24/08/03 新しい短編を追加しました。ファンタジー+1

諜報組織の女スパイが感情グチャグチャイケメンCEOに囚われてキメセク調教×連続絶頂×絶対屈服SEXで心も体も堕とされちゃうお話

警備会社を装った民間軍事会社に潜入した女スパイが、激ヤバCEOに囚われて快楽堕ちさせられ、彼のお気に入りとして一生大切にされるお話です

 国内随一の規模を誇る警備会社である藤我インターナショナルへの潜入および、CEOである藤我とうが鳴海なるみ・エヴァンジェリンの素性を調査せよ。
 それが、私が所属している諜報組織から下された命令だった。
 藤我インターナショナル――国際的な警備会社として名を馳せているこの会社は、前身がエヴァンジェリン・セキュアソリューソンズという警備会社であり、現CEOの祖父が運営を行っていた。
 要人警護からイベントの会場警備まで幅広く、安心安全を皆様に――と、いう立派な企業理念は建前であり、その実は傭兵稼業も行う民間軍事会社だというのがもっぱらの噂である。

(そもそも、CEOにしたって素性が謎すぎる……父や兄がいながら、エヴァンジェリン・セキュアソリューソンズの全権を祖父から移譲され、社名を変更――外部に公開されてる資料だって明らかにキナ臭いし、いくつかの国の政府高官とのパイプも有して……って、真っ黒じゃない……)

 五年ほど前に先代である祖父が亡くなり、この鳴海という男がCEOの座に就いたのだが、そこから会社の規模はさらに大きくなった。
 聞く話ではある国の裏社会に武器を融通し、その陰で警察とも手を組んで暴利をむさぼっているだとか。
 それでいて経営については堅実そのもの――というより、この会社について詳しく調査を行っていた組織は今までほとんどすべてが壊滅の憂き目にあっている。
 とはいえ、そんな仕事をしていれば当然のように敵は増える。
 どれだけ危うい目に遭ってもこの会社をなんとかしたいという人間は消えないもので、そういう人がいるから私のような人間にも仕事が回ってくるのだ。

(上もこの仕事、受けたくなかったんだろうな……)

 内心でため息をつきながら、私は表情を変えることなくパソコンのキーボードを叩いていた。
 ここは藤我インターナショナルの本社――キナ臭い仕事をしている割に本社は東京のオフィス街に普通に存在しており、人の出入りもそれなりにある。
 組織が用意した学歴と経歴をもってこの本社に中途入社した私は、総務としてごくごく普通に来客対応などの仕事を行っていた。

(入社して二カ月……まだ決定的な証拠や資料も揃ってないし――一緒に来た西室さんからの定時連絡も滞りがちだしなぁ……)

 なんでもないような顔をして仕事をしてはいるが、あくまで私の仕事はこの会社の裏の顔を暴くことだ。
 ハッキングに長けた上司と共にこの会社に潜入したは良いものの、入社二カ月では触れられる仕事も少ない。ここは焦らず、時間をかけて確実に情報を集めるしかなかった。

(これで失敗したら、組織にいられないな……まぁ、私一人いなくなったところで――)

 民間軍事会社の悪行を白日の下に晒す、というと聞こえはいいが、私が所属している組織もそこまで崇高なものではない。
 お金をもらってわざと嘘の噂を流すこともあれば、諜報活動でたくさんの死者が出ても素知らぬ顔でそれを隠蔽することもある――特に私のような下っ端は、死んだところで物の数にも入らないのだ。

「あ、ちょっといい?」
「……はい」

 任された仕事を黙々とこなしていると、総務課長から声をかけられた。
 人の好さそうな中年男性だが、体つきはしっかりとしている――どうしたのかと視線を向けると、課長はクッとドアの方を指で示した。

「今、お客様がこられてね。悪いがお茶を運んでもらえないか? 第二会議室にいらっしゃるから」
「かしこまりました。すぐに向かいます」

 悪いね、と笑う課長に頭を下げ、すぐにお茶汲みの用意をする。
 国際的に手広くやっている会社のわりに、こういうところは妙に日本っぽいんだな、なんて思いながら、フロアの端にある給湯室へと向かった。

(ていうか、本当に普通の会社って感じ……警備会社だから、ちょいちょい体格いい人は見かけるけど……)

 もしかして、噂になっている軍事部門は他のところに拠点を構えているのだろうか。
 だとしたら潜入先を間違っているとしか思えないが、上からここに向かえと言われた命令を下っ端の私が突っぱねるわけにもいかない。
 両親がそうだったように、十代の終わりに組織に入って八年目――一応中堅と呼ばれる立場で、危険な場も何度か潜り抜けてはきたものの、「周りに溶け込みやすい」という特性以外にこれといった能力もない私が組織で重用されることはない。
 私の命の価値など、吹けば飛ぶ埃のように軽い。
 熱いお茶を淹れながら、そっと自分の境遇を思い出して溜息が出た。

「っと……しっかりしなくちゃ……」

 間違っても客の前で鬱々とした表情を見せないよう、お腹のあたりにぐっと力を籠める。
 淹れたてのお茶を持って指定された第二会議室に向かい、ドアをコンコン、と軽く叩いた。

「お茶をお持ちいたしました」
「どうぞ、中に入って」

 くぐもったような声は、若い男性のものだった。
 特になにを疑うこともなく、会議室の扉を開けて中へと足を踏み入れる。

「失礼いたします……って、あれ……?」

 ローヒールパンプスの踵が、コツッと小さく鳴り響く。
 ――誰もいないのだ。会議室の中には、客の姿はどこにもない。それどころか、先ほど入室の許可を出したはずの人の影もなかった。

(……まず、い)

 しまった、と息を飲んだ時にはすべてが遅かった。
 背後に感じる人の気配に振り向くと、そこには背の高い――細身の、男が立っていて。

「っ……!」
「気ィ抜きすぎだよ。潜入捜査してるくせして何の備えもなくのこのこ来ちゃうなんて、ほーんと雑ッ魚いなぁ……♡」

 軽やかな声と共に、バチッ! という鋭い音、そして体を駆け抜ける強い痛みが同時に襲い掛かってくる。

(スタン、ガン……?)

 くそ、と呪詛を吐き捨てるよりも早く、視界が暗転し――どさりと重たいものが崩れ落ちる音が、どこか遠いところで鳴り響いた。

● ● ●

(――お父さんとお母さんって、今どこにいるんだろう)

 ふと、そんなことが頭をよぎった。
 両親なんて、十五歳になってからは一度も顔を合わせたことがない。
 二人とも組織の構成員だったので、生きているのか死んでいるのかすらも定かではなかった。
 そもそも親らしい愛情を向けてもらった記憶もない――そんな両親と同じように諜報組織で働く道を選んだのは、それしか生きていく道が思い当たらなかったからだ。

「……そろそろ起きた? おーい。寝たふりしても無駄だよ? ていうかさ、眼球の動きと脈拍くらい制御しておかなくちゃダメじゃない?」

 ぼんやりとした思考の中に、男の声が降り注ぐ。
 軽やかで聞きやすい、それでいてどことなく冷たい声を浴びせられ、私はズキズキと痛む目を開いた。

「っ、ぁ……」
「ほら、起きてた。ダメだよ、スタンガンくらい想定して動いてなくちゃ……つーかもう全部ダメ。ダメダメのダメ! もし君が俺のところの社員だったら一発クビだねぇ」

 パッと笑顔を浮かべて話している男――鈍い光を放つ金髪と底が知れない黒い瞳のその男の名は、藤我・鳴海・エヴァンジェリン。藤我インターナショナルCEOであり、私がその正体を追いかけてきた張本人だった。

「っう……お前、は――とう、が」

 気を失っていたからか、うまく舌が動かせない。
 だが、私の言葉を聞いた彼は口元に笑みを浮かべ、すっとこちらに近づいてきた。

「そうだよ。君と君の上司が追いかけてた、藤我・鳴海・エヴァンジェリンは俺――あ、名前長いからナルミでいいよ」

 鳴海はヘラヘラと笑っていたが、その目元は一つも笑ってなどいなかった。
 むしろ、私が妙な動きをしないかを隙なく監視している。

(下手な動きはできない、けど――スーツの中に道具を仕込んでる。この男が油断したらすぐに――って)
「……ぇ?」

 ――と、そこで私は、自分が今どのような格好をしているのかをようやく理解した。
 先ほどの会議室とは違う、薄暗い部屋の中。そこで私は、天井から伸びた鎖で両手首を縛り上げられていた。
 更に足は大きく開かれ、座っていた椅子のひじ掛けに固定されていた。縄で縛られた上に足首には重りをつけられ、簡単には逃げられないようになっている。
 だが、問題はそこじゃない。
 裸なのだ。着ていたスーツはすべて剥ぎ取られ、下着やストッキングも全部脱がされている。

「なっ……この、っ!」
「あ、ビックリした? でもさ、なに隠し持ってるかわかんないんだし、とりあえず服は脱がせるよね――実際君、スーツの中にあれこれ仕込んでたでしょ。ナイフとか薬塗りこんだ針とか……危ないから全部捨てちゃったよ」

 口元だけで笑う鳴海は、そう言って懐から小さな注射器を取り出した。
 中身はわかりやすく毒々しい色の薬液で満たされており、思わずぐっと奥歯を噛み締める。

「拷問なんてするだけ無駄よ。私は何も話さない……たとえ死んだって、お前に情報なんかくれてやるものか」

 こんな組織で働いているのだから、対拷問の訓練だって受けている。
 電流を流されても、ナイフで切りつけられても、たとえ死んだって組織のことは話すなという教育を受けてきたのだ。ここで恐怖に屈するほど柔ではない。
 キッと鳴海のことを睨みつけると、彼はクスクスと笑って注射器から空気を押し出した。
 ぴゅ、と小さく飛び散った薬液が、ぽたぽたと私の太腿を汚す。

「いいね、そういうの。でも――拷問って、痛いだけじゃなくない?」
「なにを……ッく、ぁ゛……!」

 ためらいなく肌の上に注射針を当てた鳴海は、「この辺りかな」とのんきなことを言いながら容赦なく針を突き立ててきた。
 皮膚に穴が開く程度ならいくらでも耐えられる――そう思って歯を食いしばっていると、ずず、と薬液が注入されていく。

「ん、くぅっ……」
「高濃度の媚薬を直接血管に注入したから、下手したら心臓止まるかもね。ま、せいぜい死なないように頑張って♡」
「は、ぇっ……び、媚薬……?」

 側頭部がグッと痛んだかと思うと、心臓が急激に脈打ち始める。
 視界はぐにゃりと傾き、次第に下腹部が熱を宿し始める。

「そ。ほとんど原液そのまんまの、致死量ギリギリラインかな」

 海外のモデルのように美しい顔立ちをした鳴海は、そう言うとすっと私の目の前に右手を突き出し、ヒラヒラと手を振り始めた。

「運がよかったら生きていられるし、運が悪ければ死ぬ。……でもさ、そこに至るまでは多分死ぬほど気持ちいいから、せいぜい楽しんでよ」
「なにを――ん゛、ゥあぁっ♡♡」

 彼のその長い指が、大きく開かれた足の中心にぢゅぷんっ♡♡と突き立てられたのはその時だった。

「ッひ、ぃ゛ッ♡♡ん゛ァ♡♡あ♡ぁああっ♡♡♡」

 にゅぷっ♡♡ぬぽ♡ぬぽ♡♡ぐぢゅぐぢゅぐぢゅっ♡♡♡ぢゅぽ♡ぢゅっぷぅ♡♡♡
 指先を二本、まるで見せつけるように広げられたおまんこに突き立てられる。
 いきなり与えられた刺激に頭の中は戸惑っているのに、ほぼ原液の媚薬を注入された体はびくんっ♡びくんっ♡♡と震えながら大げさなまでに反応してしまっていた。

「い、いや、っ♡放せ♡ぁあっ♡♡♡や、やめ――抜いて、ぇえっ♡♡♡」

 心の底から嫌悪感を抱いているというのに、異物を突き立てられた蜜壺はいじらしく収斂を繰り返して指先を締め付けている。
 更に巧みな手つきで責め立てられるおまんこからは、おびただしいほどの淫汁が溢れ出して椅子をしとどに濡らしていた。

「ぃ、っ……♡♡や♡やだ、っ♡♡ぁ゛♡あァ、あっ……♡♡♡」
「あっは♡すっごいぐっちょぐちょ♡♡マン汁漏らしながら抜いてぇはナシでしょ。……スパイの癖に指先突っ込んだだけでアヘアヘしちゃって可愛いねぇ♡♡」

 妖艶に微笑んだ鳴海は、人差し指と中指でぬぱぁ♡と蜜口を広げては閉じてを繰り返す。
 流石に処女ではないけれど、こんな風に弄ばれるような触れられ方はしたことがない。
 腰がビクッ♡ビクッ♡♡と震えるのを止められない私は、せめて声だけは聞かれたくないとキツく唇を噛んだ。

「まんこせっま♡女スパイなんてあっちこっち食い散らかしてると思ってたんだけど、ナカの色も綺麗だよ♡……もう一回ここに、さっきにお注射打ってあげようか?」
「な、っ……」
「あっはは! 嘘うそ♡だってこれ以上注射したらマジで心臓止まるよ? ギリギリのスリルを楽しまなくちゃ。ね?」

 ぬ゛ぷんっ♡とさらに奥まで指を突き立てられて、頭の中が真っ白になった。
 ――頭がガンガン痛むのに、それを塗りつぶすくらいの快感が湧き上がる。

「ほ、ぉ゛ッ……♡♡ゃ゛、ぁあっ♡♡ぁ゛♡やめ、っ♡やみ、ぇえっ……♡♡」

 気が付いた時には、ぶしゃっ♡と音を立てて潮を噴いていた。
 両手両足を拘束され、足を閉じることもできない体勢の私は抵抗することもできず、舌を突き出しながら無様に果てることしかできない。

「ッひ、ぃっ……♡♡かは、っ♡♡」
「うーわ雑ッ魚♡指入れただけで潮吹きするくらいまんこ弱いの? 普通この手の訓練ってちゃんとしてると思うんだけど……君んとこの組織って人材育成ちゃんとやってる? ダメだよ、こういうのって人件費に一番コストかけないとさ――」

 鳴海はなにかペラペラと喋っているが、私は突然訪れた絶頂の余韻に言葉を発することができない。
 それどころか息をするのもやっとだ。隙を見て逃げ出そうともしたが、全身が弛緩して縄をすり抜けることもできない。

(なん、で――多少の薬物への、耐性はあるはず……)

 まさか、鳴海が使っていたのはブラックマーケットにすらまだ流通していない媚薬だとでもいうのか。
 まともに思考ができないままぐったりと椅子に体を預けるしかない私の目の前で、鳴海はゴソゴソとなにかを取り出した。

「仕方がないから、俺が訓練つけてあげよっか。……うまく耐えて生き延びることができたら、このまま君を逃がしてあげる。手土産にウチの軍事部門のデータ、古いやつでよければ持たせてあげるし――あっ、君と一緒にウチの会社にやってきたハッカーの命も取らないでいてあげるよ」
「……ハ、ッカー」

 震えた声が、しゃくりあげることしかできない喉からこぼれ落ちた。
 そうだ――私が捕まったということは、一緒にこの会社に潜入してきた上司も既に捕らえられているかもしれない。
 万が一ここで私が死んだら、彼の命も危ない。替えがきく一般構成員の私と違い、上司は組織から有望視されている凄腕のハッカーだ。

(ここで……彼を、死なせるわけには……)

 軍事部門のデータなんて、どうせ適当なものに決まっている。
 だが、藤我インターナショナルが実際他国の政府や軍隊との繋がりがあるという証拠を手に入れられるのなら。

「っ……わ、わかった。わかった、から――な、なにをすればいい、の」
「お、話が早くて助かるよ。……じゃあ、そうだな。さっきみたいに無様なオホ声上げてイくの禁止。三十分我慢したら解放してあげるよ」

 死んでもイってもダメだからね、と付け加えた鳴海は、笑いながら小さなオモチャのようなものを取り出した。

「イ、イかなかったら――本当に、逃がしてくれるの……?」
「それだけの気概を見せてくれたらね。じゃ、まずはコレからいってみようか」

 コレ、と言って目の前に差し出されたのは、小さいローターだった。
 正直今の体には、その刺激だけでも毒だ。

(でも、耐えなくちゃ……)

 薬の量がギリギリ少なかったのか、あるいは相性がいいのか――心臓が止まるようなことは多分ないと思う。
 それなら、堪えなければならないのは快楽だけ。強く奥歯を噛み締めた私は、ふぅっと息を吐いて目を閉じた。

「じゃ、頑張って♡」
「ん゛、ぉ゛ッ……♡♡」

 とろとろとローションをまとわせた卵型の玩具が、ぎゅぽ♡と蜜口に押し当てられる。
 それだけでも震えがくるほどの快感が押し寄せてきたが、鳴海は更にそれを深い場所に挿入してきた。

「ぁ゛、あぁっ……♡♡」
「頑張って耐えてね♡……イきすぎて壊れちゃってもつまんないからさ」

 ぢゅぷんっ♡としっかりナカに押し込まれたローターは、それほど大きくないせいか圧迫感も少ない。
 これなら耐えられる――そう思った瞬間に、ゔゔゔッ♡♡と低い振動が始まった。

「ん゛、ッ♡♡く、ふぅっ……♡♡ぁ゛♡あ、ぁあっ♡♡♡」

 ローションをたっぷり絡ませたローターが、ぐぢゅぐぢゅ♡♡と蕩けた膣内を刺激し始める。
 それほど強い刺激ではないはずなのに、媚薬のせいもあってたちまち体が熱くなる――力を抜いたらすぐにイってしまいそうになるのを、私は強く唇を噛んで耐えた。

「ん゛ッ♡♡ンむ゛、っ……♡♡ふ、っ♡ふ~~っ♡♡♡ふ~~~っ♡♡」
「お、頑張るね――でも乳首ガン勃ちしちゃってるし、腰ヘコ止まんなくなってる……♡はは、おっもしろいなぁ♡♡」

 鳴海の言葉はすべて無視だ。
 頭の中ではひたすら別のことを考えながら、全身の力が緩まないように唇を噛む。

(これ、なら……耐えられるっ……!)

 並行していくつもの思考を走らせ、できるだけ快感を覚えないようにする。
 体の感覚を鈍くしてしまえば三十分なんてあっという間に過ぎ去るだろう――そう思っていた私の前に、更にローターが二つぶら下げられた。

「は……」
「コレだけで終わるわけないでしょ? これは乳首用♡君の小っちゃくてかわいい乳首に……よいしょ、っと」

 サージカルテープで二つのローターをそれぞれの乳首に押し付けられ、しっかりと張りつけられる。
 その刺激だけでも声が出てしまいそうになったが、ぐっとこらえて別のことを考え始めた。
 今日の株価、著名な文学賞作家、再生エネルギーの問題に某国首脳のゴシップまで……ともすればそのままイかされてしまいそうなのを、意志の力で耐えようとする。

「……じゃ、スイッチ入れるね♡」
「く、ぅうう♡♡ンぅうっ♡♡ぁ、ああっ♡」

 だが、ゔぃいっ♡♡♡と低く振動する音が聞こえてきて、色づき勃ち上がった乳首が無慈悲に刺激される。
 過敏になった神経が逆なでされ、お腹の奥が何度も修練を繰り返す――強い快感に体を震わせても、縛り付けられた椅子がギシギシと不穏な音を立てるばかりだった。

「ぁ゛、んんっ……♡♡」
「あれ、イった? 今軽イキしなかったかな?」
「い、イって、ないぃっ……♡♡ぉ゛、ッ♡ほ、ぉおっ……♡♡♡」

 忘我の極致に到達しそうになるのを、強く拳を握りしめてなんとか正気に戻そうとする。
 手のひらに爪が食い込んで痛いが、もうそうするしかイかずに我慢する方法が見つからない。
 だが、無理に絶頂を堪えたことで目に涙が浮かび、呼吸も荒くなっていく。低く呻き声を上げながら腰を揺さぶって愉悦を逃そうとする自分の姿は、さぞかし滑稽だろう。

(でも――ここで、イったら……っ)

 私一人の命だけではない。上司の命がかかっているのに、自分がここで快楽を貪るわけにはいかないのだ。
 ジンジンと鈍く疼く乳首を嬲られながら、言葉にならない声を吐きつつギリギリのところで耐え続ける。
 いっそナイフで一思いに心臓を突かれた方がマシだと思いながら、私は必死に時間が過ぎるのを待っていた。

「ッふ、ぅうっ……♡♡んく、ぅ♡ぉ゛♡ッ……♡♡♡」
「泣きそうになってんじゃん……♡顔真っ赤にさせて、口の端から涎垂れてるの気付いてないでしょ?」
「う、うる、さっ……ぁ゛、ッ♡♡も、三十分経って……♡♡♡」

 かわいい♡とクスクス笑う鳴海が、私の声に反応してすっと腕時計を確認した。
 ちらりと視線を落とした彼は口角を吊り上げたまま、私の耳元にそっと唇を寄せ、ふ~~♡と息を吹き込んでくる。

「ッひ♡や、めてっ……♡♡」
「あと五分だよ♡――いやぁ、本当によく頑張ってるよ、君。スパイとしてはちょっとどうかと思ったけど、こういう根性ある子は大好き。だからちょっとだけ、俺も意地悪しちゃおうかなぁ♡♡」
「や、っ……♡♡」

 自由になる首だけを何度も横に振ったが、鳴海は冷酷に笑うだけだ。
 耳のすぐ横に唇を押し付けた彼は、濡れた舌をぬぷっ……♡と耳孔に挿し込み、ねっとりとその場所を舐めてくる。

「ぅ、ぐっ……♡♡」

 ちゅぽ……♡♡ちゅっ♡ぬちゅ♡♡ぬちゅ♡ぢゅるるっ♡♡♡ぷちゅっ♡♡
 舌先でくすぐるように耳を弄られ、普段なら感じることがない愉悦に全身が震える。耳から聞こえる濡れた音が、頭の中までもぐちゃぐちゃに犯していくみたいだ。

(耐え、ろ……! あと少しだけ、っ♡♡あともうちょっとだけ我慢すれば助かるんだから……!)

 はやく……早く残りの時間が過ぎ去りますように。
 心の中でそう祈りながら、私は先ほどと同じように全く別の思考に切り替えようとした。
 ――その時。

「ッひ、ぁあっ♡♡ぁ゛♡ン、ゃあッ♡♡♡」

 ゔゔゔゔッ♡♡♡とひときわ激しい振動が――左右の乳首と、ローターを埋められた膣内から一気に広がっていく。

「ひ、ッぅ゛♡♡ンゥ、ッ♡♡♡ぁ゛、あぁ~~~♡♡♡」

 ブツンッ♡♡と私の中で何かが切れて、その瞬間に途方もない強さの快感が全身を焼き尽くしてきた。
 一気に出力を増したローターは蜜を湛えて腫れぼったくなったおまんこの中を一気に擦り上げ、蜜壺全体を淫らな性感帯へと変えていく。

「……我慢してないでイっちゃいなよ♡」

 その言葉を聞いた瞬間に、ぐるんっ♡と世界がひっくり返ったような気がした。

「ぉ゛ひ、ぃッ♡♡や、ッ♡やだ♡♡ぁ゛♡あぁあっ♡♡ん゛ゃ♡こないで、っ♡♡こないでぇぇえッ♡♡♡」

 濁流にも似た喜悦が理性を押し流して、勢いよくイキ潮が吹きあがる。
 全身を火照らせ、必死に体を折り曲げようとしても、しっかりと縛り付けられた下半身は動かない。
 それどころか力を入れると余計に勢いを増した快感の証が吹き上がり、びちゃびちゃっ♡と床を汚していく。

「いや、っ♡や♡♡ぁ゛、ッ……♡いやぁ……♡♡やだ、っ♡♡ぁ゛♡♡イ、っ……♡♡♡」

 ――イってしまった。
 あと少し。ほんの少しだけ耐えれば逃げられたのに――ちょろちょろ♡とはしたなく快感の残滓を吐き出す下半身を眺めながら、私は呆然とするしかなかった。

「あーあ、本当にイっちゃったね♡ほら見て……あと一分だけ頑張ったら、無事におうちに帰る事ができたのにねぇ」
「は……ぇ、うそ、ぉ……」

 カチカチカチ、と小刻みに歯が鳴って、全身に怖気が走る。
 イかされてしまった。目の前の男に――なんの抵抗もできずに潮まで噴かされてしまった。
 否、それが羞恥だけの問題ならまだいい。問題は私と共にこの会社に潜入した上司のことだ。

「残念だけど、ゲームは君の負けだね」
「ぁ、ま、待って……! 今のは、っ……」
「今のはナシ、なんて言わないよね? だって君、今思いっきりイってたでしょ。……俺の目の前で、顔真っ赤にしながら潮吹いてガチイキしてた。――そこの監視カメラに録画してあるから、エッロいトロ顔晒しながら潮吹きアクメしてるところ、見せてあげようか?」

 鳴海の言葉に、どんどん血の気が引いていく。
 彼はどこかに電話をかけたかと思ったら、ご丁寧にプロジェクターを用意してきた。
 薄暗い室内、壁をスクリーン代わりに映し出された映像には、全身を拘束されながらガクガクッ♡♡と身を震わせる自分の姿が映っている。

「ほら、目ェ逸らさないでちゃんと見ろ」
「ッう……」

 顎をぐっと掴まれ、視線を逸らすことも許されない。
 画面の中の私は、いきなりビクンッ♡と体を跳ねさせたかと思うと、甘ったるい嬌声と透明な液体を噴き上げていた。
『ぉ゛ひ、ぃッ♡♡や、ッ♡やだ♡♡ぁ゛♡あぁあっ♡♡ん゛ゃ♡こないで、っ♡♡こないでぇぇえッ♡♡♡』
 悲鳴じみたその声には、隠しきれない愉悦が滲んでいる。
 人の命を手放して得る快感は、さぞかし甘美だろう。だらしなく蕩けた表情にはそれがありありと浮かんでいて、私は自分の浅ましさと愚かさに寒気を覚えた。

「ぁ――い、いや……」
「これだけ盛大にイったら、もう言い訳できないねぇ♡……あれ? おーい。ぐったりしてどうしたの? ねぇってばぁ」

 鳴海の声が、遠くに聞こえる。
 伸ばされた手を振り払おうとしたが、それもやめた。
 ……今、私のせいで一人の人間の命が潰えたのだ。きっと彼は温情をかけて人質を生かすようなことはしないし、そもそも私は温情をかけられるような人間ですらない。

「あれ、壊れちゃった? ねぇ……黙り込んでないで俺のこと見てよ。じゃないとこのまま正気トぶまでブチ犯すけど」
「……好きにして。どうせ――どうせ、明日には消えてなくなる命なんだから」

 どうせ死ぬなら、せいぜい惨めったらしく死んでやろう。
 それでこの失敗や上司の命を贖うことなどできはしないけれど、少しでもプレッシャーや責任から逃れたかった。

(我ながら、なんて身勝手な)

 全てに失敗しておいて、自分だけが楽になろうとしている。

「へぇ、覚悟は決まってんだ。……いいよ、どっかの泣いたり吐いたり漏らしたりしながら命乞いする汚ぇオッサンよりずいぶん高潔だ」
「……は」
「あの薬さぁ、効果強いけど持続力がなくてね。大体その間に皆心臓止まるんだけど……君は大丈夫そうだから、もう一本打ってあげる」

 突如脈略のないことを言い始めた鳴海が、懐からもう一本注射器を取り出した。
 先ほどのものより薬液の色が薄い――ということは、多少希釈しているということだろうか。

「それで、私の心臓を止めるの……?」
「これだけじゃ死ねないなぁ。さっきのは致死量ラインだったけど、こっちはもうちょっと薄いやつ。ただ、長時間効くんだよね。どうせ死ぬつもりなら実験手伝ってよ」

 薄く笑みを張り付けた鳴海に、特段返事はしなかった。
 あんな薬を打たれて何度も強制的にイかされたのだ。その後で再度似たような薬を投与され、突如心臓が止まることだってあるかもしれない。
 体のいい実験材料にされるのだと思うと、唇から渇いた笑みがこぼれた。

「文句はないみたいだね。じゃあ一息にプスッといっこうか」

 プツンッ、と再び針が皮膚に突き立てられて、中身が注ぎ込まれる。
 先ほどのように急激な体の変化は訪れなかったが、一瞬目の前がぐにゃっと歪んだ気がした。

「さてと。あとはコレで――君がどうなっちゃうのか確かめようかな。人体実験に自ら携わるなんて、俺って本当に経営者の鏡だよね~♡」

 空々しく笑った鳴海が、笑顔を張り付けたまま自らのベルトに手をかける。

「ぅ、っ……」

 まさかと声を出そうとしても、体がやけに重たくて喋ることができなかった。
 それだけじゃない。頭の奥がふわふわとして、なんだか心地好い――あったかくて、お風呂の中に入っているみたいにじわじわと、体がほどけていくようなかんじがする。

(な、に……?)
「お、ぐったりしてきた――やっぱり適度に薄めた方がいいのかな。わかる? 今君の体はぁ……筋肉が弛緩して反応が遅くなってるの。頭の方もぼんやりしてるんじゃない?」
「ん、ぅ……?」

 ――言っていることが、よくわからない。
 鳴海がなにか言っているんだけど、その意味があんまり理解できなかった。
 体があったかくて、なんだか気持ちよくて――頭の中が、それでいっぱいになる。

「……そのまま俺の名前呼んでみて。鳴海、って」
「なぅ、み……?」

 舌も上手く回らない……けど、体が重たくて仕方がないんだもの。
 眠る直前の、あの心地好い感覚が広がっていく。

「ふふ、呂律回ってないの~♡ま、さっきのイきっぱなしで苦しそうな顔よりは今の方が可愛いよ。……じゃあさっそく――コレ舐めてご奉仕しよ♡♡君がまんこぐちょぐちょにして連続絶頂キメるの見てたら、ちんぽバキバキになっちゃった♡」

 カチャ、と音が聞こえたかと思うと、なにかが唇に当てられた。
 赤黒くてグロテスクな造形をしたそれが、鳴海の男性器だというのに気付くまでたっぷり数秒。

「――舐めろ。根元まで丁寧に舌で舐めて、口の中で扱きながらフェラチオご奉仕してね♡」
「ん、ぇ……♡♡」

 眼前に突き出されたおちんぽを口の中に突っ込まれ、ぬりゅ♡と舌の上を肉幹が滑る。
 体を動かせない私は言われるがままにそれを含み、ゆっくりとそれを舐め上げた。かろうじて頭は動かせたので、頭を前に出してなんとか極太の幹を咥内に収める。

「ん゛、ぉ……♡ん♡♡んふ、ぅ……♡♡んぷっ♡♡ちゅぱ♡♡♡ん、っ♡♡♡」

 ぬ゛ぢゅ♡♡ちゅっ♡♡ぢゅぽ♡ぢゅぽ♡ぢゅぽ♡♡♡
 されるがままに咥内へおちんぽが突き立てられ、柔らかな頬や口の粘膜を犯される。

「ふ、ぅっ……♡はぁ、っ♡♡ッあ゛~……やっば♡無抵抗口まんこ温かくてトロトロしてて気持ちいいねぇ♡」

 抵抗もできず――する気力もなく、ひたすらにぢゅっぽ♡ぢゅっぽ♡♡♡と音を立てて喉奥までおちんぽが突き立てるのを受け入れるしかない。
 言われるがままに肉幹へと舌を這わせ、卑猥な音を立てながら奉仕を繰り返していると、鳴海はその秀麗な顔立ちを徐々に歪めていった。

「は、ぅっ……♡♡ん゛ッ♡んぶぅ、ッ♡♡♡」
「よーし上出来♡ちんぽ完勃ちしたし、そろそろご奉仕やめていいよ♡♡」

 クスクスと笑いながらおちんぽを引き抜いた鳴海は、唾液と先走りで濡れた亀頭をそのまま淫裂へと擦りつけてくる。
 二人の間には少しだけ距離が開いたものの、抵抗できるだけの力は残っていない。

「ぅ、っ……♡♡」
「はは、先端くっつけただけでまんこヒクヒクさせてる~♡あんだけイき散らかしたくせに、犯されること期待してんだねぇ♡♡」

 くち……♡くち……♡♡とゆっくり腰を動かして、鳴海は何度もおちんぽの先を蜜口へと擦りつけてきた。
 陰唇の形をなぞるようにして肉杭を押し付けられるたびに、じわじわと快感が芽生えていく。

「んぁ♡あ、ぁ~~……♡♡♡」
「エッロい声♡ほらほら、くちゅくちゅいってるの聞こえる? 君のおまんこが早くおちんぽ頂戴っておねだりしてるんだよ……♡♡♡甘ったるい雄媚び声出しながらまんこでも俺のこと誘うなんて、そんなに俺のこと好き?」

 そんなことない、と反論する気力も、体力もない。
 体を拘束する縄や鎖、椅子に体を預けたまま、視線を逸らすだけで精一杯だった。

「なーんでそんなに不愛想かな……あっ、そうか! ――仲間守れなかったよわよわおまんこ犯されるの、恥ずかしいのかな? 別に恥ずかしがることないんだよ? ほら、君のおまんこすっごい綺麗だし――」
「っ……お、犯す、なら――いくら、でも、好きなようにして……」

 揶揄うような言葉に必死で舌を動かすも、鳴海は笑顔を張り付けたままだった。
 いっそ全力で罵倒された方がまだマシだ。うまくまとまらないふわふわとした思考でも、罵倒ならきっと心を奮い立たせることができただろう。

「言われなくてもそうするつもりだよ。何のためにちんぽしゃぶらせたと思ってんの?」
「く、ぁッ……♡」

 軽薄そうな笑みを浮かべた鳴海が、ぢゅぷ……♡と亀頭を少しだけおまんこの中に挿入してくる。
 それだけでぞわぁっ……♡♡と甘く腰から背中までが慄き、引きつったような声が漏れた。

(あ♡♡だめ、っ……♡これ♡♡♡おちんぽ入ってきちゃうの、っ♡気持ちいいのまた♡♡♡またいっぱいきちゃう……♡♡♡)

 先ほど嫌というほど味わった甘美な感覚が、また自分の中大きくなっていく。
 その光景が頭をよぎっただけで、浅ましく潤んだ蜜壺からはとぷとぷと愛液が溢れ出してきた。

「あ、そぉだ――まだナカにローター入ってるもんね♡……じゃ、奥の方はコイツにマッサージお願いしようかな~♡」
「ぇ、っ……ぁ、やっ……やだ、やめ、ぉ゛ッ……♡♡」
「大丈夫だよ~♡今度はさっきみたいに突然出力上げたりしないから。じっくりジワジワ弱振動でおまんこの奥甘やかしてあげるね♡♡」

 いや、と悲鳴を上げるよりも早く、膣内で小さな玩具が震え始める。
 多少薬が抜けたからか、あるいは振動のレベルを下げられているからか――確かに先ほどの気が触れそうなほどの愉悦は襲ってこない。

「ぁ゛、……♡♡ぁ゛~~~♡♡あ、はっ……♡」

 だが、敏感なおまんこを鈍く刺激されるのには変わらない。イくことができないギリギリの強さで膣奥を震わせる動きに、弛緩しきった体がまた艶めかしく揺れ始めた。

「ん、ぁ♡♡やだ、ぁあ……ぁ゛♡ぁ゛♡お、おまんこビクビクし、ちゃぁっ……ん゛ッ――♡♡」

 ゔゔッ♡♡ゔィぃっ♡♡ゔ~~~~♡♡♡
 もどかしい振動に身を捩ろうとすると、黙れと言わんばかりに今度は乳首に取り付けられたローターが震え始めた。
 こっちは感度の問題もあるのか、快感としては一段下がるのだが――主張するように勃起した乳首に取り付けられていることもあって、視覚からの情報が脳を犯してくる。

「や゛ッ……♡あ♡あ、ぁっ♡♡ぁへ、ぇっ……♡♡だめ、だめ、ぇっ……♡」
「――ダメダメ言いながら顔とろっとろになってるよ~? まんこの入り口もくぱくぱ♡って可愛くおねだりしてるし……はは、マジでその顔やっば♡♡めちゃくちゃに犯したくなっちゃうなぁ♡」

 もう、鳴海がどんな顔をしているのかもわからなかった。
 ただただ気持ちよくて、けれどイけなくて――もっともっと強い刺激を与えてほしいという思いだけが強くなっていく。

(イきたい♡♡おまんこグズグズで苦しい……♡♡♡思いっきりオナニーしたい♡おちんぽでめちゃくちゃになりたい♡♡♡もっと♡もっと、っ……♡♡♡)

 ここがどこだっていい。もうどうでもいいから、早く楽になりたかった。
 こんな弱い快感しか与えてくれないオモチャじゃなくて、本物がいい。本物おちんぽで力いっぱい犯されて、あっつい精液を思いっきり子宮にぶっかけられたい――♡♡

「な、るみ……♡♡おねが、ぃ♡も、意地悪しないでぇ……♡♡♡」
「――お?」
「も、むりぃ♡♡発情おまんこ♡キュンキュン止まんなくて辛いの、っ♡♡♡ローターで弱いとこいじめられるの限界♡♡ぁ゛、ッ♡♡もぉ♡イ、イきた、ぃ♡♡♡はやく♡♡ぅっ……♡♡」

 縋ることができる相手は、目の前にいるこの男しかいない。
 上ずった声で、すべてをかなぐり捨てて懇願する――すると彼は、あざけるどころか目元をやわらげ、口角を吊り上げて満面の笑みを浮かべた。

「いいね、そういうの大好きだよ……一生懸命頑張ってた子が折れちゃって、必死に犯してくださいっておねだりするとこ♡久々に楽しくなってきちゃったなぁ……♡」
「んふ、ぁ……♡♡♡ぁ゛♡ひぅ、っ♡」

 ぬちゅ♡♡くぷ、くちゅんっ♡♡ずちゅ……♡ぐぷっ♡♡♡
 一度膣内からおちんぽを抜き取った鳴海は、蕩け切った蜜壺に指を突き立てて震えるローターを引っ張り出してくれた。
 その刺激だけで軽くイってしまったが、彼はそんなことお構いなしでローターを床に捨てると、再び屹立した肉根の先端をくっつけてくる。

「おちんぽ欲しい?」
「ほ、しっ……♡♡ぁ♡おちんぽ、ほしぃです、ぅ……♡♡♡んぁ♡お願い、っ♡♡お願い、します♡♡♡ぐずぐずになったスパイおまんこ、っ♡鳴海のちんぽで犯して、っ♡♡おちんぽください♡♡はやく、ぅ♡」

 この期に及んでまだ焦らしてくる鳴海に泣きつくと、彼はぷちゅっ♡と切っ先を押し当て――一気に、腰を進めてきた。

「ん゛ぉ、ぉおっ……♡♡♡ぁ゛♡んぁ♡♡あ、ッぁあ♡イ、ぅ♡♡ぉ゛ッ♡イく、ぅううっ……♡♡♡」

 ずぷずぷずぷっ♡♡♡と無抵抗のおまんこにガチガチの極太おちんぽを突き立てられて、全身が喜悦で震えあがる。
 待ち望んでいた熱を与えられた私は全身を思い切り震わせながら、これまでにないほど幸福な絶頂を迎えた。

「ンぁ♡♡ぁ、あんっ♡あ♡ぁあ、ッ~~~~♡♡♡にゃ、ぅっ♡なる、み♡♡♡鳴海♡もっと♡もっと奥も、ぉ♡」
「はいはい、っと――注文が多いスパイさんだなぁ♡ふふ、口まんこもトロトロでよかったけど、こっちは無抵抗通り越して大歓迎してくれてる……♡」

 ぐぢゅ♡♡ぐちゅっ♡♡ぬっぽぬっぽぬっぽ♡♡♡ぬぢゅっ♡♡にゅぷぷぷっ♡♡♡
 蕩けに蕩け切った媚肉は、鳴海が指摘する通りすっかりおちんぽを歓迎してしまっていた。
 軽く深い場所を突き上げられるだけで敏感に収斂する膣肉は、私の意志と関係なく肉棒へと絡みついていく。

「ん、ふ♡ふぁ♡ぁ゛♡ッんぁ♡♡♡」
「ちんぽナマで突っ込まれてるのに、幸せな顔しちゃってさぁ……♡♡さっきまで死ぬ直前だったことも忘れてる?」
「あ、ぁえッ♡♡んぁ♡♡なぅ、み♡♡や、パコパコもっとぉっ……♡♡」

 腰を動かすことができないので、快感を得るためには鳴海に動いてもらわなければならない。
 得体の知れない多幸感でいっぱいになりながら舌ったらずに彼の名前を呼ぶと、鳴海は満足げに笑いながらぬ゛ぱんっ♡♡と強く腰を打ち付けてきた。

「ん゛ッぉ♡♡♡」
「お望み通り、思いっきりパコパコしてあげるよ~♡ふふ、今ならこのまま死んじゃった方が幸せかもね……♡♡♡」

 傘が張り出した極太のおちんぽ様で、屈服しきった肉壺を力いっぱい責め立てられる。
 ぷりぷりに張った膣肉をごりゅっ♡と思い切り掘削されると、頭の中が焼き切れるんじゃないかというほどの快感が全身を駆け巡った。

「ん゛ぅ♡♡ん、っ♡♡あ♡しょこ、ぉ♡♡ぉ゛ッ……♡♡んぁ♡ぁ゛♡♡イく♡♡♡おまんこの弱いところ♡鳴海のおちんぽでゴシゴシされて、っ……♡♡♡ぁ、ッ♡♡イくイくイく、ぅうっ♡♡」

 ビクビクビクッ♡♡と下腹部が絞られるように強張って、深い絶頂が与えられる。
 けれど、鳴海はそれを気にした様子もなく、イきたておまんこを更に力強く犯してきた。
 硬く逞しい雄杭が、哀れに痙攣する膣肉をぶぢゅっ♡♡と押し潰して奥に進む――♡♡♡

「っくひ、ぃ゛ッ……♡♡♡あ♡ッぁあぁ♡♡らめ、ぇっ♡♡ンッあ♡♡♡今イった♡今イったからぁっ♡♡♡あッ、あ♡あっ♡♡死ぬ、ッ♡♡今おまんこハメられたら、っ♡♡♡鳴海のつよつよおちんぽで子宮口ノックされたら、っ♡♡死ぬ♡♡♡イき死んじゃ、ァああっ♡♡♡」

 ぐぽ♡♡と最奥の狭い場所を無理矢理こじ開けようというのか、鳴海は更にぐりぐり♡と腰を押し付けてくる。
 お互いの体がぴったりとくっついていて、弛緩しきった体はすっかり彼に従順になっていた。

「死んじゃった方が楽かもね……♡でも安心しなよ。ここじゃ死なせないから――さっ♡♡」
「ん゛ぁ、ッ~~~~♡♡♡」

 ハマっちゃいけないところに、おちんぽがハメられてる。
 このまま射精されたら確実に孕む――いや、それ以前に気が触れて死んでしまうんじゃないだろうか。
 そんな恐怖と紙一重の快感が、余計に快感を増幅させてくる。

「は、っ♡♡ぁッ……♡♡ン♡♡♡や、ぁあ♡あ、あ♡♡♡」
「ッは~……♡子宮口吸いついてきてかわいい♡ちゅぽちゅぽおねだりして、孕ませてほしいのかな♡♡♡」
「ち、ぁ♡♡♡んッ♡ふ、ぁ……♡♡」

 とちゅっ♡とちゅっ♡♡と軽く子宮口をノックしながら、鳴海が耳のすぐ横で囁いてくる。
 彼の問いかけに返事もできないままれろ♡れろ♡と耳の輪郭を舐めてきた。

「返事がないならオッケーってことだよね♡……じゃあたっぷり膣内で射精してあげるから、ありがた~く子宮でザー汁受け止めてね♡♡♡」
「ぇ――い、やぁっ♡♡ン、ってゃ♡や、やだ、ぁあっ♡♡」

 どちゅどちゅっ♡♡とピストンがさらに激しさを増したかと思うと、鳴海は私の体をしっかりと抑え、切なげに眉を寄せた。
 自分の中で膨らんでいく熱が爆ぜる瞬間を想像した私は、それまでの生ぬるい愉悦から一気に現実へと引き戻される。

「や、っ……な、中はダメ、ぇっ♡♡んッぁ♡♡あ♡おまんこ突かないでぇっ……♡♡あ゛♡♡い、やっ……♡♡」
「君はスパイだから嘘つきだよね? じゃあ――思いっきり射精してってことで、っ♡いいのかなぁ……♡♡♡」

 いや、と悲鳴を上げたが、鳴海はそんなことお構いなしで腰を打ち付けてくる。 
 更に彼は、時折戯れるように耳たぶを食み、低い声で何かを囁いてくるのだ。

「ン、ぁあっ……♡」
「ね、いいこと教えてあげるよ。……君の上司だけど、彼、っ♡とっくに死んで今頃お魚さんのエサになってると思うんだよね♡♡」
「は、ぇっ……ァああっ♡♡」

 ぐぷっ♡と膣内に熱い肉杭を打ち込みながら囁かれた言葉に、びくんっと体が反応する。
 ――嘘。だって彼は、私がイってしまったせいで殺されるんじゃないのか。
 快感と罪悪感にめちゃくちゃにされる悪夢のような瞬間を繰り返されながら、私は大きく目を剥いた。

「だってぇ……♡君のこと俺たちに売ったの、ッ♡あのエンジニアだよ♡♡♡ふふ、裏切り者はさぁっ♡死んで当然だよね♡♡♡君が一生懸命頑張って♡ギリギリまでアクメしないように命かけてたのにさ♡♡」

 とっとと頭ブチ抜かせて殺しちゃった♡と弾むような声が聞こえた瞬間に、切っ先が子宮口にぐり♡♡と押し付けられる。
 ぞわ、と一瞬背中が震えたかと思うと、その瞬間一気に熱が爆ぜた。

「く、ッ~~~♡♡♡」

 びゅぷぷっ♡♡びゅるっ♡ぶっぢゅぅ♡♡♡どぷっ♡♡どぷどぷっ♡♡♡ぴゅっ♡♡
 もったりとして粘っこい精液が、狙い定めたように子宮へと注ぎ込まれる。
 無防備に撃ち抜かれた子宮は喜悦にわななき、おちんぽを咥えこんだ媚肉がねだるようにぎゅううぅっ♡♡とそれを絞り上げる――孕まされたくないはずなのに、本能がそれを許してはくれない。

「あ゛、ァッ……♡♡んぁ♡♡や、ぅっ……♡」
「っ、はは――本当に全部出しちゃった♡でもさ、あの薬二本打ち込まれて死なないのって、結構すごいことなんだよ?」

 射精の余韻で絶頂を極める私は、もうなにも言えなくなっていた。
 何度も何度もイかされ、抵抗する気力もない。ダメ押しに精液を膣内に中出しされたことで、完全に糸が切れてしまったように思う。

「俺は根性ある子結構好きなんだよね。そんな女の子が快感に弱いってのも、まぁ結構面白いかなぁ」

 ずるんっ♡と萎えたおちんぽを抜き取った鳴海は、ニコニコと笑いながら片手で私の顎を捉えた。
 ――なんだか、もうどうでもよくなってしまった。
 暑いし、喉も乾いたし、お腹も減ってくる。
 どうせ死ぬなら、銀座のカフェ・エルニコの季節のフルーツパフェが食べたかったなぁ――ぼんやりとそんなことを考えていると、鳴海が身なりを整えながら唇を吊り上げた。

「そうだ、どうせ生き延びたんだからご褒美くらいあげないとね。なにか欲しいものとか、してほしいことはある?」

 俺ってば優しい~♡と笑う鳴海を、視線だけで睨みつける。
 温情をかけるなら、いっそ殺してほしかった。
 彼が言ったことが本当ならば仲間はとっくに死んでいるし、私だっておめおめと組織に帰ることはできない。
 戻ったとて、そこに待ち受けている待遇はそれこそ拷問か薬物実験の対象というところだろう。

「……パフェ、食べたい。おいしいやつ……」

 だが、そんな恨み言よりも先に出てきた言葉は、率直に空腹を訴えるものだった。

「――は? パフェ?」
「パフェ。カフェ・エルニコ、の……季節のフルーツパフェ……桃……」

 ケホケホと咳き込みながら、頭に浮かんできた言葉をそのまま口にした。
 夏限定の、大きな桃がまるっと一個乗っかったパフェ――死ぬ前に食べたいなぁ、と呑気な要望が頭に思い浮かぶ。

「はは、っ……はははっ! なにそれ! この期に及んでパフェ? えっ、マジで言ってんの君? うーわぶっ飛んでるねぇ!」

 ――と、突如ゲラゲラと笑い始めた鳴海が両手を叩いたのはその時だった。

「じゃあそのパフェ食べさせてあげるから、ウチにおいでよ。俺の尋問受けてマトモでいられる子って珍しいし、いや、パフェって……ふふっ」

 ひとしきり笑いに笑った鳴海は、私の体を拘束していた縄やベルト、鎖を丁寧に外してから人を呼んだ。
 汗と体液と涙でぐちゃぐちゃになった体が、呼びつけられた人間によってふわふわのタオルで包まれる。

「弛緩作用がある薬打ったから、しばらく監視つけて。――で、BO-6の部屋に隔離しておいてくれ」

 部下と思しき数人の人間にそう伝えて、鳴海は部屋から出ていこうとする――その際、彼はくるっと振り返り、私の方を見て微笑んだ。

「今夜帰るから、そしたら君の名前教えてよ。あ、偽名じゃなくて本名の方ね」

 ヒラヒラと手を振って部屋を出ていった鳴海の背中を眺めていた私の意識は、そこでふつりと途切れたのだった。

● ● ●

「や、ただいま」
「……おかえり、なさい」

 スーツ姿の鳴海を見るのは、三日ぶりだった。
 凄絶な凌辱の末に倒れた私が目を覚ますと、そこは見覚えのない部屋の中――私のことをこの部屋に連れ込んだ張本人である鳴海いわく、ここは彼が所有しているマンションの一室だという。

「ちゃんと大人しくしていたみたいだね。そうだ、林松堂のフルーツ大福お土産に買ってきたから、コレ食べよう」
「あ、ありがとう……」

 色の落ち着いた金髪に、黒い細身のスーツ。それから、超人気店のお土産を手に持って、彼は三日に一度ほどのペースで私の元を訪れた。
 てっきりあの後殺されると思っていたのだが、どうやら私は何かしら彼の琴線に触れてしまったらしい。あちこちに監視カメラが設置されたこの部屋の中で、割と自由に生活することを許されていた。
 外に出るのとインターネットの閲覧は許されていないが、テレビを見たりするのは自由だ。
 作戦の盛大な失敗で組織に帰ることができなくなってしまったため、こうして住む場所を提供してもらえるのはありがたいのだが――問題はその扱いだ。

「あ、この前俺がプレゼントした下着、つけてくれたんだ? かわいいでしょ、これ」
「っ、ん……♡や、ちょっと――な、鳴海、っ……!」

 ――鳴海がこの部屋に帰ってくるときは、相応の服装で彼を待つこと。
 それが私に課せられたもう一つのルールだった。そしてその「相応の格好」というのが、彼が私のために用意した某高級ブランドのセクシーランジェリーである。
 今日だって、総レースで乳房はどこも隠れていないブラジャーと、クロッチ部分が消失したとんでもないショーツを着て彼のことを待つことになった。

「く、ぅん♡あ、やぁっ……♡♡」
「あー、もうおまんこぐちょぐちょになってる。俺が来るまでちゃんと慣らしておいてくれた……? ほら、もう指二本くらいなら簡単に入っちゃうね♡」

 リビングに足を踏み入れるなり、背後から抱きついてきた鳴海に股間をまさぐられる。
 守るもののない秘裂に人差し指と中指を突き立てられ、ぐぽ♡ぐぽ♡♡と溢れてきた蜜を攪拌された。

「ひ、ぁあっ♡だ、ダメッ……♡」
「――なに、口答え?」
「違っ……あ、ぁつ♡♡ここ、リ――リビングだから、ぁっ♡♡♡」
「なんだぁ、それなら別に問題ないよ。後で掃除させるから――ほら、そこのテーブルに手ェついて♡後ろからおまんこ思いっきり犯してあげる♡♡」

 ――と、こんな感じで鳴海はその時の気分で私を抱いた。
 場所は問わず、ベッドの上で優しく抱かれる時もあれば、のぼせる寸前までお風呂場で抱き合ったことも、早朝のベランダで声を押さえて激しく求めあったこともある。
 最初に使われたような効果の強い薬を使われることこそなかったが、媚薬や発情薬の類いもよく使われた。

「んぁ、……♡ぁ、なる、み♡♡もっと、ぉ……♡」
「ん、もっとおちんぽ欲しい? じゃあもう少しだけ脚広げて――そう、上出来上出来……♡それじゃ、もっと奥まで挿入れるね♡♡」
「あ゛、ぁあっ……♡♡」

 指先だけで体を高められるのに耐えられず腰をくねらせると、あっさりと彼のおちんぽが突き立てられる。
 ここにきて何日が経ったのかはよく覚えていないが、何度も彼に求められた体はすっかり快楽の虜となっており、おまんこは長大な彼の肉棒を難なく飲み込めるようになってしまっていた。

「ふ、ぁっ♡あ♡ぁ、んんっ♡♡♡うし、ろぉ、っ……♡♡ンっあ♡これ好き♡♡好き、ぃっ♡♡♡」
「んー? 立ったまま後ろから犯されるの大好き? そっかそっかぁ――じゃあもっと奥までグリグリしてあげる♡」
「あ゛、ぁっ♡♡♡」

 目的を失い、閉ざされた空間でひたすら鳴海に犯されるためだけの日々。
 居場所を失くした私が縋ることができるのは、目の前で薄く微笑むこの男だけだった。

「あ゛、ッ……♡♡ふふ、奥までぐっぽり挿入ってる……♡子宮口ちゃんと降ろして偉いね♡♡一回このまま中出しするから、っ……♡♡」
「ンぅ……♡」

 背後から優しく私の下腹部を撫でた鳴海が、耳の軟骨をかぷ♡と食んでくる――それだけで私の体は喜悦に震え、求められる悦びを覚えてしまうのだ。

「――あ、そうだ。明日は朝早起きしてスーツ着て待っててね」
「……はい?」

 あいさつ代わりともいえる甘い交合が終わった後、私たちはシャワーを浴びて鳴海が持ってきたお土産のフルーツ大福を食べていた。
 生クリームが甘すぎなくて食べやすいし、オレンジのほんのりとした苦みと爽やかな甘さが全体を引き締めていて控えめに言っても最高だ。
 疲れた体に糖分が染みわたるのをひしひしと感じていると、シャインマスカットが包まれた大福を食べていた鳴海がふとそんなことを言い出した。

「明日、ガルガンディ・コーポレーションと打ち合わせがあるんだけどさ、そこに君のこと連れていくから。スーツはクローゼットの中にいくつか用意してるし、それ着て待ってて」
「っは、え? な、なんでそんな――ガルガンディって……」

 ガルガンディ・コーポレーションとは、戦闘機を製造している航空機メーカーだ。
 仕事上の付き合いがあるのは知っているが、どうしてそんなところに私が連れていかれねばならないのか――眉を寄せてみると、鳴海は一口で大福の半分ほどを平らげた。

「ガルガンディのCEOがお気に入りの女の子連れてくるんだって。どうせ見せつけられるから、俺もお気に入り連れて行こうと思ってね。ほら、舐められたら嫌じゃない?」
「そ、そんな理由で……」
「大事なことだよ? ただでさえ俺、童顔だって言われて舐められることあるし――それに、パートナーがいることでビジネスの話し合いがうまく行くことって、往々にしてあるんだよ」

 鳴海は特に表情を変えることなく、淡々とそんなことを言う。
 ビジネスを引き合いに出されると、その手のことにからきし疎い私はそんなものなのかと頷くしかなかった。

(仕事にお気に入り、って……立食パーティでもするつもり……?)

 理解ができないながらも、その「お気に入り」に自分が選ばれたと思うと、少しだけそわそわした気持ちになる。
 というのも、彼はおそらく私のような女性を何人か手元に囲っているからだ。
 元スパイで死の危機に直面したという人間はそうそういないだろうが、事前の調査資料では少なくとも五人――不定期に連絡を取っているのも合わせると、およそ十人近い女性と関係を持っているらしい。

(手あたり次第ってわけでもないんだろうけど……)

 ようやく大福を一個食べ終えた私が小さく息を吐くと、彼はくっと片眉を上げてこちらを見つめてきた。

「……なに? あ、これ食べる? マンダリンオレンジの大福。俺のオススメなんだけど」
「も、もうお腹いっぱいだから……」
「そう? 固くなっちゃうから、俺食べてもいい?」
「どうぞ……」

 先ほどとは打って変わって落ち着いた仕草で大福を咀嚼する鳴海を見つめながら、心の中でため息を吐く。
 ――非常に衝動的で、刹那的な人物。それが私の、藤我・鳴海・エヴァンジェリンに対する評価だ。
 頭の中で考えていることの半分も口に出していないだろう彼の行動は、非常に突飛に見える。子どものように賑やかな時もあれば、黙々と日記帳に向かい合って自省をしていることも、気鋭の経営者として鮮やかな手腕で会社を動かしていることもある。
 人間性が複雑すぎて、より深いところに踏み込むことができないでいた。

「じゃあ、俺はこれ食べたら帰るから。明日、よろしくね」
「え――と、帰るの?」
「お爺様が死んだ時以来の面倒な仕事があってさ。こればっかりは俺が対応しないといけないから……」

 マジで面倒、と呟いた後は英語でひとしきり悪態をついて、鳴海は大福を口に突っ込んで席を立った。
 ……ちなみに、先ほどまで私が犯されていたリビングは、二人でシャワーを浴びていたごく短時間できれいに掃除済だ。どんなシステムなんだろう、と若干恐ろしくなる。

「寝坊したらその場でイラマして叩き起こしてあげる」
「や、ちゃんと起きるってば……」
「そう? じゃあよろしく――おやすみ♡」

 そう言って部屋を出ていった鳴海を見送ってから、深く息を吐く。

(……ほだされてる)

 鳴海がどれほど危険な男かというのは、所属していた組織で嫌というほどに叩き込まれた。
 表立っては祖父から受け継いだ会社をより発展させ、慈善活動も積極的に行っている朗らかで優しい若手経営者。
 だが、裏の顔は非合法な薬物の製造・密輸を行い、民間軍事会社としてあちこちの紛争に顔を出している死の商人。
 私はてっきり裏の顔が彼の本質なのだと思っていたが、話してみると表の警備会社も大切にしているようだし、祖父の代から行っている慈善活動にも真剣に取り組んでいる。
 何度体を重ねても決して完全には理解することができないその姿に、私はいつしか心が惹かれてしまっていた。

「――信じらんない。なんであんな男を……」

 私のタイプって、もっと優しくて逞しくておおらかで牧歌的な人だったはずなのに。

「鳴海正反対じゃん……」

 はぁ……と息を吐いて、部屋に置いてある目覚まし時計をセットする。
 イラマチオで叩き起こされたらたまったものではないので、できるだけ早く起きて支度をしておこう。
 静まり返った部屋の中で、私はもう一度だけ小さく息を吐いた。

「……じゃあ、××共和国への戦闘機輸出はこっちに任せてもらっていいね? 多分××国が出張ってくると思うけど、あそこの政府高官はウチの顧客だらけだから、うまく黙らせられると思うよ」
「流石だ、トウガ。この手の交渉においては君の右に出る者はいない――もちろんお任せしよう」

 ――翌日。
 英語で交わされるそんな話し合いを聞きながら、私は鳴海の膝に乗せられていた。

「ん、ぁ♡あ、あっ……♡♡♡」

 スーツ姿を無惨に乱され、ブラウスから片方の乳房がふるんっ♡とまろびでた状態のまま、対面座位の形で鳴海に抱かれている。商談が行われる本社の応接室に連れてこられたかと思いきや、いきなり勃起したおちんぽを突き立てられ――商談中はずっと小刻みに揺さぶられ続けていた。

「んふ、ぅ♡あ♡も、ぉっ……♡♡あ゛、ゆ、ゆるして、ぇっ……♡♡」
「まったく、今大事なお仕事中なんだけどな? ――ごめんね、ミスター。ウチの可愛いミツバチちゃん、羽音が可愛らしくて」
「いやいや――私のジュリエットもなかなかお転婆でね。薬で躾けておかないとすぐに噛み切ろうとしてくるんだが……ほら、今は従順で可愛いだろう?」

 ぐぷっ♡ぬぷっ♡♡と小さな水音をたてながら腰を揺さぶられて、目の奥がチカチカする。
 イくことができないギリギリの弱さで刺激を加えられ続けて、私の理性はとっくに限界を迎えていた。
 そして恐らく――商談相手の股座に顔を埋め、先ほどからぢゅぽ♡ぢゅぽ♡♡と濡れた音を立てている少女の方も、限界が近いらしい。床に座り込んだままガクガク♡と体を震わせる姿に、自分もあんな風に見えているのかと想像が掻き立てられる。

「話はうまくまとまったんだ。お互いそろそろご機嫌取りの時間といこうじゃないか」
「あっは、そうだね……ほら、よかったね♡お許しが出たよ……♡」
「ッん゛、ぅうっ……♡む゛、ぁっ♡♡ん゛ッ♡♡」

 ずんっ♡♡と力強く奥を突き上げられたかと思うと、顎を掴まれて鳴海の方を向かせられる。
 無理矢理唇を重ねられたかと思うと、唾液と共に小さな錠剤が舌に乗せられ――思わず嚥下してしまった。

「っふ、ぁあぅ♡♡あ♡こ、これや、ぁあっ♡♡」

 その瞬間に、おまんこがきゅううぅぅっ♡♡♡と締まって突き立てられた鳴海のおちんぽを絞り上げる。
 また妙な薬を飲まされた――そう思った瞬間、背後で激しく肌を打ち付ける音が聞こえてきた。

「ん゛ッぉ♡♡や゛、ッ♡ご、ご主人ひゃま、ぁっ♡♡やら♡♡♡これ、ぇっ♡あ゛♡♡イっぐぅっ……♡♡」

 対面に座った男性に抱きしめられていた少女が、悲鳴を上げながら背中をのけぞらせたのはその時だった。

「ッく、ふっ……♡」
「お、ナカ締まった? 他人がイくとこで気持ちよくなっちゃうなんて、変態だなぁ」

 声に呼応するようにびくっ♡と体を強張らせた私に、鳴海がそんなことを囁いてくる。
 私は恥ずかしさに唇を噛んだが、それでも緩やかな抽送は止まらなかった。次第に、こちらの唇からもあえかな声がこぼれ落ちてきてしまう。

「ん、ぁあ……♡ッふ♡ぉ゛、ッ……♡♡」

 ぱちゅ♡ぱちゅ♡♡と緩くおまんこを犯されて、じわじわと気持ちいいのが広がっていく。
 薬の効果が出始めたのか、徐々に体からも力が抜けていくのが分かった。

「やぁ♡♡な、りゅみ……♡」

 ふやけ始めた思考で、そっと彼の名を呼ぶ。
 すると鳴海は、まるで子どもをあやすようにぽんぽんと背中を叩きながら、甘い快感を何度も与えてきた。

「ぁ゛、ッ……♡♡んぉ♡♡ぉ゛ッ……♡」
「ね、かわいいでしょう。最近手元に置いてる子なんだけど、薬物耐性が結構強くてね……なかなか壊れないからお気に入りなんだ」

 計り知れない法悦に身を震わせる私をよそに、鳴海はクスクス笑いながら商談相手と歓談している。
 向こうも向こうでこの異様な状況を楽しんでいるのか、卑猥なジョーク交じりの英語が飛び交っていた。

「彼女は日本人かい? 慎ましやかでいいね……艶やかな黒髪も人形みたいだ。――そう、東洋系の女性も可愛らしいと思っていたんだよ。トウガ、その子ちょっと譲ってくれないか」
「は? なに言ってんの? お気に入りだって言っただろ……そういうこと言われちゃうと興が冷めるなぁ……」

 チッ、と鳴海が舌打ちをしたのはその時だった。
 明らかに不機嫌そうなセリフと共に、ぐぽっ♡♡と深いところまで肉杭が撃ち込まれる。

「んぁあっ♡♡ぁ゛♡♡や、やだッ♡♡♡ん゛ッぉ♡♡ぁ゛♡あッ♡♡♡」

 にゅぶっ♡♡ぐち♡ぐち♡♡♡ぱんぱんぱんっ♡♡ぐぷぷっ♡ずり♡ずりっ♡♡♡
 怒張しきったおちんぽで膣壺の弱いところを一気に擦られるのは、弛緩した体にはあまりに強すぎる衝撃だった。
 されるがままに揺さぶられて、目尻からぽろっと涙がこぼれ落ちていく。

「ッひ、ぃ゛ッ♡♡」
「ねぇ――どうする? 彼さ、君のことが欲しいんだって。……このまま俺に犯されて、日本でま~ったり暮らすのと――彼の本国に連れ帰られてヤク漬けのまま犯される生活、どっちがいい?」

 ――どっちという比較ができる問題じゃないだろう。
 そもそも鳴海だってまったく同じことを私にしているじゃないか。
 そう言おうと思ったが、ここで彼の機嫌を損ねたらもっと厄介なことになる。

「ぁ゛、ぅうっ♡♡な、なるみ♡鳴海がい、ぃっ……♡♡♡ぁ゛♡鳴海のおちんぽ、でっ♡犯される生活の方が好き♡♡♡好き、ぃいっ♡♡」
「でまかせ言ってない?」
「ッひぅんっ♡♡」

 地を這うように低い声を鼓膜に注がれながら、両手でお尻をぐいっと広げられる。
 他人が見ている前で後孔を広げられる羞恥と、子宮口をぐりぐりぐり♡とおちんぽの先で刺激される愉悦に屈して、私はふるふると何度も首を横に振った。

「ちが、ぁ♡ぁ゛あっ♡♡♡鳴海がいい、っ♡ンぁ♡♡鳴海のぶっといおちんぽ様♡♡♡私のおまんこでぐっぽり咥えこんで、っ♡♡あつあつのザー汁中出しされるの♡♡♡好き♡好きです、ぅ♡♡♡他の人じゃやだ♡♡ぁ゛、ッ♡このおちんぽ♡これがいい、のっ……♡♡」

 ひぐひぐと情けなく喉を震わせながら、私は日本語でそう懇願した。
 これならきっと、目の前にいる商談相手には意味も分からないだろう。

「……そう? 君がそこまで言うなら――やっぱり他人には渡せないな。残念だったね、マイケル」
「――ま、そちらがそう言うなら仕方がない。こちらだって、わざわざトウガのことを敵に回そうとは思わないさ」
「……え?」

 その瞬間聞こえてきた言語は、淀みのない日本語だった。
 ぎょっとして背後を振り向くと、商談相手の男性はにっこりと微笑みながらぐったりとした様子の少女を抱きしめていた。

(い、まの――聞こえて……っ?)
「マイケル、日本に留学してたことあるから日本語わかるよ? そもそも彼、日本語含めた六か国語の多言語話者だし」
「は――ぇ、ンぉ゛ッ……♡♡」

 追い打ちをかけるように、鳴海がそんなことを耳元で囁いてくる。
 嘘だ――一気に膨らんだ羞恥に死にそうになっていると、下から甘い突き上げが何度も襲い掛かってくる。

「ッひ♡ぁ゛あ♡ンぁ♡♡ッく、ぅうっ♡♡」
「恥ずかしいおちんぽ媚び聞かれちゃったね♡ね、この子可愛いでしょ♡♡飽きたらすぐ捨ててやろうと思ったけど……存外飽きないもんだね♡♡」

 ぬぽぬぽっ♡♡ぐぷっ♡♡ずち♡ずち♡♡ぢゅぷっ♡♡♡
 力強く、的確に最奥を突き上げられた私の眼前で、チカチカと星が舞う。
 もう自分の力では体支えられなくなって、そのまま鳴海の体に強く抱き着いた――すると、一気にスパートがかけられておちんぽで甘く子宮口を殴られる。

「っひ♡あぁ♡ぁ゛、ッ~~~~♡♡♡や、激し、ぃっ……♡ぁ♡あんっ♡♡♡」
「っ、……さっきからまんこ締めすぎ♡お望み通りザーメン中出ししてあげるから、ありがたく受け取ってね♡」

 肉襞を引っ掻いて出し挿れを繰り返しながら、気持ちいいところを幾度となく犯される。
 先ほど目の前で繰り広げられていた光景のように、肌と肌がぶつかる生々しい音が部屋の中に響き渡った。

「ん゛、ッぉ♡イく♡♡イくイう、ぅう♡♡♡もぉダメ♡ぁ゛♡おまんこイきます、ぅ♡♡ぃ゛ッ~~~~♡♡」

 びくんっ♡♡♡と強く体を強張らせた直後、びゅるるるっ♡と熱い精液が吐き出された。
 すると、私の意志とは関係なく膣内が収斂し、たっぷりと絡みつく白濁を逃さないようにとうねり始める。

「は、ぁあ……♡♡んぁ♡ぅっ……♡♡♡」
「ふふ、ほら見てよ。射精されてビクついてる――あとで蓋しといてあげるから、今日は俺の精液お腹に溜めたまま仕事手伝ってね――」

 そんな声を聞きながら、私の意識は緩やかに遠ざかっていった。
 薬を投与されて抱きつぶされるといつもこれだ。多少の耐性があったとしても、体が疲弊しないわけではない。
 奈落の底に落ちるように意識が途絶えた後は、気だるさと頭痛を抱えながら目を覚ます――気付くと私の体は社長室のソファに寝かされていて、上には無造作に毛布も掛けられていた。

(……これ、鳴海が……?)

 このぞんざいな感じは間違いなく彼だろう。
 起き上がってぐるりと部屋の中を見回すも鳴海の姿は見えず、私はそこで深く息を吐いた。

(とりあえず、今回も生きてた……)

 冗談でもなんともなく、鳴海とのセックスはわりと命懸けだ。
 耐性のない薬を大量に投与されたらきっと私は死んでしまうだろうし、そんなことになっても鳴海は薄い笑みを唇に張り付けたままに違いない。そして、心臓が止まったが最後ゴミのように打ち捨てられるのが目に見えていた。

「はぁ……とんでもない目に遭った……」

 鳴海には私の他にも似たような「お気に入り」が数人いる。
 そのことについて、特に珍しいことだとも思わなかったが――他の女性にも、同じようなことをするんだろうか。
 そう思うと少しだけ、本当に少しだけ胸が痛んだ。

(これじゃ本当に変態だよ……本当に、どうしちゃったんだろう)

 いたぶられながら犯されて、それでも少しずつ彼に惹かれていく。
 それはきっと、彼がずっと「私」を見てくれているからだ。
 組織の中では至極目立たず、それを売りにしていた。空気のように、誰にも影響を与えずに生きて消えていく――そんな自分の、消えかけていた存在感というものを、鳴海は拾い上げてくれる。
 刹那的で気まぐれな、いつ破滅してもおかしくないような男だとは思うけれど、だからこそこの一瞬、彼のそばに入れることに悦びを覚えてしまうのだ。

(末期だ……)

 はぁ、ともう一度息を吐いて、そっと立ち上がる――すると、お腹のあたりに違和感があった。

「っえ、……あ、っ♡」

 ごりゅ♡となにかが、足の間で擦れている。
 違和感の正体を探って下腹部に触れると、小さなボールのようなものが膣内に埋め込まれていた。

「うぁ、ッ♡♡ん、なにこれ……んぃ、っ♡」

 こりゅ♡とおまんこに蓋をするようにして挿入されているものを、ついつい締め付けてしまう。
 こんなところで抜き取るわけにはいかない――せめてトイレに行かなくちゃと思った瞬間に、コンコンッと扉が叩かれた。

「う、うそ……」

 間が悪いにも程がある。
 会社の人間だったら、鳴海が外出していることを伝えてどこかに行ってもらおう。
 必死に頭の中を回転させて、ドアを開いた。すると、そこには真っ赤なドレスに身を包んだ美しい女性が一人、腰に手を当てて立っている。

「え、えぇと……」
「鳴海はどこ?」
「え? いやっ、い、今ちょっと出てるみたい、で……」

 目鼻立ちのくっきりとした、とんでもない美人。よくよく見てみると、彼女は今SNSで大人気のモデルだった。
 なんで彼女がこんなところに、という考えが一瞬頭をよぎるが、答えは簡単だ。
 彼女もまた鳴海の「お気に入り」なのだろう。

「また私のことを避けて……っ、ちょっとあなた」
「は、はいっ」
「鳴海、いつ帰ってくるの? あなたなら知ってるんでしょ?」

 柳眉を逆立てたその女性は、大股で私の元に近づいてくると吐き捨てるようにそう尋ねてきた。
 とはいえ、私だって彼がどこに行っているのかなんて知らない――素直に「わかりません」と返すと、彼女は大げさに溜息を吐いてこちらを睨みつけてきた。

「アンタが鳴海のお気に入りってやつ? ……悪趣味」

 チッ、と低く舌打ちをされて、悲しいというよりは素直に驚いた。
 彼女が出ている動画などもよくチェックしていた身からすると、いかにもセレブリティといった生活を送り、笑顔を振りまいていた画面の向こうの人物との乖離がすごい。

「最近はアンタのせいで、鳴海のことを呼んでも来てくれないし――一時の気まぐれだと思ってたけど、まさかここまで入れ込むなんて」

 低い声ですごまれた私は、なにも言えずにただ押し黙るしかできない。
 美人が起こる迫力もすごいし、「一般人の癖に」と吐き捨てる彼女に反論をする余地もなかったのだ。
 鳴海が返ってくるまでここで彼女と二人。さすがに気まずすぎる、と内心でため息を吐くと、聞き馴染みのある声が鼓膜を叩いた。

「ちょっと、何の騒ぎ? ていうか、部外者を勝手に社長室入れるなよ……」
「な、鳴海っ!」

 スーツ姿の鳴海が、屈強な男性を二人従えて扉の外に立っていた。
 外で別の商談があったのだろうか、ややピリついたその雰囲気は先ほどよりずっと厄介そうだ。

「鳴海が会ってくれないからこんなところまできたんじゃない!」
「あれ、秘書に連絡させなかったっけ? 君とはもう会わないって……同じこと二度も言わせるような馬鹿じゃなかったと思うけど」

 ネクタイを緩めながら社長室に入ってきた鳴海は、モデルの方をちらりと見るとそっけなくそう言い捨てた。
 すると、そのあまりの言い草に彼女の方もきっと眉を逆立てる。

「言ってきたわ! あなた本人じゃなくて秘書が――どういうつもり? こんな女に入れ込んで、何の気まぐれだか知らないけど」

 私を顎で指したモデルは、更に語気を強めて鳴海に詰め寄っていく。
 あの男にここまで食って掛かることができるのだから、とんでもない傑物だ――そんなことを考えていたら、鳴海は更に面倒くさそうな表情を浮かべ、側に控えていた頑丈そうなボディーガードになにかを呟いた。

「やれ」
「かしこまりました」

 そう言うや否や、ボディーガードのうち一人がモデルの背後を取り、その腕を締め上げた。

「い、ったぁっ……! ちょっと、なにするの! 放して……このっ……!」
「ん? 俺に会いたかったからここに来たんでしょ? だったらしばらくここにいなよ。……立ち話もなんだから、そこにゆっくり座って」

 そこ、と鳴海が視線で示した先には、もう一人のボディーガードが用意したパイプ椅子があった。
 あれよあれよという間に彼女はそのパイプ椅子へと縛り付けられ、猿轡を噛ませられる。
 ……いつぞやの拘束された自分を見ているみたいで、背中に冷たいものが流れた。

「ふぅ、さてと……君はどう? コイツに怪我とかさせられてない?」
「だ、大丈夫……だけど」

 ようやく私の方に視線を向けた鳴海に、こくこくと頷き返す。
 すると彼はボディーガードたちに退室を促し、立ち尽くす私のすぐ近くまでやってきた。

「さっき起きたんだろ? 薬は――もう残ってない感じか。ふぅん……」

 つるりとした顎に手を当てて、鳴海はなにか考えるそぶりを見せた。

「ま、ちょっとおいでよ」
「え、えっ? なにっ――ちょっと!」

 グイっと鳴海に腕を引かれたかと思うと、体を応接用のソファに投げ出される。
 ソファといっても十分すぎるほどに柔らかく弾力のあるものだったが、思わず声が出た。

「んー、よし。ここならよく見えるだろ?」

 その言葉を向けたのは、椅子に縛り付けられたまま目を白黒させているモデルに対してだ。
 彼はその椅子を更にソファが見えるような位置に異動させると、おもむろにジャケットを脱いで私の上に覆いかぶさってきた。

「ひ――な、鳴海……? うそ、まさか……」
「おぉ、大体想像ついてる感じ? いいね、察しのいい子はすごく好き。……なんか分不相応に喚いてるみたいだから、今の俺のお気に入りが誰かを教えてあげようと思って」

 クスクスと、まるで悪戯が見つかった子どもみたいに笑う鳴海が、強引の着ていたブラウスのボタンを引きちぎる。

「な、っ……」
「少し乱暴にするよ? 出先でトラブルに巻き込まれて苛立ってたところに、ブンブンうるさい羽虫が飛んでるんだ――君に癒してもらわないと、今日は悪い夢を見て眠るかもしれない」

 あぁいやだ、と心底おぞましそうに肩を震わせた鳴海が、ボタンがちぎれたブラウスを脱がせていく。
 人前でこんなことをするつもりかと身を捩ろうにも、上からのしかかられているので体がうまく動かせない。

「や、っ……あ、あの人どうするの!」
「別に、どうも? でも、君って人に見られながらセックスすると感じちゃうタイプでしょ。それに、せっかく俺のことを追いかけてきてくれたなら――特等席で見てもらった方がいいかなぁ、って」

 屈託なく笑った鳴海の言葉に、「ん゛ーー!」と怒りの声が重なる。
 だが、彼はそんなことお構いなしだ。先ほどまでの不機嫌さはどこへやら、今は鼻歌を歌いながらブラジャーのホックを外しにかかっている。

「あ、そうだ……さっき挿入れておいたコレ、どうだった? 膣トレ用の器具なんだけど――あ、ちゃんと締め付けておいてくれたんだ♡」
「く、ぅっ……♡♡」

 ぽいっとブラを床に落とした鳴海が、今度はスカートに包まれていた太腿をすりすり♡と撫でまわした。
 更にその奥にぐっぽり♡と突き立てられた玩具のようなものを指で押し込んでくる。
 その度に小さな快感が湧き上がってきて、声を抑えることができない。

「さっきたっぷり仕込んであげた俺の精液、ココにまだたっぷり残ってる……♡まずはコレ、かき出してあげるからね~♡♡」
「ぉ゛、ッ……♡♡」

 ぐぽッ♡と水っぽい音を立てながら、挿入されていた玩具を抜き取られる。
 くびれがついたような形のそれは溢れそうになっていた愛液と彼が吐き出した精液で濡れており、てらてらと光を跳ね返すその形は淫靡極まりなかった。

(こ――こんなの挿入れられてた、の……?)

 それまでおまんこに挿入されていた栓のようなものが抜き取られると、膣壺に溜め込まれていたものがどろ……♡と溢れてきた。

「ぁ、あっ♡」
「あ、垂れてきた……♡まず、こうやって――指で古い精液、かき出してあげる♡」

 鳴海は低く笑うと、ヒクつく淫口に遠慮なく指先を突き立ててくる。
 ぐち♡ぬち♡♡と二本の指でおまんこを広げられると、甘ったるく腰骨のあたりが痺れた。

「ンぁあ、やだ――あ、ぁっ♡♡」
「ん? 精液出ていっちゃうの、寂しいかな。安心してよ――すぐに出来立ての新鮮ザーメン、しっかり注いであげるから……♡♡」
「く、ほぉっ……♡♡♡」

 ぬちゅ♡ぬち♡♡ぐちゅ♡ぐぽっ♡♡ずっちずっちずっち♡♡ぬ゛りゅ♡♡♡
 長い指先を巧みに動かして、鳴海はおまんこの中を指の中で引っ掻いてくる。
 決定打にならない微弱な快感ではあったが、同じ場所を何度も擦られ、逆流してくる精液をかき出されるたびに、甘美な官能は徐々に高まっていった。

「あ♡ぁ、んんっ♡♡おまんこひっかいちゃ、ぁっ♡ぁ゛あ♡♡そ、こっ……♡♡」
「まだイくなよ? いつもみたいに、顔とろっとろにしながら幸せそ~にイってほしいから――我慢しろ♡」
「ッぅ……♡♡」

 耳元で囁かれ、更にカリッ♡と耳朶を前歯で噛まれてしまう。
 その刺激で少しだけ快感の熱が引いたが、浅いところにある弱点を的確に刺激する指先のせいで、再び腰が揺れてしまった。

「や――な、なるっ……んんっ♡♡あ♡指、指だめ、ぇっ♡♡そこ弱い♡ダメになっちゃうとこ、だからぁっ……♡♡」

 上ずった声を上げてなんとか彼を止めようとしたが、鳴海は顔に笑顔を張り付けるばかりで何もしてくれない。
 すると、足元からガタガタッと大きな音がした。
 ――さっきの女性が、大きく椅子を揺らしているに違いない。

「……うるさ。足も縛り付けたのに、よく動けるよね……」

 舌打ちと共に呆れた表情でそう吐き捨てた鳴海は、深く息を吐きながら私の体を抱え起こした。

「よく見てなよ。俺たちが愛しあってるとこ」

 低く、温度を感じさせない声がそう言い捨ててた後、体の向きがグルッと逆転させられる。
 頭と足の位置を逆にされ、椅子に縛り付けられたモデルと顔が合うような向きになる――怒りで目を血走らせる彼女と視線が合ったので、私は思わず顔を反らした。

「そのまま四つん這いになって、腰をこっちに突き出してよ」
「ぇ、っ――」
「早く」

 苛立ちを隠そうともしないその声に、従うしかない。
 それだけで殺されそうな視線を正面から受け止めつつ、私は言われたままうつ伏せになり、お尻を高く掲げた。
 ……この部屋、いや、この建物におけるすべての権限は鳴海が有している。ここで彼の言うことを無視することは、私にはできなかった。

「いい子だね♡ふふ、今度はお尻の穴でも気持ちよくなれるように、色々教えてあげる――それまで俺が飽きてなかったらの話だけど……」

 冗談か本気なのかよくわからないことを口にしたかと思うと、背後から再び蜜口を撫でられた。
 割れ目に沿ってすりすり♡と指を動かされると、自然とお尻が揺れてしまう。

「ンぁ、あ……♡」
「これだけで感じちゃうね……♡ほらほら、目の前のアイツに見せてあげなよ。まんこ指でぐぽぐぽ♡って犯されて、満足そうな君の顔♡♡」

 そう言われて、空いている片方の手で顎を捉えられた。
 背後からぐいっと顎を持ち上げられ、無理矢理目の前のモデルと視線を合わせられる。

(う、わ)

 殺してやる、と視線が物語っていた。
 いや――私だって、彼女の立場なら同じことをしたかもしれない。
 彼女だって、かつては鳴海のお気に入りだったはず。それが、その寵愛を失っただけではなく――別のお気に入りとの懇ろな交合を、こんな形で見せつけられているなんて。

「あぁ、やっぱり見られながらだと興奮するんだね……指先にまんこ吸い付いてる♡」
「んぅ……や、やめて、ぇ……♡あ♡ぁあっ……♡」

 だが、そんな私の考えなんて鳴海はお構いなしだ。
 ぬぽっ♡ぬぽっ♡♡と指先を巧みに動かし、徹底的に弱いところを探られてしまう。
 彼の手ですっかり快感に慣れた私は、人が見ているということも忘れて悲鳴じみた声を上げた。

「ンぁ、ああっ♡♡や、そこぉっ♡ンっ♡♡♡そこ感じる、とこだからぁっ♡ぁ゛♡やぁっ……♡♡」

 ぢゅぽ♡♡ぬぽ♡ぬぽ♡♡♡ぬ゛っちぬ゛っちぬ゛っち♡ぐちゅぐちゅっ♡♡
 おまんこを指でほじられ、更に別の指でクリトリスを捏ねまわされた。
 高まってきた快感が一気に限界へ近づいていくのを感じながら歯を食いしばるも、私の体はとっくに鳴海から与えられる快感に従順になってしまっている。

「弱いとこ手マンされてマン肉ヒクヒクぎゅうぎゅうさせてる……♡いじらしいね――必死に俺のことを喜ばせようとしてるんだ。……これくらいの奉仕精神がないと、やっぱり飽きちゃうよ」
「んひぃっ……♡♡ぁ゛、あぁっ♡そこばっかりだめ♡ん、ぁあっ♡♡イ、く♡♡気持ちいいのすぐきちゃう、のぉっ♡♡」
「あれ、もうイきそう? 見られたくないんじゃなかったっけ――」

 空々しい口調でそんなことをいう鳴海だったが、抗えるなら私だって抗っている。
 さぞかし恐ろしい表情で睨みつけられているのだろうと思い顔を上げると、椅子に縛り付けられた女性は顔を青ざめ、目に涙をためてこの状況を眺めていた。

(あぁ――そ、っか。もうこの人は……)

 理解しているんだろう。彼のオモチャが私であること――そして、鳴海がどれほど飽きっぽく、冷酷な男であることも知っている。
 私だって、いつ彼女のように捨てられるかわからないのだ。優越感など、覚えられるはずがなかった。

「あー、じゃあこのまま潮吹いてイってみよっか♡ちゃんとイくとき宣言してくれないと、今度は媚薬打った後に乳首とクリに強振動ローターつけたまま一日過ごしてもらうことになるよ」

 冷たい声が背後から聞こえるのと同時に、更に指先の動きが激しくなった。
 ぢゅぽぢゅぽぢゅぽ♡♡と二本の指がバラバラに動くと、頭の中が沸騰しているんじゃないかというくらい全身が熱くなる。

「ん゛ッぉ♡♡ぉ゛、おぉっ♡イぐ、ぅうっ♡ぁあっ♡♡♡イくイく♡♡も、イきまひゅ、ぅうっ♡♡なりゅ、鳴海の指おちんぽ、でっ♡♡おまんこの弱いところぐぽぐぽされてイく♡あっぁ♡あ♡♡♡だめ♡だめだめだめ、ぇえ……♡♡」

 にゅぽ♡にゅぽ♡♡♡くにくにっ♡と指で膣内の弱点とクリトリスを同時に押し込まれて、頭の中でゴトッ♡と重たい音が聞こえた。

「――イけ♡雑魚まんこ指で犯されながら、まんこ完敗潮吹きアクメしろ♡♡」
「ンぁあ~~~♡♡や、ぁああ♡」

 ぷしゃっ♡ぢょろろろっ♡ぷし♡ぷしゃぁっ♡♡♡
 卑猥な煽りに呼応するように、透明な液体が勢いよく迸る――目の前が白黒になるような特異な感覚を覚えながら、私はガクガクと全身を震わせながら深いアクメを極めた。

「ぉ゛ッ♡♡♡ほ、ぉおっ……♡♡ん゛ぅ♡ふ、ふぅぅっ……♡♡♡」
「あー、すっご♡本当に雑魚雑魚まんこちゃんになっちゃったね――ま、あんだけ薬打ったり飲んだりしてたらこうもなっちゃうか……締め付け変わんないのは最ッ高だと思うけど、ね」

 べしゃ、とソファの上に力なく崩れ落ちた私は、絶頂の余韻もそのままにお尻を突き出し、はっ♡はっ♡♡と浅い呼吸を繰り返した。
 心臓がバクバクと強く脈打って、もう気持ちいいことしか考えられない。
 今は薬なんて飲まされてないし、さっき飲まされたのだってとっくに効果は消えているはず。
 それなのに、もう――頭の中は、おちんぽで犯されることでいっぱいになっていた。

「にゃ、ぅみ……♡♡」
「物欲しそうな顔してるね――一回イっただけじゃ満足できなかった?」

 意地悪な問いかけも、快感に蕩けた頭の中ではうまく処理できない。
 私は舌ったらずに彼の名を呼ぶと、息も絶え絶えに頷いた。

「た、足りな、ぃ……♡♡おちんぽ♡♡♡鳴海のおちんぽ、ほしい……です♡♡」
「じゃあどうやっておねだりすればいいかわかるよね? ほら、前に教えた通りに言って」

 背後を振り返りながら上ずった声でなんとか懇願するも、鳴海はスッと目を細めて笑うばかりだ。
 ――ここにいるのは私たちだけじゃない。
 一瞬だけ冷静な自分が顔を出してきたが、何を今更と状況を嘲笑う自分が、そっと口を開いた。

「っ……♡鳴海の、ぉっ♡おっきい、血管バッキバキの極上グロおちんぽ様で♡♡♡思いっきり♡私のよわよわおまんこ犯してください♡♡♡おちんぽ扱いて♡ザーメンびゅ~~♡って中に出していただいて、構いません……♡♡♡おねが、ぃ♡♡♡は、はやく♡♡子宮口ディープキスしていつもみたいに犯してください♡♡♡」

 上ずった声を詰まらせながら、聞くに堪えない言葉で懇願をする。
 すると、鳴海は満足したようににっこりと笑い――ゆっくりと、勿体ぶった動きでベルトを外し始めた。

「や♡はやく♡はやくおちんぽ、っ♡♡♡焦らさないで、っ……♡」
「あれ、そんなこと言っていいの? ――もう君、誰のちんぽでも咥えこめたらいいんじゃない?」
「っあ、やっ……♡♡やだ♡やだやだ♡♡♡鳴海のじゃなくちゃ、や、っぁ、あぁッ♡♡」

 冷たく笑う鳴海が、取り出したおちんぽをぴと♡とお尻の割れ目に当ててくる。
 そこじゃない――そう言いたいのに、期待していた熱が肌に触れた瞬間、待ち焦がれていたように腰が揺れてしまった。

「んぁ♡♡♡鳴海のおちんぽ♡これ♡♡これじゃなきゃやだ、ぁ♡♡ディルドもバイブ、も♡他の人のおちんぽもぉっ……♡♡♡このちんぽ知っちゃったら無理♡戻れなくなる♡♡♡他のおちんぽじゃ気持ちよくなれない、の……♡♡♡」

 ――もう、私が見えているのは背後でうすら笑う美しい男だけだった。
 彼の寵愛を得るために、淫らな言葉で官能を煽り、浅ましく腰を振る。そのことしか考えられない。

(おかしくなってしまったんだ――全部、鳴海に変えられた。彼に必要とされたいって、それしか考えられない……♡)

 スパイでもなんでもない今の私にできるのは、彼に快楽を提供することだけ。
 私を一人の人間として側においてくれる彼のためなら、なんだってしてあげたいと思った。

「――そう。じゃあもうちょっと楽しませてね♡ほらほら♡♡むにむにでやわらかいお尻で、俺のちんぽよしよし♡って甘やかして♡♡」
「ん゛ぁあ、っ……♡♡ぁ♡あぁ♡こす、っちゃぁ♡♡ぁ、あんっ♡♡」

 にこーっと、それまでの張りついた薄ら笑いがより深い笑みに変わったかと思うと、鳴海はお尻の割れ目に自分の肉杭を擦りつけてきた。
 ず~り♡ず~り♡♡とゆっくり割れ目でおちんぽを扱き出すと、背後から聞こえてくる呼吸の音が徐々に荒く、切ないものへと変わっていく。

「ん、はぁ……♡ほーんと、俺達って体の相性いいよね♡♡最初はヤダヤダ言ってたくせに、君もどんどん従順になってく――もっとわかりやすくぶっ壊れてくれたら、いつだって君のことを捨てられるのに」

 ずち♡ずち♡♡ずりずりずり♡♡ぬちゅ♡♡くち♡くちっ♡♡♡
 お尻の穴に幹を擦りつけられると、震えるほど気持ちよかった。
 いつかここも、彼の手で開発されてしまうんだろうか――そう考えると、怖いと思うよりも期待が勝ってしまう。

「は、ぁんっ♡お♡ぉおお……♡♡」
「アナルもヒクヒクしてる――こんなえっちな体にされたら、もうスパイ戻れないね……♡♡」

 背後から聞こえる声に煽られて、子宮のあたりも甘く疼き始めた。
 確かに、私はもうスパイには戻れない――鳴海が側にいない時でさえ熱を持て余すようになった体を抱えて、他の企業や組織に潜入するのは無理だろう。

「でも大丈夫だよ。飽きるまでは俺が面倒見てあげる♡薬で壊れたり、どこかの誰かみたいな分不相応の振る舞いをしなかったら――君はずっと、俺のお気に入りでい続けられる。……嬉しいでしょ?」

 最後の一言だけは地の底から這うような声で尋ねつつ、鳴海はぐにぐに♡と亀頭で菊孔を刺激してきた。

「は、ひっ♡♡うれし、ぃ♡ぁ゛♡嬉しい、ですっ……♡♡♡」

 ぬぢゅ♡と先端を窄まりに押し当てられ、その熱で体がガクつく。
 まさか本当にそこに挿入されてしまうんじゃないかという不安が一瞬よぎったものの、すぐに鳴海は蜜口へと切っ先の方向を変えた。

「そう、壊れるまで……あれだけ薬漬けになっててまだ壊れないの、本当に才能だよ。俺の尋問耐えるし、なんなんだろうね……ッ」
「は、ぉ゛ぉおっ……♡♡」

 にぢにぢっ♡♡ぐぢゅ♡ぬぷ♡♡ぬぷぷっ♡♡ずりゅっ♡
 とうに蕩け切ったおまんこの中に、極太のおちんぽが滑りこんでくる――♡♡
 待ち焦がれていた快感と熱を一気に与えられた私は、挿入だけで体が強張り、呆気なく達してしまった。

「ぉ゛ッ~~~♡♡♡」
「うわ、挿入れただけでイってる♡お迎えアクメご苦労様♡♡わざわざイってちんぽ締め付けてくれるなんて、優しいね~♡♡」
「や゛、ッ♡♡ちが、ぁ♡あ゛、ッ♡♡♡」

 ぬぷっ♡ぬぷっ♡♡と、イっている最中のおまんこを容赦なく蹂躙される。
 激しくはないが、しっかりと奥まで突き入れ、限界まで引き抜くという動きを何度か繰り返され、ストロークの行き来だけで甘イキが止まらない。

「ほ、ぉおッ♡♡ん゛ぉ♡あ゛ぁ、あ♡♡♡あちゅ、ぅっ♡ぁっ♡♡♡」
「何言ってるかわかんないって。……あーでも、まんこはすっごい正直♡♡ぬるぬるキツキツのスパイまんこ♡俺に犯されて嬉しいです~♡って言ってるよ」

 にゅぷ♡にゅぷ♡♡と媚肉を擦り上げられ、更に両手で力いっぱい尻たぶを広げられる。
 感触を楽しんでいるかのように肌を揉む動きに合わせて、ぎゅ♡ぎゅっ♡♡とナカが収斂した。

「ん゛ぁ♡♡お尻揉まない、でっ……♡あ♡ぁ、あっ♡♡」
「あれ、揉まれんの嫌い? じゃあ――こうやって、軽く叩かれんのは?」
「は、ひッッ♡♡♡」

 ぱちぃんっ♡と、軽い打擲音が聞こえたのはその時だった。
 そこからほんの一瞬遅れて、かすかな痛みが襲ってくる。

「はは、エッグいな~♡お尻叩かれてまんこ締めるとか、わりとドMじゃん」
「や、ぁあ♡ん゛ゃ、ッ~~~♡♡」

 ぱちっ♡ぱちんっ♡♡と音が響くような叩き方をしているが、実際にその手には然程力が入っていなかった。痛みよりも快感が強く、肌を叩く高い音が響く度に頭の中が気持ちよく揺れる気すらしてくる。
 だが――目の前で私たちの交わりを見ることを強要されていた彼女は、その加減など知る由もない。
 顔を青くしたまま、足をガタガタと震えさせながら私と――楽しそうに尻をぶつ鳴海のことを交互に見続けていた。

「丸くておっきいから、ちょっと叩いただけで派手な音が鳴るね。……叩かれんのも気持ちいんでしょ? こーの淫乱ドM♡♡」
「お゛、ッ♡♡は、はひ、ぃっ♡ンぁ♡♡♡ぁ、ああっ♡♡」

 ぱちんっ♡と軽く尻をぶたれ、更におちんぽで膣奥をぐりぐり♡♡と刺激される。
 恐らく鳴海が本気で叩いたらこれどころじゃすまないと思うのだが、軽い刺激とこの状況はもはや私の中の熱を煽る結果にしかならなかった。

「あ♡ぁあ♡♡ダメ♡♡お、おちんぽどちゅどちゅするの、っ♡♡お尻と一緒にしちゃダメ♡ダメ、ェッ♡♡♡すぐイっちゃ、ぁ♡♡あ♡ぁ゛ッ……♡♡♡」

 ビクビクビクッ♡♡と声を詰まらせてイき果てても、ゆるい抽送は止まらない。
 しばらくすると尻を叩くのに飽きたのか、鳴海は再び両尻を揉みつつ、徐々にピストンの速度を上げてきた。

「ん♡は、ぁあっ♡♡あ、んっ♡♡」
「ッ、……♡グズグズ従順まんこ、さっきからずっと俺に甘えてきてるよ? 子宮口犯していただいてありがとうございます~ってぎゅうぎゅう締め付けてきてさ♡♡何度もイったから――ナカすっごい熱いし♡」

 ぢゅ、っぽ♡♡ぢゅ、っぽ♡♡と深いところをノックしてくる動きに、何度もイかされたおまんこが当然勝てるはずもない。
 それどころか射精を望む浅ましい蜜壺は艶めかしく蠢いて、更に喜悦を求めていた。

「ッあぁ♡は、っ♡♡ぁ♡♡」

 あっつい肉棒をギチギチ♡と締めつける度に、鳴海がばちゅっ♡ばちゅっ♡♡と深く奥を突き上げてくる。

「お尻叩かれるのも奥突かれるのも、大好きになっちゃったね……♡ん、っ♡チン媚びすっごい上手♡♡♡ナカのヒダヒダがやらし~く動いて、俺に射精させようとしてくる……♡」

 ぐぽ♡♡ぬぽっ♡♡どちゅ♡ぱんぱんぱんっ♡♡♡
 徐々に激しさを増す律動に、ゾクゾクと腰のあたりが震えを帯びる。
 これまでの軽い絶頂とは違う、確実に深い愉悦が腰から背中を伝い頭の芯へと響いてきた。

「ぁ゛♡んんぁ、っ♡♡イく、ぅ♡また♡♡♡またおまんこイきま、すぅっ♡ん゛ッぉ♡イくイくイく、ぅうっ♡♡ぁ゛♡あ~~~♡♡♡」
「ッく――♡」

 ばぢゅんっ♡♡と子宮口をひときわ強く突き上げられて、私は深い絶頂へと押し上げられた。
 頭の奥が真っ白く塗りつぶされて、気持ちいいこと以外考えられなくなる――全身が痙攣するのと共に、びゅるるるっ♡と濃厚な精液が膣奥に吐き出された。

「ん゛ぉ♡きた、ぁあっ♡ぁ゛♡♡♡きも、ちぃ♡♡は、ッ♡♡♡しゃせー♡しゃせーきもちいい、のぉ♡♡お゛ッ♡♡」
「うわ、搾り取るみたいにうねってる……♡たくさん注いであげるから、頑張ってまんこでザーメンごっくんしようね……♡」

 既に今日一度射精してるはずなのに、びゅぷびゅぷっ♡と吐き出される欲望は衰えを知らない。
 最後の一滴まで注ぎ終わった鳴海は、ゆっくりと腰を引いて弛緩した肉棒を抜き取ってきた。

「ぁ――あ♡ぬいちゃやだ、ぁ♡♡♡」
「ちんぽ抜かれるの寂しい? 大丈夫だよ。また夜になったらたっぷり犯してあげるからさ……はい、今度はコレ綺麗にして♡」

 ずりゅんっ♡と抜き取られた熱を求めて、おまんこがくぱくぱ♡♡と開閉を繰り返す。
 好き勝手に犯されて物寂しさを感じていた私だったが、鳴海は私の前に立つと眼前に萎えたおちんぽを突き出してきた。

「っふ……♡♡」
「ほら、お掃除フェラ大好きでしょ?」
「ッん、ちゅ♡♡んへ♡♡れろ♡んちゅぅっ……♡♡」

 ぐいっと腰を突き出されたら、拒むことはできない。
 おずおずと先端にしゃぶりついた私は、ちろちろ♡と舌を使った奉仕を繰り返した。

「ん゛、ッ♡お゛ご、ぉ……♡♡んちゅ♡♡ぢゅるるっ♡♡んっ♡んんっ♡♡♡」

 口の中に唾液をため、お互いの愛液が混ざりあったものを舌で拭っていく。
 ごくんっ♡と喉を鳴らしてそれを嚥下すると、咥内にずっぽりと突き立てられたものが徐々に硬さを取り戻していくのが分かった。

「んぉ……♡ま、またおっきく……♡♡」
「そんな風にやらしい舌遣いでお掃除されたら、誰だって勃起するだろ。……あーあ、お掃除だったのに残念だね♡これで終わると思ったんだろ?」

 薄い笑みを口に張り付けた鳴海が、もうフェラはいいと頭を軽く撫でてくる。
 張り付いたような笑顔の奥にギラギラした欲望を垣間見た私は、また犯してもらえるのかと淡い期待を抱いたまま唇を放した。

「ん……♡♡」
「そうだな、あんまり同じことして芸のない男だと思われるのも嫌だし……今度はこの柔らかおっぱいで俺のちんぽ扱いてよ♡やってくれるなら、ご褒美で乳首いじめてあげる♡♡」
「……ん、わかった――」

 なんだ、おまんこじゃないのか――そんな考えが一瞬頭をよぎったが、鳴海がそう望んでいるならやるしかない。
 もう、先ほどまで感じた射殺すような視線は感じなかった。鳴海の方も、椅子に縛り付けられた彼女の方には見向きもしない。

「なにしてんの、早く」
「っ、ごめ、なさい……♡♡ん♡こ、これでいい?」

 低い声で諫められ、ビクンと肩が震えた。
 これ以上彼の機嫌を損ねないよう、胸の谷間ですっかり屹立しきった雄肉を挟み込む。

「お、いいね。想像通りだ――柔らかくてすべっすべのおっぱいまんこ♡左右からぎゅ~~って挟んで、しっかり扱いてくれる?」
「は、はい……♡」

 ぎゅうっ♡と両胸を寄せて圧をかけながら、ゆっくりと肉幹を扱き上げる。
 ゆさっ♡ゆさっ♡♡とおっぱい自体の重さに任せて上下に揺らしてみたり、オナホみたいに両胸を寄せながら扱いてみたりを繰り返すと、血管がバッキバキに浮き出た極上おちんぽの熱をよく感じられた。

「ん、ぅ♡♡ふ♡ふぅうっ……♡♡」

 皮膚が薄い場所だから、余計におちんぽの感触がよくわかる。
 だぷっ♡だぷっ♡と大きく胸が揺れるたびに、文字通り谷間を犯されているみたいで――触れてもいない乳首がピンッ♡と勃起し、ジンジンと疼き始めてしまう。

「あ、はぁっ……♡」
「うわ、パイズリだけで感じてる? ヤバいよそれ。……こんなエロい体してたら、もう外じゃ働けないでしょ」
「ひぅんっ♡♡♡」

 嘲笑するような――けれどどことなく切ない声音で、鳴海が勃ち上がった乳首を軽く指ではじき始めた。
 ぴんっ♡ぴんッ♡と両胸の飾りを軽く弄られるだけで、熱に浮かされた体は大げさなほどに反応してしまう。

「んふ、ぅ♡お゛ッ♡♡おほ、ぉおっ♡♡乳首らめぇ♡ぁ゛♡ピンピンしちゃらめなの、っ♡ん゛ぃぃ゛ッ……♡ぁ゛あ♡あは、ぁあっ♡」
「軽く弾いただけで腰クネクネさせながら、なに言ってんの♡ほらちゃんと乳まんこ締めてよ……♡♡♡柔らかおっぱいでしっかり俺のこと甘やかして♡」
「はぅっ♡♡」

 くにくにくに♡と軽く乳首を捏ねまわされ、触れてもいない腰のあたりが妙に疼く。
 叱られないようにゆさゆさ♡とおっぱいを揺らし、汗ばんだ肌でおちんぽを扱いていると、鳴海の呼吸がどんどん荒くなっていった。

「ん、っ♡はぁっ……♡♡あ、ぁ~……うわこれすっごいな――また精液上がってきそう、っ♡♡ガキでもないのにこんな、っ……ぐ、っ♡」
「あ、っ♡♡」

 しばらくおっぱいオナホでおちんぽを扱き続けていると、鳴海はおもむろに両乳を寄せる私の手に自らの手を重ねてきて。
 その体温の熱さにも驚いたのだが、もっと驚いたのはその後の彼の行動だ。
 これまで緩やかに、あくまで快感を楽しむように動いていた彼が、腰を打ち付ける速度を上げてきたのだ。

「ひぅ♡♡ぁ゛、ぁあ♡♡あ♡ん゛ぁ、っ♡な、なるみ♡♡♡鳴海待って♡あつ、ぅっ♡♡ん゛ォ♡お゛ッ♡♡♡おっぱいあちゅ、ぅっ♡♡」

 ばちゅっ♡ばちゅっ♡♡ぬぽぬぽぬぽっ♡♡ぬ゛りゅ♡ぐぽっ♡ぐぽぉっ♡♡♡
 まるで本当におまんこを犯すみたいに、胸の谷間へ向けて激しく腰を打ち付けられる。
 自分の体がオナホみたいに扱われて犯しぬかれているのを目にして、私自身もどんどん興奮が高まっていった。

「あ゛~……もう無理、っ♡この生意気おっぱいまんこ♡♡ぬめぬめスベスベで気持ちよすぎ、っ♡この、っ♡♡♡孕ませてやるからな――♡巨乳まんこ種付けしてやる、っ♡♡♡」

 ギリッ……と音が聞こえるほどに奥歯を噛み締めた鳴海が、更に抽送の強度を上げてきた。

「んぁ♡あ゛♡や、っ……ま゛、ッ♡♡♡待って♡や、あぁっ♡」
「ッぐ……♡」

 どぽぉっ……♡と、おっぱいの中で熱が爆ぜたのはその時だった。
 勢いと濃さを失わない白濁がべっとりと両胸にこびりついて、体が鳴海に汚されたのだというのが視覚的にも明らかになる。

「あ、ぁっ……♡♡」
「あーあ、汚れちゃったね……ごめんごめん。外で出してあげようと思ったけど、やっぱり乳まんこ気持ちよすぎて無理だった……♡♡一緒にシャワー浴びに行こうか」
「え、ぁ――で、でもこの人は」

 頭の中をぐちゃぐちゃにしていた熱が冷めると、急激にもう一人の人物のことが気になってしまった。
 ふっと椅子の方を見ると、彼女はぐったりとして俯いたまま動きもしない。

「あー、アレ? シャワー浴びてる間に片付けておくから気にしなくていいよ」
「で、でも……」
「別に死んだわけじゃない。――もう二度と会うこともないと思うけどね」

 鳴海の口調がぶっきらぼうな上に冷たくて、心底彼女に対しての興味を失ってしまったんだというのがよくわかる。
 これほど享楽に耽っていた私が思っていいことではないのかもしれないが、改めて彼の切り替えの早さというか、気まぐれに背筋が冷たくなる。

「あー、お腹減ったね……汗流したらご飯食べに行こうよ。お魚とお肉どっちがいい? 好きな方選んで」
「え、と――」

 私もいずれ、彼女と同じようになる。
 弄ばれて、捨てられて――それでもきっと、どうしようもなく彼のことを愛してしまうんだろう。
 鳴海の言葉に答えながら、私はぎゅっと胸のあたりを押さえたのだった。

● ● ●

「鳴海様は本日より三日間、海外出張でございます。その間お世話をするように仰せつかりました」
「は、はぁ……」

 ――そんなことがあってから数日後。
 相変わらず気まぐれに部屋を訪れては時折連れ出され、屋内だろうが車の中だろうがめちゃくちゃに犯されるような生活を送っていたのだが、その日はこれまでに見たことがない人がインターホンを鳴らしてきた。
 鳴海の側近だというその人は、彼の命令を受けて私の世話をすることが決まったらしい。
 ……確かに、一昨日あった時は今日から出張だという話は聞いていた。なので恐らく、そこは事実だろう。

(だけど――世話を頼む? 鳴海が? 私のことを?)

 普段の彼のスタンスは完全な放任主義――用事があってもなくてもその時の気分で私を連れ回すし、そうでない時はほったらかしだ。
 おかげで彼のお気に入りだった女性たちからは毎回「殺すぞ」「楽に死ねると思うな」みたいな視線を向けられることが多かったのだが、なんにせよ彼は他人に世話を頼むようなタイプでもない。

「え、だって君普通に自炊とかできるでしょ? ていうか、他人のこと側に置きたいタイプでもないだろうし」

 というのは、鳴海本人から聞いた言葉である。
 組織のスパイとして長年あらゆる人間に擬態して生きてきたこともあって、他人とは必ず一線を引くような関わり方をしてきた。
 誰かに頼ったり、依存したりしたらすぐに都合よく使い潰される。
 そういう世界で生きてきたことを鳴海は知っている――そんな彼が、側近とはいえわざわざ他人に私のことを託すだろうか。

(……怪しい)

 これまでの勘と経験が、これは明らかに罠だと告げていた。
 とはいえここは何の変哲もない高層マンションで、そんなところで荒っぽいことをしたら――そこまで考えて、内心で深いため息をついた。

「……わかりました。じゃあ、今開けますね」

 顔に笑顔を張り付けて玄関のドアを開ける。
 すると、体格のいい『側近』がぺこりと頭を下げ――そして、お腹のあたりに銃を突き付けられた。

(……やっぱり)

 ある程度の覚悟はできていたので驚きはしなかったが、相手は恐らく私のことを何も知らない。
 そういう風に生きてきたのだから、きっと向こうはこちらを一般人と思っているに違いない。

「な、なにをするんですかっ! や――これっ……!」
「大人しくしろ! 大声を出せばこのまま打ち抜くぞ」
「っ……」

 怯えたふりをして肩を竦ませると、その男はこちらに銃を突きつけたまま背後に目配せをした。
 するとそこから、細身の男が二人部屋の中へと踏み入ってくる。

「なっ……」
「やれ」

 短い命令を受けた二人の男のうち、一人は私の体を羽交い絞めにする。
 そしてもう一人は、懐から小さな注射器を取り出し――その針の先端を、ブツッ……とこちらの腕に突き刺してきた。

「ぐっ――」
「悪いな。アンタにゃ恨みはないが、こっちも仕事なんだ。せいぜいあの鳴海とかいう下衆野郎を恨んでくれや」

 そんな声と共に、急速に意識が遠ざかる。
 ――わけがなかった。
 鳴海に使われた薬は界隈にほぼ流通していないものだったので手も足も出なかったが、有名どころの薬物には大概耐性を持っている。
 動きは鈍くなるが体が全く動かなくなるわけではないし、薬が抜けるまでの時間も普通よりは短くなるはずだ。

(とりあえず、このまま様子を見るか……)

 彼らが一体どんな人間で、何の目的があってこんなことをしたのか。
 それを探るため、私は呼吸の回数を極端に減らして体を脱力させた。こうするとあまり思考が回らなくなるので、単純なことだけを考えているしかない。

「……やったか?」
「はい、眠ったみたいです。――この後はどうしましょうか?」
「連れて行って適当に嬲れだとよ。犯してもいいが殺すなってのがクライアントからの命令だ」

 ひときわ低い声の『側近』の言葉を、注意して聞いておく。
 クライアントということは、やっぱり誰かが彼らに私を襲うよう頼んだということか。

(鳴海が飽きて私のことを消そうとするなら、こんな回りくどいことはしないはず……)

 そもそも私の耐性がない薬を盛っていたのだから、殺そうと思ったらいくらでもできるはずだ。
 ――正直、これで彼が望んでいるというのなら、このまま死んであげようかとも思った。
 私が邪魔で、いなくなった方がずっと彼のためだというのならそれでもいいと思っていたのだが、そうでないのならば手加減をする必要はない。

「えっ、抱いていいんですか?」
「後でだ、後で。えーと、顔を二目と見れぬように殴っておけってことらしいが……本当にこの女、なにしたんですか」

 恐らく抱えられているのか、足がぷらぷらと不安定に動く。
 これでこのまま蹴り飛ばしたらどうなるんだろうと考えたが、少なくともここで事を荒げるつもりはない。
 注意深く、眠りの淵に引きずり込まれないように気を付けながら、彼らの会話に耳を傾けた。

「この前ウチのことさんざん嗅ぎまわってた組織あるだろ。あそこの構成員らしい……が、クライアントの私怨だろうな。ほらアイツ――モデルだかなんだかで」

 バタンッと音がしたので、車か何かに乗せられたのだろう。
 それにしても、私が組織の人間であることまでバレているとは――心当たりはいくつかあったが、一番考えられるとすれば先日の……鳴海に抱かれた時、椅子に縛り付けられていた彼女だろうか。

(いや、他にも想像はつくけど……)

 鳴海の女性関係はとにかく派手なので、心当たりは十二分にある。
 私が普通の人間ではないこともしっかりとバレていることを考えると、この後どう動くかを更に考えなければならない。

「殺しちゃダメってのがなぁ。普通ならさっさと首なりなんなり落とすだろ」
「女ってわからんよなぁ。殺すよりボコす方がいいんだと」

 ゲラゲラと下品に笑う男たちの声が、鈍い頭に響いて不快だ。
 とはいえ、薬が完全に抜けるまでまだ時間がかかる。車がどこかへ停まり、もう一度体が担ぎあげられても、しばらく抵抗はしないでおいた。

「――よし、水ぶっかけて起こせ」
「ッス……オラ、起きろ!」

 バシャッと音がするのと同時に、冷たい水を思い切り顔に浴びせられた。
 これがちょうどいいタイミングだと目を開いて、わざとらしく咳き込んでみる。

「う……ぇ、ゲホッ……」

 ……もう少し。さっきと比べたら少しは体が動きそうだが、指先の感覚がまだ鈍い。
 私の体は先日女性のように椅子に縛り付けられている――これで鎖で雁字搦めにされていたら動けなかっただろうが、お粗末な木製の椅子と荒縄に勝機が垣間見えた。
 頭の中でいくつかの数字を思い浮かべてそれを足したり引いたりするのを繰り返していると、そのうち頬が熱くなった。

「うぁ、ッ! や――やめて、ぇ」

 バチッと頬を張られ、弱々しい声を出す。
 すると、周囲を囲む数人の男たちがゲラゲラと笑い声をあげた。

「やめてぇ、だってよ!」
「悪いな~! これも仕事なんだよ――オラッ!」
「う、ぐぅっ」

 もう一度、思い切り顔を張られる――腹が殴られるよりはまだマシだ。
 組織の中では、何度も肉体的拷問に対する訓練を行ってきた。殴られた瞬間と声を上げるタイミングを間違わないようにしながら、私はしばらくの間責め苦に耐えた。

(いち、に……ここにいるのは四人……手に銃は持ってない。薬物もほぼほぼ抜けたし――奥に誰もいないなら、単独制圧は可能か)

 ここで銃を出されていたらまず勝てないが、携帯しているにしても今手に持っていないならば奪うことができる。
 しばらく水をかけられたり、髪を引っ張られて殴られたりを繰り返しながら好機を待つ――と、男たちが卑猥な言葉を言いながらこちらを揶揄し始めた。

(冷たい、けど……おかげで頭が冴えてきた)

 ――動ける。
 一番感覚が鋭敏な指先の感覚が戻ったら、殴られるついでに身じろぎをして縄抜けをすることができる。
 縛られ方も然程キツいものではないので本当にプロなのかと疑いたくもなったが、彼らは金で雇われた末端だったりするのだろうか。

(まぁ……元軍人相手とかじゃなくて、よかった)
「っふ……」
「あっ、おい!」

 するんっ、と縄が解けた瞬間、それに気が付いた一人が声を上げる――が、一息で顎を蹴り飛ばす。

「ッ! 動くな!」
「悪いけど、帰らなくちゃいけないの……多分鳴海がびっくりしてると思うから」

 顎を強打して意識が飛んだ男の腕を振り回して、もう一人の男を弾き飛ばす。相手方は後二人――残っているのは若く経験も浅そうな男ばかりなので、銃を抜かれる前に殴り飛ばしておいた。

「……ふぅ」

 制圧完了。
 多分縄抜けをしてから、時間は五分もかかっていないだろう。
 こういうところでチマチマ時間をかけていても仕方がないし、戦闘訓練をしっかり受けているわけではないからそこまで高速で制圧できたというわけでもない。

(どうしようかな――ここで、殺してもいいけど)

 多分四人とも銃を携帯しているだろうから、やろうと思えば四人の頭を打ち抜くことは可能だ。

「……帰ろ」

 ふー……と息を吐いて、出口に向かって歩き出した。
 本来だったら頭を打ち抜いて顔がわかるようにして殺すか、建物に火をつけて跡形もなく燃やすかのどちらかなのだが――今回は、殺すのはやめておいた。
 顔を思い切り殴られたのをスイッチにして無理矢理体を興奮状態にしたので、今になって頬が痛くなってきた。

(市販の痛み止め効かないからなぁ……)

 薬に対する耐性があるとこういうところで不便だ。病院にかかろうにも説明が面倒だ。
 もう完全に薬は抜けてるだろうし、さっき運ばれてきた車に乗って帰ろうか――そう思って建物を出ると、そこには明らかな高級車とわかる車体の低い車が一台。

「……鳴海」

 そんな車を乗り回している人間なんて、私は一人しか知らない。
 車のドアが開くと、そこから薄い笑顔を浮かべた鳴海が出てきた。

「探したよ。家につけてるカメラ見たら、君がいないんだもの」
「――そ、その割にすぐに来てくれたんだ」
「まぁね。……君のこと売った女の子と、ちょーっとお話させてもらったんだ」

 にっこりと微笑んだ鳴海が何をしたのかはちょっと想像したくなかったが、とにかくやれるだけ情報を吐き出させたうえでここに来てくれたらしい。
 まさか迎えに来てもらえるとは思えなかったから、彼の姿を見て一気に力が抜けてしまった。

「しっかしひどい格好だな……これから一緒にディナーに行こうと思ってたのに。そうだ、今からドレス買いに行こうか」
「や……いらない。お風呂入りたいかも……」

 たっぷり水を引っかけられたせいで寒いし、服もびちゃびちゃだ。
 ドレスよりなにより温かいお風呂――そう言うと、鳴海は眉を片方上げてニヤッと意地の悪い笑みを浮かべた。

「大胆なお誘いだね。じゃあホテル取るから乗りなよ」
「そ、そういうわけじゃ……!」
「服濡れ透けしまくってるし、今からたっぷり一週間ホテル籠りのお誘いじゃなくて?」
「そんなわけな――って一週間!?」

 なんか今とんでもないことを聞いた気がする――驚く私をからかうように笑う鳴海の横顔がなんとなく安堵しているように見えたのは、多分気のせいだろう。
 そして結局、私は本当に一週間ホテルで軟禁……もとい療養させられ、外に出た頃には住む家が変わっていた。
 これまで住んでいた鳴海が所有する高層タワマンではなく、高級住宅街にある低層レジデンスに――そこから二、三か月に一度は鳴海の都合で引っ越しをさせられ、今に至る。
 ……もう彼に捕まってから半年。鳴海が一月に渡って上海にいた頃はそちらに住まわせられたし、秋口にはパリに行くから準備をしておけとまで言われた。

「京都にある別荘、しばらく使ってないからあげる」
「……はぁ」

 そうして、彼はまた気まぐれに私の元へとやってくる。
 三日に一度の時もあれば半月訪れがないこともあるし、その頻度は本当に彼の気分次第でまちまちだ。
 ただ――最近は、鳴海のそばを歩いていても悪意のある視線に晒されることがなくなった。見知らぬ男たちに捕らえられたあの一件から、鳴海は自らの周囲に置く人間を極端に制限し始めたのだ。

「おじいさまに買ってもらった初めての別荘だから、大事に使ってね。グレネードランチャーでぶっ壊したりとかしたらすごい泣くから。俺が」
「ぶ、ぶっ飛ばしたりしないってば……」

 大体そんな大切なものを人に預けるな、と言いたいが、長らく使っていない別荘ということで、思い出はあるが持て余しているのかもしれない。
 ソファに座る私の膝に頭を載せたまま、鳴海はふーっと息を吐いた。

「ねぇ、アレ取って。プロジェクターのリモコン」
「……はい」

 大きめの商談が終わった、と家にやってきてダラダラとしている鳴海に、所望された通りリモコンを手渡した。
 映画でも見るのかと思って部屋の照明を落としてあげると、彼はそのリモコンを弄って白い壁に映像を投射し始めた。

「――見て、コレ。彼女のこと覚えてる?」
「っ、え――」

 気怠い声と女性の悲鳴が、一緒に耳に飛び込んできた。
 壁一面のスクリーンに映し出されているのは、どこかで見た女性の姿――髪を振り乱して泣き叫んでいるのは、以前鳴海を探して社長室に押しかけてきたあの女性だ。
 裸でどこかの部屋に転がされている彼女に馬乗りになって、体格のいい男が拳を振り上げているのが目に入った。
『やめて……も、もうやめて、ください――ッあ゛、ッ」

 バキッ、と音が聞こえて、女性の顔が殴られる。
 あちこちに青あざがついたその人は、目を大きくはらして泣きながら何度もやめてくれと懇願するが――それもむなしく、甲高い声が響き渡る。
『トウガに喧嘩売ったんだ、これくらいの覚悟はできてんだろ? なぁ?』
『ッあ゛、ぐ――い、いやっ! や、だ、だすげ、ェッ――』
 元は美しく、自信に満ち溢れていたであろうその女性の上に跨った男が、乱暴な動きで腰を動かしている。
 殴られながら凌辱され、何度も助けを求めているその様子に、私は思わず目を伏せた。

「……鳴海、これって――」
「君のことどっかに売った、ケツと頭の軽い女の子。なんだっけ、名前忘れちゃったな」

 淡々とそう言い捨てた鳴海は、悲鳴が飛び交うスクリーンから私の方に視線を向け、キラキラとした目を楽しそうに細めた。

「男一人にコレじゃ情けないね。君は男四人に囲まれても自力で脱出してきたのに」
「そ、れは――まぁ、向こうも油断してたんだろうし……」
「そう? まぁ、君だって本職だったからな――でも悲鳴まで汚いとか聞いてらんないね。手ェ切って正解だったかも……まぁ、彼女が君を売った奴らは、こっちで落とし前つけさせたからさ。向こうも向こうで、報復しないと面子が保てないだろうし」

 この世界狭いんだよ、と冷たく笑う鳴海の表情に、背筋がゾッとした。
 つまり――彼女のことを犯しながら殴っている男は、彼女が私を売った相手ということか。

(藤我インターナショナルを敵に回したら、裏社会でもやっていけない――その報復のために、彼女は……)

 映像をまじまじと見る気にはなれなかったが、やがて彼女は薬を打たれ、複数の男たちに犯されながら泡を吹いてぐったりとし始めた。
 仕事柄そういう光景をまるで見たことがないわけではなかったが、平穏な時間が長く続いたせいか些か心が痛む。

「……私のせいだ」
「そんなわけないでしょ。あのね、自分で自分の尻拭いができない奴は勝手に自滅するんだ――身の丈をわきまえずに振舞った結果がアレだから、自業自得だね。藤我をコケにした以上は、そのツケを払ってもらわないといけないし」

 つまんね、と心底飽きたように呟いた鳴海が、もう一度リモコンを操作して映像を消してしまった。
 ――耳の奥にはまだ、女の甲高い悲鳴が残っている。

「俺の大切なものを、滅茶苦茶にしようとしたんだから」
「っ……」

 蕩けるように笑って、彼は私の腕を引く――そこはかとない罪悪感に背中を押されて体を屈めると、そっと唇同士が触れあった。
 囚われてしまった。
 絶対に逃げられない鳥籠で、鍵は鳴海だけが持っている。
 いずれ彼が私に飽きて、その鍵を手放さなければ自由になることなどできはしない。

(あぁ、でも……)

 その時が永遠に来なければいいのに。
 凄惨な記憶に蓋をするようにして、私はまた彼の腕に堕ちる。
 ――そうして何度夜が来て朝を迎えようと、鳥籠の扉は閉ざされたまま。私が鳴海の腕から解き放たれることは、一度もなかった。