、ぅ♡イくイく、イくぅっ……♡♡」
びくんっ♡♡と全身が大きく波打ったのはその時だった。
言われた通り、誰に、どんな風に触れられるのかを宣言して絶頂に達した私は、一瞬の硬直の後でがっくりと脱力した。
「ッは……♡♡ぁ、んっ……♡♡♡」
広い寝台の上で、私は全身に汗をかきながら四肢を弛緩させていた。
――いまいち、自分の体になにが起こったのかが理解できない。ただ気持ちよくて、言われるがままにとても恥ずかしいことを口にしたような気がする。
「ん、ぅ……♡♡」
体が重苦しくてうまく動けないまま、私ははふはふと荒い呼吸を何度か繰り返した。
これまで感じたこともない快感に頭の中を焼焦がされて、これから何をしたらいいのかもよくわからない。
「なるほど、ここまで従順か」
ようやく我に返ることができたのは、ヴィンセント陛下のそんな言葉が耳に飛び込んできたからだった。
複雑な色合いの目をすっと細めた彼は、自らが着ているものをはらりと脱ぎ捨てる。細身のように見えてしっかりと鍛えられた体は、薄暗い部屋の中でぼんやりと浮かんで見えた。
「ぁ、っ……♡」
「まだ終わったわけじゃない。言ったはずだぞ。お前の体で罪を贖えと」
「お゛ゥッ♡♡」
ぶぢゅっ♡♡と蜜を垂らすおまんこに長い指を二本突き立てられ、今度は無遠慮にその場所をかき混ぜられる。
一度イったからなのか、狭いはずの蜜壺は簡単に彼の指を飲み込んできゅうきゅうと収斂を繰り返していた。
「は、ぁっ♡♡あ♡ゃ゛、ッ……♡♡♡」
「先ほどより柔くなったな。――先ほどまでは挿入れただけで壊れそうだったが、これなら……」
ぬ゛ち♡ぬ゛ち♡♡と中指と人差し指でおまんこをほぐしながら、ヴィンセント陛下はなにやらブツブツと呟いている。
あまりの快感でその言葉も理解できない私は、先ほどと同じようにシーツを掴みながら襲い掛かってくる愉悦に耐えようとしていた。
「……うつ伏せになり、尻をこちらにつき出せ」
「ッあ゛♡♡ん、ぁ……♡♡ぁ、待っ、ンんぁ♡♡」
ぎゅぽっ♡♡といきなり指先を抜き取られたかと思うと、今度は体勢を変えるようにと命じられる。
最早この状況で彼に逆らうことができない私は、言われた通りに体をうつ伏せにし、ガクつく腰を突き出すような姿勢を取った。
(あ、っ……これ♡ヴィンセント様のところから、おまんこ丸見えになっちゃってる……♡♡♡)
そう気づいた瞬間に、指先でほぐされたおまんこからはとろ……♡と歓喜の蜜が溢れてくる。
貪欲で淫猥なこの姿をまじまじ眺められているのだと思っただけで、先ほどからお腹の奥が疼いて仕方がない。
「こ、っ……これで、よろしいですか……?」
「あぁ、そうだ――そのまま暴れるなよ」
そういうと、更に衣擦れの音が聞こえてきて――やがてぺちんっ♡♡と熱いものが私のお尻に触れた。
「ひぅっ♡♡」
ドクドクと脈打つその正体が知りたくて背後へ目を向けると、彼は着衣をすべて脱ぎ捨てて生まれたままの姿で私の腰を掴んでいた。
そして、お尻に当てられている――ガチガチに勃起した大きな肉棒に、思わず息を飲んでしまった。
(これ、っ……ヴィ、ヴィンセント陛下、の……)
ずり……♡とお尻に曲線に擦りつけられるそれは、まさしく凶器と形容していいだろう。
いくら閨のことを知らなくても、男性の体の構造くらいは頭に入っている。けれどヴィンセント陛下のおちんぽは、私が知っているそれとはあまりにも大きさが違う。
……大きすぎる。あんなものが挿入れられたら、お腹が裂けて死んでしまうんじゃないか。
「ま、待って♡待ってください、っ……♡そんな、ぁ♡♡そんなおちんぽ入んな、ぁ、あっ♡♡」
ずりゅ♡♡ぬ゛ぢゅ♡とお尻に擦りつけられる熱楔のせいで、助けを求める声もいやらしく上ずってしまう。
まるで期待しているかのような声音を聞いたヴィンセント陛下は、クッと喉を鳴らして更に先端を秘裂へと押し当ててきた。
「ん゛ぁあっ……♡♡」
「早く犯してくれと言っているようなものだな。――あれだけ感じることができるなら、痛みはそう強くはないはずだ」
軽く腰を揺さぶられ、あっついおちんぽがぐりぐり♡♡とおまんこに擦りつけられる。
あんなものが入れられるなんて怖くて仕方がないはずなのに、本能は快感に蕩け、唇からだらしのない嬌声が上がってしまう。
するとヴィンセント陛下は、低く笑ってスリスリと優しく腰を撫でてきた。
「褥のマナーを一つ教えてやろう。男を誘い込むときは、思いつく限りに淫らな言葉で煽ってみせるといい。存外と、事が早く済むかもしれんぞ」
――その言葉の真偽なんて、もうよくわからない。
頭の中がめちゃくちゃに蕩けて、彼の言葉を疑うだけの余裕も気力も残されてはいなかった。
「ぁ……♡♡」
「お前はあの王女などよりよほど賢明な女だ。……何をすればいいのかわかるな? オルガ」
「んっ♡♡」
名前を呼ばれるだけで、きゅうぅっ……♡と切なくお腹が疼く。
糸でつられた人形のようにこくんと頷いた私は、ふりふり♡とお尻を振りながら背後を振り向き、更に指先でヒクつくおまんこを広げてみせた。
「っ……ヴィ、ヴィンセント陛下、に……♡犯していただくため、に♡♡♡も、おまんこの準備……できてます……♡♡ど、どうか私、の……処女おまんこ、で♡♡此度の一件、を――お、お許しいただきたく、っ……♡♡」
「挿入れるだけか? それだけであの王女の罪を雪げと?」
「い、いえっ! ぁ……へ、陛下が満足される、まで♡何をして頂いてもかまいませんっ♡♡♡おっきな皇帝おちんぽでズポズポ突いて、っ♡お気の済むまで中出ししてください♡♡♡初物侍女まんこ♡陛下好みのトロまんにしていただいて結構ですっ♡♡♡」
自分でも最早なにを口走っているのかよくわからなかったが、先ほどからビクビク♡と脈動するおちんぽから目が離せない。
ここで彼を受け入れなければ酷いことになると言い聞かせながらも、本能は目の前の優秀な雄に犯されたがって仕方がなくなっているのだ。
「だから、っ……お、お願いいたします、っ♡♡ください♡♡陛下のおっきなおちんぽ♡♡♡ガン反りカリ高極上皇帝おちんぽで♡わ、私を雌にして、ください……♡♡♡」
上ずった声でそう懇願すると、彼はすっと目を細め――そして一気に、潤んだ膣壺を突き穿ってきた。
「ん゛、ァああぁっ……♡♡♡ンぁ♡ぁ゛♡あ、っ~~♡♡♡」
ぬぶぶぶっ♡♡と長いおちんぽが隘路を一気に押し広げ、先端でごちゅっ♡と最奥を突き上げられる。
初めてなのに然程の痛みもなく異性を受けいれたおまんこは、ぎゅうぅぅうっ♡♡といじらしく収斂しておちんぽを締め付けていた。
「んぁ♡あ、ぁぅっ♡♡ンっ♡」
お腹の中が、熱くて気持ちいい……♡
無理矢理狭い膣内を広げられているのに、媚肉がうねって雄肉を感じるたびに言葉にできないだけの愉悦が込みあがってくる。
「ッは♡あ、ぁぁ♡♡♡おまんこだめ、ェッ♡♡んっ♡ぁ゛あ♡きも、ちぃっ……♡♡」
あられもない声が唇からこぼれ落ちて、小刻みに腰が揺れてしまう。
私が行っているのはあくまで罪を償うための行為だというのに――皇帝の不興を買ってはいないかと背後を振り返ると、ヴィンセント陛下は目を細めたまま、ゆさっ♡ゆさっ♡♡と軽く腰を振り始めた。
「ッ、ぅんっ♡あ♡ぅっ……♡♡♡」
「どうした? 声を我慢するな。先ほどまで甘ったるく啼いていただろうが」
「ッひぅうっ♡♡」
唇を噛んでなんとか歓喜の声を堪えようとすると、ぬ゛ぱんっ♡♡と力強く後ろから腰を打ち付けられた。
溢れ出した愛蜜が潤滑油となっていて、太く長大なおちんぽは難なく奥へと飲み込まれる――こちゅこちゅと子宮口に先端が届くと、下腹部全体が喜悦に痺れだした。
「あ♡♡ン、ぁあ♡どちゅどちゅし、ちゃぁっ……♡あ♡や、やぁあっ♡♡ごめ♡ごめんなさ、ぃッ♡♡♡へぇか、ぁっ♡あ、ぁんっ♡♡♡」
ぬ゛ぷっ♡♡ずち♡ごちゅっ♡ごちゅっ♡♡♡ぬ゛ぷんっ♡♡♡ばぢゅっ♡
深いところを力強くこじ開けられ、媚肉を張り出した雁首で引っ張られる。
繰り返される律動に合わせて気持ちいいのが膨らんでいって、私の口からは思わず謝罪の言葉が飛び出してきた。
「あ♡ン、ぁあっ♡♡♡ごめん、なしゃっ♡♡お゛♡奥突いちゃ――ンぁあぁッ♡♡」
「罪を贖えとは言ったが、謝罪をしろとは言っていない。……悦い場所はどこだ?」
「ッひぅ♡♡」
ずちゅっ♡ずちゅっ♡♡と腰を動かしながら、ヴィンセント陛下は探るように膣内をおちんぽでまさぐってきた。
腰の動きを変えて角度や擦る場所をずらしながら、私が一番高く啼く場所を探る――その動きに耐えきれず、淫らに腰が揺らめいてしまう。まるで自分から彼のことを求めるような動きに、抽送はより激しさを増した。
「んは、ぁっ♡あ♡奥、っ♡奥のとこ、ですぅっ♡♡♡ンッぁ゛♡あ、ぁあっ♡♡そこ、ぉおっ……♡♡」
ビクビクッ♡と体を震わせながら歓喜の声を上げると、ヴィンセント陛下は言葉通りに私がよく感じるところを責め立ててきた。
丸い先端でずりずりとその場所を擦られたかと思うと、大きな手がぐにっ♡とお尻を揉んでくる。
「ッふ♡ぅ、ううっ♡♡ん゛ぁ♡♡ァ、また、っ♡♡♡また気持ちいい、のっ♡クる♡お゛ッ♡♡や、ぁあっ♡♡♡」
「っ――いじらしく締め付けているな。……なんと言えばいいかは、先ほど教えたはずだ」
お尻を揉む手に力がこもり、柔肉が形を変える。
奥をぐぷっ♡と突き上げられた私は、目の奥がチカチカと明滅するような感覚を味わっていた。
「ぁ゛、っくぅっ♡♡んっ♡イ、イきますぅっ♡♡♡また、っ♡またおまんこイく♡ぅ、っ♡♡♡へぇかのおちんぽにっ♡奥トントンってされてイくぅっ♡♡♡ん゛ッぉ♡♡あ♡ゃ゛、ぁぁあっ……♡♡♡」
二度目に味わった絶頂は、先ほどのものよりも深く重たいものだった。
快感の極致に達したかと思うと、膣肉がぎゅううぅっ♡♡♡ときつく肉棒を絞り上げて吐精を乞う――突き立てられているおちんぽの形がよくわかるほどに膣内が収縮すると、背後からぐっと低く唸る声が聞こえてきた。
「ッほ、ぉ゛ッ……♡♡♡」
「く――ッ、はは、覚えがいいな……♡」
ぬぽっ♡ぐぽっ♡♡と音を立てて膣奥を犯しながら、ヴィンセント陛下はがっしりと私の腰を掴んできた。
力強くおまんこを突かれる動きにつられるように、私の口からは甘ったるい悲鳴がこぼれ落ちていく。
「ん゛ぉ♡♡おぁ゛、ぁっ♡♡イったばっかりのおまんこ、ぉ♡グリグリしないれぇ……♡♡あ♡ぁんっ♡♡♡ビクビクってしてるとこ、だめ♡だめぇっ♡♡♡」
「もっと突いてほしいとねだっているのはお前だろう? 遠慮はいらん。好きなだけ善がれ」
「ん゛ィッ……♡あ♡ンぁ♡♡ズリズリしちゃだめ、っ♡♡♡」
張り出した雁首が、的確に私の弱いところを擦り上げていく。
自分ですら知らない快感を増幅させる場所を探り当てられ、快感を教え込むような動きを繰り返されると、もう我慢なんてできなかった。
「あ♡ッは、ぅっ♡♡」
「そうだ――オルガ、自分から腰を振ってふせろ。受け身なままでは面白みがないぞ」
背後から聞こえる低い声に操られるように、ゆさっ♡ゆさっ♡♡と腰を揺すってしまう。
途中で耐えきれず、枕に顔を押し付けて快感を逃そうとしたが、そうすると余計にお尻を突き出すような形になってしまって深いところまで肉茎が押し込まれた。
「お゛ッ♡ひ、ぁあっ♡♡♡先っぽ、でぇ♡しきゅーこーグリグリするのやぁっ……♡♡ンぁ♡だめ♡だめぇ……♡」
ぎゅっぽ♡ぎゅっぽ♡♡♡と深いストロークを犯され、先端が突き当たりに到達するたびに下腹部が痺れる。
すっかり降り切ってしまった子宮口がちゅぽちゅぽ♡と貪欲に切っ先に吸いついて、多幸感が一気に頭の中を埋め尽くしていくみたいだった。
「っ――自分から吸いついておいて、なにがダメなんだ? 言わなければ、っ♡このまま緩く犯し続けるぞ……♡」
熱を孕んだ耳元で囁かれるだけでも、おまんこがきゅっ♡♡と切なく収縮する。
ヴィンセント陛下の指先で触れられ、その声で痴態を咎められるごとに、私は淫らな声を上げて愉悦に打ち震えることしかできなくなっていた。
「んふ、ぅ♡♡あ♡き、きもちい、の……♡♡♡おちんぽパコパコされるの気持ちよすぎ、て♡♡お、おかしくなりそ、です♡♡♡ヴィンセント様のおちんぽ♡おまんこでモグモグするのとまんにゃ、ぁ♡あっ♡♡♡」
緩急をつけておまんこを掘削する動きに、再び意味を成さない声が口を突いて出る。
私の答えに何を満足したのか、彼は一気におちんぽを引き抜くと、今度はぐぽっ♡♡と重たい音を立てて最奥を突き上げてきた。
「ん゛ォおあっ♡あ♡♡まら、ァっ♡♡またイっちゃ、ぅっ♡♡♡ぁあっ♡イく♡イ、ぅうッ……♡♡♡ヴィンセント様のおちんぽで♡♡子宮口ちゅっちゅってされてイきまひゅ♡ぅ、ぁぁッ♡♡♡」
ぬ゛ぽっ♡ぷちゅっ♡♡ぬこぬこぬこっ♡♡ぬ゛~~ぢゅっ♡♡ばちゅっ♡♡ぱんっ♡ぱんっ♡ぱんっ♡♡♡
「お゛ッ♡♡ほ、ぉっ♡♡イっぐ、ぅうっ♡♡♡」
「ふ、はは――いじらしいな、オルガ……♡必死にちんぽを締め付けながら奉仕をするとは、っ――気に入った……♡もう少し付き合えよっ……♡♡」
ぢゅぽっ♡ぢゅぽっ♡♡と恥ずかしい音を立てておまんこを犯されながら、私は必死で彼の言葉に頷いた。
もう、ここまで来たらまともな理性などは働かない。動物のように、目の前にぶら下げられた快感を追いかけるだけで精いっぱいだった。
(奥の方あっつい♡♡ずっとおちんぽで甘やかされて♡突かれるたびにジンジンするぅっ……♡♡)
これは私に課された罰だというのに、体が浅ましく反応してしまう。
太い肉幹に媚肉がぎゅうっ♡と絡みつく度、背後からのピストンが強くなっていくような気がした。
「んっ♡♡ンぁ、あっ♡♡奥や、ぁあっ♡」
あまりの快感に腰を引こうとすると、それは許さないと言わんばかりに腰を掴まれて肉杭を打ち込まれる。
ぱちんっ♡と肌と肌がぶつかり合う音が部屋の中に響くと、ヴィンセント陛下はぐぐっ……と体重をかけて最奥をこじ開けようとしてきた。
「あ、ぁっ♡♡そこだめ、ッ♡♡も、もぉむり♡♡無理です、ぅっ♡♡♡ぁ゛♡はいん、にゃっ……♡ぁ゛♡♡」
「わかってる。だが――ここか。お前が一番感じるところを、こうやって……先端で押し開ける、と……」
湿った吐息がうなじにかかって、それだけでもひどく感じてしまう。
本当におまんこの奥をこじ開けられてしまうんじゃないかという感覚を覚えながら、私は全身を強張らせて何度も首を横に振った。
だが、そんな私の意志とは裏腹に、体の方はまるで甘えるようにして突き立てられたおちんぽに吸いついてしまう。
「お゛、ッ……♡♡んんっ♡」
きゅうきゅうと収斂する蜜壺の中から、長太いおちんぽが緩やかに抜き取られたのはその時だった。
灼熱の杭が物欲しげに蠕動する膣内を刺激しながら、ずるずると浅い場所まで戻っていく――それまで呼吸をするのですら感じてしまっていた私は、思わずハッとして背後を振り返った。
「あ――へ、ぇか、ッ♡♡」
――だが、それが間違っていた。
ヴィンセント陛下は微笑むようにすっと目を細めると、そのままばちゅんっ♡♡♡と油断しきった膣奥を突き穿ってくる――♡♡
「ん゛、っォ♡♡♡お゛、っほぉおっ♡♡」
訪れるはずがないと思っていた刺激が、一気におまんこから子宮、頭の中まで一直線に駆け上がってくる。
押し出されるような低い声と共に強制的な絶頂を迎えさせられた私は、ビクビクビクッ♡♡♡と体を震えさせながら、その後も繰り返される力強い律動に溺れることになる。
「ん゛ッ♡♡ぁ゛♡あ、イ、ッてェ♡♡イってましゅ♡お゛ぉっ♡♡♡も、おまんこイきました、ぁあっ♡あ♡あぁっ♡♡おちんぽずぽずぽらめ♡♡お゛ッ♡♡奥いま弱いのッ♡♡あっあ、ぁっ♡♡だ、だめ♡♡イくイくイく♡♡♡また、ぁあっ♡♡♡」
ばぢゅっ♡♡♡ばぢゅっ♡♡ずぷずぷずぷっ♡♡ぐりゅっ♡♡♡どちゅんっ♡♡
最後のスパートと言わんばかりに腰を掴まれ、荒々しく膣内全体を蹂躙される。
抽送だけで簡単にイかされてしまった私は、唇から悲鳴とも嗚咽とも、愉悦の声ともつかない声をこぼすことしかできない。「ッく、ひぃっ♡♡♡ぁ゛♡あぁっ♡♡」
「く――耐えろよ、オルガ……♡」
「ん、ぁあぁッ♡♡♡」
びゅるるるっ♡♡ぶぢゅっ♡ぶぴゅぅっ♡♡♡びゅ~~~♡♡♡ぶぢゅっ♡♡
ひときわ強く奥を穿たれたかと思うと、熱いものが勢いよくおまんこの中へと注ぎ込まれた。
吐き出す熱を更に奥へと届かせるためか、ヴィンセント陛下はぐりぐり♡♡と熱を放つ肉竿を更に押し込んでくる。
「ん゛、ぉっ……♡♡♡ぁ゛♡あは、ぁっ……♡♡」
びゅぷっ♡♡びゅぷっ♡♡と最後の一滴まで精液を吐き出したおちんぽが、やがてゆっくりと引き抜かれる。
その動きですら、快感に支配された膣内には甘美な刺激になってしまう。名残惜しげにおちんぽへ絡む淫肉が切なくて、唇から甘い声が漏れた。
「っは、ぅっ……♡♡陛下、っ……ぁ♡♡お、お許しくださ、っ……♡♡♡これ、でっ♡ど、どうかお許しを――♡♡♡」
やがて完全におちんぽが抜き取られた後、私は再度許しを請うために唇を動かした。
最早蚊の鳴くような声しか出なかったが、これに耐えきったのならばジャクリーン様の罪をお許しいただけるという約束だ。
この後飽いたと言われ首を跳ねられたとしても、即時挙兵されるということはないはず。
力の入らない体を叱咤して背後を振り向こうとするも、もう指先すらまともに動かすことができない。
(なんとか、して……許しを、乞わないと)
干からびた喉でなんとか声を絞り出すと、背後で身じろぎをする気配があった。
――このまま首を落とされて死んだら、きっと痛苦なんて感じないだろう。
いずれ襲い掛かってくるであろう痛みを待ちながら、私は気怠い体を寝台の上に放り投げていた。
「……許す、か」
だが、想像していた痛みはいつになっても襲ってはこない。
その代わりにヴィンセント陛下は、深く息を吐くと私の左隣に寝転んできた。
「寝台を汚すのは趣味じゃない」
そうして大きな手が伸びてきて、視界が塞がれる。一瞬何が起こったのかはわからなかったが、目の前が暗くなったことで急速に睡魔が忍び寄ってきた。
(――だめ)
このまま眠ってしまったら、もう二度と目を開けることはできないかもしれないのに。
(……あぁ、でも)
目を閉じて、次に見るのが大好きだったお父さんとお母さんの顔だったらいいのに。
引きずられるように眠りの淵へと落ちた私の意識は、そこでふつりと途切れたのだった。
● ● ●
「おはようございます、オルガ様」
「は……ぇ、お、おはよ、ございます……?」
鳥の、鳴き声が聞こえる。
お父さんもお母さんもいないし、部屋の中には見覚えがあった。
昨夜私の世話をしてくれたアードリさんが、数人の侍女を伴って私の前に立っている。
(あ、あれ? 私……死んでない? 生きてる?)
いまいち状況が呑み込めないまま、ぐっと体を起こそうとする。だが、節々が鈍く痛んで思うように身動きを取ることができなかった。
「ッ……」
「あぁっ、どうぞそのままで。陛下より子細は伺っております……まずは湯浴みになさいましょうか」
「う、えぇ……?」
上手く動けない私を抱え上げた侍女たちによって湯殿へ運ばれた私は、体を清められて真新しいドレスを着せられた。
私も最初は状況がよくわかっていなかったのだが、頭がはっきりしてくるにつれて昨夜の痴態を思い出してしまう。
(あ、あれって結局……夢とかじゃ、なかったんだ……)
湯殿で自分の体を見た時、あちこちに痕がついていて絶叫しそうになった。
だが、皇帝に忠実な侍女たちは何も見ないふりをして体を綺麗にしてくれる――他人に体を洗われるのは恥ずかしい以外の何物でもなかったが、自分でやると言ったらアードリさんがすごい圧を放って微笑んでくるのだ。
(あれは歴戦の侍女の笑み……私じゃ逆らえない……)
城には稀に、あぁいう王女様ですら叱り飛ばしそうな猛者がいるものだ。
王城勤めが長いこともあって、私もその威圧感に逆らうことができなかった。
「オルガ様……お召し物なのですが、既成のものしかなく――昼過ぎに仕立て屋が参りますので、お仕立てが終わるまではこちらで我慢をしていただきたいのですが」
しっかりと体を磨き上げられ、髪も綺麗に梳られた後、アードリさんは一着のドレスを差し出してきた。
絹の艶めきが美しいターコイズブルーのドレスは一目見ただけでも相当な価値があるものだとわかる。
「こ、こんなもの着られません!」
「申し訳ございません、今はこちらのものしか――陛下も既製品ではなく、一から仕立てたものご所望されておりましたが、時間ばかりはどうにも……」
「そうじゃなくて……!」
既製品か否かという問題ではなく、一介の侍女がこのような高価な品は着られない。
アードリさんになんとかそう伝えるも、彼女は「これ以上衣服の品質を落とすことはできない」と毅然とした態度で首を横に振るばかりだった。
「そもそも、陛下も陛下です……オルガ様にあのような仕打ちをしておきながら、朝方になって『適当な衣服を用意しろ』なのですもの。本来であればしっかり仕立て屋を呼び、然るべき工房に依頼をかけて発注をすべきところを……」
ムッとした表情を浮かべたアードリ様は、「侍女頭の権限において」と前置きをしたうえでターコイズブルーのドレスを私に着せ、そこから更に何着ものドレスを並べ立てていった。
「こちらはすべて、陛下がオルガ様のためにと用意したものです。オルガ様が要らぬと申されるのならば、こちらはすべて廃棄となります」
「そ、そんな……」
そもそもヴィンセント陛下が、どうして私にこんなドレスを与えてくれたのかもよくわからない。
しかも、このドレスたちは私が着ないと言ったらすべて廃棄処分――庶民の年収何年分に相当するのかもわからない豪奢な一品を前にして、「いらないので捨ててください」とは言えなかった。
「……わ、わかりました。着ます。着ますから捨てないで……」
「かしこまりました。……それでは、オルガ様も混乱しておられるようなので、いくつかのお話をさせていただきましょうか」
頭に疑問符ばかりが残る私を見て哀れに思ったのか、アードリさんはヴィンセント陛下が一体どんな指示を残したのか、そして私の今後の処遇はどうなるのかを話して聞かせてくれた。
「まず、前提から話しておきましょう。オルガ様は昨晩、陛下と閨を共にされた……これは間違いございませんね?」
「……はい」
流石にそのことを肯定するのは恥ずかしかったが、そもそも近くの部屋に控えていた彼女たちは何があったのかを知っているはずだ。
そっと頷くと、アードリさんはどことなくこちらを憐れむような表情を浮かべ、それからゆっくりとため息を吐いた。
「大変でございましたね……」
「え、えぇ……?」
「陛下と閨を共にされた女人で、一晩まともに過ごすことができた方はおりません。大概が許してくれと泣き出すか、翌朝には国に帰りたいと騒ぎ立てる始末で」
これまで色々な国から何人もの女性がヴィンセント陛下の妻にと送られてきたが、大概の女性は夜を越えることができなかったという。
一応臣下に下賜するという手段を取られた女性もいるが、本当に国に帰ってしまった女性もいる――そう聞いて、私は昨夜を思い出した。何度もイかされて我を失うまで快感を与えられ続けたら、国に帰してくれとも言いたくなるだろう。
「このままではお世継ぎどころか、陛下と共に連れ添っていただく皇妃様すら見つからないと思っておりましたが……この度陛下より、オルガ様を皇妃にされるとの勅命も出ましたので。これで帝国も安泰でございますね」
「は――えっ!? ちょ、勅命って、そんなまさか……」
今アードリさんがサラッと口にした言葉は、もしかしてとんでもないものだったのではないだろうか。
勅命という言葉にも驚いたが、更に驚くべきはその前――彼女は今、私が皇妃になると口にしたのだ。
「いいえ、事実でございます。今朝の朝議にて、ヴィンセント陛下自らがそう仰せになりました。議会の正式な承認が降りるのに数日程時間を要しますが、お立場上は皇妃様として扱うようにとのご命令です」
にっこりと笑うアードリさんに反論などできようはずもなく、私はただ流されることしかできなかった。
当然のことながら、皇妃となるからにはたくさんの仕事が発生し、相応の強要なども求められるのだが――幸か不幸か、ジャクリーン様の妃教育を代わりに請け負っていたおかげで、その辺り知識はなんとなく補うことができた。
それでも足りない経験や知識などは、アードリさんがヴィンセント陛下に掛け合い、専門の講師を連れてきてくれる。
そうしてあれよあれよという間に、私はこの国の皇妃としてヴィンセント陛下の隣に立つことになってしまったのだった。
(絶対夢だ……なにか、都合のいい幻覚とかに違いない……)
皇妃の仕事は多岐にわたる。
夜から朝にかけては体力がほぼ無尽蔵なヴィンセント陛下に抱かれ、朝早くからは宮廷百官が居並ぶ朝議に出なければならない。
そんなところで疲れた顔を見せるわけにはいかないので、アードリさんたちによるメイクも熱が入るというものだ。
「お顔の色は、こちらにいらっしゃった時と比べると大分よくなられましたね! ただ――陛下ももう少し、加減をしていただけるとありがたいのですが」
「あ、あはは……」
少しでも血色がよく見えるように化粧を施され、ヴィンセント陛下と共に朝議へ赴く。
とはいえ私がなにかを発言することはまずないので、その場で話を聞いているのが主な仕事だ。
「――帝都の公共事業についてはどうなっている」
「は、陛下のご命令通り、上下水道の整備が整ってございます。それと、数年前の政変で破壊された孤児院の修復についてなのですが……」
淡々とした口調で、宰相閣下や他の官吏たちが国内外の情勢を伝えてくる。
この日議題に上がっていた孤児院というのは、帝都にいくつかある王立のものだ。
「孤児院の修復がどうかしたか」
「はっ、皇妃様がそちらに赴かれ、直々に修復をお約束されたとのこと――孤児院の院長より感謝の手紙が届いております」
「……そうか。これまで修復を待たせていたからな……オルガ、お前が手配したんだな?」
「えっ? あ、はい――えぇと、私ができる範囲での支援とはなりますが……」
不意に名前を呼ばれて飛び上がるも、その孤児院というのは先日実際に現場へ赴いたことがあった。
皇位継承にかかる政変で、この国ではいくつかの重要施設が襲撃されて壊されたままになっている。ヴィンセント陛下が即位してからはそれらの修復も行ってきたが、政治的に重要な施設と比べると孤児院などはどうしてもそれが後回しになってしまうのだ。
「こ、子どもたちは、次世代を担うこの国の宝……現在の陛下は、一般市民層からも広く官吏や側近の方を登用されております。このような施設に先行的な投資を行うことで、それらの有力な人材を更に集めやすくできればと……」
ヴィンセント陛下の周囲は、およそ半分が貴族出身の官吏たち、そして残りの半数が平民出身の優秀な学者たちで占められている。
以前のこの国は貴族の出自でなければ宮仕えは難しく、運よく王宮で働けても出世は望めない――そんな状況だったので政治的な腐敗が蔓延していたのを、彼が即位したと同時に大規模な粛清を行った。
そこで出た欠員を今まで日の目を見ることがなかった平民出身の学者や官吏で埋めたのだが、それでも人手不足は深刻だという。
「まずは福祉と教育……これらを充実させ、陛下の治世が心安らかなものであるのが肝要かと、思われます……。後進の育成もまた、この国の未来を考えるには必要なことかと」
「なるほど。……皇妃の考えはもっともだな。宰相、慈善事業への予算を増額できるか? ――確か税収は昨年よりも多いはずだが」
「可能でございます。しかしながら、こちらは長い目でものをみるのがよろしいかと……皇妃様のお名前で慈善財団を設立し、貴族の方々からの寄付を――」
私が口にした言葉を、より政治に長けた宰相閣下がブラッシュアップしてくれる。
そこは本当にありがたい限りなのだが、一方で私が本当にそこまで立派なことを考えていたかというと少し違う。
(だって……いつ陛下に捨てられるか、わかったもんじゃないし……)
そう――私の目的は、いずれヴィンセント陛下に飽きられた時の受け入れ先である。
成り行きで皇妃になってしまったが、私の身の上はいつ彼に飽きて捨てられてもおかしくはないものだ。
そうなったとき、どこかで私を受け入れてくれる場所があれば少なくとも野垂れ死にはしないはず。孤児院の修復と援助は、その時のための種まきと言えた。
「――この一件、すべて皇妃の名前で行うように。私が表立って支援を行うよりは、民も安心するだろう」
「かしこまりました。……それと、次は――あぁ、シヴィライエット王国からの使者が、陛下と皇妃様に謁見を求めております」
「……え?」
議題が変わり、宰相閣下が重苦しい表情で口にした言葉に、私は思わずハッとして顔を上げた。
シヴィライエット王国……少し前まで私が暮らしていた母国の使者が、この度の一件を受けて帝国へとやって来たらしい。
「突き返せ。奴らと話すことはなにもない」
「しかしながら、陛下――なかなか彼の国もしつこい有様でして。一度皇妃様に会わせろの一点張りでございます」
母国はジャクリーン様の件で、かなり帝国から詰められたらしい。
その件についての釈明をしたいと、王家に近しい辺境伯家の当主を勅使として遣わしたらしいが、ヴィンセント陛下はそれでも首を縦には振らなかった。
「すでに一度不敬を働いているにもかかわらず、なおも言い訳がましくこちらにすり寄ってくる神経を疑う。突き返せ」
「しかし、相手は一度陛下と皇妃様に会わねば帰らぬと申しております。ジャクリーン王女の件を、一度しっかりと謝罪したいとのことで」
ジャクリーン様が逃げたことで国家としての面目が丸潰れになった母国は、なんとしてでも帝国に許しを請わなくてはいけない状況にあるらしい。
とはいえ、私としてもどんな顔をして勅使の辺境伯に会えばいいのかわからない。
できればヴィンセント陛下がこのまま突っぱねてくれればいいのに――そう思っていると、彼は秀麗な顔立ちに苛立ちを浮かべながら低く吐き捨てた。
「……ならば今すぐその勅使とやらを連れてこい」
「よ、よろしいのですか?」
「十分だ。十分だけなら顔を合わせてやる……オルガ、お前は後ろに下がれ。アードリに命じて絹の幕を張り、勅使には顔を見せぬように」
ちらりとこちらを見つめた深い色の瞳が、少しだけ細められる。
……もしかして、今彼は私に気を遣ってくれたのだろうか。
「へ、陛下……」
「向こうがするべきは謝罪と説明であり、皇妃の顔を見ることではない。……下がって、私がいいという間では顔を見せるな」
淡々とした、至極感情を抑えた言葉ではあったけれど、それでも今の私にとってはありがたい。
すぐにアードリさんが絹の幕を用意してくれて、私はそこに隠れて椅子に座る。
シヴィライエット王国からの使者は陛下に呼び立てられて、やがて慌ただしく玉座の間へと転がり込んできた。
「こっ、皇帝陛下――この度は、謁見をお許しいただき誠に……」
「回りくどい挨拶に割けるだけの時間が貴様らにあるとでも? 今すぐここから叩き出されたくなければ、早急に用件を述べよ」
顔中を汗まみれにしてペコペコと頭を下げているのは、国王陛下の遠戚でもあるメットラル辺境伯だ。
国内でもきっての大貴族だった男性が身を縮こまらせる姿を、私は張られた幕の内側から見つめることしかできない。
「はっ……こ、この度は、王女ジャクリーンの行動につきまして……皇帝陛下には、多大なるご迷惑をおかけしっ……国王より謝罪の言葉を預かっておりますれば……」
「別に、最初から貴国が一方的に王城を押し付けてきただけだろう。私はそもそもジャクリーン王女を妻にと欲したことはない――だが、その上で侍女一人を置いて、兵士諸共愛人の元へ逃げ出したとなれば……相応の報復を受けても文句は言えぬな?」
「っ……そ、その件につきましては、その……じ、侍女とはいえ、皇妃陛下は元々我が国の民でございます。王女の侍女とはなっておりましたが、彼女は元々貴族の出でございまして――」
状況は、一貫してヴィンセント陛下が主導権を握っている。
というより、この調子で話しかけられたら私だって恐ろしい――今にもひっくり返りそうになっている勅使に同情を覚えていると、なぜだか肌がビリッ……と痺れるような感覚を覚えた。
「――だから? 元はと言えばお前たちが捨てて逃げたものを、私が拾い上げたに過ぎない。返せと言われようが、彼女は既に我が国の人間だ」
「し、しかしあれは……」
「不敬であるぞ。最早彼女は、お前のような人間が話せる立場の人間ではない……庇護を乞うつもりで参ったようだが、貴国と交渉する価値はなさそうだな」
低い――怒りを滲ませる声が、鼓膜を叩く。
一体ヴィンセント陛下は今どんな顔をしているのかとゾッとしたが、隠されている私よりもなお哀れなのは勅使の方だった。
「も、申し訳ございませんっ! こ、皇妃様に対しての不敬、心よりお詫びを申し上げますッ!」
今にもひっくり返りそうになりながら謝罪の言葉を口にする勅使だったが、最早陛下は彼の言葉を聞いていないようだった。
彼が右手をひらりとふると、勅使は屈強な兵士たちに両脇を固められ、ズルズルと体を引きずられていく。
(私は別に、なにを言われてもいいけど……)
引きずられていった勅使の足音すら聞こえなくなってから、側に控えていたアードリさんの手によって幕が除かれる。
玉座に腰かけたヴィンセント陛下は不機嫌そのものといった表情で足を組み、ちらりとこちらに視線を向けた。
「あ……ヴィ、ヴィンセント陛下。その――」
「安心しろ。あのような小国に戦を仕掛けるほど、私は暇じゃない」
そう吐き捨てた陛下に、一段低い位置に立っているロジェ将軍もうんうんと頷いている。
「まぁ、地形的にも侵略のうまみはありませんなぁ。ご英断ですぞ、陛下」
「だが、不愉快であることに変わりはないな。彼の国との交易を多少締め付けておけ……朝議はこれで終わりだ。私は皇妃と共に少し休む」
ふーっ……と不機嫌そうに息を吐いたヴィンセント陛下が、視線でついて来いと訴えかけてくる。
これにて朝議は終了――私は彼の命令に従い、その後ろをついて歩いた。
「あ、あの……陛下……?」
「気分を害した。この後は執務を行うが――人払いを済ませるので、お前もついてこい」
「わ、私が執務室に? よろしいのですか……?」
まさか、彼の部屋で執務を共にするということだろうか。
きゅっと眉を寄せて首を傾げると、ヴィンセント陛下は一度だけ金髪をかき上げ、それからじっとこちらを見つめてきた。
「お前がいなければ始まらない仕事をする」
「は――」
複雑な色合いの視線が、私の顔から胸――そして下腹部へと移動する。
その視線でなんとなくの意味を察してしまった私は、顔が熱くなるのを感じながら首を横に振った。
「な、なりません……! 神聖な執務室で、そのようなっ……」
「神殿でお前を抱くと言っているわけでもない。別に問題はないはずだ……それともなにか? 私の決定に文句があるとでも」
「ぅ……い、いえ。そのようなことは……」
そんな風に言われてしまったら、私は彼の言葉に逆らえない。
しかも彼の視線を受けて、ほんのりと下腹部が疼いてしまっているのが情けなかった。
「ついてこい。……いいな?」
「はい……仰せのままにいたします、陛下……」
低い声で命じられるがまま、私は彼が普段執務を行っている部屋へと連れていかれた。
本来ならば皇妃が立ち入ることはできない場所だが、彼の許可があれば特別――というか、どうやら執務室の周囲をぐるりと人払いしているようで、官吏たちの姿もまばらにしか見当たらなかった。
「へ、陛下……その」
「――お前はもう、シヴィライエット王国の人間ではない。お前はこのゲインズブール帝国の皇妃だ……そうだな?」
「っ……はい。そうです――陛下と婚姻の契りを交わした時より、私はこの帝国の人間です」
いつ捨てられるか分かったものではないとはいえ、とりあえず籍はこの国にあると言って間違いない。
小さく頷くと、部屋の鍵を後ろ手に占めた皇帝陛下はするりと首元のタイをほどいた。
「そうだ――何人たりとも、我が国の人間を傷つけることは私が許さない。お前がこの国の人間である以上、お前は私の庇護下にあると知れ」
「そ、れは……守っていただけるという、ことでしょうか」
「それ以外の意味に聞こえたか?」
まさかそんなことを言ってもらえるとは思っていなかった――彼のように強大な力を持った人に「守る」と言われると、自分の立場がどれほど不安定でも安心してしまうものだ。
「お前はこの国の皇妃である。そして皇妃を守るのは、皇帝の役割だ」
「ぁ――ありがとう、ございます……んっ♡」
小さな声でお礼を言うと、不意に腕を引かれて唇を塞がれた。
柔らかくて熱い舌先で唇をこじ開けられ、ぬぷっ……♡と舌先が咥内に潜り込んでくる。
「んん、っ♡♡ん゛っ……♡」
ちゅ♡ちゅっ♡♡と小さく音を立てて舌同士を絡めあいながら、ヴィンセント様はやんわりと私の胸元に手を伸ばしてきた。
「ん、ぅ♡♡」
「オルガ――今日はお前の胸で、猛りを治めてもらおうか」
ちゅぱ♡と音を立てて唇が離れると、下から揉み上げられた乳房に力が込められる――大きな手でむに♡むに♡♡と形を変えるおっぱいから、甘美な痺れが広がっていった。
「わ、私の胸……? どう、やって……」
「お前のこの豊かな乳房で――私のものを扱いてもらう。……できるな?」
ぎゅうっ……♡と右の乳房を揉みしだかれて、つい口から甘い悲鳴が漏れた。
胸で男性のおちんぽを扱くなんて、そんなことやったことがない。
だけど、ヴィンセント陛下を前にして「できません」は禁句だ。彼の機嫌を損ねてしまったが最後、夕刻の鐘が鳴る前に首を落とされてしまうかもしれない。
「っ……♡つ、拙いもので、よろしければ、ぁっ♡♡ぁ゛、っ♡♡胸で、ご奉仕♡させていただきます、ぅ……♡♡♡」
大きいばかりの胸をたぷっ♡たぷんっ♡♡と揉まれ、上ずった声を上げながら、彼には手近な椅子に座ってもらう。
そうしないと私たちの身長差では、到底彼のおちんぽにご奉仕なんてできない――椅子の上に腰かけたヴィンセント様のベルトを解き、下履きを寛げながら、私は咥内に溜まっていた唾液をごくん♡と飲み下した。
(胸、で……♡おっぱいの谷間で、おちんぽシコシコしたらいいってこと、だよね……? こんなところで扱いて、本当に気持ちいいの……?)
それも、ヴィンセント様のおちんぽはかなり大きい――果たして私の胸で包み込むことができるのかと不安になりながら、ゆっくりと着衣を解いていく。
「っふ……♡♡ん、っ♡♡」
「お前は脱がないのか?」
「そ、っ……それでは、私も――失礼いたします……♡♡」
流石に、着衣を乱さないまま胸で――というのは不可能だ。
人払いはされているものの、一応周囲には誰もいないことを確認してから、私もドレスの胸元を寛げた。
「ん、っ♡♡」
それまでドレスで締めつけられていたおっぱいが、ばるんっ♡♡と大きく踊り出してくる。
相変わらず、大きいだけでしまりがない……そう思ってはいるのだが、どうやらヴィンセント様はこの大きな胸を弄ぶのが嫌いではないようだった。
「相変わらず柔らかそうだな。……それでゆっくりと、左右から包んでみろ。手で押して、上下に動かし、刺激を加えてみせるんだ」
「ん、っ♡♡は、はい♡♡こう、ですか……?」
なにも知らない私に、ヴィンセント様はどうやっておちんぽを慰めたらいいのかを教えてくれる。
言われた通りに谷間で反り立つ肉杭を挟んだ私は、むぎゅ~~♡と両側からおっぱいを寄せてみた。
「っは……♡♡ん、っ♡♡ッあ、ぅっ♡♡」
既に反り立っていた雄杭の先端から滲む先走りが肌を汚してくる。
それを胸の谷間に絡ませるようにしてぬちぬち♡と柔肉を動かすと、次第に頭の中がぼぅっとしてきた。
(すご、っ……♡ヴィンセント陛下のおちんぽ♡♡おっぱいで挟んで扱くと♡♡すっごく熱い……♡♡♡先っぽだけ出てくるのも、すっごくいやらしいし……♡♡♡)
にゅぽ♡にゅぽ♡♡と、まるでおまんこで扱くみたいにおっぱいでの愛撫を続けていくと、次第にヴィンセント陛下の呼吸が荒く変化してきた。
――一応、これで気持ちよくなってはくれているみたいだ。
「んん、っ♡陛下、ぁ♡これ、っ♡♡♡わ、私のおっぱいおまんこ♡気持ちいいですか……?」
「あぁ――思っていた以上だ。く、っ……♡だが、まだ――舌を伸ばして、亀頭の方にも奉仕をしてもらおう。丹念に舐めて、よりこの体を昂らせてもらおうか」
「っ……かしこまり、ました……♡♡んぇ、っ……♡♡ちゅ♡むちゅ、ぅ♡♡♡」
両胸を寄せた中央から顔を出す、おちんぽの先端。
それに舌を伸ばして唾液をまぶし、舌先でちろちろ♡と鈴口を刺激してみた。
くぱ♡くぱ♡と開閉を繰り返す鈴口を舐めながらも小刻みに胸を寄せてみたり、上下に動かしたりを繰り返していると、しっかりと鍛え上げられた腹筋がひく♡とかすかに動くのが見て取れる。
「んん、ぅ♡♡ちゅ♡ん゛む、ぅっ♡♡ちゅ、っ♡♡っは……♡♡ん゛♡」
ちゅぱ♡ちゅぱ♡♡ぢぅうっ♡♡ぢゅるるっ♡♡♡ちゅぽ♡ぢゅるっ♡♡♡
先走りが舌の上で広がるとその苦みで眉が寄る。けれど陛下はそれに気分を害した様子もなく、じっとりと汗ばんだ肌で奉仕を続ける私の頭を軽く撫でてくれた。
「んォ♡♡ちゅ、ぅっ……♡♡」
「く――上手いぞ、オルガ……ッ♡」
ほんの少しだけ感じる声の揺らぎが、それとなく彼が感じている快感を伝えてくれる。
男の人にこんな風に奉仕したことなんてないので、きっと私のそれは拙いものだろうに――それでも褒められるのがうれしくて、私はそのままぢゅっぽぉ♡♡と肉幹を咥えこんだ。
「ッぐ……!」
低い唸り声が聞こえたが、それを無視して口の中に入るギリギリまでおちんぽを咥え、ぢゅるるるっ♡♡といやらしい音を立てながら竿をしゃぶりあげる。
幹の部分をしゃぶりだすと胸での愛撫が難しくなるが、できるだけ根元のあたりを刺激できるように、自分でむにむにと柔乳を押し込んでみた。
「ぁ゛、ッ……♡く、ぅっ……」
「んふ、ぇ♡♡んぷっ♡ぢゅるっ♡♡♡ンん゛ッ♡♡ぉ゛、むっ……♡♡♡」
ぢゅるっ♡ぢゅぽっ♡♡と唾液を絡ませながら、頬の内側の粘膜でもしっかりおちんぽを扱き上げる。
おっぱいと口だとどっちが柔らかいんだろう――そんな考えを頭に思い浮かべながらきゅっ♡と喉奥を締めると、息を詰めたヴィンセント陛下が震える息を吐いた。
「ッ……オルガ、もういい……」
「む゛、ぅ……♡♡んぇ♡で、でもまだ――ご満足、されてませんよね……♡んちゅ♡♡陛下のおちんぽ♡まだバキバキでぇ……♡♡すっごく苦しそう♡ぢゅるるっ♡♡♡ど、どうかこのまま……んっ♡わらひの口、に♡♡びゅ~~♡♡ってしてくらひゃい……♡♡♡」
「ん゛、ッ……」
ぐっと息を飲んだヴィンセント様だったが、口とおっぱいを使ったご奉仕が気持ちいいのか、それ以上強く止められることはなかった。
熱くて血管が浮き出た長おちんぽをぢゅっぽぢゅっぽ♡と唇で扱き上げながら、付け根と睾丸に胸を押し付けて種類の違う刺激を与えていく。
すると、やがて口の中に突き立てられた肉楔がびくんっ♡と跳ね、その質量を増したような気がした。
「ん、っ……♡オルガ、ッ……♡♡」
ふ、と震える息を吐いたヴィンセント陛下が、ぐ……と私の頭を撫でる手に力を加える。
――射精が近いんだ。
ぼんやりとした頭の中でそう直感した私は、より唇を窄めて唾液を舌にまとわせ――ぢゅるるるっ♡♡ときつく鈴口を吸い上げた。
するとその瞬間に、咥内でぶぢゅっ♡♡と白濁が爆ぜる。
いきなり舌の上に吐き出された苦い液体に眉をしかめたが、吐き出すことはせずにそのまま時間をかけてそれを飲み込んだ。
(喉……イガイガする、っ♡♡苦くて飲みにくい、けど……でも、全部飲まないと……♡♡♡)
ごきゅ♡と喉を鳴らし、少しだけ唾液を絡めて喉を通りやすいようにしてから更に吐き出された精液を飲み込んだ。
そうしてゆっくりと、けれど確実に出された分を飲み込むと、ようやく呼吸を整えたヴィンセント陛下が更に優しく頭を撫でてくれる。
「……全て飲んだのか」
「ふぁ、ぅっ♡♡はい……♡頂いた分は、すべて……♡♡の、残さず頂戴いたしまし、た♡♡♡」
んぇ♡と舌を出し、口の中に粘っこい液体が残っていないことを証明する。
けほけほと咳き込みながら口を開いた私を見て、彼はスッと目を細めると腕を引っ張ってきて、体を持ち上げてくれた。
「ぅ……ヴィ、ヴィンセント陛下?」
「献身には褒美を与えねばならない。――ケチな王だと謗られるのは不名誉だからな。腰を上げろ」
「っぁ……は、はい♡♡」
陛下の膝上にちょこんと座ることになった私は、熱を失って萎えたおちんぽの上に跨るようにして腰を下ろした。
かろうじてショーツだけは残っている状態だが、ドレスの方はお互いの唾液や精液でぐちゃぐちゃだ。
自分でも酷い有様だということがわかっているからか、余計に足の間が濡れてしまう。
「自分で腰を動かして、刺激してみせろ。うまくできたら、膣内に挿入れてやる」
「わかりました、ぁっ♡♡ん♡ぁあ♡♡」
既に心臓はうるさいくらいに脈打っていて、陛下の言葉に逆らうという考えはどこにもなかった。
言われるがままに腰を前後に動かすと、むちむちとした柔らかい肉丘におちんぽが擦りつけられるような形になる。
(あ、これっ……♡♡一人でしてるみたい、っ♡オナニーしてる♡♡♡今♡私ヴィンセント様でオナニーしちゃってるぅ……♡♡♡)
ぐにぐに♡♡と重心を下に置きながら腰を前後させると、ちょうど割れ目の場所に亀頭が当たるようになっている。
何度か刺激を繰り返すことでおちんぽそのものも硬くなってきて、持ち上がった先端が布地越しにおまんこを擦り上げてきた。
「あ、はァ♡♡ンぁ♡あ、ぁんっ♡♡や゛、ッ……♡」
「少しずつ勃ってきたな……? どうする、このまま挿入れてもいいが」
「ンぁ、ッ♡♡はい♡挿入れて♡♡おちんぽ挿入れてくださ、ぃっ♡♡あ、ぁっ♡♡おっきくなってきたヴィンセント様の皇帝おちんぽで♡おまんこズポズポってされたい、ですぅっ……♡♡♡」
へこへこと情けなく腰を動かしながら繰り返される懇願は、およそこの執務室には似つかわしくないものだ。
本来ならば国政の行く末を決める、神聖にして高潔であるべき部屋――そこで私は半裸になり、浅ましく腰を振って快感を貪っている。
そう考えただけで、恥ずかしくてなさけなくて――どうしようもなく、興奮してしまうのだ。
「あ♡ぁん、っ♡♡ッひぅっ……♡♡陛下、っ♡ぁ゛♡ヴィンセントさま♡♡お願い、っ……♡♡」
ぐずぐずに蕩け始めたおまんこを自分から擦りつけて挿入をねだる。
すると彼は、美しい金髪をかき上げてフッと短く息を吐いた。
「いいだろう。……自分で下着をずらせるな?」
「は、ぃ♡♡んっ♡♡どうぞ、っ♡ここ♡おまんこもう準備できてます、ぅ♡♡♡オルガのおまんこに♡ヴィンセント様のおっきいおちんぽ♡♡♡一気に挿入れてぇ♡」
下腹部に手を伸ばし、濡れてどうしようもなくなった下着を横にずらした。
すると、すっかり勃ち上がった雄肉の先端が淫肉を割り、ゆっくりと蜜穴を抉じ開けてくる。
「ん゛は、ァッ……♡♡♡」
み゛ぢみ゛ぢっ♡♡と蕩けた淫穴を押し広げて挿入ってくる熱の塊に、思わず背中が大きく反りかえった。
ひっくり返らないようにヴィンセント陛下が腰を支えていてくれるものの、それが逆に快感の逃げ場を失くしてしまっている。
「ぁ゛♡ンぁ、あっ……♡♡へぇ、かぁっ♡♡あ♡はいって♡♡おちんぽ入ってきてりゅ、ぅ♡♡♡ぉ゛ッ~~~♡♡♡」
にゅぷぷ♡♡にゅぷっ♡と水っぽい音を立てながら、長太いおちんぽがゆっくりと体の中に突き立てられる。
最初は大きさと太さで違和感を感じていたそこも、皇妃となって何度も繰り返されてきた調教によって簡単に肉杭を飲み込むことができるようになっていた。
「ぁ゛♡ンふ、ぅっ♡♡♡おっきぃ……♡♡あ♡ぁ、あっ♡♡」
――彼に満たされる瞬間は、幸せだと思う。
ヴィンセント陛下がどれほど恐ろしい方なのかは痛いほどわかっているつもりだが、それでもこの瞬間は確かに幸福を感じてしまうのだ。
私の中の欠けている部分を、彼が満たしている。そう思うだけで頭の中が桃色に塗りつぶされて、更に白い靄がかかったようになる。
(ヴィンセント様のおちんぽ♡♡お腹の中グリグリって押し上げてくるっ……♡子宮口まで届いて♡♡♡頭バチバチってするぅ……♡♡♡)
緩やかに腰を動かされると、その度に小さな声が漏れ出てしまう。
肌と肌がぶつかり合う淫靡な音とお互いの息遣いが、誰もいない執務室の中に響き渡っていた。
「っひ♡♡ん゛、ぁあ♡ぁ゛、ッ♡♡へぇ、か♡♡陛下っ……♡♡♡」
ぐぽ♡♡ぬぢゅ♡ぐぷっ♡♡♡ばちゅっ♡ばちゅっ♡♡ばちゅっ♡♡
濡れた音が次第に大きくなっていって、その度に羞恥心が頭をもたげてくる。
けれど、ヴィンセント陛下はそんなことお構いなしで、うねる膣壁を引っ張り上げるように奥を突き上げてきた。
「く、っ……腰の使い方が上手になったな、オルガ……?」
「ンは、ぁ♡♡ぁ゛♡ありがと、ございまひゅ、ぅっ♡♡♡おッ♡奥すご、ぃっ……♡ぁ゛♡あぁっ♡♡」
下から上へとおまんこを突き上げられる動きに加えて、前後にも緩く腰を動かしてさらなる快感を得ようとする。
自分でもどれほど貪欲なんだと笑ってしまいたくなるが、愛蜜を絡ませながら奥を突く動きに全身が痺れて仕方がない。
「しかし――ナカだけというのも芸がないな。……どこに触れてほしい?」
「ふ、ぇ……?」
「お前が望む場所に触れてやる。せいぜい淫らに、私に触れてほしい場所を答えてみせろ」
にゅぷっ♡♡と音を立てて膣奥を突かれた後、不意にヴィンセント陛下は律動を止めた。
それまでたっぷりと甘やかされ、蹂躙されていた膣壺に刺激が咥えられなくなった物足りなさで、じわりと子宮のあたりが熱を孕み始める。
「っん……♡♡あ♡ぁっ♡♡」
「どうした? 言わねば触れてやることはできないが」
艶めいた低い声が鼓膜を叩く。
身中の疼きに耐えながら、私はひぐっ♡と喉を鳴らし、ヴィンセント陛下の肩にそっと手を置いた。
「ん、ぅっ……♡♡♡っ……も……♡」
「なに?」
はくはくと口を何度か開閉させ、なかなか出てこない声をなんとかして絞り出す。
快感ともどかしさの狭間で板挟みになりながら、私は軽くお腹のあたりに力を込めた。
「ッ……く、クリトリス、もぉ……♡♡♡へ、陛下に触って、いただきたいです……♡♡オルガの、っ♡よわよわクリトリス♡♡陛下にコネコネされたら♡すぐにイっちゃう雑魚クリちんぽ♡♡触ってください、っ……♡お願い♡♡お願いします、ぅ♡♡♡」
「……クリトリスか」
いいだろう、と心なしか優しく囁かれたかと思うと、勃起して疼き続ける淫核に乾いた指先が触れる。
ぐっぽりとおちんぽを咥えこんだ膣口の真上、ピンッ♡と尖ったクリトリスを、人差し指の腹でぐにっ♡♡と押しつぶされたのはその時だった。
「ッく、ぅううっ♡♡♡ンぉ゛ッ……♡」
長い指の先でくに♡くに♡♡と淫芯を押しつぶされた瞬間に、膣内を掻きまわされるのとはまた違った愉悦が全身を駆け巡る。
ビリビリと電流が走るかのような刺激が広がって、その愉悦でぎゅうぅぅっ♡♡とおまんこが締まるのがよくわかった。
「ん゛ァッ♡♡ぁ゛♡クリしゅご、ぉっ♡お゛ッ♡ぁ゛、あぁっ……♡♡♡指でクリトリスぐりぐりされるの♡ん゛ォ♡♡おまんこしびれりゅ、ぅっ……♡♡♡」
にゅち♡♡ずち♡ぐりぐりぐり♡♡♡にゅぷっ♡♡ぬ゛ぢゅ♡ぬ゛ぢゅっ♡♡♡
指先を小刻みに動かされ、ひっきりなしに甘い快感を叩き込まれる。
「ッひ♡ぁ゛ンッ♡♡や、ぁあっ……♡♡」
指先で甘く小さな蕾を弾かれて、目の前で白い火花がパチンッ♡と散る。
甘やかすようにクリを捏ねくりまわされ、じんわりと腰のあたりに熱が宿ってきた。刺激を受けるとぎゅううぅっ♡♡と膣内が締まって、おちんぽの脈動がダイレクトに伝わってきた。
「ん、っ♡ぁあ、っ……♡♡ぁ゛♡」
「もう少し動いてやろう。……どうだ? しっかりとお前の悦いところを慰められているか」
ぽそ、と小さく囁かれながら、濡れた舌で耳の輪郭を舐められた。
ねっとりと、舌のザラついた感触を教え込まれるように軟骨を舐められただけで、体は簡単に反応してガクガク♡と腰が震える。
「ん゛ぅうっ……♡♡ぁ゛♡は、ひっ♡♡♡きもちぃ、ですぅ♡クリちゃんこねこねされて♡♡お゛ッ♡♡おちんぽぎゅうぎゅう締め付けながら耳舐めされるの♡♡きもちいぃ♡♡んッ♡♡おまんこビリビリきてるの、っ♡♡♡」
「そうか――ではこのまま捏ねまわしてやるから、私の目の前でイけ。……しっかりと、イく時は宣言するのを忘れるな」
「ッふ、ぁ゛ッ♡♡」
それまで指の腹で押しつぶされていたクリトリスが、今度は爪の先でぐにっ♡♡と潰される。
爪の硬い感触と突如訪れた快感に背筋が震えて、お腹の奥がかぁっと熱くなるのが分かった。
「ひ、ぅっ……♡♡ぁ゛、ッ♡♡♡イきそ、ですぅ♡お゛ッ♡♡♡クリとおまんこ一緒に弄られて♡おちんぽ締め付けながらイきます、っ♡♡♡お゛♡イぐ、ぅうっ♡♡♡ッひ♡♡あ、ぁあっ♡♡王妃まんこイく♡♡イかせてください、ぃ……♡♡」
ヘコヘコヘコ♡と必死に腰を振りながら絶頂を懇願すると、ヴィンセント陛下は更にぬるりと耳を舐め、クリを潰す指先に力を込めてきた。
「ん゛ひッ♡」
「いいだろう――このまま、存分にイけ。お前が淫らに果てるところをしっかりと見ていてやる……♡」
ふぅう……♡♡と耳に息を吹きかけられた瞬間に、全身からぶわっ♡と汗が噴き出した。
そしてそれと同時に、下腹部の疼きも最高潮に達する――ぬ゛ちぬ゛ちとしつこくクリを刺激され続けていた腰のあたりで、一気に熱が爆ぜるのが分かった。
「ん゛ぁあっ……♡♡ぁ゛♡ッは、ぁぅっ……♡♡♡イく、ぅうっ♡♡」
びくびくっ♡♡と全身を震わせるのと同時に、声にならない悲鳴が喉から迸る。
ぎちっ……♡と陛下の肩を掴む手に力が入って、深い快感を味わいながら忘我の極致へと引きずり上げられた。
「ッは、くぅっ……♡♡♡ん゛ッ♡んぁ、っ……♡♡」
永遠にも思われた一瞬が過ぎ去ると、一気に全身が脱力する。
崩れ落ちそうになる体はヴィンセント陛下が支えてくれたが、自分で体勢を立て直すことができず、彼にもたれかかったままになってしまった。
「ッふ……♡ぁ゛♡も、申し訳、ございませっ……♡♡♡」
「いい。……お前はこのまま私に寄り掛かっていろ」
いつまでも動けないことを不敬と断じられるかもしれない。
そう思って身じろぎをしようとするも、腕にも腰にも力が入らなくて崩れ落ちてしまう。
慌てて謝罪を口にすると、彼は一度だけ優しく背中を撫でてくれた。
「勝手に動かせてもらうが、問題ないな?」
「んひ、ぁっ♡♡ぁ゛♡だ、大丈夫で――ぉ゛ッ♡♡♡」
思っていたよりも柔らかい口調で囁かれたかとおもうと、やにわにズンッ♡♡と重たい突き上げを受けた。
「ひ、ァんっ♡♡♡ぁ゛ッ……♡」
「ここ、が――お前の悦いところだ……♡しっかりつき上げると、ナカがよく締まる……♡♡♡」
ばぢゅっ♡ばぢゅっ♡♡ぬぷぬぷっ♡ごりゅっ♡♡どちゅどちゅどちゅっ♡♡♡ぬ゛ちぃっ♡♡
激しく下から突き上げを受け、背中を反らすと大きく乳房が上下に揺れた。
重たくて大きいだけのおっぱいがぶるんっ♡ぶるんっ♡♡と揺れるのも恥ずかしかったし、その度にあられもない声が口を突いて出るのも羞恥心を煽る。
だが、ヴィンセント陛下はそれに不快感を示す様子もなく、揺れる左の乳房をむにぃっ♡♡と鷲掴みにしてきた。
「ッぁ゛あ♡♡♡」
「いいな。お前のこの、柔らかい肌――触れているだけで、もっと欲しくなる」
複雑な色合いをした目が、じぃっと私の目を覗き込んでくる。
王者の持つ威圧感――視線を逸らすことを許されないその雰囲気に圧倒され、一瞬呼吸が止まった。
「ッは……♡♡」
思わずぎゅ♡とおまんこの中を締めつけると、ヴィンセント陛下は大きく腰をグラインドさせ、肉棒の切っ先をぐりぐり♡♡とイったばかりの子宮口に押し当ててきた。
「このまま私が射精するまで耐えろよ……♡お前の中に、一滴残らず注いでやる――♡♡」
「ッふ、ぁあ゛♡♡は♡はい、っ♡♡ヴィンセント様の精液♡ちゃんとおまんこで受け止めますぅ、っ♡♡だから♡♡だから全部出して♡♡ロイヤル精液お待ちしておりますから、ぁ♡ぁんっ♡♡」
上ずった声でそう答えると、途端にピストンの強度が上がった。
張り出したカリの部分でぷっくりと膨らんだ媚肉を削り、丸みを帯びた先端が悦い場所を的確に擦りあげる。
普段ならそれだけでも簡単にイってしまうが、先ほど絶頂の極みに達したばかりの私のナカはこれ以上ないくらい敏感になっていた。
ぞりぞりぞり♡♡とうねりを続ける膣肉をほじられ、おちんぽを咥えこんでいる結合部からはどぷっ♡♡と白く濁り始めた液体が漏れてきた。
「んぁ♡♡あ♡ッひ、ぃいっ……♡♡あちゅ♡ンッ♡♡♡おまんこあつい、ぃ♡♡あ゛♡ヒダヒダのとこ♡おちんぽに擦りつけるのイイです、っ♡♡ぉ゛♡♡キく、ぅうっ♡♡♡ヴィンセント様♡♡♡ヴィンセントさま、っ……♡♡」
切なく名前を呼ぶと、彼はそっと私の腰に手を回し、より体が密着するように抱きかかえてくれた。
おかげでおちんぽが突き立てられる角度が微妙に変わり、また新しい快感が生み出されて体が甘く痺れていく。
「ッあ♡♡まら、っ♡♡また気持ちいいのキます♡んぉ、お゛ッ……♡♡♡イく♡♡イくイく♡執務室で本気ハメされて♡おまんこイきま、ひゅぅッ……♡♡♡」
ぬ゛こっ♡ぬ゛こっ♡♡と腰を動かされると、瞬く間に愉悦が背筋を駆け抜けて、また目の奥がチカチカと明滅を繰り返した。
ヴィンセント様はそんな私の様子を察したのか、ぎゅううぅっ♡♡と柔乳を揉む手に力を加え、更に強く腰を打ち付けてくる。
「ん゛ぁ♡♡あ゛ッ♡イく、ぅうっ♡♡」
「っ――イけ、オルガ……!」
低い唸りを聞いた瞬間、ガクンッ♡♡と全身が大きく跳ねあがる――♡♡
同時にお腹の奥にびゅぷぷぷっ♡と精液を吐き出され、下腹部全体をもったりとした熱が埋め尽くしていった。
「ひ、ぎゅっ……♡♡あ゛♡あ、ぁ~~……♡♡♡」
ドロッとした欲望を思い切り吐き出されて、更にダメ押しとばかりに腰を揺さぶられる。
最早体に力が入らなくなった私は、されるがままに揺さぶられ、ただヴィンセント様の体にしなだれかかることしかできなかった。
「ッひ……♡♡♡んぅ♡ぅ……♡」
「素晴らしいぞ、オルガ――お前は想像以上に、私のことを愉しませてくれる。……これまでとは、まるで――」
びゅくっ♡♡と最後の一滴を膣内に射精しながら、耳元でヴィンセント様がなにかを囁いていた。
――素晴らしいということは、褒められたのだろうか。
まさか、私のような人間にわざわざお褒めの言葉をかけてくださるなんてありえない……きっとこれはセックスの多幸感が見せる幻覚かなにかなのだろう。
(そう――いずれ、私は……)
きっと遠からぬ未来、私は彼に飽きられて捨てられる。
ほぼ確定した未来が明日になるか、はたまた一年後になるのかはわからないが――身を灼く快感に震えながら、私は内心で小さく息を吐いたのだった。
● ● ●
「――は、夜会……ですか?」
「来賓を招いた夜会の運営も、皇妃の仕事の一つだ。……ユジェブ大公国の公子が、先日からこの国で流通産業の視察に来ている。それをもてなし、この国の国力を示すための夜会が……今日開かれる」
「今日ですか!? な――何も聞いていませんけど……!」
ある日、私はそんな悲鳴を上げた。
珍しく昼間に部屋を訪れたヴィンセント陛下に告げられた突然のスケジュールに、頭の中が一気に取っ散らかる。
皇妃として行う公務はすべてアードリさんに共有してもらっていたが、そんな予定はまるで入っていなかった――突如夜会があると告げられても、なにをしていいのか、誰を招いているのか、そもそも帝国内における貴族同士の力関係はどうなっているのか、まだ何も学びきれていない。
「ア、アードリさん……!」
「申し訳ございません、皇妃様……陛下より、このことは皇妃様にお伝えするなというお話でしたので――。ご準備はすべて、陛下の方で整えていただいているのですよね?」
さしものアードリさんも、私からの追及には少し申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
ヴィンセント陛下からの命令ならば彼女は逆らえなかっただろうが、それにしてもどうして予定が伝えられていなかったのか――もしかして単純に嫌がらせをされたのではないかとも思ったが、陛下の表情は至極穏やかだった。
「ユジェブ大公国は、この国に最も友好的な同盟国の一つだ。夜会と言えど然程気負うべきものではない……アードリの言う通り、手はずはこちらで整えている。お前は酒でも飲んで、聞かれたことに笑って答えているだけでいい」
それだけ言うと、彼は執務があるからと言って部屋を出て行ってしまった。
残された私のポカンとした表情を見て、アードリさんは未だに申し訳なさそうな表情を浮かべながら首を横に振る。
「た、多分……陛下は皇妃様のご負担を減らしたかったのでしょう。まだ嫁がれてから、それほどお時間も経っておりませんし……最近は孤児院再建の一件で、かなりお忙しくされていらっしゃったでしょう」
「それは……その、でも流石に今日知らされるのは……」
捨てられた時の行き場になる予定なので――とは、アードリさんには言えない。
とはいえ今日の夕刻に夜会が開かれるのは確定事項なので、私はすぐさま数人の侍女に囲まれて身なりを整えることになった。
(このドレスはそれこそユジェブ大公国の特産の絹糸――真珠の首飾りは東国で人気のある一級品だっけ……)
ゲインズブール帝国の皇妃が既製品のドレスを見にまとうなど、とアードリさんは眉をしかめたが、先日部屋に押しかけ――いや、採寸をしに来た仕立て屋さん曰く、ドレスの仕立てには数か月を要するという。
今着せられているドレスは既製品のものに、結婚の際ヴィンセント陛下から賜った私の紋章……三日月と百合の刺繡を加えたものだ。これもモノとしては最上級の一品であり、王城に務めるお針子さんたちが一針一針刺繍をしてくれたものである。
「皇妃様の御髪は美しいですが、少し遊びがあってもいいかもしれませんね。今はドレスも落ち着いたものが多いですから、髪飾りを派手にしてみるのはどうでしょう?」
「は、派手なのはちょっと……その、あまり得意じゃなくて……」
「皇妃様は派手なものより、洗練されて美しいデザインの髪飾りがお似合いになりますわ。陛下のお隣に立たれた時、よりお二人のお心が近いことが分かりますもの」
髪を結われながらも、侍女の人々は楽しそうにそんなことを話す。
先の皇妃様――つまりヴィンセント陛下の母上様が儚くなられてから、この城には女性の王族が存在していなかった。
故にこうして、ドレスや髪飾りのことで盛り上がる機会もなかったのだという。
「ウィスタリア様がご存命だった頃は、まだ王宮の中も華やかだったのですけれど――」
「しっ! 皇妃様のお耳になんということを――い、今のことは御忘れくださいませ。どうか、その……陛下のお耳には……」
一人の侍女の口から、ぽろりと女性の名前がこぼれ落ちた。
それをすぐさま別の侍女が諫めたが、私はその名を聞き逃さなかった。
「ウィスタリア様?」
「……ヴィンセント様の、亡きお母上でございます」
疑問に答えてくれたのはその侍女ではなくてアードリ様だったが、その場の雰囲気がズンと沈んだことを考えると、あまり触れない方がいい話題なのかもしれない。
ヴィンセント陛下の耳に入れないでほしいという侍女の願いに応じるように、私はこくこくと首を振った。
「わかりました。その、これ以上のことは聞きません。……髪結いをありがとう。綺麗に仕上がりましたね」
侍女として働いていた時も、知らなくていいことを知ったがゆえに死んでいった人をたくさん見てきた。
触れるなというのならば触れない――綺麗に髪を結い上げてくれた侍女にお礼を言うと、しばらく経ってからヴィンセント陛下の使いが私を呼びに来た。
「皇妃様、陛下がお待ちでございます。ご用意は整われましたか?」
「はい、大丈夫です」
呼ばれて部屋を出ると、扉の前には使いの人だけではなくてヴィンセント陛下その人が経っていた。
金髪がよく映える黒の正装を身にまとった彼は、私の姿を上から下までまじまじと眺めた。
「……三日月と百合――」
ドレスに施されている刺繍に気が付いたのか、小さな声でぽつりとそう呟く声が聞こえる。
「あ、っ……はい。お針子さんが、ドレスに刺繍をしてくれたんです。仕立てのドレスが到着するまで、まだ時間がかかるということだったので……」
「そうか。……よく似合っている」
そうさらりと言ってこちらに背を向け歩き出した陛下に、慌ててついていく。
――もしかして今、褒められたのだろうか。
(いや……褒められたのは刺繍の方だよね。私じゃなくて……)
いやいや、と自分を律して、歩みが送れないように彼の後ろに付き従う。
皇妃だなんだと言われているが、私がそう呼ばれているのはあくまで陛下の気まぐれだ。
いつその立場を失ってもおかしくないのだから、分不相応な期待は持たない方がいい。
強くそう言い聞かせ、夜会の会場へと向かう――すると、そこには既に多くの来賓が集い、各々食事や会話に興じていた。
「皇妃様、お飲み物はなにがよろしいでしょうか?」
「え、と――あまり強くないお酒はありますか? できれば辛くないやつ……」
「果実酒がございますので、そちらをご用意いたしますね」
給仕の女性がすぐにこちらの意図を汲んでくれて、飲み物が用意された。
皇帝であるヴィンセント陛下の挨拶が終わり、各国の大使や国内の貴族たちが次々と挨拶に訪れる。
時には私に対しても話を振られることがあったが、その多くは福祉関係の話だった。孤児院の再建を行っているという話がどこまで届いているのかはわからないが、利権にあずかりたい者、あるいは同じような志を持ってくれていた人が声をかけてくれる。
――そんな時だった。
どこか遠くの方で、ガシャンッ! とガラスが割れるような音が聞こえる――ハッとしてその方向を見ると、誰かが金切り声を上げているらしいのが見て取れた。
「……陛下? なんですか、あれ――」
人々の笑い声に満ちていた室内が、突如としてシンと静まり返る。
得体の知れない恐怖が冷たい汗になって背筋を伝うのを感じながら、私は声が聞こえる方に視線を向けた。
「オルガッ! お前――お前ッ!」
つんざくような悲鳴と共に聞こえてきたのは、間違いなく私の名前だ。
そしてその名を呼ぶ声にも聞き覚えがある。いや、聞き覚えなんてものじゃない。私は彼女の声を、城に勤め始めてから数年間、毎日のように聞いていたのだから。
「は――ぇ、っ……ジャクリーン、様……?」
カツカツと音を立てながら、なにかが近づいてくる。
鬼気迫るその迫力に居並ぶ人々は道を開け、彼女は肩を怒らせながら波のように割れた人の間を歩いていた。
――ジャクリーン・ド・シヴィル第二王女殿下。
カナリア色のドレスに身を包んだ彼女は、白粉をはたいた顔を憤怒の形相に歪ませながらどんどんこちらに近づいてくる。
「ひ……」
「どうしてお前がここにいるの! オルガ! 何故お前が!」
カァンッ! とヒールが床にぶつかる甲高い音が聞こえたかと思うと、ジャクリーン様が私たちが座っている場所めがけて走り出してきた。
まずい――このまま喉笛を噛み切られるんじゃないかという恐怖が頭を駆け巡った瞬間、目の前には大きな背中が立ちふさがった。
「ッ――衛兵、なにをしている!」
ドサ、とかバキ、とか、鈍い音が聞こえたかと思うと、これまで一度も聞いたことがないほどの怒声が会場に響き渡った。
あまりにも聞き馴染みがなくて、それがヴィンセント陛下の声だと気付くまでにしばらく時間がかかったほどだ。
「その女を取り押さえろ!」
地の底から響くような怒声の後で、兵士たちの足音が聞こえてきた。
目の前に立っているヴィンセント陛下の体に隠れて、私の場所からジャクリーン様の姿は見えない。だが、長い彼女の髪が振り乱される様子から察するに、おそらくは取り押さえられてもなお暴れているのだろう。
「なんで! どうしてっ! 本来は私が――私がそこにいるはずだったのに! お前のような薄汚い侍女が、なんでこの方のお隣に――」
「……やかましい。衛兵、その女を黙らせろ」
「やめて! 本来の皇妃は私なのよ!?」
苛立ちを隠そうともせずに吐き捨てた陛下の声の後で、くぐもった音が聞こえた。
口をふさがれたのか、それでもジャクリーン様はなにかを叫んでいるようだ。
「元はと言えば、貴様が彼女を捨ておいて逃げたのが始まりだろうが。……そもそも嫁にしろと押しかけた挙句、他の男と遁走したふしだらな女を妻にするつもりはない」
もごもごと不明瞭な言葉を発し続けるジャクリーン様の方を向いたまま、ヴィンセント陛下は冷たい声でそう告げる。
その様は、背後で言葉を聞いているだけの私ですら背筋が冷たくなるほどだった。
「王族として籍も抜かれ、愛した男にも愛想を尽かされたか? あまつさえ自らこそが本来の皇妃などと……気が触れているとしか思えん」
連れていけ、と低い声で彼が命じると、駆け付け兵士たちが動き始める。
脇を抱えられるようにして連れていかれたジャクリーン様は、血走った眼でなおもこちらを睨んでいた。
(――なんだか、今までのジャクリーン様とは別人みたい……)
顔立ちというか、雰囲気そのもの――あるいは化粧の仕方が違うのだろうか。
髪を結い化粧をする侍女も彼女が簡単に辞めさせてしまうため、普段のお化粧は私が担当していた。だが、恐らく今は別の人がそれを手掛けているのだろう――吊り目がちな彼女の目元はそれを強調しすぎたせいで、些かキツい印象を受けた。
「っ……は、っ――ぁ、ヴィンセント陛下……」
「無事か、オルガ……護衛の不手際だな。まさかあの女が王城まで乗り込んでくるとは」
「いえ、その……私は大丈夫なんです、けど。えぇと……」
驚きで、全身が小刻みに震えている。
こちらから声をかけたはいいものの、うまく言葉が出てこない――そんな私の状態を察してか、ヴィンセント陛下は軽く身を屈めて私と視線を合わせてくれた。
「震えているな。大丈夫か?」
「っ、は……も、申し訳ありません。驚いて、しまって」
「あのようなことがあれば無理もない。……少し待っていろ」
私を気遣ってくれているのか、彼は至極優しい口調でそう言うと宰相閣下と将軍閣下の二人を連れてきてくれた。
「皇妃様、ご無事でしたかな?」
「は、はい。私は平気です……ただ、ジャクリーン様は……」
やや焦ったような表情を浮かべていたロジェ将軍は、ざわついている会場内を見回してからうーんと唸り声を上げる。
「偽装された招待状を使って入り込んだようですな。同伴していた男を尋問したら吐いたそうで……然るべき罰を受けることになりましょう」
「これが王族であったのならば国際問題になりましょうが、彼女は既にその籍を抜かれております。シヴィライエット王国側も、この件には沈黙を貫くでしょうから……そうすると、この国の法律で裁くことになりますね」
宰相閣下が、ロジェ将軍の言葉を受け取るようにそう教えてくれた。
どちらにせよ皇帝と皇妃を害したということで、それなりに重い罪は避けられないとのことだ。
「本来ならば処刑ものだ。明日の朝一番で首を落としていい」
「そ、それはさすがに――その、驚きはしましたが……実際に傷つけられたわけではありませんし」
不穏すぎるヴィンセント陛下の言葉を聞いて、それだけはやめてほしいと懇願した。
確かに彼女がここにいることに驚いたし、罵倒されもした。だが、彼女がその命を持って償わなければならないようなことをされたわけではない。
ビクビクしながらそっと陛下の服の裾を引っ張ると、彼は片眉を上げてフンと鼻を鳴らした。
「あの女がお前を宿に放置しなければ、そもそもこのようなことにはならなかったんだぞ」
「そ、れはぁ……でも、は、働かせていただいた恩義もありますし」
叔父の斡旋とはいえ、両親を亡くした私を王城で働かせてくれたのは彼女だ。
それなりの扱いを受けていたが、仕事はあったし最低限の衣食住は保障されていた――そう言うと、彼はしばらく黙り込んでから深い深いため息を吐いた。
「……わかった。宰相、うまく取り計らえるか」
「お任せください。皇妃様の慈悲深さは、いまや民の知るところ……罪人にまでもその慈悲の心をもって接する優しさは後世まで語り継がれる美談になりましょう」
ニコニコと笑っている宰相閣下は、さっそく手を打つと言ってどこかに行ってしまった。
「しかし、陛下が折れるとは――最初玉座の前に引っ張り出された際は怯えるばかりの小娘だと思っておりましたが、皇妃様もなかなか……」
一方でロジェ将軍はニヤニヤと笑いながら、ヴィンセント陛下と私の方へ交互に一線を向けてくる。
「っ……ふ、不敬でしたよね……」
「いやいや! 我ら臣下には一切引かない陛下の貴重な一面を垣間見ることができましたので――」
「……ロジェ、もう下がっていいぞ。皇妃と私は少し休む。宰相がうまく会場を回すとは思うが、念のため会場の警備を更に手厚くしておけ」
もう一度ため息をついたヴィンセント陛下がそう告げると、ロジェ将軍はぺこりと頭を下げてから私の方に顔を向けた。
「かしこまりました、陛下。……皇妃様も、今日はもうゆっくりとお休みくださいませ」
王城全体の警備を強化すると言ってその場を辞したロジェ将軍を見送ると、ヴィンセント陛下は再び私の方を見て身を屈めてくれた。今はそういう、細やかな気遣いがありがたい。
「オルガ、お前はもう下がっていい」
「でも……その、今回の夜会は私の名前で運営されているんですよね? それなら、私がこの場からいなくなるのはまずいのでは……」
「問題ない。どちらにせよ、あれだけの騒ぎがあったんだ……後のことはこちらに任せろ」
ヴィンセント陛下はどことなく心配そうな表情を浮かべていたが、一方で私の心には焦燥感に似たものが込みあがってくる。
――失敗したのではないか。皇妃として行うべき夜会の運営を、騒ぎで台無しにしてしまった。
「っ……でも、それでは――こ、皇妃の仕事、が……あ、ぁっ……?」
胸がぎゅっと締めつけられて、目尻から涙がこぼれ落ちる――ぎょっとした表情を浮かべたヴィンセント陛下だったが、ぼろぼろと地面に吸い込まれていく涙はどうやっても止まらなかった。
「ご、ごめんなさ、っ……こんなこと、でっ――な、泣いっ……」
息を吐く度に胸が痛い。
心の奥に突き刺さるように、ジャクリーン様の言葉が脳内で反響した。
――ここは、本来彼女がいるべき場所だった。
私はそれを奪ってここに立っているのではないか。
元々定かではない足元が、ガラガラと音を立てて崩れ落ちていくような感覚を覚え、その場に座り込みそうになる。
「オルガ」
「っ、……!」
けれど、そんな私の肩を掴んで体を支えてくれたのは、あの日玉座でこちらを見下ろしていたヴィンセント陛下その人だった。
「お前は――お前だけが、この私の唯一の皇妃だ。いいな? 誰が何と言おうが、それが絶対的に揺るがぬ真実である」
まっすぐとこちらを射貫く、強い意志を感じさせる瞳――嵐が去った後の朝焼けに似た、複雑な紫色が私を見据えている。
「でも、っ……ジャクリーン様が言った通り……私は本来、このような栄誉を賜れるような人間では……」
「あのような女が言ったことを鵜呑みにし、私の言葉を疑うのか?」
「い、いえっ……そのような、ことは」
低い問いかけに、体がビクッと跳ねあがる。
だが、言葉とは裏腹に彼の表情はとても静かで、穏やかだった。
「そうだ。お前が信じるべきは私であって、あの女ではない。……部屋に連れて行ってやるから、少し休め」
会場内はまだ騒がしいが、これ以上私がここにいてもできることはない。
優しい口調でそう教えられた私は、結局ヴィンセント陛下に連れられ、自室へと戻ることとなった。
そこには既にアードリさんが控えており、私と陛下に温かいハーブティーを淹れてくれていた。
「皇妃様……お話は伺っております。その、災難でございましたね。まずはこれを飲んで、落ち着かれてください」
「あ、ありがとうございます……」
涙を流したこともあって、化粧もボロボロに崩れてしまった。
他の侍女が化粧直しを申し出てくれたが、それはヴィンセント陛下によって止められる。
「俺も彼女も、今日はもう表に出ない。万が一のために来賓にも退避を促し、後日埋め合わせをすることにした」
「それは――陛下、よろしいのですか?」
「皇妃の安全が第一だ。こと相手が、彼女のことを狙っていたのならばなおさら」
腕を組んだまま椅子に座ろうとしないヴィンセント陛下は、暗がりが広がる窓の外を睨みつけた。
その尋常ではない雰囲気に、私も思わず背筋が伸びる。
「……アードリ、お前たちはもう下がっていい。宰相から連絡があった場合は、私がなにをしていてもすぐに伝えろ。いいな、なにをしていても、だ」
「かしこまりました。それでは、これにて失礼をいたします」
ちらりとこちらを見たアードリさんだったが、ヴィンセント陛下からの命令には逆らえない。
そっと腰を折った彼女は、他の侍女たちと共にぞろぞろと部屋を出て行ってしまった。
部屋に残された私たちはしばらくの間お互いに黙り込んでいたが、その静寂を陛下の方が打ち破ってくる。
「王宮でこのようなことが起こったのは、先の内乱……王位継承権を争った時以来だ。あの時のことを思い出して、城の皆もやや気が立っている」
「先の、って……」
話にだけは聞いたことがある、この国でかつて起こった内乱。
ヴィンセント陛下が玉座につくまでには数々の争いがあり、国内では多くの血が流れたという。
(未だに、孤児院の復興ができないだけの大きな傷跡が残っている――あの時と、同じ……?)
ゾッとする私を見た陛下は剣を置き、寝台の上に体を投げ出した。
そして片手で私に手招きをすると、深い息を吐く。
「私には数人の兄弟がいたが、皆死んだ」
そっと寝台に近づいてその上に腰を下ろし、静かに彼の言葉へ耳を傾けた。
王位継承で争いが起こるということは確かに兄弟がいたということだが――考えてみれば、ヴィンセント陛下と同じ『ゲインズブール』の姓を持つ人間は、この国のどこにもいない。
「母上は……私ではなく、三つ年下の弟に帝位を与えたかったようだ。恐らく父が違ったのだろう。父上も、側妃の子に譲位をさせたがっていたな――誰も、私が皇帝になることなど望んではいなかった」
ぽつぽつと、記憶を手繰るように独り言ちるヴィンセント陛下は、目は開いていたもののここではないどこかを見つめているようだった。
普段は鋭い眼光を宿したその瞳は、どことなく寂しげだ。
「私の味方は、宰相をしていた叔父上だけだった。政治の何たるかを教えてくれた叔父上のことは好きだったし、彼となら……きっと、強く美しい国を作ることができると、思っていたんだが」
「それ、は――でも、今の宰相閣下は……」
陛下の叔父ということは、先の皇帝の弟君ということだ。
だが、先帝の兄弟は誰も生き残っていないはず。そこまで考えが至って、私の背中には冷たいものがつぅ……と流れていった。
「叔父は私が殺した。……彼は私を皇帝にさせるつもりなどなかったんだ。母が愛した弟を殺し、父が望んだ異母兄を殺し――ようやく玉座を得ようとした私を、毒殺しようとしていた」
「どっ……」
「叔父は玉座が欲しかったんだ。私を擁立していたのも父と母に対抗するため……この国のためなんかでもなかったし、ましてや私のことを愛していたわけでもなかった」
たくさんの人が、この城の中で死んだという。
当然のことながら、彼に毒を盛ったという叔父も死んだ。
信じていた人間に裏切られ、愛されたかった人々に愛されることもなく――ヴィンセント陛下は、信頼がおける数人の家臣たちと共に血塗れになりながら玉座を手に入れたのだ。
「あの女が、お前の名を呼んでこちらに近づいてきた時……死んだ弟の顔がチラついたよ。あれは私の胸を貫こうと、手にナイフを持っていたが」
あまりに壮絶な独白に、私はとうとう言葉を失った。
私は両親を失ったが、それは流行病が原因だった。叔父は恐らく私のことを金づるとしか見ていなかったとは思うものの、命が危険にさらされたことは一度もない。
(一体この方は、どれほどの犠牲を払って玉座に――……)
たった一人、怨嗟も賞賛もすべてを背負って冠を頂く。
それがどれほどに孤独で、どれほどに強い覚悟を持たねばならないことなのか、ようやく私は理解した。
「オルガ。……お前が無事でよかった――心から安堵したよ。初めてお前に会った時は、ただ利用することしか考えていなかったが」
「ヴィンセント、さま……」
「国のために身を捧げるなど、口ではどうとでも言える。化けの皮が剝がれて誰かに助けを求めた瞬間に殺してやろうと思ったが……お前は一人で耐えきった。――お前だけだ。私の周りで、私と同じような決意を背負ったのは」
大きな手が伸びてきて、私の手をぎゅっと握ってくれた。
緊張で冷たくなっていた指先を、彼の温かい手のひらが包み込む。
「私は、そのような大それたことは……」
「いいや。お前だけだよ……ゆえに私が妻にと望むのも、お前ただ一人だ」
握った手を引かれ、そのままどさりと寝台の上に倒れ込む。
柔らかいベッドの上に体を投げ出された私を、体勢を変えたヴィンセント様が押し倒すような形になっていた。
「お前は慎ましい性格をしているが、些か卑屈なのが玉に瑕だな。もう少し自信を持ってもらわねば」
「そ、れは――無理かと」
「ならば一生、それこそお前が自信を持つまで愛を囁き続けるまでだ」
繋ぎあった手が、そっと彼の胸に押し当てられる。
――驚いたのは、服越しに感じる彼の鼓動が思っていたよりも早かったことだ。
「触れるぞ。今はお前の熱を感じなければ、不安で仕方がない」
「っえ――あ、っ……!」
短く呟いたヴィンセント陛下が、おもむろに着衣を解き始める。
正装のジャケットを手荒く脱ぎ捨てた彼は、下に着ていたシャツのボタンを引きちぎらん勢いで肌をあらわにした。
「自分でも、これほどまでお前に惹かれるとは思っていなかったんだ。――ここでお前が失われる可能性があったと思うだけで、自制が効かなくなる」
「そ、そんな――陛下、ぁっ♡」
着ていた美しいドレスが、瞬く間に解けていく。
私でさえ侍女の手を借りねば着ることができなかったのに、彼はどうしてこう簡単にそれを脱がせてしまうんだろう――頭の中に思い浮かんだ疑問をかき消すように、冷たい空気が肌の上を撫でた。
「ひ、っ……♡」
「悪いな、オルガ」
フーッ……♡と獰猛な息を吐いたヴィンセント陛下は、薄い舌で軽く舌なめずりをする。
普段そんなことをしないような方が、猛獣じみた仕草を見せた瞬間に、きゅうっ……♡と下腹部が強く収斂したのがわかった。
「んぅ、っ……♡♡ひ、ぁっ♡」
れろぉ♡と首筋を舌で舐め上げられ、皮膚の薄い首筋に強く吸いつかれる。
まるで食べられてしまうんじゃないかという錯覚を覚えた私の口からは悲鳴じみた声が漏れたが、それでも陛下は動きを止めず、剥き出しになった乳房のてっぺんに吸いついてきた。
「ん、は……♡♡あ゛♡ぁ、んんっ♡♡♡」
ちゅ♡と軽く乳首に吸いつかれただけで、体は簡単に快感を覚えてしまう。
皮膚の上を舐めるように見つめられただけでお腹の奥が蕩け、内腿にはじっとりと汗をかく――本能的な、あるいは私の中にある雌の部分が、彼の視線でどうしようもないほどに暴かれていくのがわかった。
「柔らかいな。……牙を立てたら、すぐ食い破ってしまいそうだ」
「き、牙が……あるんです、か……?」
「さぁな。――確かめてみるか?」
挑戦的な笑みを浮かべたヴィンセント陛下が、ぐわっと大きく口を開ける。
珍しく、彼が戯れている――牙などあるはずもない彼の口元にそっと手を這わせながら、私はそっと首を横に振った。
「なにもありません……なにも、恐ろしいことなんて」
「わからないぞ? 人の皮をかぶっただけの、悪魔かもしれない」
ぬ゛ろ……♡♡と舌で乳首を舐めながら、彼はそんなことを言う。
――正直、少し前の自分だったのならその言葉を信じてしまっていたかもしれない。それほどにヴィンセント陛下は恐ろしく強大な、まさしくこの大帝国を支配するにふさわしいだけの人間なのだ。
(でも、今は……怖くなんて、ない)
触れる体温は人のそれだし、私を失うかもしれないと焦るその姿は悪魔などという恐ろしいものからは遠くかけ離れている。
「ん、ぅ♡♡ふぁ、ッ♡♡あ゛♡」
「残念だが――私が悪魔だろうが人間だろうが、お前はもう逃げられない。観念して、この国で皇妃として生きていくことを受け入れろ」
刺激を受けて尖り始めた乳首を舌で捏ねまわし、もう片方の胸にも手を伸ばしながら、ヴィンセント陛下は低く囁いた。
……いずれ、彼に飽きられてしまう時が来るかも。
この期に及んで頭の中を掠めていく考えに、思わず唇を噛んだ。
「――そこまで嫌か」
「ッひ♡ぁ――ち、ちがいます、っ……♡こ、怖くて――いつか、あ、あなたに飽きられてしまう、のが」
「飽きる? 一度でも私が、そんなことをお前に言ったか」
ムッと眉を寄せたヴィンセント陛下だったが、私は知っている。
彼は何度も、自分の元にやってきた他国の姫君を自分の臣下に下げ渡しているらしいのだ。
「だって……その、今までにも飽きた方を下賜した、だとか……」
「国のことを考えられない人間に、私の妻は務まらない。だから婚姻は行わなかった――それでも国に帰る場所がないと言われた時は家臣と娶せたが、それだけだ。飽きたわけじゃない」
そもそも人間に対して飽きるとはなんだ、と眉を顰めるヴィンセント陛下は、一度息を吐くとピンッ♡と勃ち上がってきた乳首を指ではじいた。
「ひ、っ♡」
「信じられないか? 私のことが」
まっすぐに目を見つめられてそんなことを言われたら、無理です信じられませんと答えられる人間の方が少ないだろう。
「っ……い、いえ。でも――お、お願いがあるんです」
「願い? なんだ、言ってみろ」
早く触れたい、と表情に出ているが、それでもヴィンセント陛下は辛抱強く私の言葉を待ってくれた。
どういう言葉で伝えるべきかを少し悩んでから、私は胸の奥にずっと渦巻いていた気持ちを声に乗せた。
「どうか――お願いです。陛下が少しでも、私のことを疎ましいと思ったのなら……その時はどうか、あなたの手で殺してください」
「な……」
ずっと、彼に捨てられた時のことを考えていた。
孤児院で働かせてもらおうだとか、子どもたちになにかを教えて生きていきたいだとか、そんなことを考えるたびに頭によぎっていたのは、そんな考えだ。
彼に不要だと断ぜられるのならば――その上でヴィンセント陛下が、他の誰かと一緒になるところを見なければならないのなら、いっそのこと殺してほしい。
慎重に言葉を選びながらそう伝えると、文字通り彼は絶句し、それからじっと私の顔を見つめた。
「……いいだろう。考えておいてやる――だが、逆もまた然りだ」
「逆……?」
「そうだ。お前が、私以外の男を愛すことがあれば……その時私は、お前の目の前で胸を裂く。他人がお前に触れるところを見せられるくらいなら、お前の心に傷を残して惨たらしく死んでやろう」
――それは、血を滲ませるような低い低い声だった。
一瞬ゾッとしたが、今の私はその言葉に乗せられた決意を感じ取ってしまう。
「いいな? 私たちはどのみち、もうお互いがいなければ生きてなどいけない」
これまでのどの言葉よりも甘く囁かれ、ただ頷くことしかできなかった。
「誓え。決して他の人間に心が傾くことなどないよう。私の他に誰も、その瞳を奪うことなどできないように」
「っ――最初、から……そのつもりです。私のような人間を、こ、このように取り立てていただいただけでも――ン、ぁ♡♡」
皮膚の薄い、鎖骨と乳肉のちょうど間に吸いつかれて甘い声が上がる。
……たった一人、この国で清も濁も併せ呑み、玉座に坐しますのが彼であるのなら。
私の役目はきっと、その孤独な背をそっと支えること――許されるのならば、そうありたいと思った。
「ッぅ♡ち、誓います、っ……♡♡♡私は、っ♡オルガはぁっ……♡♡ヴィンセント陛下以外の人を愛することは、ぁあっ♡♡」
ちゅ♡ちゅっ♡♡と鎖骨から胸元にキスを落とされて、体が震える。
まるで言葉を刻み込むようなくちづけと、小さく皮膚を吸われる痛みが頭の奥をめちゃくちゃに揺さぶっているみたいだ。
「決して違えるなよ、その言葉――私は、嘘をつく人間に厳しい」
そう囁いた彼の表情は、笑っているのか泣いているのかよくわからなかった。
いや、きっと私の見間違いだったのだろう。彼のように強い人が、そんな表情をするはずない。
そうわかっているはずなのに、どうしようもなくその体を抱きしめたくて仕方がなくなってしまった。
「ッ……ヴィンセント、さま……♡」
感情に突き動かされるがまま腕を伸ばし、そっと体に抱き着いた。
大きな背中に腕を回すと、ほんの少しだけ彼の背負っているものを肩代わりできているような、そんな錯覚を覚えてしまう。
「ッ――オルガ、っ……」
「ッひ、んんっ……♡んむ、ぅっ……♡♡」
低く名前を呼ばれたかと思うと、そのまま唇を奪われた。
熱い舌が口蓋をなぞり、歯列を撫でてからぬちゅ♡と音を立てて絡み合う。
「ンん、ちゅ♡♡ん、っ♡ッは……♡♡ぁ、むっ♡♡んん、ちゅ♡」
軽く下唇を食み、お互いの熱を分け合うようなキスを繰り返した。
あれほど恐ろしいと思っていた目の前の男の人が、こんなにも愛しい――少し前の自分だったなら、きっとありえないと言って恐怖に震えていただろう。
(でも――怖いことなんて、一度もなかった)
言葉が鋭いことはあっても、彼はいつだって私のことを気遣ってくれていた。
触れる手は優しく、向ける視線はどことなく心配そうで、いつだって私が傷つかないように気持ちを砕いてくれていたのだ。
「んん、っ……♡♡っは、ぅ♡」
「触れるぞ。もっと――もっと深くまで、お前に触れていたい」
熱っぽい声に頷くと、腰のあたりに手のひらが触れる。
それまでは意識がいかなかったが、内腿のあたりに固いものが擦りつけられているのにこの時気付いた――ちゃんと、ヴィンセント様もこのキスで気持ちよくなってくれているんだ。
そう思うと途端にお腹のあたりが熱くなって、足の間がじゅわっ♡と潤むのがわかった。
(ヴィンセント様のおちんぽ♡も、おっきくなってる……♡♡)
服越しにではあるが、ずりずり♡と股間を内腿に擦りつけられるとついつい腰が跳ねてしまう。
するとどうやら彼の方も私の様子に気付いたらしく、耳元にそっと唇が寄せられた。
「直接触れてほしいか?」
「っ……♡は、はい……♡♡♡」
触れてほしい――それに、直接彼に触れたかった。
彼が私の深い場所を暴くのと同じように、私もまた彼によって暴かれたい。
ゆるく足を開くと、彼は緩慢な仕草でベルトを外し始めた。先ほどシャツを脱いだ時とは、様子が全く異なっている。
「どこに、どんな風に触れてほしい? ……私はお前にちゃんと教えたはずだ。口に出して、どこに触れてほしいかを継げるようにと」
「それ、は……え、と――」
確かにそう躾けられはしたものの、いざ本当に口に出すのはなかなかに恥ずかしい。
とはいえ、言わねば与えてもらえない――ごくりと咥内に溜まった唾を飲みこんで、私は小さく口を開いた。
「ッく……♡♡ちょ、直接、っ♡ヴィンセント陛下に、さ、触ってほし、です……♡♡ここ♡たくさんキスしていただいて、っ♡♡トロトロになっちゃったおまんこ……♡♡こ、皇帝陛下専用♡トロハメ用生おまんこ、ですぅ……♡♡♡」
上ずった声で、なんとかできるだけ淫らになるような言葉を選ぶ。
だが、片方の眉だけをクイッと吊り上げた彼は、まだまだその言葉には満足していないようだった。
「――それで?」
「っ……へ、陛下、の♡♡血管バキバキガン反りおちんぽに♡♡は、ハメハメしていただきたい、です♡♡♡あつあつこってりザーメンも♡全部全部お腹にびゅ~~♡ってしていただきたくて、っ♡♡♡へ、陛下に孕ませていただきたくて、仕方がないんです……♡♡♡」
恥ずかしくて、けれどどうしようもなく気持ちよくて、頭が沸騰してしまいそうだ。
かすかに残っていた理性がドロドロに溶けていくのを感じながら、私は薄いショーツの上をゆっくりとなぞった。
しとどに濡れたその場所は、もう下着の意味などなさない有様だ。
指先で下着を引き下ろすと、淫蜜が絡んだ布地からぬちゅ……♡といやらしい音が聞こえてくる。
「お願い、します……♡♡陛下のおちんぽで♡ここ――オルガのおまんこ、を♡♡♡いっぱいにしてください♡」
蕩けた淫裂を、見せびらかすみたいに指で広げてみる。
すると、下履きの中から怒張した肉杭を取り出したヴィンセント陛下が、その先端を割れ目に押し当ててきた。
「ッひ……♡♡」
熱くて、火傷してしまいそう。
先走りを滲ませる先端は赤黒くなっていて、なんだかとても苦しそうだ。
視線を上げるとにわかに眉を寄せた彼と視線が絡む。どちらともなく唇を寄せ合うと、疼く蜜口にもようやく望んでいた充足感が訪れた。
「ッむ、ぅっ……♡♡んっ♡」
にゅぷっ……♡♡ぐぷっ♡ぢゅぷぷっ♡♡♡ぬ゛ぢゅぬ゛ぢゅっ♡ぐぽ♡♡♡
極太の肉楔を奥まで突き立てられ、その衝撃で腰がぐぐっ……♡と大きく反りかえった。
「ん、ぅっ……♡♡」
キスされながらおまんこをこじ開けられて、全身がぶわっと総毛立つ。
そのまま最奥をこちゅっ♡と突かれただけで、下腹部から多幸感が一気に広がっていった。
(あ、これっ――ダメ、かも……♡♡♡)
ちゅ♡ちゅ♡♡と小さく音を立てながらお互いの唇に触れあい、同時に腰を揺さぶって悦いところに彼を誘う。
それだけ――たったそれだけなのに、頭の奥が痺れて仕方がない。気持ちいいと幸せが一緒に押し寄せてきて、他のことはどうでもよくなってしまいそうだった。
「ッんぁ♡♡へぇか、っ♡ぁ゛♡♡あ、ぁっ♡♡奥すご、ぉ♡お゛ッ……♡♡♡」
「っ――あまり強く締め付けるな、っ……まだ、果てるつもりはないぞ……♡」
ぐぽッ♡と重たい音が聞こえたかと思うと、ヴィンセント陛下は大きく腰をグラインドさせ、雁首で予期せぬところを攻め上げた。
「ぁぐ、ぅ♡♡ん゛ンッ……♡♡や、そこ、っ♡♡お゛ッ♡♡♡」
深い場所をぐぽっ♡と刺激されて、目の前で白んだ星が散る。
だが、陛下はそれだけで動きを止めたりはしなかった。
ぬ゛~~……♡とゆっくりと腰を引き、クリ裏近くの浅い場所をぐちぐち♡♡と軽く擦り上げてくる。
血管の張り出した肉幹で敏感な場所を擦られると、なお強い快感が頭をもたげてきた。
「ぁ、あっ……♡♡」
「ちょうどクリトリスの裏側だ――こうして、一緒に触れたら……」
「ッひ♡ぁ゛♡や、ぁあっ♡♡♡だめ、っ♡お゛ッ♡♡♡今クリさわったら、ぁ゛ッ♡♡」
ぶぢゅ♡と指先で小さな淫芽を押しつぶされたのはその時だ。
ねっとりと腰を動かしてクリ裏を刺激しながら、指先でくに♡くに♡♡とクリトリスそのものを捏ねまわす。
「ンひ、っ♡♡ひ、ぅっ♡あ♡ぁ゛、ッ……♡♡♡い、一緒にクリいじらないでぇ♡お゛ッ♡♡♡お゛ほ、ぉっ♡」
ぬ゛ぢ♡ぬ゛ぢ♡♡としつこくクリの上下を刺激されて、たちまち全身が熱くなった。
体がどんどん強張って、絶頂が近くなる――かと思うと、ヴィンセント陛下は動きを止め、クリへの刺激だけを続けてきた。
「ぁ゛、あっ……♡♡や♡止めない、でぇ……♡♡」
「なんだ、動いてほしかったのか?」
意地悪な問いかけに、こくこくと首を縦に振る。
動いてほしい――体にわだかまった熱は、挿入された時点でもう限界に近い。
カクカク♡と情けなく腰を前後に動かしながら、早く新しい刺激が欲しいとおねだりを繰り返した。
「おねが、ぃ……♡♡触って♡触ってくださ、ぃっ……♡♡おまんこ苦しい、っ♡もぉイきたい、ですっ♡♡♡」
へこ♡へこ♡♡と腰を揺らめかせて律動をねだっても、なかなか彼は動いてくれない。
それどころかニッと唇を吊り上げると、かすかに腰を動かして奥まった場所を刺激するだけだ。
「ひ、ぅう……♡♡や、ぁっ♡♡」
「普段は自分のことなど何も望まないお前が、褥でだけは貪欲に快感を求めている様が愛しい。――もう少しその痴態を見せてくれてもいいだろう?」
滴るように甘く囁いたヴィンセント陛下が、再び緩やかに腰を引く。
抜け落ちるかどうかのところまでおちんぽを引き抜いたかと思うと、再び緩慢な動きでおちんぽを突き立ててくる――ゆっくりと、焦らすような動きを繰り返されて、お預けを食らった蜜窟が名残惜しげに収斂を繰り返した。
「っは、ぁ♡♡ぁ゛ッ……♡♡」
ぞりぞりと淫襞を刺激されるのは、普段でも十分に気持ちがいい。
けれどこの状況で、じんわりと熱と快感を与えられるのは拷問に等しかった。
(辛い♡辛い♡♡おちんぽお預け辛すぎるぅっ……♡♡はやく奥の方♡思いっきり突いてもらいたいのに、っ……♡♡♡イかされたい♡♡♡ヴィンセント様の皇帝おちんぽで、っ♡♡種付けアクメしたいよぉっ……♡♡)
焦らしに焦らされて、次第に目には生理的な涙さえ浮かんできた。
呼吸はどんどん荒くなっていって、きゅう、とお腹のあたりが切なく疼く。
「おねが、ぃ……♡♡ヴィンセント、さま♡も、我慢できない、っ……♡♡♡」
いじわるしないで、と舌ったらずになりながら懇願すると、深く複雑な色合いをした目が大きく見開かれた。
「ッ――本当にお前は、私を煽るのが上手い、ッ……♡」
「ッお゛♡♡」
どぢゅっ♡♡♡と力強い突き上げが襲い掛かってきたのは、その時だった。
膣奥を思い切り突き上げられて、訳も分からないまま全身が強張る――次の瞬間には、びくびくっ♡♡と震えが起こり愉悦の波が全身を飲み込んでいく。
「ッぅ、~~~♡♡♡」
「く、っ……オルガ、っ♡オルガ……!」
切ない声で名前を呼ばれ、ばぢゅっ♡♡ばぢゅっ♡♡と深いところを掘削される。
訳も分からないままイかされた私は、襲い掛かってくる快感を逃すこともできず、ただ波打つシーツを蹴るばかりだった。
「ッひ、ぁっ♡♡ぁ、あんっ♡」
ぬ゛こっ♡ぬ゛こっ♡♡♡ぐぷぷ♡♡ぐぽ、っ♡♡ぬ゛りゅ♡ずちゅっ♡♡♡
クリ裏から深いところへと切っ先が沈められて、更に強く淫核を押しつぶされる。
先ほどよりも格段に重たくなった快感が身を灼き、一瞬呼吸が止まる――それでもなお、力強く腰が打ち付けられた。
「私のものだ、っ……オルガ、っ♡お前だけは唯一、この私の――」
唸るような声と共に、ごぢゅっ♡♡と奥を突かれた。
強すぎる快感に背中が反ったその瞬間、お腹の中でぶぢゅぅっ……♡♡♡と熱が爆ぜる。
「っう、ぁあ~~~……♡♡♡」
悲鳴のような、あるいは歓喜の声にも似た声が口からこぼれて、ぎゅううぅっ……♡と爪先が丸まった。
奥へ奥へと流し込まれる欲望の奔流に、目の奥がチカチカする。気持ちよくて幸せで、心も体もトロトロに溶けてしまいそうだ。
「っん、ぁ……♡♡へぇか、っ♡♡陛下、ぁ……♡」
上ずった声で彼のことを呼ぶと、きつく体が抱きしめられた。
――離れられない。離れたくない。
初めて私のことを必要としてくれた彼の隣で、生きていきたい。
これまでもこれからも、たくさんのものを背負い続けるであろう彼の荷を少しでも一緒に背負ってあげたい――深く息を吐きながら、私は彼と生きる未来にそっと思いを馳せたのだった。
● ● ●
「ヴィンセント陛下……陛下があまり根を詰めすぎては、他の方々がお休みになることができません。この辺りで一度お休みくださいませ」
――そうして皇妃として帝国で暮らし始めて、一年と少し。
最近は執務室への自由な出入りが許されるようになり、宰相閣下にお願いをされてその場所へ顔を出すことが増えた。
その理由は、大半が『皇帝陛下の説得』だ。
「……おい、どうしてオルガを呼んだ」
「陛下がもうずいぶんとお休みになっておられないからですよ。皇妃様のおっしゃる通り、あなた様が休まねば下々が休めません」
多忙を極める皇帝陛下としての職務や公務を支えるのが皇妃の役目――ならば、働きすぎな彼を諫め、少し休んでもらうようにおねがいをするのも私の役割ということらしい。
「だが、まだ法案が……」
「それにつきましてはこちらで片付けておきますから。ね? ほらほら、皇妃様もこうおっしゃっていることですし――一度お休みください」
宰相閣下の声にムッとした表情を浮かべたヴィンセント陛下だったが、別に怒っているわけではない……というのは、この一年ちょっとの間でなんとなく感じ取れるようになっていた。
他の人より少しだけわかりにくいが、理由を説明したうえでお願いすれば、大概の場合は話にも納得してくれる。
頑ななだけではなく、そうした柔軟性も持っている人なのだ。
「……わかった。では少し休む――が、寝室には戻らん。そこのソファで、多少仮眠を取る」
はぁ、と息を吐いた陛下の様子を見て、宰相閣下と目配せをしあう。
これで少しは、彼のそばで働いている執務官たちも休みが取れるだろう。
「では、我らもこれで失礼いたします。……皇妃様、陛下のことをお願いいたしますね」
「は、はい――では陛下、こちらへ。……お茶をお淹れしましょうか?」
ここ数日の激務が祟って、彼の白い肌にはうっすらとクマが浮き出ていた。
少しでも心が休まるよう、アードリさんに教えてもらったハーブティーでも淹れて差し上げようか――そう思っていると、おもむろに手をぎゅっと握られる。
「必要ない。今の私に必要なのはお前だ――たっぷりと癒してもらおうか」
「ちょ、っとそれは……こ、このようなところでは、ぁっ……」
握った手を引っ張られ、そのまま執務机に押し倒されそうになる。
――これはいけない。前に一度ここで肌を重ねたことを思い出して、顔がかぁっと赤くなった。
「だ、ダメです陛下、ぁ……! 二回目はさすがに、っ……」
「一度も二度も変わらん。――体を休めることができないことなどより、愛する妻に触れられないことほど辛いことはないぞ」
すっと目を細め、少しだけ心細そうな表情を浮かべる陛下にぐっと言葉が詰まる。
……多分、彼はわかっていてやっているんだろう。
愛する妻と呼ばれてつい抵抗する手から力を抜いたとたん、背中が机に押し付けられた。
「っう、ぁ、あの――せ、せめて寝室で……」
「そうなったら朝まで放してやれんな」
「でも執務室はダメですってば……! もう、他の方がいらっしゃるんですからね……!」
この後執務官の人たちが戻ってきたらどうするつもりだ、と抗議すると、彼は柄にもなくきゅっと唇を突き出し、それから少し考えるように目を瞬かせた。
「そうだな――それならば」
ニヤ、と意地悪く彼が笑ったかと思うと、そのまま体を抱え上げられる――驚きにぎょっと目を見開くと、ヴィンセント陛下はそのまま私の体を抱え、くるりとその場で回ってみせた。
「今日の執務はもう終わりだ。やはり部屋に戻るぞ」
そう言って唇を押し付けられると、もう抗議の言葉なんて出てくるはずもなかった。