Skebでご依頼いただいた、婚約破棄されてすべてを失った悪役令嬢がずっと彼女に焦がれていた貴族の青年に溺愛されるお話
王室主催のパーティー――その主役はもちろん私だ。
ヴィスコンティ公爵家の一人娘、そして王位に最も近いと言われている第二王子ジオヴァンニ様の婚約者。つまりは未来の王妃を約束された人間。それがこの私、ルイーズ・ディ・ヴィスコンティだった。
「見て、ヴィスコンティ公爵令嬢よ……またすっごいド派手なんだから……」
「いくらジオヴァンニ様が王妃様の子だからって、第一王子ののアレッサンドロ様を差し置いてアレは――ねぇ?」
軽快に、まるで水面を走る小鳥のごとく踵を鳴らして歩く。
下々のさえずりなんて、私の心には一切届かない。誰がどれだけ羨もうと、誰からどんな嫉妬を向けられようと、高貴な立場にある者はいちいちそんなことに気を取られてはいけないからだ。
(そう――おじいさまだって、そう言っていたもの)
伝統と格式あるヴィスコンティ公爵家。過去にも何人も王妃となる人物を輩出してきたこの家に生まれた私の役目は次期国王の妻になることだった。
七歳で第二王子のジオヴァンニ様と婚約をして、十八歳になる今日まで妃教育を受けてきた。
第一王子のアレッサンドロ様は、先に生まれはしたものの母親は立場の低い側妃――血統でいけばジオヴァンニ様が王位を継承するのが妥当と考えたおじいさまが、彼の後ろ盾となるために私との婚約を進めたのだと聞いている。
(偉大なおじいさまに恥じない振る舞いをしないと……ヴィスコンティ公爵家の娘が、他人に舐められるなんてあってはいけないことだわ)
お前は王妃となるのだから、決して他人に頭を下げてはいけない。
妃の格を落とすということは、国の格を落とすことと同等だ――おじいさまは私が九歳の頃に亡くなったが、その教えは私の胸の中にずっと生きている。
そう。私は誰にも支配されないし、おもねらない。
誇り高く、気高くあること。それがこの国の次期王妃たる、私の使命だった。
――そう、ずっと思っていた。
「……今、なんとおっしゃったのです。ジオヴァンニ様……」
「だから、お前との婚約は破棄だ。破棄。傲慢で高慢で、顔はいいが性格は最悪……母上の命令で婚約はしたが、正直今のヴィスコンティ公爵家とつるむ利点がない」
にこやかに、母親譲りの美貌をそれは美しく笑みの形に整えたジオヴァンニ様が、吐き捨てるようにそんなことを言う。
その傍らには、勝ち誇ったように笑う赤毛の女――メイデリア伯爵令嬢が、まるで寄り添うように立っていた。
「お前の実家の無茶も聞いてやったつもりだが、王家の名を借りた事業も投資もぜーんぶ失敗。バカみたいな損害を出しても、自分たちは次期王妃の親だからと開き直る。……正直面倒を見るのもバカバカしくなったんだよ」
「それ、は――お父様が、そのようなことを?」
正直に言えば、お父様の政治的な手腕はそれほどではない。
偉大なおじいさまの陰に隠れて、いつまでもうだつが上がらないことを気にしているようではあったが、彼はそこでただ座っているだけでよかった。
だって、私は次期王妃。
王妃になれば、お父様はもう何もしなくていい。亡くなったおじいさまを超えようと、無茶をする必要もない。それなのに。
「その阿呆面! まるで話を聞かされていなかったみたいだな、ルイーズ? 先代公爵はともかく、お前の父親もお前も、つくづく愚かしい」
嘲笑うようなその声に、周囲の貴族たちも小さく笑う音が聞こえてくる。
――違う。これはなにか、悪い夢に違いない。だって、だって私は。
「第二王子、ジオヴァンニ・ロア・サヴォイアの名のもとに、ヴィスコンティ公爵令嬢ルイーズ――お前に婚約破棄を申し出る」
足元が、まるで氷が割れたようにふらつく。
ぐにゃりと視界が歪んで、勝ち誇ったようなあの女の笑みが、貴族どもの笑い声が、体中にまとわりついて離れない。
「……連れていけ。その女は用済みだ」
呆然と立ち尽くす私に向かって、ジオヴァンニ様がなにかを言っている。
言葉の意味が理解できないままでいる私の周囲を、衛兵たちが取り囲んだのはそのすぐ後だった。
「な、なにを――放しなさい! この下郎ッ!」
「失礼します、公爵令嬢。……ジオヴァンニ殿下のご命令です」
両脇を屈強な衛兵たちに抱えられ、私はまるで引きずられるように会場から連れ出された。
――嘘だ。こんなの、夢に決まっている。
だって私は、ずっと……ずっとおじいさまの言いつけを守って生きてきたのに。
この国の王妃としてふさわしい教育を受け、そう振舞うことが私の役割だと思っていた。
「い、いやっ……放して! 放しなさい! 私を誰だと思っているの! お前たちが手を触れていい人間ではないのよ!? 私は……私は――」
「……あなたは、ヴィスコンティ公爵令嬢」
なんとか腕を振り払おうとしても、男の力に勝てるはずがない。
悲鳴を上げても人は来てくれず、恥を晒すくらいならば舌を噛み切って死んでやろう――そう思った矢先、低い声が鼓膜を打った。
「ご苦労。彼女のことはこちらで引き取る」
「あなたは――い、いえ、しかしこれは我らが命じられたことでして……」
「承認は得ている。アレッサンドロ殿下から、直々のご命令だ。ジオヴァンニ殿下に文句をつけられたら、そう答えて構わない」
足を止めた衛兵に、その人は淡々とした口調で命令を下す。
神経質そうな冷たい水色の瞳と、それを覆う銀縁の眼鏡。同じ色の銀髪はこれまた几帳面にまとめられていて、まるで睨みつけるように衛兵たちに視線を投げつける。
「二度とは言わん。下がれ」
「は、はいっ! かしこまりました……!」
地の底から響くような声で彼が命じると、衛兵たちは敬礼をしてその場から立ち去っていく。
……顔を見ても、名前がでてこない。だが、彼の口から出た言葉にはよく知る名前が上っていた。
「……アレッサンドロ、殿下? あなた、一体――」
「オッタビオ……オッタビオ・ロッシ・オルトラーニと申します。オルトラーニ侯子……いえ、今の身分は、アレッサンドロ第一王子の首席秘書官です」
恭しく腰を折った銀髪の男は、自分の名をオッタビオと名乗った。
第一王子のアレッサンドロ様は、先ほどまで私の婚約者だったジオヴァンニ様の腹違いの兄だ。母が側妃であること、さらにその母が男爵家の出身であり、後ろ盾がないことから王位継承権はジオヴァンニ様よりも一段低いと目されている。
「っ……アレッサンドロ様の秘書官が何の用かしら? 先ほどの無礼者どもを退けてくれたのには礼を言うけれど、まさか私のことを捕えに来たの?」
「いえ、決してそのようなことは――私はただ、あなたを迎えに来ただけです」
人のない、王城の渡り廊下。
氷に似た水色の瞳が、まるで刺すように私のことを見つめてくる。
その視線にどことなく居心地の悪さを感じて、私はキッとオッタビオのことを睨み返した。
「迎えに?」
「はい。……王命により、正式にジオヴァンニ殿下とあなたの婚約は破棄されました」
相変わらず感情を感じさせない、淡々とした物言いだ。
言われずとも、そこに国王陛下が介入したというのは理解している。ただの貴族の婚約ならばともかく、第二王子の婚約に関しては国王陛下の許可が必要だ。
「改めて言葉にせずとも、理解しているわ。……本題はなに? 無駄な話は嫌いなの」
「では、端的に申し上げます。ヴィスコンティ公爵令嬢ルイーズ様……あなたは現在この時点をもって、このオッタビオとの婚姻関係が成立しました」
「……は?」
……言葉の意味が理解できない。
先ほどもジオヴァンニ様が何を言っているのかが理解できなかったが、あれと同じだ。
「じょ、冗談で言っているなら……」
「いいえ。これは勅命です。陛下とアレッサンドロ殿下、ご両名のサインが入った書類がこちらに」
差し出された書類を、端から端までくまなく確認する。
――そこには確かに、国王陛下のお名前とアレッサンドロ殿下のお名前が連なっていた。そして、書いた覚えのないサインと共に、彼との結婚が証明されている。
「う、うそ……こんなもの無効よ! 私はこの書類、一つもサインなんてしていないわ!」
「サインの偽造くらいは容易いものです。そしてあなたのサインは、このお二人の名のもとにはさほどの効力を持たない」
そこでようやく、薄い唇がニィ、と吊り上げられた。
文書の偽造、それも国王陛下を騙すなんて極刑ものだ。
背中に冷たいものが伝うのを感じながらその罪を糾弾しようとすると、オッタビオはすっと腕を伸ばして私の手首を掴んできた。
「陛下はすべてご存じです。それに、最早あなたにはなにもない――公爵家当主の無能を公衆の面前で暴かれ、あなた自身は婚約を破棄された。先代公爵が生きていた時代ならばまだしも、今のあなたに助け舟を出せる人間などどこにもいないのです」
薄い笑みを張りつけながら慇懃無礼な言葉を吐くオッタビオに、怖気が走る。
温厚な第一王子のそばに、こんな陰険な側近がいたなんて知らなかった。
「そう……あなたの夫である、私を除いては」
「夫、なんて……馬鹿を言わないで! 大体、オルトラーニ侯爵家は我がヴィスコンティ公爵家よりも家格が下じゃない!」
「そうですね。ちなみに私は次男なので、オルトラーニ侯爵家を継ぐこともありません。次期侯爵の兄には子もおりますので」
それが何か問題でも、と言いたげな表情でそう吐き捨てたオッタビオに、腹の底から怒りがこみあげてくる。
随分と甘く見られたものだ。そもそも家格で釣り合いが取れていないのに、彼自身は爵位を継ぐ予定もない――第一王子の側近であるため叙爵される可能性はあるが、それでも彼の実家との釣り合いをとるのなら、せいぜい伯爵家あたりが関の山だろう。
(ありえない……だって私は――)
「あなたに、選択肢があるとお思いで? なんとも愚かで、なんとも浅薄極まりない」
薄く微笑んだままのオッタビオは、一度眼鏡のブリッジを指で押さえると、私の目の前に指を一本立てた。
「だが、そんなところも愛しい。……あまり、抵抗はなさらない方がいいですよ。王命に背けば最後――あなたの命は保証できない」
「なに、ぁっ……」
パチ、と、目の奥で何かがきらめいたような、妙な感覚があった。
それなにかを理解した時にはすでに遅く、体からは力が抜け、膝から床に崩れ落ちてしまう。
(これは――魔術……? 体の自由を奪う魔術なんて、そんなもの……)
体を一切傷つけることなく、その動きを奪うだけの魔術。あまりに高度であまりに危険であるため、準禁術指定がされているはずの拘束魔術が、無詠唱で発動した。
予備動作がほとんどなかったため、とっさに術の発動を防ぐことができなかった――そのことに歯噛みしながら地面に座り込む私に、オッタビオはゆるい笑みを浮かべたまま言葉を続ける。
「オルトラーニ侯爵家は、この分野で家名を上げた魔術の大家。この程度で驚いていただいては困ります。さぁ――帰りましょうか、ルイーズ」
「か、える……?」
「そう。……公爵邸にではありませんよ? ちゃんと、あなたと暮らすための家を用意したのですから――」
オッタビオは更に何かを続けて言っていたが、頭の奥がぼんやりとして言葉が聞き取れない。
まるで目隠しをするように瞼が下りてきて、視界が暗くなる――意識を失うその瞬間に聞こえたのは、誰かが私の名を呼ぶ声だった。
● ● ●
「……ここ、は…………?」
次に目が覚めた時、私の目の前には見慣れない天井が広がっていた。
最初は自分の身に何が起きたのかも理解できなかったが、冷静に記憶を思い起こすと、頭痛と共に嫌悪感が込みあがってくる。
(そうだ――拘束魔術をかけられて、それから……)
家に帰ると言っていたから、ここはオッタビオの自宅だろうか。ゆっくりと体を起こして周囲を見渡すと、広い部屋の中には誰もいない。
貴族の邸宅にしては些か調度品も少なすぎるように思えたが、転がされていたベッドの大きさや部屋の広さは十分すぎるものだった。
(オッタビオがいない……? 私がまだ目を覚まさないと思って、外に出ているのかしら)
それならば好機だ。なんとかして、窓やバルコニーから外に出られないだろうか。お父様に助けを求めることができさえすれば、後は万事うまくいく。
(許さない……ジオヴァンニ様も、あの女も――勝手に婚姻証明を偽造した、オッタビオも……!)
ずたずたになったプライドは、どんな豪奢な宝石だって癒せない。
だけど、家に戻ってお父様にこのことを話したら――きっと、何とかしてくれるんじゃないか。
一縷の望みを抱いて立ち上がろうとした私だったが、その瞬間にぐんっと首のあたりが苦しくなる。
「かはっ……! あ、な……なにこれっ……!」
首のあたりが、まるで締め付けられたように苦しくなる――思わずその場所を爪で引っ掻くが、そこにはなにも嵌められてなどいなかった。
(だとすればこれは――また拘束魔術?)
不可視の首輪に繋がれた私は、抵抗もできずに寝台の上で歯噛みするしかない。
忌々しい――真正面から魔術を破ることが不可能というわけではなかったが、私が妃教育で叩き込まれた魔術ではコレを突破することはできないだろう。
「……目が覚めましたか?」
せめてこの魔術を無効化する手段はないか。そう考えこんでいると、ガチャリと部屋の扉が開いた。
顔をあげると、相変わらずの不愛想な表情を浮かべたオッタビオがそこに立っている。
「オッタビオ……」
「おや、名前を憶えてくれたんですね。光栄です」
「なんのつもり? こんな――拘束魔術なんてかけて……私は動物ではないのよ!」
「首輪のことですか? 目が覚めて、あなたが暴れてはいけないので……痕がついてしまうといけないので、魔術での拘束にとどめました」
坦々としていて、温度を感じさせない声音。
こんな男が私の夫だなんて、どうあっても信じたくない――上着をかけて近づいてくる銀髪の男を睨みつけながら、私はどこか逃げ道がないかと視線を巡らせた。
「無駄ですよ。あなたの考えていることは、大体予想がつきます……ここは邸宅の三階で、私はこれでも魔術の熟達者です。アレッサンドロ殿下から特例免状を交付されているので、禁術の行使も可能だ」
「は――と、特例免状?」
「オルトラーニ侯爵家の人間は、成人すると交付されるんですよ。兄は国王陛下の近衛魔術隊長として、私はアレッサンドロ殿下の秘書官として――無詠唱での準禁術、さらに略詠唱での禁術発動まで許可されています。頭の中を弄られたくないなら、大人しくしている方が賢明ですよ」
とん、と指先でこめかみのあたりを指したオッタビオに、背中がゾクッ……と震えた。
これが他の人間ならば、何を馬鹿なことをと鼻で笑えたかもしれない。だけど、この男は先ほど実際に、無詠唱での準禁術発動を行ったのだ。しかも、私に向けて。
「それに、すでに私とあなたの結婚は承認されてしまいましたので……今日からあなたは私の妻で、この屋敷の女主人だ」
「ふざけたことを言わないで! 私はジオヴァンニ様の――」
「ジオヴァンニ様は、正式にメイデリア伯爵令嬢との婚約を発表しましたよ。あのバカ王子……いえ、奔放なジオヴァンニ様らしい」
すぅ、と目を細めたオッタビオが、几帳面になでつけた髪をぐしゃりと崩す。
やや荒い手つきで髪を乱した彼は、寝台の上にあがって指先をパチン、と鳴らした――その瞬間、部屋の明かりがほとんど落ちる。か細い光のランプだけが薄暗い部屋を照らしていて、月光を跳ね返す彼の瞳はどこまでも冷たい。
「諦めなさい。あなたの望んだ栄光はその手から滑り落ちてしまった……その代わりと言ってはなんですが、あなたのことは私が幸せにします」
「馬鹿な、ことを……大体、私はお前のことなんて何も知らない! 今日初めて会ったばかりの男と結婚するなんて――」
「私は、あなたのことをよく知っていますよ」
水色の瞳が、大きく揺らめいた気がした。
肉のついていない手のひらが私の手をぎゅっと握ってきて、頭の奥が重くなる。また妙な魔術をかけられたのか――全身に力が入らずに倒れ込んだ私に覆いかぶさって、オッタビオは自らのシャツに手をかけた。
「ずっと知っていました。遠くから見ていることしかできなかったが――やっと、私のものになる」
……違和感に気付いたのは、その時だった。
冬の泉に張った氷のような瞳が、滾るような熱を孕んでいる。ぱさりと乾いた音を立てて脱ぎ捨てられたシャツの下から白い男の肌が現れて、眩暈がした。
「い、や……お願い、嫌だ――オ、オッタビオっ……!」
「暴れてもいいですよ。どうせ体は動かないでしょうし……どれだけ声を上げても、外には聞こえませんから」
ビッ、と嫌な音がしたかと思うと、着ていたドレスが見えない刃によって切り裂かれる――私の金髪が映える真っ赤なドレスはあっという間に無残に切り裂かれ、ただの布になって寝台に散らばっていく。
「いや、ぁっ……! やだ、助け――ひっ、助けてっ……!」
「大丈夫ですよ。魔術の刃ですから、決してあなたの肌は傷つけない」
「嫌だ! 嫌ァっ!」
大丈夫なんかじゃない。
見えない刃に着ているものを切り裂かれる恐怖と、これから何をされるのかという絶望で、私は必死に声を上げた。体は動かしたくてもこれっぽっちも動いてくれなくて、自由にできるのは声帯だけだったから――声が届かないと言われても、必死に必死に、何度も助けを求めて悲鳴を上げ続ける。
「助けて! お父様! おじいさま! いや――嫌だ、触らないでよ! この無礼者! 助けて……嫌だ、ジオヴァンニさまっ……!」
「――ですから、無駄だと言ったでしょう。あなたが助けを求める男は、今頃メイデリア伯爵令嬢と……こうして、同じことをしているんじゃないですか?」
チッ、と苛立たしげな舌打ちが聞こえたかと思うと、ひときわ大きな音が聞こえて完全にドレスが破れてしまった。
「や――」
「愚かなあなたを愛しくは思います。でも、その唇から他の男の名前が出るのは、あまり好ましくはありませんね」
下着すらも見えない刃に切り裂かれ、体を隠すものが無くなってしまう。
羞恥で身を捩りたくともその自由はなくて、私は目に涙をためて屈辱に耐えるしかなかった。
(だめ……泣きたくない……! こんな男の前で、涙を見せるなんて……!)
どうして、私ばかりがこんな目に遭わなくちゃけないのだろう。
私は何も悪くない。おじいさまに言われた通り、この国の王妃にふさわしい人間になろうと――そう、努力してきたのに。
「言葉の意味が理解できましたか? そう、大人しくしていれば酷いことはしません。私だって、あなたのことを好ましく思っているのですから」
長い指先が唇に触れ、まるで愛でるようにその場所を撫でられる。
得体の知れない感情を向けられ、私の意志を無視した行為を進められようとするなんて、到底受け入れられるはずがない。
黙り込んでいると、オッタビオは身を屈めて私の唇に自分のそれを押し当ててくる。一瞬びくんっと肩が跳ねたが、そこにあるのは快感ではなく嫌悪感ばかりだった。
「ぅ……ッ」
ジオヴァンニ様とも、キスなんてしたことがなかった。
婚姻を結ぶ前に互いの肌に触れてはならない。おじいさまにもそう言われていたし、ジオヴァンニ様もそれに賛成だと言っていたから。
「い、ぅうっ……ん、ぐっ」
唇を押し付けられるだけでもおぞましいのに、舌先がまるで抉じ開けるように唇の合わせ目をなぞる。
なんとか拒絶しようとしても、魔術で体の自由を奪われている私に抵抗はできず――やがて、ちゅっ♡と小さな音を立てて舌が咥内へと潜り込んできた。
「ん゛ふ、ぁ……♡やっ……ん、ぐぅっ」
ぢゅ♡ちゅぽ♡♡ぷちゅっ♡ちゅぅっ♡ちゅ♡ぐちゅっ♡♡
蛇のように咥内に潜り込んできた舌が、縦横無尽に動き回って粘膜を擦り上げる。
今日初めて会った男に咥内を犯される感覚はひたすら恐ろしく、奏でられる水音がただただおぞましい。
「ん、はっ……」
呼吸も許されないような濃厚なくちづけが終わると、私の両目からはボロボロと涙がこぼれていた。
悔しい。こんな男に、自分の弱いところを見せたのがたまらなく悔しい。
抵抗もできず、ただ奪われるだけだなんて――栄光に満ちていたはずの私の人生で、あってはならない屈辱だ。
「泣き顔も美しい。……あなたのこの翡翠の瞳が、とろけてこぼれ落ちているみたいで――」
ちぅ、と涙を唇で受け止めたオッタビオが、指先を体の上へ這わせてくる。艶めかしく体に触れられながら舌先で目尻を舐められて、涙は止まるどころか次々と溢れてくる。
「拒めば手酷く犯します。無論、あなたを傷つけるのは本意ではないので……わかってください。ルイーズ」
「いや、だぁっ……! 触るな! お願い――触らないでッ……!」
長い指先が、乳房に伸びる。
誰にも触れられたことがない、女らしい丸みをなぞられて、体が震えだす。
恐怖に震える柔肉に触れたオッタビオは、そっと指先を乳房に沈め、やんわりとその場所を揉み始めた。
「ん、ゃあっ……!」
「あまり嫌だ嫌だと言われると、私も傷ついてしまいます。……快楽の感度を限界まで上げてみましょうか。そうすれば、今に自分から触れてくれと腰を振り出すはずだ」
「ひ――」
ゆっくりと伸びてきた手が、私の目の前でにわかに光を帯びる。
また、無詠唱の魔術――人の感覚に作用する魔術は拷問にも応用が利くので、これもまた禁術とされていた。
「さぁ、私のルイーズ……このまま従順に、私の愛を受け止めてくださいね」
ずれた眼鏡を押さえたオッタビオが、胸の頂をピンッ♡と指先ではじく――その瞬間、ビリビリッ……♡と全身を甘い痺れが駆け抜けていった。
「んや、ぁぁあっ♡♡」
その瞬間、がくがくがくっ♡と体中が大きく痙攣する。
同時に頭の中が焼き切れてしまうんじゃないかと思うほどの快感が襲ってきて、一瞬呼吸ができなくなった。
「ぁ゛♡あ、ぅっ♡♡ひ♡やだ、ぁあっ♡♡」
「おっと――感度を上げすぎましたかね? ふふ、随分と可愛らしい声で啼く……でもこのままじゃ、すぐに廃人になってしまいます。少し感度を下げますね?」
「ひ、ぃっ……♡いや、ぁっ――やだ♡あ、あたま♡頭弄んないでぇっ……♡♡」
自分の体なのに、まるで自分のものじゃないみたいに感覚を弄られる。
とてつもない快感と恐怖に襲われながら、私はいやいやと何度も首を横に振った。
「大丈夫ですよ。痛いことはしませんから」
「やだ……さ、わらないでぇっ……! あ♡ゃ゛、やだ、ぁっ……♡♡」
くに♡くに♡♡と乳首を指で捏ねまわされても、先ほどのような強すぎる快感は訪れない。
けれど、確実にその快楽は私の中に積みあがっていく。嫌いな男に体を暴かれ、あまつさえそれで感じているなんて――悪夢なら覚めてほしい。そう願いながら首を振り続けると、オッタビオはギリッ……と奥歯を噛んだ。
「まだ抵抗しますか。存外と、魔力への耐性が高いようで」
「んひ、ぃっ♡」
表情を陰らせたオッタビオは、体を折り曲げて乳房に顔を寄せてきた。しっかりと体重をかけられ、抵抗ができないようにと動きを戒めながら、彼はツンと尖った乳首にちぅっ……♡と吸い付いてくる。
「ふ、ぁっ♡あ♡や、ぁんっ……♡♡ぁ゛♡ちくび吸わないでぇ……♡いや、ぁっ♡やだ♡やだぁっ……♡♡」
ちゅぱ♡ぢゅるるっ♡♡ちゅ♡ちゅ♡ぢぅううっ♡♡♡
きつく胸の先端を吸われながら、もう片方の乳首はピンッ♡ピンッ♡♡と指先で弾かれる。
「ゃ゛、ぁあ♡あっ♡ン、ぁあっ……♡♡♡やら、ぁ♡乳首だめぇ♡ぁ゛♡あっ♡♡」
ちゅぱちゅぱと小さな乳首に吸い付かれ、前歯でコリコリッと刺激を加えられる。同時に指先でくにゅっ♡と勃起した乳首を押しつぶされるとたまらなくて、私はぎゅっとシーツを掴みながらなんとか快感を逃そうとする。
「――抵抗は無駄だと、何度言えばわかるんです? 顔を赤らめて、腰を振りながら快感に咽ぶ……今のあなたの姿は、どこからどう見ても快楽の虜だ」
片方の乳房を弄う手が、すっとその動きを止めた。
終わりがないんじゃないかと思っていた快感から、ようやく解放される――一瞬希望が見えたかと思ったが、彼の手指はゆっくりと肌を伝い、下腹部に伸びてきた。
「っ、ひ――いや、やめてっ……! そこ、は――」
「嫌です。あなたが私を拒むなら、拒めなくなるまで私を……理解してもらわなくては。ずっとこうして、あなたの体に触れたいと思っていたんです」
子宮の上をすりすり……♡と優しく撫でたオッタビオが、そっと耳元で囁いてくる。
「――足を開け。腰を浮かせて、私が触れやすいように」
絶対に彼の言葉通りになどしたくないのに、体が勝手に動き出す――ずずっ、と引きずるように足を開いてしまうと、簡単に彼の手が股間へと滑り込んできた。
「やめ、てぇ……♡ぁ゛♡触っちゃ、ぁんんっ♡♡♡」
ぬ゛りゅっ……♡と割れ目を一度だけなぞった指先が、そのすぐ近くにあった淫芽を押しつぶす――その瞬間、強烈な快感が全身を駆け抜け、足の間で何かが弾けるような感覚があった。
「ひ、ぃぎゅっ……♡♡♡ぁ゛♡な、にぃっ♡ん゛ぁ♡や♡やだぁっ♡♡♡止まって♡とまってぇえぇッ♡♡♡」
ガクガクガクッ♡♡♡ぷしゃっ♡ぷしゅっ♡♡♡ぷしゃぁぁッ♡♡
一度大きく腰が震えたかと思うと、透明な液体が飛沫となって吹き上がる――堪えきれないほどの愉悦が体を支配する中で、頭の中だけがぐちゃぐちゃになっていった。
「いやぁっ! やだ♡ぁ゛、ああっ……♡♡見ないで――ひ、ィぅっ♡」
「慌てないで。気持ちよすぎてお潮吹いちゃったんですね……別に漏らしたわけじゃないので、そこまでパニックにならなくてもいいですよ」
「お、しお……?」
人前で粗相をしてしまった――すっかりそう思い込んでいた私は半狂乱になって悲鳴を上げたのだが、オッタビオがそれを咎める様子はない。
むしろうっとりと目を細めながら、濡れた指先で再度割れ目をなぞってくる。
「ン、ひぅ……♡♡」
「そう――快感が限界を超えてしまったんですね……あなたの体が、私から与えられる愉悦を喜んで受け止めてくれた証拠ですよ……♡」
ぬ゛りゅ♡ぬちゅっ♡と秘裂を指でなぞり、浅い場所を刺激するオッタビオに、私は一切抵抗ができなかった。
それどころか、与えられる刺激に合わせてひくん♡ひくんっ♡♡と腰が跳ねる始末だ。触れられたくなどないのに、体はその意思に反して快感を受け取ってしまう。
「ん゛ぁ、あっ……♡やら、ぁ♡ぁ゛、ッ……♡♡♡」
こんな男に奪われるくらいなら、いっそのこと舌を噛み切ってしまいたい――へこへこと情けなく腰を振りながら快感に喘ぐ中で、私の心はもう限界に近かった。
「もう指先くらいなら、簡単にナカに入ってしまいますね。ほら……見えずとも感じるでしょう? あなたの小さな膣口に、私の指が入っていく」
「やぁあっ……♡♡あ、や、めてぇっ……♡」
ぐぢゅっ……♡とぬかるんだ音を立てて、おまんこに指先が挿入される。
限界に達するほどの逸楽を叩き込まれた私のそこは、いともたやすく異物を受け入れてしまった。
「はぅ、ッ♡や、こないでぇっ……♡ん゛ァ、ッ♡そこは、ぁっ♡だめ♡だめぇっ……♡♡♡」
気持ちいい。だけど、死ぬほど恐ろしい。
ボロボロと目尻から涙をこぼしながら首を振っても、オッタビオが触れてくる手は止まらない。それどころか、より深い場所に触れようとする指先が奥へと沈められた。
「ん゛ォ♡やだ、ぁ……♡♡」
「嫌だという割に、こちらはとても従順ですよ? 蕩けた膣肉がいやらしくうねって、私のことを誘っています――素直になれば、いくらでも悦くして差し上げますが……どうでしょう?」
ぬぢゅ♡くちっ♡♡ぐちゅぐちゅぐちゅっ♡くぷんっ♡♡♡
蜜壺の浅い場所で小刻みに指先を動かされ、絶え間ない愉悦が身を焦がしてくる。
すべてを投げ捨て、この快楽に身を任せてしまいたい――そう思えるほど甘美な感覚に苛まれた私は、小さく口を開いた。
(だめ……こんな男、に――私の矜持を汚されて、たまるか……ッ)
だが、この十年と少しの間磨き続けてきたプライドがそれを許さない。
そうだ。私はこんな男には屈さない。どれだけの恥辱を与えられても、決して心を許してはいけない。
ギュッと唇を噛んだ私は、覆いかぶさってくる男の目をきつく睨みつけた。
「誰がお前などに心を明け渡すものか……! 絶対に、お前なんかに堕ちたりはしない!」
「――そうですか。さすがヴィスコンティ公爵令嬢。気位の高さは折り紙付き……ではこちらもオルトラーニ侯爵家の矜持をもってあなたに相対しましょう」
どれだけ拒もうと、オッタビオは悠然とした態度を崩さなかった。
それどころか、どことなくこの状況を楽しんでいる――そうとすら思える表情を浮かべて、指先をじりじりと動かしてくる。
「ッ、ふ……♡」
「先ほどは一気に感度を上げてしまったので、我慢できなくて潮まで吹いてしまいましたが――今度は少しずつ、ゆっくりと感度を上げていきましょうか。あなたの大好きなクリトリスを、心行くまで触って差し上げますので……」
「や、やめっ――ぁ゛、あぁっ……♡」
ぬ゛りゅ♡とぬるついた指先が、先ほど触れた悦い場所を掠める。足を動かして暴れてやろうと思っても、体が言うことを聞いてくれない。
「やぁ、ンっ♡♡は、やだっ――そこ触っちゃ、ぁ、あっ♡♡♡」
すり……♡すり……♡と指の腹で淫核を撫でられるだけで、腰から先が溶けてしまいそうなほどの快感が広がっていく。
ただ指を動かされているだけなのに、その刺激は徐々に強くなり、またガクガクッ……♡と激しく腰が震えた。
「お゛、ッ……♡♡やだ、ぁ――♡♡い゛、ッぅ♡やだ♡やだぁっ……♡♡触るな♡やめて♡や、っ……♡♡」
ぬぢゅ♡ぬりゅっ♡♡といやらしい音を立てて捏ねまわされるクリトリスに、頭の中がぐちゃぐちゃになる。
執拗にその場所だけを指で責め立てられ、体が覚える快感を無理矢理引き上げられる――拷問じみた愉悦が理性を焼き尽くし、唇からこぼれる声はいつしか甲高く許しを求めるものに変わっていった。
「や、ぁんっ♡ぁ゛♡♡♡やだ♡きもちいいのやだぁっ♡ぁ゛えっ♡♡ぁ゛♡無理♡♡これ無理ィっ♡♡♡オ、ッタビオ♡やだやだやだっ♡♡♡もう触らない、でぇっ……♡♡」
ずちゅ♡くちっ♡ずりっ♡ずりっ♡ずりっ♡♡♡
ただただ指で陰核を捏ねられて、快感の逃げ場所もない。
絶頂が近づいて私が限界に達すると、彼は敢えて感度を下げ、そうしてまたねっとりとクリトリスへの愛撫を再開するのだ。
「ッう、この――♡♡この、ひ、卑劣漢♡ぁ゛ひっ♡この、ぉっ……♡♡」
「この期に及んで、まだ憎まれ口をたたく余裕がおありで? ――こんなにいじらしく乳首とクリトリスを勃起させて、全身で快楽を享受しながらなおのこと……本当に、あなたのプライドの高さには驚かされますね」
「くひ、ンっ♡♡♡」
れろぉ……♡と長い舌で乳首も舐められて、背筋がぞわぞわと震えあがる。
もうイきたい――許されるならば、ここですぐに絶頂を極めてしまいたい。だけどオッタビオはそれを許してはくれず、ひたすらに私を弄ぶばかりだった。
「ふふ、肌も柔らかい……♡あちこちに痕をつけて、私のものだと刻み込んでしまいたくなりますね」
「こ、の――へ、変態……! ん゛、ぉおっ♡♡」
ちぅっ♡と軽く乳首を吸われ、同時にぐにっ♡♡と強く淫芽を押しつぶされる――♡♡その瞬間、世界が真っ白に塗りつぶされた。
「お゛ひ、ぃいっ♡♡ぁ゛♡ビリビリきちゃ、ぅうっ♡ンぁ♡ぁ゛♡ぁ゛あっ……♡♡やだぁっ♡また♡またお潮吹いちゃう♡ン、ひぃっ♡あ♡ぁ゛~~~♡♡♡」
ぷしゃっ♡ぴゅっ♡♡♡ぴゅぷっ♡ぽたぽたっ……♡♡
一瞬の開放感の後、また透明な液体が吹き上がる――まるで見せつけるように背を反らした私は、へこっ♡へこっ♡♡と無様に腰を振りたくりながら、二度目の絶頂に押し上げられた。
「ふ、ぁッ……♡♡ぁ゛♡や、だ……♡♡」
やめて。触らないで。これ以上オッタビオに触れられたら、本当におかしくなる。
ビクビクと震える体と昂る熱を押さえることもできない私を見下ろして、彼はじっとりとした視線を注いできた。
「そうですか。嫌、ですか――」
どうしましょうか、なんて見え透いた言葉を吐きながら、オッタビオは不意に私の体をぐっと抱え上げた。
「ひぁっ……な、なにを……ッ」
「いえ――嫌いな男の顔をいつまでも見ているのはお辛いでしょう? この方が、あなたの気持ちも楽なのではないかと」
白々しくそう嘯いたオッタビオは、私の体をぐるりと反転させ、うつぶせの状態にさせる。
「ッ……」
確かに顔が見えないのはいい。だけど、これでは自分が何をされているのかもよくわからない――相変わらず魔術の効果は続いているみたいで、自分の意志では体を動かすことができなかった。
「そのまま、なにもしなくていいですよ。私はあなたの夫なんですから――なんだって、私がして差し上げる」
熱を孕んだ声が、耳元から鼓膜に絡みつく。
それだけでもヒクッ……♡と背筋が震えてしまうのだって、なにかの間違いだと思いたかった。
(だめ――本当に、これ以上変なことされたら……♡)
正気を保っているのも、そろそろ限界だ。
無理矢理ではあったけれど、二度も絶頂を迎えさせられた体は熱を持て余し、先ほどからおまんこの奥が疼いて仕方がない。
「頑ななあなたも愛しいんです。……初めて会った時から、あなたと抱き合う時を夢想していた」
「はじ、めて……? つい先ほど出会ったばかりでしょう……?」
「あなたにとってはそうかもしれない。だが――私にとっては違う。……八年前のパーティ、初めてあなたに出会ったあの場所で、私はあなたに心を奪われてしまった」
つぅ……♡と、指先が愛しげに背中を撫でる。
たったそれだけでもびくんっ♡と体が跳ねてしまうのも、もう堪えることなんてできなかった。
「八年前?」
「あなたはまだ子どもだったが、すでにジオヴァンニ様の婚約者だった。家格も高く、私があなたを手に入れることなど到底不可能――そう思っていましたが……願いというのは、努力を積み重ねれば叶うものなのですね」
うっとりとした声音の後で、ふぅ……と深く息を吐く音が聞こえてくる。
それと共に、なにかが――熱い、棒のようなものがお尻に擦りつけられた。
「ん、ぁ……? なに、これ……」
ずりゅっ♡とかすかに湿った音が聞こえて、思わず視線を背後に向ける――体は動かないのに、首は簡単に動かすことができた。
「は……ぁ、ぅっ♡」
「――これでようやく、夫婦になれますね。ルイーズ?」
お尻に押し付けられた、赤黒くて太い肉塊。それが何であるのかは、容易に想像がついた。
「そ、れっ――やめて! お願い……や、ぁあっ♡」
「大丈夫ですよ。破瓜の痛みも、私ならなくしてあげられる。――気持ちよく、なりましょうね……♡」
お尻に擦りつけられる男性器――おちんぽが割れ目に沿って上下に動かされると、一度引いたはずの快感が再び頭をもたげてきた。
しっかりと腰を掴まれ、体の自由を奪われた私は、されるがままに肌を汚されるしかない。先走りでべっとりと濡れた亀頭が、お尻の間をずりっ♡ずりっ♡♡と擦り上げていく。
「お゛ッ♡ほ、ぉおおっ……♡♡いやぁっ……♡だ、れか――お願いっ……♡♡いやっ♡おちんぽゴシゴシしないで♡♡ぁ゛♡あ♡熱、ぃ……♡♡」
「ルイーズ――やっと、あなたのことを……ッ♡」
熱い先端が、ヒクヒクと小刻みに開閉を繰り返す蜜口に押し当てられる。
それだけはだめ――そう叫ぼうとするのを阻止するように、一気に膣壺へと楔が穿たれた。
「ぁ゛、あぁっ♡♡お゛ッ♡や、め――ンぁあぁッ♡♡♡」
み゛ちみ゛ちみ゛ちっ♡♡ぶぢゅっ♡ぐぷぷっ♡♡ごちゅんっ♡♡♡
高く掲げられていたお尻を鷲掴みにされながら、愛蜜を滴らせる処女穴を極太の肉楔が貫いてくる。
本来ならば強い痛みを感じるであろう破瓜の瞬間は、オッタビオの魔術のせいなのか――頭の中の一番大事な部分を蹂躙されるような、破滅的な快感となって全身を襲ってきた。
「ん゛ぉッ♡お゛♡ほぉおおぉっっ♡♡♡」
ぶしゃっ♡と潮を吹き散らしながら挿入の快感に悶える私に、オッタビオは容赦なく腰を打ち付けてくる。
「ぁ゛♡あっ♡やめ、やめひぇ♡♡♡お゛、ッ♡♡♡オッタビオっ♡おちんぽ♡おちんぽ抜いてぇ♡♡♡やら♡や♡あ♡ぁんっ♡♡」
「もう遅いですよ――ルイーズ♡私の可愛いルイーズ♡♡ジオヴァンニ様に捧げるはずだったあなたの処女♡私のちんぽで奪っちゃいましたね……♡♡」
ぬぽっ♡♡ぬぼぉっ♡♡♡ぐっぽ♡どちゅ♡どちゅっ♡♡どちゅっ♡♡♡
後ろからぐぐっ……♡と体重をかけられて、思わず舌を突き出してしまう。押し出されるような声は低くくぐもっていて、私は目の前のクッションに顔を埋めた。
これ以上、情けない声をオッタビオに聞かれたくない――その一心で声を押さえようとしても、溢れる悲鳴と涎はクッションだけでは抑えきれない。
「ん゛、ッぉ゛♡♡や゛♡やめ、ぇッ♡♡♡お゛ッ♡お゛♡お゛ォ、ッ♡♡♡やだ♡ぁ゛♡おまんこ♡つ、突かないでぇっ……♡♡お゛♡やだやだやだっ♡♡♡そこ、だめ、ぇ゛ッ……♡♡」
ぐぢゅぅっ♡♡と一点を刺激され、思わず背中がぐぐぐっ……とのけぞった。すると、オッタビオは心得たと言わんばかりにその場所ばかりを突き上げてくる。
「ゔ、ぅっ♡ん゛ぅ♡ゥ、ッ~~~♡♡♡」
「もうどうにもならないくらい感じているくせに、オホ声我慢するのは体に悪いですよ……まったく、強情な奥さんですね。そんなところも、可愛げがあっていいのですが……♡♡」
ばぢゅっ♡♡ぶちゅっ♡と生々しい音を立てながらおまんこを突き上げつつ、オッタビオがそっと私の喉元に手を当ててきた。
首を絞められる――そう思ってぎゅっと目を閉じたが、いつまで経っても苦痛が訪れることはない。
「……は、ぇっ♡ぁ゛♡や、ぁんっ♡♡♡やだ、なん、ッ~~ぁああっ♡♡」
その代わり、なんとか堪えようと思っていた声が次から次へと零れ落ちてくる。
「かわいい声は、たくさん聞かせてくださいね?」
「ぁ、おっ……♡♡オ、ッタビオォッ……!」
また、なにか魔術を仕掛けられた。
どこまで虚仮にすれば気が済むのかと、腹の奥が熱くなるほどに怒りが燃え盛る。だが、それも暴力的な快感を突き付けられ、怒りよりも先に甘ったるく媚びた声が唇を突いて出てくる。
「ひ、ぃんっ♡ぁ゛♡おねが、ァんっ♡♡♡ぁ゛♡おちんぽ止めてぇ♡♡ん゛ひ、ぃっ♡♡も、無理ぃっ……♡♡」
「なにも我慢をする必要なんてないんです。イっていいですよ♡後ろから獣のように犯されて、自分より格下だと思っている男に無理矢理イかされる――悪いことではありません。だって、もうあなたは私に抵抗する術を何一つとして持っていないのですから」
「は、っ……このっ……!」
イきたくない。イきたくない。
こんな男にいいようにされて、私の誇りまでぐちゃぐちゃに凌辱されて、それで媚を売るように快感を貪ろうとする自分が許せない。
(気持ちを、強く――そう、負けちゃダメ。私はルイーズ・ディ・ヴィスコンティ。誇り高きヴィスコンティ公爵家の――)
「ッ、お゛♡♡♡」
ばぢゅんっ♡♡♡と力強い抽送が、頭の奥を灼く音がする。
容赦なくおまんこの奥を突き上げられ、さらに悦いところを徹底的に刺激され続け――ガクガクガクッ♡と腰が震えた。
「は、ッぁ……♡♡や゛、めぇっ♡イきたくない♡やだ♡や、ぁあぁっ♡♡♡」
「ダメです♡――イけ♡」
やだやだ、と頭を振っても、繰り返される律動は止まらない。
ぬぢゅっ♡♡ぐぷっ♡と耳を塞ぎたくなるような音を立て、極太おちんぽが先ほどまで未通だった膣穴を思い切り穿ってくる。
「ひ、ぃいッ♡♡やら、ぁっ♡あ♡イく、ぅっ♡♡♡やめて♡もぉ、お゛っ♡♡♡イ、ッグぅうっ……♡♡」
ぷしゅっ♡ぷしゃぁぁッ♡♡と潮を吹き上げながら、頭の中が真っ白になる感覚に身をゆだねる――一瞬の硬直の後に訪れた快感の波は、あっという間に私のことを飲み込んでしまった。
「ひ、ィぎゅ、っ♡♡♡ッぁ゛ああっ♡♡ぁ゛♡イ、っ……♡♡」
びくんっ♡びくっ♡♡がくがくがくっ♡♡
無様にも体を震わせて絶頂を極めた私だったが、それでもオッタビオは――震える丸尻をがっしりと鷲掴み、ぱんっ♡ぱんっ♡♡と乾いた音を立ててピストンを再開し始めた。
「お゛、ひっ♡やぁっ♡♡♡まってぇ♡今♡今イったばっか、ぁっ♡♡」
「イった直後ならもっと素直になれるでしょう? ほら――っ♡イキたてよわよわ新妻まんこ♡♡今なら誰に犯してもらってるか、よくわかりますよね? 誰が、こうやって――んんっ♡あなたのことを、悦くしているのか」
まるで子どもに言い聞かせるような丁重さで、低い声が鼓膜に絡む。
いやだ――認めたくない。それなのにどうしようもなく気持ちいい。
「自分から腰振ってるの、気付いてますか? 私に弱い場所を犯されたがって、媚びるように体を揺さぶりながら、口でイヤイヤ言っても――説得力がありませんね♡」
ぬ゛ぱっ♡♡ぐぽっ♡どちゅんっ♡♡ぱんっ♡ぱんっ♡ぱんっ♡♡♡
イきたてのおまんこを容赦なく突き穿たれて、全身が快楽に打ち震える。
負けたくない――こんな男にいいようにされて許せないはずなのに、本能は完全に快楽の前に膝をついていた。
「ぁうっ♡♡♡ゆ、ゆるひ、てぇっ♡ぁ゛♡やだぁ♡♡やだ♡たしゅ、っ♡♡♡」
誰にも届かないとわかっているのに、助けを求めるように指先を伸ばしてしまう。
少しでも長く、少しでも遠く――オッタビオの手から逃れようとした指先は、無慈悲にも彼自身の手に捕えられた。
「もうどこにも、逃げられはしませんよ。……夫婦になりましょうね、ルイーズ♡」
「は、ぅうっ……♡♡」
ぶびゅぅっ♡♡ぶぢゅっ♡♡びゅ♡びゅるるるっ♡♡ぶちゅぅっ♡♡♡
まずいと思った瞬間には、すべてが遅かった。
一気に背後から体重をかけられ、子宮口を抉じ開けるような勢いで奥を突かれ、そのまま熱いものを流し込まれる――ドクドクと脈打ちながら精液を注ぎこまれる感覚に体が震え、先ほどよりも静かだがより深い絶頂が訪れた。
「ッ、ぁ゛あっ……♡やだ♡ぬいて♡♡♡おちんぽ抜いてよぉっ……♡♡ふぁ♡ぁ゛♡ゃ~~~♡♡♡」
びゅくびゅくと放たれる白濁は、私の矜持までも白く塗りつぶしていくようだった。
「ぁ、うっ……♡♡ひぅっ♡ぅ、っ♡」
「これで、もう逃げられませんね。――ルイーズ、これであなたは名実ともに私のものだ」
うっとりとした声を囁かれながら、更にゆるく腰を動かされた。
もうこれ以上感じたくなどないはずなのに、貪欲な肉体はより気持ちよさを得たいと言わんばかりに蠢動する。
(嫌い……ッ! 嫌い、だ――こんな男っ……!)
認めない。認めたくない。
ともすれば快感だけで満たされてしまうような心地を感じながら、私はぐっと奥歯を噛み締め、この男への復讐を固く誓ったのだった。
● ● ●
「お、奥様! いけません――外出は旦那様に禁じられているはずです!」
「使用人ごときが私に口出ししないでちょうだい! それに、奥様なんて呼ばないで!」
この屋敷は、すべてがおかしい。
オッタビオの屋敷に連れ込まれてから、使用人たちは私のことを何の疑問もなく「奥様」と呼んだ。
それだけでもおぞましかったのに、更に彼は私に外出を禁じて自由を奪うのだ。おかげでヴィスコンティ公爵家のお父様たちに連絡を取ることも、王宮が今どうなっているのかを知ることもできない。
オッタビオが私の自由を制限したがっているのは理解していた。だが、それでおいそれと従ってやる人間ではない。
(今日こそは絶対に、絶対に外に出て……私があの鬼畜男に辱められていると、お父様に報告してやる……!)
使用人たちに強く当たると、当然だがオッタビオからの叱責が飛んでくる。
いや……まだきつく叱られた方がマシというものだ。彼からの『叱責』は、思い出すのも嫌になるほど淫猥なものばかりだった。
だが、私はそんなことには屈しない。婚約破棄されたとはいえ、元々は第二王子殿下の婚約者……強姦まがいの凌辱で無理矢理妻にさせられるなんて、そんなことあっていいはずがない。
(今日はオッタビオも、王宮に出仕している……御者には適当に言って、公爵邸まで馬車を走らせれば……)
いくらお父様でも、娘が無体を強いられたとなれば国王陛下に直訴してくださるはず。
その後は、ヴィスコンティ公爵家が多額の寄付を行っている女子修道院でほとぼりが冷めるまで療養しよう――そう算段をつけて、屋敷の扉に手をかける。
「いけません奥様! お戻りください!」
背後から追いすがる使用人の声が聞こえたが、そんなことはどうでもよかった。
一刻も早くこの屋敷から逃げてやる。
強い決意を胸に秘めて扉を開く――と、そこには一人の男が立っていた。
「おや、出迎えですか? ありがとうございます、ルイーズ」
「は……オ、オッタビオ……? なんで――」
「予定していた仕事が存外と早く終わりましたので。新婚なのだから、こういう時くらいは早めに帰れとアレッサンドロ様に怒られてしまいました」
銀髪を几帳面にまとめたオッタビオは、眼鏡の奥にある目をすっと細めて私のことを見つめている。
……笑っているように見えても、目の奥は一切笑っていなかった。
「あなたのことを驚かせようと思って、何も言わずに早く帰ってきたんですが……意外でしたね。こういうのを以心伝心というのでしょうか」
「は……ッ、放して! 私に触らないでちょうだい……!」
あっという間に距離を詰めてきたオッタビオが、そっと私の手を取った。とっさにその手を引こうとしても、ことのほか強い力で手を掴まれて逃げることもできない。
「あるいは――まさかとは思いますが、勝手に外に出ようとしたわけではないでしょう? あなたはプライドが高いが愚かではないはずだ」
「っ……私が何をしようが、お前には関係ないでしょう! それより、この手を放しなさい。こんなに強い力で握られては、怪我をしてしまうわ」
「あぁ……それは申し訳ありません。女性の繊細な手にするようなことではありませんでしたね」
ゆるく口元に笑みを浮かべたオッタビオが、掴んだ手を放す。
だが、距離を取ろうとしても足は全く動かなかった。
(肉体制御魔術……この、厄介な……!)
無詠唱でポンポン魔術を使ってくるオッタビオに、私だって何度も抵抗を試みている。
だが、そもそも私が習ってきた魔術と彼が使える魔術は徹底的に相性が悪い――自分の何倍も強いその力に押し負けて、結局私は彼の腕から逃げることができずにいた。
「そこの君、冷たい飲み物をもって私の部屋まで来てくれませんか。それが終わったら、部屋の周辺は人払いを」
ふっと顔を上げたオッタビオが、私に追いすがっていた使用人に声をかける。
その声は優しいが、どことなく淡々としていた。
「は――はいっ! ただいま用意いたします……!」
「ありがとうございます。さて、ルイーズ……あなたはこちらへ」
「く、っ……」
差し出される手を拒みたいのに、体がいうことを聞いてくれない。
ギチギチと操り人形のようなぎこちなさで彼の手を取りながら、私はひたすらオッタビオのことを睨みつけた。
「魔術を解いて」
「解いたらあなたは出て行ってしまうでしょう? ……大方、屋敷を抜け出してご実家に向かおうと思ったのかもしれませんが」
コツコツと、静かな屋敷を二人で歩く。
いや、私はほとんど引きずられているような状態だ。彼の魔術で体を勝手に操られて、意志とは無関係に足を動かされている。
「こんな異常な状況、許されるわけがないわ。いくら私とジオヴァンニ様の婚約が解消されたって――そもそも、私が家に戻っていない状況で、お父様たちが不審に思わないはずがないもの」
「そうですね。平時であれば訝しむ者もあるでしょう」
「……平時であれば?」
なぜか、その言葉が妙に引っかかる。
自由になる表情だけでもきつく引き締めてオッタビオを睨みつけると、彼はそこから何も言わずに私のことを自室へと押し込んだ。
ベッドの上に座るように命じられ、抵抗することもできずに従ってしまう――タイを緩める男の姿を睨み続けている私にオッタビオはどことなく表情を曇らせて口を開いた。
「処刑されましたよ。あなたのご両親」
「……は?」
「間に合わなかった――これは私とアレッサンドロ様の過失です。先にジオヴァンニ様を止める手を打っていれば、最悪の事態は免れたかもしれない」
淡々とした、けれどどこか寂しげな声音で。
オッタビオの言っていることが理解できない私は、開いた口をぽかんと開いたまま絶句していた。
――処刑? お父様とお母様が……栄えあるヴィスコンティ公爵家の当主夫妻が、処刑された?
「う、嘘よ! だって、そんな――私をここに留めるために、適当なことを言っているんじゃ……!」
「当主の遺髪と、処刑記録が残っています。ご覧になりますか?」
処刑記録。
その言葉を聞いて、足元からさっと血の気が引いていく。
……お父様もお母様も、もうすでにこの世にはいない。墓地はおじいさまも眠っているヴィスコンティ公爵家の領地にあるものではなく、罪人として共同墓地に埋葬されたらしい。
「な、なんで……」
「あなたと第二王子……ジオヴァンニ様との婚約解消が発表されたすぐ後に捕縛されたようです。罪状は不敬罪と第一級の詐称罪――王族の名を騙って事業を興し、さらにそれを失敗させた。王族の権威を失墜させようとした罪で、本来ほとんど適用されることのない第一級詐称罪が適用されました」
第一級詐称罪。
ただの詐称罪ならば罰金刑や禁固刑で済んだところだが、こればかりは大ごとだ。これが適用されるのは、王族の血筋を騙って国を混乱に陥れた大罪人――更に不敬罪も課されているとあっては、処刑はまず不可避だろう。
「あなたが婚約解消を切り出されたその日のうちに、公爵夫妻は捕縛されました」
「どう、して……だって私、その時は――」
その頃私は、この屋敷でオッタビオに抱かれていた。
お父様とお母様が屈辱的な目に遭っているその最中、私は一人安全な場所で快楽を貪っていたというのか。
「オッタビオ! どうして――どうしてお父様とお母様を殺したの……! わ、私が欲しいのなら、こんなことをする必要は……!」
「そう、必要はなかった。……本当に、こんな残酷なことをする必要はなかったのです」
ふー……と深く息を吐いたオッタビオが、もう一度眼鏡を押し上げる。
その表情はどこか物憂げで、処刑が彼の本意ではなかったことを如実に物語っていた。
「言ったでしょう。ジオヴァンニ様を止める手を打っていればよかったと――あの日の翌朝、王宮に参内してすぐにこの話を聞かされました。斜陽の最中にあるとはいえ、公爵家の当主を処刑など……浅慮にも程がある。国王陛下も、これには大変にご立腹でした」
不用意に上位の貴族たちを処罰すると、今度は王族への反感が強くなる。
そんなこと少し考えただけでもわかるだろうに、ジオヴァンニ様はこれまでの失策の責任を取らせるためにお父様とお母様を処刑台に送ったのだという。
「どうして……どうしてそのことを今まで黙っていたの!」
「あなたが無理にこの屋敷から出ようとしなければ、知らせるつもりもありませんでした。――世の中には、知らない方が幸福であることもある」
やや残念そうではあるものの、オッタビオの言葉は相変わらず淡々としていた。
そのことに無性に腹が立って、思わず立ち上がる。魔力の制御を振り切って立ち上がった私は、そのまま右手でオッタビオの頬を張った。
「馬鹿にしないで……!」
「……っ」
パン、と乾いた音を立ててオッタビオの頬を叩いたが、彼は少しもふらつくことがなかった。
対して私の手はひりひりと痛み、すぐに手のひらが赤くなる。
「私は――私はヴィスコンティ公爵の一人娘よ! 罪人だろうと何だろうと、私には両親を弔う義務と責任がある! 知らなかったことの方が幸せなんて……私の――私のお父様とお母様なのよ……!」
痛む右手を握りしめて吐き出した声は、今にも枯れてしまいそうなくらい掠れていた。
いくら事業が失敗したとはいえ、いくら王族の名を騙ったとはいえ、私にとって両親は二人きりしかいない。
それを『知らなかった方が幸せ』などと言われ、死んだことすら隠されようとしていたことに腹が立つ。
「……知れば、あなたは無理やりにでもこの屋敷を出ていくでしょう」
「当たり前でしょう……! どこまで人のことを虚仮にすれば気が済むの。どのような誹りを受けようと、私は――」
「すでにアレッサンドロ様が動いているのです。……それに、現在ジオヴァンニ様は独断での公爵夫妻処刑を咎められ、王命により軟禁状態にある――いくら王妃様の長男といえど、今回ばかりはお咎めなしというわけにはいかないでしょう」
私とて、現在の貴族社会をまるで理解していないわけではない。
いや、むしろ私こそがその情勢に誰よりも詳しいと、胸を張って言える。現在貴族たちの派閥は、大きく二つに分かれていたはずだ。
第二王子ジオヴァンニ様を擁する派閥と、第一王子アレッサンドロ様を擁する派閥――私は当然前者の人間として立ち回っていたが、ここにきて情勢が大きく変わった。
「ここで余計な手を加えて、殿下の作戦を失敗させるわけにはいかない――あなたの怒りももっともですが、余計なことをされてあなたの命まで失われてしまっては、何の意味もありません。……ジオヴァンニ様は現在幽閉中の身ですが、一歩間違えばあなたとて捕縛され、処刑されていました」
オッタビオの言葉に、思わず背中を冷たいものが伝っていった。
公爵家の当主であるお父様をためらうことなく処刑台送りにしたのだ。娘の私だって、簡単に殺すことができただろう。
――たとえそれが、長らく婚約を結んできた相手であろうと。
「どうして、ジオヴァンニ様はそんなことを……?」
「邪魔だからでしょう。あの方はメイデリア伯爵令嬢に夢中だ……そしてそのメイデリア伯爵令嬢の父は、権力志向の強い方です。家格に勝り、偉大な先代を生み出した公爵家の人間が邪魔でないはずがない」
オッタビオは顎に手を当てると、それは深く息を吐いた。
恐らく彼は、こういう人間をいやというほど目にしてきたのだろう。第一王子の首席秘書官ならば、この手の話は毎日のように耳に入っているはずだ。
「いいですか。この国の貴族も、派閥も、決して一枚岩ではないのです。あなたが思っているよりも政争というものは血生臭く、残酷なものだ」
――オッタビオの言葉に、反論できない。
私だって、第二王子の婚約者だからといって、ただ何もせず豪奢な暮らしをしていたわけではない。未来の王妃として求められるであろう外交と内政については、家庭教師をつけられてみっちりと情報を叩き込まれていた。
「私、は……どうすれば……」
「あなたの身は、私が守って差し上げる。すでにあなたはヴィスコンティ公爵令嬢ではなく、私の妻なのですから。……それに、あなたのご両親の名誉も――アレッサンドロ様が無事王位に就くことができれば、いずれ挽回されるでしょう」
まるで猛毒のように甘い声が、鼓膜吹き込まれる。
いくら嘆いても死人が蘇ることなどない。それと同じで、死んでから名誉を挽回されたところで何になるというのだろう。
頭ではそうわかっている。だが、私はオッタビオの言葉に、強く揺らいでしまった。
「……本当?」
「もちろん。この度の一件はジオヴァンニ様の独断……貴族階級への弾圧ともとられかねない行動を、アレッサンドロ様は憂慮しています。あの方が王位についた暁には、この件は――そう、悲劇であったと語り継がれるでしょう」
ドクッ、ドクッ、と頭が大きく脈打った。
オッタビオの言葉など、何一つ信用してはいけない。この男が言っていることがすべて嘘である可能性だってあるのに――今この状況では、ただ彼の言葉を信じるしかなくなってしまう。
「――あなたは何もしなくていい。もう、帰る場所も迎えてくれる家族もないのだから……このまま、すべてが終わる時を待っていてください」
慈しむように頬を撫でられて、あろうことか安堵してしまう自分がいる。
一気にもたらされ情報で頭の中が混乱していて、今の自分の状況がよくわからなくなっていた。
このまま、オッタビオの言うことを聞いていれば――それで、すべて丸く収まるんだろうか。
そんな考えが頭をよぎった瞬間、ぐらりと視界が大きく傾いた。
「な、なにっ……」
「それはそれとして、お仕置きが必要なようです。事の状況を知らなかったとはいえ、使用人に当たり散らした挙句、勝手に屋敷を出ていこうとするなんて」
押し倒されたのだと気付いたのは、それから一瞬遅れてのことだった。
「お仕置きって――い、今の話の流れで……!」
「今のはただ、事実をあなたに伝えただけです。むしろ私にとって大切なのはここから……あなたは未だに、自分が置かれている状況を理解していらっしゃらないようで」
寝台の上に転がされた私は、驚きのあまり目を剥いて絶句した。
今の話より大切なことなどあるものか――そう声を上げようとしても、体は石のように固まって動かない。
(またっ……!)
何度も勝手に拘束魔術をかけられ、絶対にオッタビオには敵わないのだという実力の差を見せつけられる。
無力感で心が折れてしまいそうになったが、それでも私はひたすら彼を睨みつけた。
「このような魔術を使わなくては、妻一人抱けないというの? 案外甲斐性がないのね」
「おや、私の妻という自覚を持っていてくれたんですね。……えぇ、そうですよ。私はあなたほど強い人間ではないので……あなたに拒まれるのがひどく悲しい。故にこうして、姑息な手を使ってでもあなたのことを繋ぎ留めたい」
にぃ、と唇だけで笑って、オッタビオがそっと指と指同士を絡めてくる。
「んっ……♡」
こんなことで感じたくない――それなのに、何度も彼に開かれ、調教されつくした体は、たったこれだけのふれあいで快感を覚えるようになってしまっていた。
「いや……さ、触らないでちょうだい……!」
私だって、何度も繰り返されたことを覚えていられないほど愚かではない。
幾度彼のことを拒もうと、この状況に持ち込まれると抵抗は不可能だとわかっていた。
でも、それでも拒絶の言葉を口にしなければ――彼のことを受け入れてしまっていると、自分自身で認めてしまうような気がする。
「心が軋んで、壊れてしまいそうなくらい悲しい時は……すべてを手放しで受け入れてしまえばいいのでは? その方が、痛みは少なくて済む」
「相手がお前でなければそうしていたわ。……少なくとも、お前を手放しで受け入れることなんて、私は――ぁ、やっ……♡」
絡めあっていた指先が離れたかと思うと、大きな手がすりすりと艶めかしく太ももを撫でてくる。
それだけでぶるっ……♡と体が震え、唇からは熱い吐息が漏れ出してしまう。
「そうですか。ですが……私は案外気が長い性質でして。あなたを初めて見た時から、何年も耐え忍んでいたわけでして――根競べには、自信があります」
ちゅ、と唇が降ってきて、柔らかく頬に触れる。
怖気が走る――と言いたいところだったが、私の体は情けないくらい快楽に弱くなっていた。
「ひ、ぅっ♡」
「キスだけでも気持ちよくなれるだなんて、ルイーズ……あなたは本当に素晴らしい。……しかし、これはお仕置きですから。ただ気持ちよくなるばかりでは、ね?」
眼鏡の奥で妖しく目を細めたオッタビオが、ポケットの中から何かを取り出した。液体が入った小瓶――中身は透明だが、得体の知れない薬であることは間違いないだろう。
「それ、は……」
「ちょっとしたお遊びですよ。最近は少しずつ、セックスの悦さにも気づいてきたでしょう? それをもっと楽しく――あるいはもっと残酷に変える」
彼は簡単に私の服を脱がせると、小瓶の蓋をきゅぽんっと開けた。
そうして、中身をそっと傾ける。ややトロついた液体は、私の胸からお腹、そして足の間に少しずつ注がれていく。
「ひっ……やだっ……! なにこれ……!」
「あなたの乱れ喘ぐ様を見るのが大好きなんです。美しく誇り高い、私のルイーズ……」
うっとりとした表情で呟いたオッタビオだったが、私はただただ恐怖を覚えていた。
この薬がなんであるのかも説明もされないまま、肌を汚される。いや、それだけならばまだいい。
例えば皮膚がその場所から焼けただれたら? 千本の針で刺されるような痛みがやってきたら?
そう考えると、どんどん血の気が引いていく。
「安心してください。痛いことなんて、なにもありませんから」
オッタビオはそんな私の様子を見透かしたように笑うと、更に何かを取り出した。
「怖いのでしたら、目隠しをしてしまいましょうね。その方が『お仕置き』らしさが出るでしょう」
「い、いやっ……やだ、このっ――」
低く笑ったオッタビオは、そのまま強引に私の目元を布で覆ってしまった。
いきなり視界を奪われた私は何度もやめてくれと懇願したが、この男がそんな話を聞いてくれるはずもない。
「私はね、ルイーズ。決してあなたの体を傷つけたりはしない。人形のように美しく、星のように煌びやかな私のルイーズ……♡」
かすかに熱を孕んだ声で名を呼ばれるだけでも、身震いしてしまう。
これから何をされてしまうのかを考えて、頭の奥がじぃんと痺れるような――いや、違う。これは期待なんかじゃない。恐怖だ。
体の自由と視界を奪われて、もしかしたらお父様たちと同じように殺されてしまうかもしれない……そんな考えが頭をよぎるから、体が震えてしまう。
「心配はいりませんよ。効果はすぐに知れます。それにもう、あなたは私を拒めない。聡いあなたは、もう理解しているはずだ」
頭上から声が降ってくるが、オッタビオが今どんな表情をしているのかは全く分からない。
それどころか、彼が今何をしているのかも見ることができず、私はギリッと奥歯を噛んだ。
「そうですね……まずは使用人に八つ当たりをしたことについて、お仕置きをしましょうか。仮にもあなたはこの屋敷の女主人……無作法を叱責するならまだしも、癇癪を起こして喚き散らすというのは美しくない」
どこか冷たさを感じさせる口調で、オッタビオがそんなことを言う。
いや……これがあくまで、そういう建前なのだというのはわかっていた。彼は単に、私のことを辱める理由をそれらしく語っているに過ぎない。
「さぁ、ルイーズ――足を開いて、あなたの可愛らしい場所を私に見せてください」
「だ、誰が……ぁっ……い、いや、ぁっ♡」
私の心がどれだけ拒んでも、体はオッタビオの魔術に逆らえない。
嫌だ嫌だと頭を振って抵抗しようとしても、勝手に足が動いて隠すもののない淫裂を指先が開いてしまう。
「や、ぁっ……♡」
「ほら、もうとっくに濡れてる。ご自分でわかりますか? こうやって触れてあげると……くちゅくちゅと、いやらしい音を立てているのが」
「っふ、ぅうぅぅっ……♡♡♡」
なにかが割れ目に触れる――恐らく、オッタビオの指だろう。
下腹部にかけられた薬品を軽く指先で掬い、それがぬりゅっ♡とおまんこに塗りたくなれる。
「ぁ゛、あっ♡ひぅ♡なにこれ、ぁ、あんっ♡♡♡」
「先ほどあなたの体にかけたものは、超高純度の媚薬です。魔術で感度を上げればいいだけなので、できればこんなものには頼りたくなかったのですが……あなたが、あまりにも聞き分けがないから」
クスクスと笑いながらそんな恐ろしいことを言うオッタビオは、丁寧な手つきで媚薬をおまんこに塗り込んできた。
「ん、ふっ……♡♡や、ぁあっ♡♡」
くちっ♡♡ぬ゛りゅ……♡♡ぷちゅ♡ずり♡ずり♡♡ぐちゅんっ♡♡
指先を巧みに動かして、割れ目からクリトリスまでたっぷり薬液を塗り込まれる。その度に足の間が燃えるように熱くなっていって、思わず腰が揺れた。
「ッん♡熱っ……♡あ、なに♡やだ♡ゃ゛、ぁあっ♡♡」
「少量でも、効果は抜群です――あなたのその気の強さなら大丈夫だと思いますが、壊れてしまわないようにしないと」
「ん゛ひ、っ♡」
ぐぢゅ♡ぐりゅっ♡♡と指先をねじ込まれ、ガクガクガクッ♡と大きく腰が揺れる。
するとオッタビオは、すぐさま二本目の指を膣内へと挿し込んできた。おまんこの中でバラバラに指が動いて、両目の際にじわじわと涙が浮かんでくる。
「ぉ゛ッ♡♡それ、だめぇっ……♡ぁ゛♡あ、ぁっ♡♡ん゛ぉ゛ッ……♡♡おまんこぐちゅぐちゅ、やだぁっ……♡♡」
奥の方からこんこんと湧き出してくる愛蜜を、長く節ばった指先が容赦なくかき混ぜてくる。
目が見えない分聞こえてくる音と体の感触には敏感になってしまって、それが余計に羞恥と快感を煽ってくる。
「ナカだけは嫌ですか? それなら――あなたの大好きなクリトリスはいかがです?」
「ぇ――ぁ゛、あぁっ♡」
ぷぢゅっ♡♡と媚薬がついた指先で淫芽を押しつぶされて、一瞬で熱が爆ぜる――無理矢理イかされたのだと気付いた時にはすべてが遅く、オッタビオは親指と人差し指でゆっくりと勃起したクリトリスを扱き上げ始めた。
「ん゛、ッぉ゛♡やら♡ぁ゛ッ♡あぅ、ぅ~~~っ♡♡♡」
すり♡すり♡♡くにっ♡しこしこしこしこっ♡♡ぷりゅんっ♡♡
媚薬を塗りたくられながら丁寧に陰核を扱かれて、その度に腰が跳ね上がる。
敏感に快楽を受け止めるその場所は火照りきっていて、耐えがたいむず痒さを伴って私のことを苛んできた。
「ゃ゛あっ♡♡やだ、ぁっ♡ぃ゛、っぅ……♡♡」
「気持ちいいでしょう? すぐにイってしまいそうなのを堪えるあたりは、さすがと言いたいですが……それでは仕置にならないので」
しこしこしこっ♡♡と小刻みに指を動かしてクリトリスを扱きながら、オッタビオは耳元で何かを囁いてくる。
だけど、私はもうとっくに限界だった。あっという間に限界まで官能を高められ、すぐにでもイきたくなる――はっ♡はっ♡♡と犬のような呼吸を繰り返しながら、あとほんの少しの刺激で絶頂に達するのを待っていた。
「あ♡ぁ、あっ♡♡♡クリトリス、だめっ♡ぁ゛♡しこしこしない、でぇっ……♡♡」
口で拒絶しながら、心のどこかでは期待してしまう。
……このまま、イかせてもらえるんじゃないか。こんな状態で思いきり絶頂を極めたら――そう思うだけでも、下腹部が熱く潤んでしまう。
「――そうですか。では、このままにしておきましょう」
だが、私の期待はあっさりと裏切られた。
ぴたりと手を止めたオッタビオが、淫芽を弄る手をぴたりと止めたのだ。
「ぇ、あっ……」
「イきたくないんですよね? それなら、イく手前のところで焦らして差し上げます。こうして……勃起してしまったクリちんぽを……指で軽く押しつぶして――♡」
耳元で囁かれながら、先ほどよりも弱い力でクリトリスを押しつぶされる。
当然だが、それだけではまだイけない。
むしろもどかしく快感が募っていくばかりで、頭の中が徐々に蕩けてしまいそうになる。
「は、っ……♡♡ぁふ、っ♡やめっ……ぁ゛あァッ♡♡」
ぐりぐりと指先でクリトリスを押しつぶされて、イきたいのにイかせてもらえない――知らず知らずのうちに腰を突き出してしまっていた私は、体の内側にわだかまる熱を何とかしてほしくて必死に唇を噛んだ。
「ッひ♡い、くぅっ……♡♡ぁあっ♡ぁ゛ッ♡なんで♡♡♡なんでイけない、のぉっ……♡♡」
「もどかしいですよね……今、一時的にあなたの体に手を加えています。本来でしたら、媚薬の効果ですぐに果ててしまうところですが――感度を急激に下げたので、これだけではイけないでしょう」
「くぅっ……♡ぉ゛♡ぉひ、ぃっ♡♡♡やら♡ぁ゛あッ♡♡♡イ、きた、いっ♡♡♡も、無理♡♡これやだ♡ぁ゛♡イかせ、てぇっ……♡♡♡」
がくっ♡がくっ♡♡と大げさなまでに腰を振りながら、早くこのもどかしさから解放されたいと懇願する。
おまんこは溶けてしまいそうなくらいに熱くて、頭の中はぐちゃぐちゃになるほど気持ちいい――なのに、唯一絶頂を極めることだけが許されない。
「おや、今日はいつもより素直ですね……私も鬼ではないので、できるだけあなたの望みは叶えて差し上げたい」
嬉しそうな声でそんなことを言ったオッタビオの声が、どんどん近づいてくる。
かすかに荒い呼吸が耳元で聞こえたかと思うと、クリトリスを押しつぶす指がパッと離れていった。
「では、魔術を解きますね。このまま――好きなだけ、イってください……♡」
極限まで潜められた低い声が、鼓膜を揺らす。
ぱちん、と指が一つだけ鳴ったかと思うと、オッタビオはぐりぐりぐりっ♡♡♡とクリトリスを強く押してきた。
「ひ、っぎゅぅうっ♡♡♡ぉ゛ッ♡♡♡ん゛ぉ、ぉおっ♡♡」
その瞬間に、蓄積された快感が一気に爆ぜる――♡
目隠しをされて暗いはずの視界が白く反転し、体中の毛穴からぶわっと汗が噴き出すのが分かった。
へこへこと腰を振りながら、快感に染まりきった甲高い悲鳴が唇からこぼれ落ちてくる。
「んひっ♡ひ、ぁあぁっ♡♡♡ぁ゛♡イ、っ――♡♡ぉっほぉっ♡♡お゛♡イぐっ♡イく、ぅうっ♡♡ひぁ♡ゃ゛ああっ♡♡ぁ゛♡」
ぷしゃっ♡♡となにかが吹き上がる感覚を覚えて、顔が熱くなった。
自分が潮を吹いてしまったのはわかるものの、体が一体どんな状態になっているのかはまるでわからない。
「あひぃっ♡♡あ♡ん゛、ぁあぁっ♡♡♡や、らぁっ♡これ♡これとまんにゃ♡ぉ゛♡お゛ぉっっ……♡♡」
「あは――すごいイきっぷりですね♡はしたなく潮を拭きこぼしながら、全身真っ赤にして腰振りアクメ……♡おまんこひっきりなしにくぱくぱってさせて、とっても気持ちよさそうですよ」
ずり♡ずり♡♡と指の腹で小さく淫核を刺激し続けるオッタビオだったが、今の私にとってはその刺激ですら気が触れてしまいそうになる。
高純度の媚薬はすっかりクリ皮の中まで浸透していて、その場所を刺激されるたびに頭の中で小さな火花がパチパチと爆ぜた。
「お゛ッ♡お゛ほ、ぉっ……♡♡ゃ゛♡やみぇ、てぇっ……♡♡ぁ゛♡ぁ、うっ♡クリちゃんぐりぐり♡しないれぇっ……♡♡ん゛、ひぃっ♡♡♡」
ぷしゃっ♡とまた小さく潮を吹き上げて軽イキした私だったが、それでも責めの手は止まらない。
「おや、イかせてほしいとおねだりしたのはあなたでしょう? 他でもない、気位の高いルイーズのお願いですから――どうか遠慮はなさらず。好きなだけイき果ててくださいね♡♡」
「お゛ッ♡♡♡ゃ゛♡や゛、ぁあっ♡♡お゛ッ♡お゛ひっ♡♡♡ぁ、だめっ♡ダ、メぇっ♡♡ゃ、あぁぁっ~~♡♡♡」
ぬ゛りゅ♡ぬ゛りゅっ♡♡くち♡♡ずちずちずちっ♡♡くちゅんっ♡♡♡
丁寧に――いや、しつこいくらいにクリトリスを責め立てられて、私は立て続けにイき続けた。
(無理♡♡無理ぃっ♡こんなの耐えられない……♡♡)
息もできないくらいにイかされて、涙がじわじわと溢れてきた。
唇からこぼれる唾液も拭うことができない私の名前を、オッタビオはどことなく満足したような声で呼んでくる。
「ルイーズ……あぁ、本当に可愛らしい……♡クリトリスだけでは物足りないのではありませんか? こんなにおまんこをヒクつかせて、いじらしくおねだりしているのですから……♡♡」
「へ――ぁ、ひっ♡♡ん゛、ぉ♡まっへぇっ♡ぁ゛えっ♡♡♡ゆ、指いれにゃいれぇっ♡♡ぉ゛♡おぎゅ、っ♡おまんこ指でぢゅぽぢゅぽらめぇ♡♡♡」
ぢゅぷんっ♡と水っぽい音を立てて、オッタビオの長い指先がおまんこの中へと突き立てられる――徹底的にクリトリスを苛め抜かれた私は、当然その刺激を耐えることなんてできなくなっていた。
「ぃ゛、っぎゅっ♡♡♡お゛♡イく♡イくぅぅっ♡♡♡やだ♡ぁ゛♡とまって♡もぉ止まってぇっ♡♡♡」
「まだまだ……こんなもの、ただの前戯でしょう? ほらもっとイって♡新妻よわよわおまんこ、たくさん愛して差し上げますから――♡」
ぎゅぷ♡と悦いところを指で押し込まれ、ガクガクと体が震える。
もう、前も後ろもよくわからなくなっていた。体が妙な浮遊感に包まれて、自分がどこにいるのかもわからない。
「ぅ、ぐっ♡ん゛ふ♡ぅ♡う、ぅっ……♡♡ゆ、るひてぇ♡も♡もぉ♡壊れちゃう、ぅっ♡♡♡お゛ッ♡お゛♡イぐ、っ♡イくぅぅッ♡♡♡」
「壊れませんよ。壊れさせたりなんかするもんですか――こんなに焦がれて、何年も何年もあなたを追いかけて……ようやく手に入れて、私の色に染め上げることができたのに」
ぢゅっぽぢゅっぽ♡♡とねちっこい手マンで一番弱いところを擦られ、押し込まれているうちに、フッと意識が遠のいていく。
あれほど強烈だった快感が一気に遠ざかって、ようやく人心地つくことを許された、ような――……。
「……誰が、勝手にトんでいいって言いました?」
「は、ひゅっ♡♡♡」
――ば、ちゅんッッッ♡♡♡
はら、と目隠しが外れて、同時にお腹の奥が熱く……そしてずっしりと重たくなる。
「んぁ、ッ……♡♡あ♡なん、れぇっ……♡♡お゛♡おちん、ぽ♡♡はいって――♡♡♡」
その質量を、その熱さを、私が忘れるはずなどない。
毎夜のようにこの体を犯す剛直の感触は、嫌というほど刻み込まれていた。
「ふ、ぅゔっ♡♡ぁ゛♡あひ、ぃっ♡♡♡」
ぐぷッ♡♡ぐぢゅっ♡♡と音を立てて奥へ埋まるおちんぽの感覚に、思わず喜悦を覚えてしまう。
ようやくあらわになった視界いっぱいに、存外と逞しいオッタビオの体が写し出されている。
「お゛ッ♡♡オ、ッタビ、ォっ……♡♡」
「狭い――相変わらず、あなたはこちらでも私のことを拒むのですね……♡♡」
「はお゛ぉ゛ッ……♡♡」
ばちゅばちゅばちゅっ♡♡ぢゅぽ♡♡ぐぷんっ♡♡♡ぱんっ♡ぱんっ♡ぱんっ♡♡
一切容赦のないピストンを繰り返されて、遠ざかった絶頂の波が再び大きくなって私のことを飲み込もうとする。
熱いおちんぽが最奥までを一息に貫き、またギリギリまで引き抜かれ――そうしてまた、一番感じる奥を力強く突き上げた。
「ぉ゛ッ♡しゅ、ごっ……♡♡おぁ゛♡ぁ゛♡やみぇ、ぇっ……♡♡」
「こんなに、愛しているのに――ッ! 伝わらないというのは、なんとももどかしい……この数年待ち続けられたのだから、ここからあと十年は耐えられると思っていたのですが……難しい、ものですねっ……!」
ばぢゅ♡ばぢゅっ♡♡と重たい音を立てながら、律動が繰り返される。
その度に大きく張り出した雁首が弱いところを掠め、突き上げていって、体がびくびくと打ち震えた。
「や゛、もっ……っ♡♡♡やら♡や゛、ぁあっ♡♡イきたく、なっ……ァんっ♡♡」
「イきたいのでしょう? プライドの高いあなたが、わざわざ私に懇願してくれたんです。ここ……あなたが一番気持ちよくなってしまうところを、たくさん突いてあげますから、ねっ♡」
「ぉ゛おぉ゛ぉ゛ッ♡♡♡やぇ♡ぁ゛♡も、むり♡♡イくのやだ♡や゛♡怖いの♡♡♡オッタ、ビオッ♡♡ぉ゛♡」
パンッ♡パンッ♡♡と肌と肌がぶつかる音が、どこか遠くの方に聞こえる。
頭の中が焼き切れそうになって、どうにかなってしまいそうだ。
(壊れる♡♡こんな♡こんな激しいえっち♡♡♡頭ばかになりゅ♡♡きもちぃ♡いっぱいきもちいい♡♡♡ダメ♡こんなの、もう――♡♡♡)
しっかりと腰を掴まれ、力の入らない体を何度も何度も揺さぶられながら、私は藁にもすがる思いでオッタビオの名を呼んだ。
「は、ぁっ……♡♡や゛、やめ……♡♡オッタビオ……♡たしゅ♡たしゅけ、てぇ……♡♡♡」
これ以上気持ちよくされたら、本当に壊れてしまう。
なんでもいいから、この状況から助け出してほしい――自分から彼の指を握り、涙で潤んだ目で彼のことを見上げた。
「……助けてほしいんですか?」
ことのほか、彼の声は優しかった。
心も体も限界になった私は、その声に縋るようにしてこくこくと頷く。
するとオッタビオは、空いたもう片方の手でそっと私の頭を撫でてくれる。
「泣かないでください。……私はただ、あなたのことが愛しくて――泣かせたいわけではないんです」
「……なんで」
なんで、彼はここまで私に執着するのだろう。
私がなにか――彼に、悪いことをしたのだろうか。
快感のあまりまとまらない思考で尋ねてみると、オッタビオはふっと表情を緩めた。銀髪がさらさらとこぼれて、その表情の穏やかさに息が止まる。
「初めて出会った時……あなたは何も覚えていないでしょうが、最初声をかけてくれたのはルイーズの方なんですよ」
「私……?」
「もう何年も前のことです。アレッサンドロ様の学友であった私が、初めて王宮に出仕した日――私が物を落としたとかで、あなたが声をかけてくださったんですよ」
「……それだけ?」
落とし物を拾って、私が彼に声をかけた。
それだけ。たったそれだけで、彼は何年もの間私に執着を向けていたというのか。
初めて聞く話に目を丸くする私とは対照的に、オッタビオは過去を懐かしむように目を細めている。噛み締めるような言葉が、大きく心を揺さぶってきた。
「それだけで、十分でした。私は一方的に、あなたに心を奪われた――さすがに第二王子殿下の婚約者に、侯爵家の次男が懸想するわけにはいきませんから。ただ遠くで見つめていることしかできませんでしたが……」
大きな手が、ゆっくりと肌を撫でる。
お腹から胸へと伸びたその手が、やんわりと乳房を揉んできた。あれほど暴力的だった快感が、今は緩やかで満ち足りたものに変わっていく。
「それでも、あなたは今私のものだ。あなたを手に入れたくて、私は……何年もの時間と、あらゆる努力を重ねました。正攻法もあれば、そうでないものも」
「……あなたのその努力は――無駄に、なったのではなくて?」
ようやく呼吸を整えることができた私は、快感に鈍る思考を叱咤して目の前の夫を見上げた。
「私はもう、公爵家の一人娘じゃない……お父様もお母様も、罪人として殺されたわ」
「必要なのはあなた自身であって、あなたにまつわるものなどオマケみたいなものです。もとより身軽な立場ですから、必要なのはあなた一人だ」
「っ……」
――今まで生きてきた中で、そんな風に言われたことなど一度もなかった。
ジオヴァンニ様はもとよりヴィスコンティ公爵家の後ろ盾を必要としていたし、私自身それが当たり前だと思って生きてきたからだ。
貴族の子女として生まれた以上は、それが当然のこと。自分自身の評価はそのまま家の評価に直結する。
「あなただけが、私のすべてだった。他には何もいらない……私はただ、ルイーズ・ディ・ヴィスコンティという一人の女性を愛しているのです」
「な、なにそれ……あなた、そんなこと今まで一度もっ……」
「聞く耳なんて、もってくれるとは思っていなかったので。それに――この思いは私の中で完結させればいいと、ずっと思っていましたから」
緩やかに、律動が再開される。
ずりゅっ……♡と膣壁を掘削されて、私は甘やかな声を上げた。だが、それは先ほどまでの、気が触れてしまうんじゃないかというほどの快感とは程遠い。
「ッあ、ァっ……♡♡」
「何もいらない。ただ、あなたさえいれば……あなたをそばに留めおくための努力ならいくらでもします。ルイーズ……私の、すべては」
ぐぷっ♡ぬぢゅっ♡♡と水音を立てながら腰を揺さぶられ、身もだえするほどの快感が全身を灼く。
動きは先ほどよりも緩やかで、感覚を弄られている気配もない。それなのに、酷くこの行為に充足感を覚えている自分がいた。
「あ♡やぁっ……♡ん、ぅうっ♡♡♡」
「私のすべては、あなたに捧げるためにある。――ルイーズ」
……そんな風に、名前を呼ばないでほしい。
切なく胸を締め付けるような声音で名前を呼ばれ、宝物に触れるようにくちづけられたら、きっと私はもう――この腕の中から、逃れることはできない。
「あなたが欲しいと望むものは、すべて差し上げる。……王冠が欲しいというのなら、それさえも」
「ふ、あぁっ……♡♡や、だめ……ッ♡♡あ、ぁっ♡」
緩やかに律動を刻まれて、背筋がぞくぞくっ……♡と震えあがる。
だめだ。今ここで優しくされたら、戻れなくなる。
(でも――どうしてだめなの? 私はもうジオヴァンニ様の婚約者じゃない……お父様もお母様も、もうどこにもいないのに……)
ふと、そんな考えが頭をよぎる。
頼るべき相手も、守るべき誇りも、すべて失った。今の私にはなにもない――ただ一つあるとするならば、それはオッタビオから捧げられる愚直なまでの愛情だけだ。
「気高く誇り高い、私のルイーズ……やっと、私の手が届くところに堕ちてきた」
頬に柔らかくキスを落とされて、背中がのけぞった。
拒めない――拒めるはずがない。
だって、この手を振りほどいてしまったら……今度こそ私は、一人ぼっちになってしまう。
「ぁ、んんっ……♡」
頬の次は唇だった。
触れるだけのキスを拒まずにいると、生ぬるい舌先が咥内に潜り込んでくる。
それと一緒にゆるい律動を繰り返されて、私は思わず胸を揉むオッタビオの手に自分のそれを重ねた。
「んふ、っ……♡ちゅ♡ん、むぅっ……♡♡」
舌と舌が絡まって、ぬちゅぬちゅと卑猥な音を立てる。同時におまんこの奥を突かれ、腰と腰が密着するのが分かった。
「あ♡ぁ、んんっ……♡♡ふ、ぅっ♡あ♡オッタビオッ♡オッタビオ……♡♡」
「ここにいますよ。どこにもいかない――私は、あなたの夫なので」
優しい声が、鼓膜から全身に広がっていく。
徐々にピストンのペースが速くなるにつれ、気持ちいい場所を突き上げる回数が増える――今度は抗わずに、その愉悦を受け止めることにした。
「そう――すべて、受け止めてください。あなたを愛する、たった一人の男のために」
「ん゛、ぉぉ゛ッ……♡♡」
ぐぷんっ♡♡と深くを突き上げられて、喜悦の渦に全身が飲み込まれる――ヒクヒクと収斂する膣内に、熱い飛沫が流し込まれたのはその時だった。
「んく、ぅうっ♡♡♡ぁ゛♡出て、っ……♡せーえき出てるぅっ……♡♡♡」
ゾクゾクと震えるような感覚が全身を支配して、目の前が真っ白になる。
身動きが取れなくなった私がベッドに四肢を投げ出すと、オッタビオはそっと頬にキスをしてくれたのだった。
● ● ●
コツコツとヒールを慣らし、夜会の会場を闊歩する。
今日の主役は私――ではなく、先日立太子された第一王子のアレッサンドロ殿下だ。王太子として選定されたのをきっかけに、婚約者であるルッチェルド公爵令嬢との結婚を発表するらしい。
「あ――あれ? あの方は……ヴィスコンティ公爵令嬢……?」
「違うわよ。今は確か……リッテンフィールド伯爵夫人。昨年の秋に夫が叙爵されたとか……」
「あぁ、王太子殿下のお気に入りの――魔術に長けるオルトラーニ侯爵家の人間が、殿下に魔術をかけて取り入ったって聞いたけど」
あちこちから聞こえる声をいちいち気にしていたら、貴族なんて務まらない。夫であるオッタビオは先ほどからずっとアレッサンドロ殿下のもとにいるのでこの声は聞こえていないし、そもそもお互いこんな話を気にするほど繊細な性格ではなかった。
「おや……ルイーズ! ルイーズじゃないか!」
――と、明るい声が鼓膜を打ったのはその時だった。
顔をあげると、そこにはニコニコと人当たりのいい笑みを浮かべた夫妻がこちらを見つめていた。
「ぁ……お義父様、お義母様……!」
「あなたもここに来ていたのね。まったく、オッタビオったら仕事ばかりで……一人にさせてしまって申し訳ないわ」
「いいえ――その、これからが大変な時期であることは、私も十分に存じています。その……ジオヴァンニ様があんなことになって、アレッサンドロ殿下も随分とお忙しいようでしたから」
声をかけてきたのは、オッタビオの両親――オルトラーニ侯爵夫妻だ。
今は王都の邸宅を長男……つまりオッタビオの兄に任せ、領地でのんびりと隠居暮らしをしている二人なのだが、今夜ばかりは夜会に顔を出さなければならなかったらしい。
「君のような妻がいてくれて、オッタビオも心強いだろう。最初は、あのヴィスコンティ公爵の娘と聞いて驚いたが……何分オッタビオは、貴族社会のなんたるかには些か疎くてね。学者肌というか――その点君は、こういう場面の重要さをよくよく心得ている」
それは――確かにそうかもしれない。
良くも悪くも欲がないというのか、オッタビオは貴族の中でありがちなしがらみのほとんどを排除して生きてきた。
アレッサンドロ殿下の首席秘書官という立場で仕事をする時は問題ないと思うのだが、私的な交流などはほとんどしない性格のため、コネらしいコネがほとんどない。
「……そういう点で彼を支えるのも、私の仕事だと思っています。その、かつてのようにはいかないこともありますが――今の私だからできることも、たくさんあると思うので」
ヴィスコンティ公爵家は断絶扱いとなり、今の私は叙爵したオッタビオの爵位であるリッテンフィールド伯爵夫人を名乗っている。
歴史ある公爵家の名前は既に過去のものになってしまったが、それでも私や両親が有していた人間関係が完全に消えてしまったわけではない。
「君がオッタビオと結婚してくれてよかった。本当に……今なら心からそう思えるよ」
「いえ、むしろ――私の方が」
ニコニコと機嫌よく笑うオルトラーニ侯爵夫妻に頭を下げ、そっとその場を後にする。……義両親はとてもいい人たちだ。罪人として処刑された私の両親が哀れだと、歴代公爵家当主の墓に眠れるように手を回してくれた。
オッタビオからアレッサンドロ殿下への進言もあり、つい先ごろには墓所の移動がされたばかりだ。
(本当に……慌ただしい数か月だったけれど)
さらに言えば、ジオヴァンニ様は素行不良が原因で王族の身分を剝奪された。私との婚約を破棄した後、なぜか次から次へと過去の不祥事が明らかになり――更にメイデリア伯爵令嬢も、実家の汚職が明るみに出て僻地の修道院へ送られたという。
……恐らく、オッタビオとアレッサンドロ殿下が手を回したのだろう。いくら政治に疎い私でも、それくらいはわかる。
第二王子を擁していた派閥の、徹底的な排除。それが、側妃の子であるアレッサンドロ殿下が王位に就くために必要なことだった。
そしてオッタビオは、それを忠実に実行したのだろう。
(見た目以上にえげつないことするのね……貴族社会に疎いなんて、そんなはずないじゃない)
貴族間での私的な交流をしないだけであって、しがらみがない方がこういう仕事はやりやすい。
我が夫ながら末恐ろしいことをしてくれる――そう考えていると、小さな悲鳴と共に冷たい水のようなものが足にかけられた。
ハッとして顔をあげると、下働きの侍女が青い顔をして地面に座り込んでいる。
「あ、あぁっ……! も、申し訳ございませんっ! リッテンフィールド伯爵夫人になんという……!」
「落ち着きなさい。……あなた、怪我はなくて?」
人を避けているうちに転んでしまったのだろう。グラスを落として怪我などしていなければいいのだが。
「え、えぇと……怪我、怪我はないですが……その」
「しゃんとなさい! あなた、王城付きの侍女でしょう。これくらいのことで動じていては、王族の品格、ひいては国家の品格が問われます」
「ふぁ、はいっ!」
ぴしゃりと一喝すると、侍女はバッと立ち上がって居住まいをただした。
「こちらも怪我をしたわけではありません。あまり騒ぎ立てないように……あなたに怪我がないのならば、王城に勤める者として職務を全うなさい」
そう言うと、侍女はぺこぺこと頭を下げて散らばったグラスの片づけを始めた。
私はそれを一瞥して、できるだけ人々の輪から離れたところへと向かう。もうそろそろオッタビオの仕事が終わるはず――そうしたら、私はようやく彼と一緒に自宅に戻ることができるのだ。
「……お待たせしました。随分と退屈そうですね」
「別に――そうだ、先ほどお義父様とお義母様に会ったわ」
それからしばらくして、オッタビオが私のもとへとやってきた。どうやら必要な話は終えたらしく、その表情はややすっきりしている。
「あー……そうですね。アレッサンドロ様の結婚の件で、ウチも一枚噛んでまして」
「でしょうね。そんなところだろうと思っていたわ――確かルッチェルド公爵家は……オルトラーニ侯爵家同様、魔術研究が盛んな家柄だったと記憶しているけれど」
家柄や擁する王族だけではない。学問という派閥だってこの国には存在する――そしておそらく、オッタビオや義両親にとってはそちらの方がより重要なものなのだろう。
隠居暮らしの彼らが王都まで出張ってきた理由も、おそらくそこにあるに違いない。
「さすがです、ルイーズ。おおよそあなたの考えている通りですよ。……まぁ、このままいけばアレッサンドロ様の王位継承は確実。あれこれ動き回るのも大変なので、このまま穏やかに日々が過ぎ去ってくれるに越したことはありません」
意味深に笑いながら、オッタビオはそっと私の腰を抱く。
びくんっ、と一瞬体が跳ねたが、務めてそれを表情に出さないよう――開いた扇で顔を隠す。
「遅くなってもいけません。……今日はもう帰りましょう、ルイーズ」
艶めかしく、彼の手が腰を這う。
声を出してしまわないようにお腹に力を入れた私は、高慢な貴婦人の顔を崩さないように苦心しながら屋敷へ戻る馬車へと乗り込んだのだった。
「……オッタビオ、あなたいい加減になさい! あんな、公衆の面前で私に触れるなんて……!」
「おや、お嫌いでしたか? あなたの趣味嗜好はしっかりと頭の中に入っているつもりでしたが」
愉快そうな口ぶりのオッタビオを咎めると、彼は更に小さく喉を鳴らした。
屋敷に戻ってきてからお互い体を清めて寝室へ向かったが、一仕事終えたオッタビオはいつにもまして上機嫌だ。
「それより――先ほどの会場で何かあったのですか? 遠くの方から、あなたの声が聞こえた気がしましたが」
「声?」
「えぇ。誰かを叱り飛ばしていたとか……? それにしては、随分棘のない声音でしたが」
普段は几帳面になでつけている銀髪は、かすかに濡れたまま下ろされている。
眼鏡越しの瞳は、相変わらず隙が無い。極端に視力が低い彼は、寝所であっても眼鏡を外すことがほとんどなかった。
「……あぁ、侍女が私にぶつかってきたの。おどおどとしていて貧相だったから、叱り飛ばしてやったわ」
「叱り飛ばした、ねぇ。それはまた、愛情ある叱責だったようで」
クスクスと小さく笑ったオッタビオは、腰かけていた椅子を立ち上がってベッドの上に座る私のもとへとやってきた。
足音を立てずに近づいてくるその様に、ほんの少し体が熱くなる。
「不器用な方だ」
「別に――思ったことを口にしただけよ」
「そうですか? ……あんな風に他人に聞こえるように誰かを叱って、私にかまってほしかったのでは?」
「はぁ?」
そんなわけがあるか――そう口に出そうとすると、開いた唇を彼のそれでふさがれた。
「ッ、んんっ♡」
唇同士が触れ合っただけで、体が一気に燃え上がる――足の間からじゅわっ♡と熱いものがあふれ出してきて、呼吸が荒くなる。
「んは、ぅっ……♡ちゅ♡んんっ……♡♡」
舌同士が絡まりあって、やがてくちゅくちゅと淫らな水音が響き渡った。頭の芯がじわじわと蕩けてくるような感覚に身を任せると、下腹部がひっきりなしに甘く疼く。
「んぁ……♡♡オ、ッタビオ……♡♡」
「キス一つでこれですか。本当に可愛らしい――さぁ、私の美しいルイーズ」
耳元で声を囁かれるだけで、心臓が跳ねる。
何度も何度も、それこそ正気を失うのではないかというほどに犯され続けて、体は快感に対してひどく従順になっていた。
「ふぁ、ァっ……♡♡」
「さぁ――いつものように、できますね?」
こくんと頷いて、私は完全に寝台の上に体を乗せる。
おずおずと足を広げながらドレスをたくし上げ、下着をゆっくりと足から引き抜く。その間にも心臓が強く脈打って、おかしくなってしまいそうだった。
「自分で触って」
「そ、そんなのっ……」
「できますよね、ルイーズ?」
耳元で低く囁かれるともうだめだ。私はもう、彼の言葉に逆らえない。
胸の奥を鷲掴みにされたような心地を覚えながら、はぁっ……♡と熱い息を吐き出した。
――だめ。私の心はすべて、オッタビオに絡めとられてしまった。
「っあ、は……♡♡ぁ、んんっ♡♡」
足の間に右手を滑り込ませ、緩やかに割れ目をなぞる。
すると、よく慣らされたその場所はあっという間に蜜を湛え始めた。
「ンっ♡あ、ぁっ……♡♡」
くち、くちっ♡と小さな音が響くと、更にオッタビオは私の耳元に唇を寄せてくる。
「どうなっていますか? あなたの口で教えてください……」
「ぁ――は、はい、っ♡♡おまん、こ♡触っただけでっ……♡♡もぉ、熱くなって♡♡んふ、っ♡トロトロになって、ます……♡♡」
ぬかるみに指先を這わせるだけでも、肩がびくびくと震えあがる。
オッタビオに見られながら自慰をしている――頭の中でそう理解してしまうと、途端にまともな思考ではいられなくなってしまった。
「んぁ♡あ♡おまんこグチュグチュになってる♡♡オッタビオ♡も、はやくぅっ……♡♡」
私の拙い手淫では、やや奥まったところにある弱点には指先が届かない。
長く節張って、硬いオッタビオの指で慰められたい――もじもじと腰を揺らして懇願すると、彼は薄い笑みを唇に張りつけた。
「いいですよ。他ならぬあなたの願いですから……ですが、私はあなたに言ったはずです。いつものように、と――」
そう言うと、彼はするりとベルトを引き抜き、下履きを緩める。
ばるんっ♡と目の前に勃起したおちんぽが突き出され、柔らかく頭を撫でられた。
「もう一度言いますよ? ……いつものように、おねだりしてみてください」
「は……ッ♡」
ビキッ♡ビキッ♡♡と血管を浮き立たせた、バキバキの旦那様おちんぽ――それを目の前にして、私はすっかり視線を逸らせなくなってきた。
(す、ごい……♡♡おっきい♡こんなに勃起して苦しそう……♡♡)
ごく、と唾液を飲んだ私の頭をオッタビオは優しく撫でてくる。
「ちゃんとできたら、しっかりご褒美をあげましょうね」
「は、はい……♡オッタビオ、の♡♡旦那様のおちんぽにご満足していただけるように♡♡いつもみたいにご奉仕頑張ります……♡♡」
上ずった声でそう宣言して、くぱぁ♡と唇を開く。
溢れそうな唾液をたっぷりと舌に絡め、それでそっと亀頭を舐め上げた。
「んぇ♡♡れろぉ……♡んふ♡ちゅ♡♡んぢゅ、ぅっ……♡♡ん♡ァ、あむっ♡♡」
ちゅ♡ちゅっ♡♡とおちんぽ様にキスをして、言われた通りにくちゅくちゅっ♡と指先でおまんこをかき混ぜる。
やはり私の指では、到底ナカの悦いところには届かない。だけど、音を響かせるみたいにして指先を動かしていると、オッタビオが何度も頭を撫でてくれた。
「んぢゅ♡ん゛、ッ♡♡♡ちゅぅっ……♡♡んぇ♡♡れるぅ……♡♡」
舌でたっぷりと亀頭全体を舐めてから、今度は空いていた手で幹の部分に触れる。根元のところを緩やかに扱きながら裏筋まで舌を這わせると、しっかりと鍛えられた彼の腹筋がひくっ♡と小さく跳ねた。
「ン――上手、ですよ。そう……ぁっ、しっかり全体を舐めて……」
かすかに呼吸を乱しながら、オッタビオは私をしっかりと褒めてくれる。
そう言われると嬉しくなって、私は更に口を窄めてきつく肉茎を絞り上げた。
「む゛、ぅうっ♡♡ちゅ♡ちゅぱっ……♡♡ンん゛っ……♡」
「あぁ――もう、大丈夫ですよ……♡こちらももう、準備はできたでしょう」
優しく頭を撫でてくれたオッタビオの手が止まる。
顔をあげると、常には冷たい彼の視線が、蜜をこぼす私の下肢へと注がれていた。
「ぅ、もう……♡♡おまんこ準備、できてます♡旦那様おちんぽにいっぱい気持ちよくなってもらうために♡♡♡ハメ穴トロトロにしてお待ちしてました♡いつでも♡いつでもおちんぽズポズポってしていただけます……♡♡」
はっ♡はっ♡♡と犬のように呼吸を浅くして、トロついたおまんこを指先で広げて見せる。
蜜を滴らせながらくぱぁ♡と開いたその場所は、何度も与えられた愉悦と快感、そして幸福を欲して淫らに蠢動していた。
(はや、く♡♡おなかの奥熱い……♡オッタビオのおちんぽ♡♡舐めてるだけでずっと子宮疼いてる……♡♡♡)
最早、オッタビオの魔術は必要なくなっていた。
私の体は従順に快感を追い求めてしまう――オッタビオは自らの着衣をするすると脱ぎ捨てると、そのまま私の体に覆いかぶさってくる。
「素直なあなたも、可愛らしくて大好きですよ。普段の……棘のある薔薇のように気高いあなたも大好きですが」
「んん、っ♡」
ぴっとり♡と熱いおちんぽの先端が、涎を垂らす蜜口を割って入ってくる。
待ちわびていたように収縮する淫穴をぐっと押し開かれる感覚は、どれだけ気持ちよくても未だ慣れないものだ。
「んふ、ぁっ……♡♡ぁ゛、ッ♡おちんぽ♡入って、るっ……♡♡♡」
ぐぷっ……♡♡ずちゅ♡ぐち、っ♡♡ぬちゅ♡ぬちゅ♡♡ずぷぷっ♡♡♡
待ち望んでいた熱が与えられて、背中が大きく反りあがる。それと同時に、瞼の裏側でぱちんッ♡となにかが弾けるような心地を覚えた。
「んふぁぁあっ……♡♡ぁ゛♡ぅ、んんっ♡♡ひ♡ひぃっ……♡♡♡」
「は――ヌルヌルで、すごくいい……♡♡わかりますか、ルイーズ? あなたのおまんこ、私のことを誘うみたいに動いてっ……♡♡」
ぱちゅ♡ぱちゅ♡♡と軽く腰を揺さぶられるだけで、喜悦に支配された体がわななくのを止められない。
シーツを掴んでなんとか強い快感に耐えようとしても、すっかり彼に調教されきった体は言うことなんて聞いてくれなかった。
「ん゛、ッぉ゛♡ぉ゛、ッ♡♡♡ぁ♡あ、ぁっ♡♡♡そこだめ♡ンぁっ♡♡♡」
「わかりますよ――弱いところですよね♡ここを少し突かれただけで、ほらっ……♡♡」
「ッひぅうっ♡♡」
感じるところを的確にノックされて、腰がガクガクガクッ♡と激しく震えた。
それでもオッタビオは、お構いなしにその場所を刺激し続ける――どれだけやめてと懇願しても、その動きは止まらない。むしろ激しさを増しているようにも思えた。
「ん、っ♡♡ふ♡ぁあぁッ……♡♡♡オッタビオ♡♡んっ♡♡そこ♡そこ好きなの、ッ♡♡♡おちんぽでコンコンってされたら♡ぉ゛ッ♡♡♡すぐイっちゃぅうっ……♡♡」
ぢゅぽ♡ぢゅぽ♡♡と水音交じりの音が部屋に響いて、聴覚も同時に犯されている気分だ。
「ンッ、ぁあっ♡♡これ♡これしゅき♡♡♡ぁ♡あっ♡♡気持ちいいところ♡旦那様おちんぽでよしよしされるの好きなのっ♡♡ん゛♡ぁあっ♡♡」
「ッ、あ――突くたびに、ッ♡いじらしく締まる……♡♡可愛い♡私の……私のルイーズ、ッ……♡♡」
気持ちいい場所をコンコンッ♡とノックされるたび、膣内がおちんぽに甘えるみたいに収縮する。
どうやらオッタビオもその刺激が心地好いらしく、次第にピストンの速度と強さが増していった。
「こんなに締め付けられてはッ♡すぐに――射精してしまうではないですか……♡♡」
「あ♡ご、ごめんなひゃ♡♡おちんぽぎゅ~~ってして♡♡ごめんなさい、ぃっ♡♡ん゛ォッ♡♡あ♡あっ♡♡♡ピストン激しすぎ♡♡ッふ、ぅううっ♡♡♡」
ぱんぱんぱんっ♡♡とリズミカルにおまんこを突き上げられて、軽い絶頂を何度も繰り返す。
その度におちんぽを締め付けてしまうものだから、オッタビオの呼吸と動きはどんどん荒くなっていった。
「は、ぅうっ♡♡んぐっ♡♡ぉ゛ッ♡♡♡ぉ゛~~~ッ♡♡」
ばぢゅばぢゅばぢゅっ♡♡♡どちゅっ♡♡♡ぐぷっ♡ぐぷんっ♡♡
深いところを力強く犯され続けて、頭の奥が蕩ける。いや、もうとっくに――私が今まで頑なに守ってきたものは、彼の手でめちゃくちゃにされてしまった。
「ッふ♡ァお゛ッ♡♡ぃ゛、っぐ♡♡んはっ♡♡イく♡イく♡♡♡もぉだめっ……♡♡ん゛ぅっ♡♡♡イく、ぅうっ……♡♡」
びくんっ♡と一度体が跳ねたかと思うと、そこから先はほとんどなし崩しだった。
きゅうぅぅぅ~~~♡♡♡と肉棒を締め付ける淫膣が、早く早くと吐精をねだる。それに合わせるように腰を打ち付けてきたオッタビオが、やがてぐっと呻いた。
「ッふ、ぅゥッ……♡♡射精る、っ……♡♡ぁ゛、ッ♡ん゛ッ……♡♡♡」
喉の奥でぐぅっと唸ったオッタビオは、ばちゅぅんっ♡♡♡とひときわ強くおまんこを突き上げると、子宮口に亀頭を押し付けながら熱いものを吐き出した。
「ん゛ぁ、ぁぁッ♡♡♡ぁ゛♡や、ぁあっ♡♡せーえき出てるぅッ……♡♡んはっ♡ぁ゛♡あ、ぁっ♡♡♡おまんこあつ♡熱い、ぃっ♡♡♡」
びゅぷっ♡♡びゅるるるっ♡♡♡ぶびゅ~~~~ッ♡♡ぶぢゅっ♡♡びゅ♡びゅるるっ♡♡♡
粘っこくて熱い精液を容赦なく膣奥に吐き出された私は、腰が溶けてしまうんじゃないかというほどの快感を味わいながら体を弛緩させた。
すると、芯を失ったおちんぽがぬ゛る……♡と引き抜かれる。
「んぁ、っ……♡♡あ、っん……♡♡」
ずっぽりと埋められていたものが抜き取られる喪失感を覚えはしたが、それでも全身を包み込むような多幸感の方が強い。
絶え間なく与えられ続ける愛情に屈してしまった先にあったのは、今まで覚えたこともないような幸福だった。
(もし、私があのまま……)
倦怠感の中で、ふと考える。
もしも私があのまま、ジオヴァンニ様の婚約者だったら。
お父様とお母様は生きていたかもしれないし、今頃本当に王太子妃になっていたかもしれない。
輝かしい未来、家としての繁栄はそこにあったかもしれないが――果たして、私は幸福だったんだろうか。
「――ルイーズ」
降り注ぐ声に顔をあげると、頬や額にキスが降り注いでくる。
あの日あの時なにかの歯車が狂っていたとしたら、きっと私は……この幸福を手に入れることができなかった。
それがたとえ、たくさんのものを犠牲した末の幸福だとしても。
「そんなに必死な顔をしないで。今更逃げようだなんて思っていないわ」
できるだけ普段通りに、『高飛車で高慢なルイーズ』を崩さないように声をかけると、今度はきつく体を抱きしめられる。
「信じていいのですか?」
「信じてもらわなくては困るわ。……あなたの妻なのだから」
腕の中に閉じ込められたまま、小さく笑みをこぼす。
広い背中に腕を回しながら、私は愛する人の鼓動に耳を傾けたのだった。