Pixivリクエストにてご依頼いただいた小説です。
策士で理知的な第一王子と、そんな彼に淡い思いを抱いていたら絡めとられて溺愛されてしまう公爵令嬢のお話
「シャロンドール公爵令嬢、すまないがこの本を探すのを手伝ってもらえないだろうか」
図書室に響く柔らかい声を心待ちにしている自分がいる。
そのことに気が付いたのは、ほんの最近のことだった。
「ル、ルシアン様……かしこまりました。どのような本をお探しですか?」
リオンダグラス王立学院――貴族の子女子弟が通うこの学校は、早い話が非常に規模の大きなお見合い会場のようなものだ。
勿論行儀作法や教養、政治学や経済学を学ぶという名目はあれど、多くの貴族は自分の伴侶を探すためにここに通っている。
私――シャロンドール公爵令嬢エマニュエル・ディ・シャロンドールも、両親から望まれてリオンダグラスの学生となった。
学園生活は、それなりにうまくいっている。ひっきりなしに訪れる、茶会という名の縁談さえなければもっと楽しいのだけれど――社交界にデビューしたのに未だ婚約者のいない私に、両親はとても焦っているらしい。
「古典文学を研究した本を探したいんだ。メルドレッド教授に出された課題がちょっと厄介でね。君なら詳しいと思うけど、どうかな?」
「古典文学ですか……ご案内します、ルシアン様」
王立学園の別棟、小さな森を隔てた場所にある図書館は、その豊富な品ぞろえや静謐な雰囲気もあってお気に入りだった。
図書委員としてこの図書館で過ごすことも多い私に、最近声をかけてくださる方がいる。
それが、ルシアン・クロード・デュ=ソリエ様――この国の第一王子殿下だった。
「メルドレッド教授の講義は非常に興味深い。私が他の生徒より年上だからということもあるかもしれないが、難解な課題を出されても楽しみの方が勝るんだ」
「そうなんですね……女子生徒の講義を担当される方ではないので、そういうお話を聞けるのはとても新鮮です」
書庫の中は非常に広大で、奥の本を探すには小さなランタンが必要だった。
それを片手に古典文学のコーナーへルシアン様を案内すると、彼は柔らかい金髪を揺らしてにっこりと笑った。
「こちらです」
「ありがとう……えぇと、古典文学概論という本を探すのを手伝ってもらえないかな。如何せんここの書庫はとても広い。私一人では、探し当てるのに日が暮れてしまう」
ランタンのオレンジ色の明かりで照らされたルシアン様の横顔は、彫像のように美しい。
思わずそれに見とれてしまいそうになりながら、私は至極平静を装って笑みを浮かべた。
「構いませんよ。古典文学概論ですね――では、私はこちらを」
「助かるよ。しかし、ここには他の図書委員はいないのかい? 私が顔を出す度に、シャロンドール公爵令嬢が見回りをしているように思えるけれど」
その言葉に、私はなんとも言えずに首をひねった。
元々委員会活動などというのは、そういった組織に所属していたという箔付けのために行われるものだ。所属さえすれば活動していなくても、先生たちはそれを咎めない。
「……なるほど、他のご令嬢はサボりか」
「サ、サボっているわけでは――」
クスクスと悪戯っぽく笑うルシアン様は、私よりも五歳ほど年上だ。
元々リオンダグラスは若い貴族同士の交流を目的に設立された学校――もとい学園都市だ。
十代から二十代の貴族が集められるため、厳密に入学年齢が決められているわけでもない。
三年間の学園生活で貴族としての責任や教養を身に着ける――とは言うものの、大体の家庭には専属の教師がいる。ここでは交流と結婚相手探し、あるいは太い人脈づくりが主な目的だろう。
ルシアン様も私も、今年この学院に入学したという点では同級生だった。
けれど男性と女性では履修の科目が違うし、王族である彼には特別なカリキュラムが組まれているとも聞く。
「……あの、ルシアン様はどうしてこの学校に? ニコライ様もこちらに通っているのに……」
「そうだなぁ、私にとっては最後の息抜き……ってところかな。リオンダグラスを出たら、私かルシアンのどちらかが正式に王位継承者として指名される。そうなれば父上の後継として、あらゆる業務を手伝わなければならないからね。ほら、都市結界の修復とかは王族じゃないとできないだろう? あぁいう雑務に駆り出されるんだ」
あれでもないこれでもないと本を探しながら、ルシアン様は私の質問にとても丁寧に答えてくださった。
王族の方は、その体に膨大な魔力を有する。国王陛下をはじめとして、彼らはその魔力を国のために費やして一生を過ごすのだという。
「完全に忙しくなる前に、親しい友人たちとの時間が欲しかった。侍従のランクルスやエイボリーも一緒に入学したからね、彼らや他の生徒と語らう時間はとても楽しいものだ」
この国の王族は、非常に絶大な権力を有している。
けれど、それと同じくらい自由がない――かつてお父様は、私にそんな話を聞かせてくれた。女性に生まれれば高い資質を持つ子を産むために降嫁させられ、男性に生まれれば多くの都市を守るため、国の礎として民を導き、支えていく。
そんな未来を知っているから、ルシアン様は人生最後の余暇をとるためにこのリオンダグラスに入学したのだという。
「それに、弟は弟で好きにやっているから……私が口出しをするのが嫌みたいでね」
「は、はぁ……」
ルシアン様と同時に、異母弟となるニコライ様もこの学校に入学した。
彼らはあまり折り合いがいいわけではないらしく、学院内でもほとんど不干渉の立場をとっている。
「あっ、ルシアン様……お探しなのはこちらの本ではありませんか? 少し古いものですが……」
そうして本を探していると、やがて彼が探していた『古典文学概論』という本を見つけることができた。
やや重たいそれを両手で手渡すと。ルシアン様は優しく微笑んでそれを受け取ってくれる。私が両手で持ってもなお重かったその本を、彼は軽々と片手で受け止めた。
「ありがとう……! 君のおかげで助かったよ。そうだ、シャロ……ねぇ、エマって呼んでもいいかい? 少し馴れ馴れしいかもしれないが、私は君のことを友人だと思いたい」
優しいその問いかけは、決して強要するようなものではなかった。
彼には正式な婚約者がいるので、他の女性を愛称で呼ぶというのはあまり外聞がよろしくない。
けれど、あくまで彼は私のことを一人の友人として見てくれている。女性としてではなく、近しい仲間、学友として――どこかで胸が痛むような気がしたが、それがルシアン様なりの線引きであり、気遣いであることにも気づいていた。
「それに、君は元々私の遠戚だろう? シャロンドール公爵家は、私の祖父……先々代国王の妹が降嫁しているはずだ。君のおばあさまと私のおじいさまは兄妹なんだし、多少親しく話をしても……咎められることは、ないんじゃないだろうか」
駄目押しに首を傾げられて、否と答えることはできなかった。
「は、はい。ルシアン様のお好きなように――」
そう答えると更に嬉しそうに目元を綻ばせるので、ついそれを許してしまった。
――一年後にあんなことが起こると知っていたら、私はここで首を横に振っていただろう。
ルシアン様が、婚約者であるティオゾ侯爵令嬢から婚約破棄を言い渡されていなければ――きっと私たちは、ずっと友人のままでいられたはずだった。
● ● ●
「申し訳ございません、殿下――そういうわけでございますので、わたくしとの婚約をなかったことにしてくださいませ」
雪の降る、静かな夜のこと。
学院主催の晩餐会でルシアン様にそう伝えたのは、ティオゾ侯爵令嬢。幼い頃からルシアン様と婚約を結んでおり、彼がこの学校に入学するのを追ってきたのだ。
「……そうか、君は――ニコライを選ぶのだね」
「えぇ、そういたしますわ。ニコライ様でしたら、わたくしを放っておくようなこともございませんし……」
蠱惑的な笑みを浮かべたティオゾ侯爵令嬢とは対照的に、ルシアン様の顔面は蒼白そのものだった。
晩餐会に参加していた私は遠巻きにその様子を眺めることしかできなかったが、第一王子が自らの婚約者を弟に寝取られたという噂は瞬く間に広がっていった。
(あのルシアン様が、婚約破棄なんて……)
あまりのスキャンダルに騒然となった晩餐会は、先生たちの手によって解散させられた。
ざわめく生徒たちの間を縫うようにしながら、私はとんでもないものを見た気持ちでいっぱいになっていた。
翌日になっても、昨夜のことは生徒たちの口に上っている――口さがない者の中には、ニコライ様とティオゾ侯爵令嬢は揃って次期国王の座を狙っていると噂する人もいた。
(なんだか、学院全体が……ひどく浮足立っているみたい)
ルシアン様は講義にも出ていないようで、それが更に人のうわさを広めていく。
私は喧騒から逃れるように図書館へ向かうと、人のいない静かな閉架書庫の整理を行い始めた。
「古い本ばかり……空調は管理されてるけど、これで本が黴びたりしないのかしら」
魔術を使った古い空調装置が設置されてはいるものの、その場所はあまりに暗い。
けれど、古びたインクと古紙の香りは心を落ち着けてくれた。学院で保存されている本にはひどく希少なものもあるので、時々先生がこの書庫に籠って調べものをしていることもある。
「――すみません、誰かいませんか?」
シンと静まり返った図書室の中に、誰かの声が聞こえてきた。
乱雑に床に積まれていた本を書棚に戻していた私は、その声とともに顔を上げる。司書の先生が腰を痛めて療養中なので、この図書室には常駐の先生がいないのだ。
「は、はぁい! 今行きます――」
交流を目的とした学校生活で、そこまで律儀に図書館を使う人間は限られている。
閉架書庫から出た私は、スカートについた埃を払って顔を上げた。
「あ――ルシアン様……」
「……やぁ、エマ。今日も君一人かい?」
そこには、随分と憔悴しきった様子のルシアン様が立っていた。
自慢の金髪にいつもの輝きはなく、肌は青白いまま――オリーブの瞳の下には青黒い隈が浮かんでいた。
それで彼の美しさが損なわれることはなかったが、纏う空気は悲壮そのものだ。
「は、はい。今日は誰も……」
「よかった。人がいるところには居辛くてね……君も、昨夜の晩餐会のことは聞いているんだろう?」
そう言って無理に笑うルシアン様を見ているだけで、胸が苦しくなる。
嘘はつけないのでこくりと頷くと、彼はそっとカウンターを越えて私の側へとやってきた。
「その、なんというか……ごめんなさい、言葉が出てこなくて……」
「いいんだ。彼女の心変わりには、割と早い段階で気付いていた――相手がニコライということにもね」
声はいつもの通り柔らかいトーンを保っている。けれど、どんよりと落ちくぼんだその目は虚ろにすら見えた。
このままではいけない気がする。友人ならば、こんな時どうやって声をかけてあげればいいんだろう。
「……ルシアン様、今……お時間はありますか?」
「たっぷりとね。悪いが、授業はしばらく休ませてもらうことにした」
彼の成績と、王族として叩き込まれた知識や教養があれば、本来授業など出る必要はない。
王族のスキャンダルともいえる今回の一件で、学院側が彼の休暇申請を無条件で受け入れたのは、そういう側面があったかららしい。
「そうですか……では、こちらへ。狭い場所で申し訳ないんですが――閉架書庫の中なら、少しはお心も安らぐかと」
一般の学生は、閉架書庫に顔を出すことはまずない。
人々にあれやこれやと噂を立てられる状況を逃れてきたであろうルシアン様をその場所に通すと、彼は深く息を吐いた。
「ありがとう。助かるよ……寮の自室にいても人々の噂が聞こえてくるようだ。耐えられなくてここに来たんだけど――君がいてよかった」
「私なんて……あっ、お、お茶を淹れますね。ちょっと待ってください。ここに……魔法薬学科のメイリス教授が下さった茶葉があるんです。いい香りがするので、気持ちが安らぐと思いますよ」
備品のカップに紅茶を注いで、ルシアン様に差し出す。
すると彼はそれを両手で持ってゆっくりと嚥下した。
「エマ……本当にありがとう。私一人では、もうどうしていいのかもわからなくて……」
震えた声は、この一年で聞いた彼のどんな言葉よりも弱々しい。
「ルシアン様は一人ではありませんよ。ランクルス様やエイボリー様もお側にいらっしゃいますし……」
「彼らは私の友ではあるが、主従関係という枠組みを取り払うことはどうしてもできない。……いや、信頼はしているんだ。だが……どうしてだろうね、胸の奥に、ぽっかりと穴が開いてしまったようで」
呆然としたままそう語るルシアン様の悲しみは、きっと私などが計り知ることができないほどに大きなものなんだろう。
私は婚約者もいない身で、それを奪われる悲しみには寄り添ってあげられない。
では、今の自分にできることはなんだろう――そう考えて、そっと席を立った。
「エマ?」
「あの……私、なにも見ません。それに、何も聞きませんから……ここなら人も着ませんし、ゆっくりしていってくださっても大丈夫です。――だから、その」
ルシアン様に必要なのは、一人でその傷を癒す時間だ。
そう判断して、くるりと背を向ける。きっと私がいては、真面目な彼は涙を流すこともできないだろう。
「な、なにかあったら呼んでください! ……どうか、お気を強く持って」
それしか声をかけることができずに、私は慌てて書棚に向かった。
図書室はとても静かだ。閉架書庫の薄暗い中だと、誰も彼の涙を照らさない。
積み上げられた古い本を書棚にしまいこみながら、私はぎゅっと唇をかみしめていた。
(結局……こんな時でも、私はなにもしてあげられないなんて)
私のことを友と呼んでくれるルシアン様に、なにかしてあげたい気持ちはあった。だけど、この国で手に入れられるものを――侯爵令嬢の愛以外のすべてを、ルシアン様はすでに持っている。
ままならないものだと気落ちしながら、黙々と書棚の整理を続けた。
こういう単調な作業は余計なことを考えなくていい。しばらくそれを続けていると、不意に薄暗い室内を照らす灯りが揺れた。
「エマ、君は本当に優しい女性だね。私に必要なものがなんなのかを、君は的確に――とても的確に理解している。他人に煩わされない時間こそ、今私が最も欲しいものだ」
「……ぁ、ルシアン様……?」
少し落ち着きを取り戻した声が聞こえたのは、私のすぐ後ろからだ。
ふと背後を振り向くと、そこには小さなランタンを持ったルシアン様が立っていた。
「その本、重くはないかな?」
「い、いえ……その、ちょっと重いですけど、持てないわけじゃ……」
「そうか。――貸してごらん」
ちゃんと持てると言っているのに、ルシアン様は私の手から本を奪うと、それをすっと書棚に挿し込んだ。
背の高いルシアン様は、私が台に上がってようやく届くような場所でも、簡単に本をしまうことができた。
「ルシアン様……?」
「ねぇエマ――エマ、どうか私の話を聞いてくれないか」
背後から腕を伸ばしたルシアン様が、書棚に手をついた。
なんだかその雰囲気が尋常ではないような気がして、私は身じろぎをしようとする――だが、目の前にある書棚にそれを阻まれ、動けなくなってしまった。
薄暗い室内に灯るランタンが、ルシアン様の影を伸ばしている。
「どう、されましたか……?」
「考えていたんだ。ニコライと彼女が愛しあっていると聞いた時、彼女が幸せでありさえすればそれでいいと思っていたはずなのに」
この方は、どこまで優しい方なんだろう。
自分の苦しみよりも、他人の幸せを祈るような人。
彼が苦しんでいるのが伝わるようなその声音に、胸が締め付けられた。
「私は王族だ。生まれた時から、私の心は私のものではない。わかっているけれど……やはり悲しいものだね」
「そ、それは当たり前だと思います。幼い頃から一緒にいた方なんですよね……?」
「あぁ、それもあるが――体質的にもね、さてどうしたものかと考えているんだ」
ふ、と息を吐きだしたルシアン様が、長いまつ毛に縁どられた目を伏せた。
思慮深いオリーブ色の瞳は、オレンジ色の光に照らされている。物憂げな様子は一枚の絵画のようだったが、その薄い唇から紡がれる言葉は私の想像をはるかに絶したものだった。
「君は、男性王族の主な仕事がなにかを知っているかな?」
「え……こ、国政の運営と、魔術的支援……ですか? その、都市結界の修復とか……」
どうして、いまさらそんなことを聞くんだろう。
この国における王族は、決してただの特権階級ではない。高い知性と魔力を国のために循環させ、民を守るのが役割だ。この国の貴族ならば、それを知らない人間はいない。
「そう――私たちの力は国と民のために行使される。だが、それには一つ欠点があってね。膨大な魔力を持て余してしまう。特に、都市防衛の任につく前の若い王族は、それが顕著だ」
シャロンドール公爵家は、王家の流れをくむ家柄だ。けれどその話をお父様から聞いたことはなかった――初めて聞かされる言葉に目を瞬かせていると、ルシアン様は困り果てた様子で眉を下げた。
「魔力の制御ができなければ、内側から体を蝕まれてしまう。今は自分自身で制御ができているが――このところはそれも難しくなっていてね」
「な、なにか手段はないんですか? ……でも、そうですよね。都市結界を動かすほどの魔力を一気に放出なんて……」
連綿と魔術の体系を確立してきた王族と違い、私たち一般の貴族は彼らほどの魔術的素養を持たない。
都市を覆い守護する結界に使う魔力が莫大なのはわかっているが、それと同等の量を発散させる方法というものを知らなかった。
「……あるにはあるよ。ただ、そのための相手がいなくなって困っているというか」
「相手?」
「あぁ……私たちにとっての魔力というのはね、つまるところ体を循環する力だ。ある程度はそれを……性交で発散させることができる。任意の相手との性交渉で魔力を発散させれば、あるいは」
あまりにもルシアン様が普段と変わらない様子でそうおっしゃるので、そこで納得しかけてしまった。
なるほど性交、と頷きそうになったところで、その言葉にようやく疑問を覚える。
「――性交?」
「そうだ。今までは婚約者がいたし、体を魔力に蝕まれる前に婚姻を結ぶつもりだったから……その心配をしたことがなかったんだが」
魔力に体を蝕まれるのは生きたまま内臓を食われる感覚に近いのだという。
おぞましい痛みと恐怖を想像して震えあがる私に、ルシアン様は至極真面目な様子で言葉をつづけた。
「私はまだ、王位継承者の使命を受けていない。もしかするとニコライが選出されることもあり得るだろう。彼は些か勉強不足のような気もするが――私はそれでも構わないと思っている。だが、王族として生まれた以上、その責務を果たさずに死ぬのは……私の正義が許さない」
ルシアン様の、正義。
王族として生まれ、民のために生きようとする彼は、未だ何もなしえない身で死ぬことを自らに許していない。
力強い言葉に、ルシアン様の覚悟を感じ取ることができた。
「エマ、こんなことを頼めるのは君だけだ。私を助けてはくれないだろうか」
「助ける、とは……まさか」
一瞬頭をよぎった予感にさっと血の気が引く。
――ルシアン様を助ける手段は、一つだけ。
「体を、差し出せと……? その、あなたの魔力を――鎮めるために」
「あぁ……君ならば相手として申し分ない。私のことをよくわかってくれているだろうし、家格も立場も……誰とも知らない人間と体を重ねるくらいなら、友である君を求めたい」
「ち、ちなみにお断りをしたら……」
震える声で、そう尋ねる。
王族の権威は絶大だ。文字通り体を張って国を守る彼らに与えられた権限は、神のごとく強大でもある。
――それも、国王陛下の直系、第一王子殿下ともなればなおさらだ。
「その時は、不敬罪で投獄だろうね。王族からの助力嘆願を断ったとなれば、私がそれを望んでいなくても周囲が黙っていない。最悪の場合は……君一人の問題ではすまないかも」
最後に付け加えられた言葉に、背筋がぞくっと震えるのがわかった。
そうだ。これはルシアン様から私への、助力嘆願。本来その役割を全うする婚約者がいなくなってしまったから――かりそめの関係として、私のことを必要としている。
「わ、かりました。その……ルシアン様の、仰る通りにします」
「ありがとう。君がとても聡い女性で助かった……君以外の女性と、こんなことをする気にはどうしてもなれなくて」
そう言いながら、ルシアン様は背後から私の肩を抱いてきた。
男性にそんなことをされた経験のない私は、びくんっと肩を跳ねさせて体を強張らせる。
「心配しないで。私は君を悪いようにはしない――ただ、私が望むときに側にいてくれればいい。わかるね?」
「……はい」
婚約者の代わりの、仮初の恋人。いや、それよりもよほど立場は悪い――体だけの脆い関係を受け入れようとする私に、ルシアン様は安堵しきった声音で唇を寄せてくる。
耳元で囁かれる甘い声は、聞く者を虜にするほどに柔らかく棘がなかった。
「あの……ル、ルシアン様。その――ぁ、さ、先ほどから……」
ぎゅっと背後から抱きしめられると、はたと感じるものがある。
お尻の辺りに押し付けられる、熱い感触。それがなんであるのかを想像するのは容易かったが、敢えて尋ねたのは彼の口から否定をしてほしかったからかもしれない。
なんのことはない、お前は今まで通り私の友なのだと、ルシアン様に今までの言葉を否定してほしかった。
――でなければ、私は。
「あぁ……不躾をしてすまないね。言っただろう? 既に私の魔力は、私自身を蝕み始めた。怖い思いをさせて悪いとは思うが、このまま付き合ってもらえないか?」
「は――い、今ですか?」
突然の申し出に心の準備ができておらず、妙に上ずった声が口から飛び出してきた。
ルシアン様が背後で頷く気配がして、思わず唾を飲む。――だって、ここは図書室なのに。
「エマ、私を救えるのは君だけだ。頼む……私のために心を砕いてくれる、君の優しさに付け込んだ蛮行だということは理解している。だが、私ももう限界が近い」
切なげに吐き出された息が、かすかに髪を揺らす。
その感覚は私が初めて覚えるもので、なんだか体がぞわぞわするほどの――甘ったるいような、いいしれぬ感覚をもたらしてきた。
「私を救うと思って……エマ、お願いだ」
そう懇願されたら、嫌だとは言えない。
たとえそこに愛情がなくとも、ルシアン様に求められていることに確かな歓喜を覚えている自分がいた。
――なんて、醜悪な。
彼に友と呼ばれて、押し込められていた想いが頭をもたげ始める。これではいけないと抑え込んでいた気持ちを引きずり出すように、ルシアン様の手が腰に触れた。
「ぁ……♡」
「答えるんだ、エマニュエル」
本名を呼ばれて、頭の芯がじぃんと痺れるのがわかる。一貫して私のことを――友として、愛称で呼んでいたルシアン様。
低く重い声で名前を呼ばれただけで、お腹の奥が微かに疼き始める。
「は……い。どうぞ――ルシアン様の、お、お好きなように……」
か細い声でぽつりと呟くと、ルシアン様の大きな手のひらがスカートの上からお尻を撫でてくる。
存外と男らしい手のひらの感触に、これまで見ないようにしていた異性としての彼を感じてしまった。
「ッふ、ぁ……♡」
「こういうことを、他人としたことはないだろう? ね、そうだよね、エマニュエル」
濡れた声で名前を呼ばれるたびに、体の奥が熱くなる。
声も出ないままにこくこくと頷くと、ルシアン様は嬉しそうに喉を鳴らした。
「二人で抱き合う時は、君を本名で呼ぶ。だから、ねぇ――覚えておくんだよ。私が君をエマニュエルと呼ぶ、その時は」
すり……♡と、お尻を撫でていた手が下腹部に伸びてくる。
巧みな指先がスカートを持ち上げて、その下にある下着に触れた。
「体をうんと発情させ、心を弾ませておいで。私を名前を呼ぶたびに快感を感じるように――私が、君に教え込んであげよう」
言い終わるや否や、かりっ♡と耳朶を食まれ、下腹部を丁寧に撫でられる。
いいしれぬ感覚に身悶えする私を見て、ルシアン様はとても嬉しそうだった。背後から抱きしめてくる彼の表情は見えないが、弾んだ声や微かに荒くなっている呼吸は、先ほどまでの意気消沈したものとはまるで違う。
「ぁ♡ル、ルシアンさま……♡♡」
「震えているね。大丈夫――怖いことなんて、一つもない。特別に、君の心が素直になれる魔術をかけてあげようか? 快感を受け入れて、心は清らかなまま娼婦のように乱れる魔術だ」
そんなことが、本当にできるのだろうか。
いや――私とは違い、彼は生粋の王族だ。私ができないと思い込んでいることも、あるいは彼ならばできてしまうのかもしれない。
まとまらない思考の渦に飲まれそうになっている私に、ルシアン様は更に囁いた。
「自分でスカートの裾を持ち上げてごらん。これくらいなら、君でもできるだろう?」
「……はい」
まるで、体が彼に操られているみたいだった。
言われるがままにスカートの裾を持ち上げると、下着を自ら晒しているような格好になってしまう。泣きたいくらい恥ずかしいのに、ルシアン様は小さく笑って再びお尻に手を当ててきた。
「下着はいらないね。でも、服はこのままだ――さぁ、触れやすいように少しだけ足を開いて」
これから、私はどうなってしまうんだろう。
膨れ上がっていく期待感と恐怖に苛まれながら、私はほんの少しだけ足を開いた。
「ん……」
腰の横で止めるタイプの下着を解かれると、足の間に冷たい空気が入り込んで体が震えた。
神聖な学校で、それもこんな――図書館の奥も奥で体を晒しているなんて、いつか罰が下ってしまうんじゃないか。そんなことを考えていると、長い指先が閉じた秘裂をゆっくりとなぞり上げる。
「っ……」
「力を抜くんだ。できるね? それと――こちらも」
「ッあ、待っ……んっ♡」
微かに濡れた淫裂をつぅ……♡となぞられるだけでも、羞恥と未知の感覚で肌がそわそわする。
それなのに、ルシアン様は同時に制服の裾に手を突っ込んできた。
清廉を表す白いシャツの中に、大きな彼の手が潜り込んで――下着の上から、まるで包み込むように胸を揉みしだいてくる。
「ふ、ぁっ♡ぁ、んんっ……♡♡や、ぁっ♡」
「可愛いね、エマニュエル――体にこうして触れられるのは初めてだろう? 芽吹こうとしている快楽を、必死に受け止めて……我慢はしなくていいんだよ。これは君に与えられた職務でもある。私を高めるためにも、その可愛らしい声をよく聞かせてくれ」
ねっとりとした、甘い声に頭の中を揺さぶられる。
次第にこぼれ落ちてくる淫蜜を指先に絡めながら、ルシアン様は懇ろにその場所を愛撫し始めた。
「あぁ、んっ……♡ひ、ぁっ♡ルシアン、さま……♡♡」
「下着の上からでも、君の胸が大きく跳ねているのがわかる。興奮しているのかな? こんな場所で抱き合うことなんて、そうそうないだろう――大丈夫だよ、ここには人はこない。それは君が、よくわかっていると思うけど」
そう――閉架書庫に来る人なんて、滅多にいない。
頭の中を支配する甘い感覚に、徐々に声が上ずっていく。
「ぁ、あっ♡だめ――ぁ、ンんっ♡ゆ、指が、っ♡入ってきて、る……♡♡」
割れ目をなぞるだけだった指先が、時間をかけてその中へと潜り込んでくる。
それと同時に、胸を弄る力も徐々に強くなってきた。乳房の形が変わるほどに強く揉みしだかれると、鈍い痛みの中央に甘く逃れがたい快感を見つけることができる。
「はぁ♡あっ♡♡ん……♡ッ、ふ……♡」
「頑なになる必要はないんだ。君はただ、受け入れるだけでいい――私を拒まないでくれ」
最後のその言葉が、どことなく苦々しい。
きっとそれは、大切な婚約者と別れを告げた彼の――溢れ出すような寂しさだったのかもしれない。
「ん、ぅうっ♡」
ちゅぷんっ♡と蜜口に指を突き立てられ、溢れてきた愛蜜をぐぷぐぷと攪拌される。長い指先が一本、中ほどまで挿入されると、お腹の中が熱くなってそれを締め付けるのがわかった。
「あ♡ァふっ♡♡く、るし……♡♡」
「――やはり狭いね。少しずつ慣らしていこうか」
言うなり、ルシアン様は小刻みに指を動かし、膣壁をなぞり始めた。行為に慣れない私は、なかなかその動きに快感を覚えることができない。
けれど、同時に胸の先端をきゅっ♡と摘ままれた瞬間、腰のあたりから言いようのない感覚がせりあがってきた。
「あんっ、あぅうっ♡♡♡」
「あぁ、胸と一緒に触られるのが悦いのかな? ナカで快感を感じるには、まだ少し拙いか……」
お腹の奥が、きゅんっ♡きゅんっ♡♡と疼くのがわかる。
それと同時に、体からぶわっと汗が噴き出した。下着越しに触れられる乳房の感覚がもどかしくて、つい腰が揺れる。
「ぁ、あっ……♡お、おっぱいだめ……♡♡」
「ダメ、ではないよ。君は今、こうして触られることに確かな快感を覚えたんだ――エマニュエル、このまま私は君の素肌に触れるけれど……いいよね? 直接触った方が、きっと気持ちいいよ」
その言葉に抗うことは、許されていない。
なにもかもを諦めて小さく頷くと、途端に下着がほどけ落ちた。それまで布越しに触れていた手のひらが、むにぃ♡と乳房を持ち上げる。
「あふ、ぅっ♡♡んぁ♡あっ♡ん――♡♡♡」
「ほら、こちらの方が気持ちいいね……どんどん蜜も溢れてきた。そうやって、ちゃんと快楽を受け入れるんだ。私のことを思い浮かべて……今自分が誰に抱かれているのか、ちゃんと自覚をしないといけないよ」
甘い声は、魔法のようだった。
彼の発する言葉一つ一つに頷いてしまう。与えられる熱はどんどん大きくなって、最早声も我慢できなくなりつつある。
繰り返される愛撫にもどかしさを覚えて、私はいつしか体をくねらせ、さらなる快感を得ようとしていた。
「んぁ♡あっ……♡♡♡」
「そうだ、エマニュエル……君のどこが悦いのか、私に教えておくれ。こうした相互の理解は、お互いを求めあうのに必要だよね?」
「は、はい……♡ぁ♡お、おっぱいの、先……♡♡乳首、をっ♡指でつままれるの、き、気持ちいい、ですっ♡♡ぁうっ♡」
たどたどしい口調でそう言うと、ルシアン様は心得たように乳首を指できゅきゅっ♡と摘まみ上げた。力が込められたことで、敏感になりつつある場所から熱に似た愉悦が広がっていく。
「それだけ?」
「んぁ♡あっ♡♡お、おまんこ、もっ♡♡♡おまんこぐちゅぐちゅされるのもいいですっ♡♡ぁんっ♡あ♡あっ♡♡♡だめ♡これっ……♡♡」
にゅぷ♡ぢゅぷぷっ♡♡くぷっ♡くぷっ♡♡♡ぢゅぽぢゅぽぢゅぽっ♡♡♡
私が言葉を口にするたびに、長い彼の指先が膣内を攪拌し、うねる媚肉をどんどん刺激していく。
やがて、堪えられなかった蜜がぽたぽたと溢れ出してきて床を汚した。
「だ、めぇっ♡♡あ♡汚しちゃ、ッあんっ♡♡」
「大丈夫。後で私がなんとでもしておくよ――ふふ、そうか……乳首とまんこ、一緒に弄られるのがそんなに好きなんだね」
ぐぽ♡ぐぽっ♡♡と淫らな音を立てて膣窟を嬲られるのと同時に、お尻には既にガチガチに勃起したおちんぽを擦りつけられる。
ルシアン様も興が乗ってきたのか、私のことを愛撫し続けながら徐々に腰を押しつけ、お尻の感触を楽しんでいるような動きを見せてきた。
「かわいい……エマニュエルが、私の婚約者だったらよかったのに。そうしたら最初から――私たちは獣のように、お互いを貪っていただろうね」
喜悦に濡れた声を囁かれて、胸が苦しくなる。
家格のことを考えれば、そうなっていた過去があるかもしれない。けれどそれが叶えられることはなかったのだ。きっとルシアン様も、それをわかって敢えてそんなことを言っている。
「指を増やしてみても大丈夫そうかな……痛かったら教えてほしい」
「え――ッあ、んんっ♡」
考え事をしていた私の耳に、ルシアン様の声が届く。
鼓膜を揺らしたその言葉を頭が理解する前に、たっぷりと濡れそぼった柔肉の奥を二本目の指で暴かれた。
「ッあ♡♡んぅ、うっ♡」
ぬぷ、と音を立てて蜜をかき混ぜる二本の指先が、それぞれ別々の場所を引っ掻いて快感を与えてくる。
「は、ぁうっ♡ンぁ♡あ♡♡きもち、ぃ……♡♡」
率直に、頭に思い浮かんだ言葉を口に出してしまう。思慮もなにもない、剥き出しの欲望が滲む言葉を紡いでも、誰も私を窘めることはない。
ただ、荒くなった呼吸音と淫らな水音だけが静かな書庫の中に響いていた。
「ぁうっ♡ン♡んぁぁっ……♡♡」
カリカリカリ♡と乳首を引っ掻かれるのもたまらなくて身を捩ると、更に強く熱の塊が押し付けられた。
「ッん♡」
「ねぇ、エマニュエル――そろそろ私も我慢が利かなくなってしまった。君を高めるのに注力していたかったが……そろそろ、私のことを助けてくれないか?」
火照った耳朶に、柔らかい声が絡む。
拒めない――拒むことなんて、できるはずがない。禁忌と期待が同時に体を責め立ててくるのを感じながら、私は恐る恐る頷いた。
……この先になにが起こるかなんて、流石に理解している。
「嬉しいよ、私のエマ……」
掠れた声は、確かに欲情を滲ませている。
乳房を弄う手をシャツからするっと引き抜いたルシアン様は、そのまま私の腰をゆっくりと撫でた――下着以外を乱されていない、着衣のままでの性交……こういうことは本来裸同士で行うものだと思っていた私は、本当に大丈夫なのかと不安を覚えてしまっていた。
「あ、あの……服、は」
「大丈夫だよ。着たままで交わる方法はいくらでもある――全て任せてくれ。君はただ、全身で私を感じていて」
くにゅぅ♡と、先んじて挿入された二本の指で淫裂をこじ開けられ――やがて熱い肉杭が押し当てられる。
「ぁ、あっ♡♡」
にゅぷぷっ……♡と、足の間におちんぽが擦りつけられる。
スカートの影になってよく見えなかったが、その質感は美しいルシアン様の顔とは比べ物にならないほどに凶悪だ。割れ目をくちくちと擦りつけられるたびに、浮き出た血管がその場所に当たって腰が揺れた。
「ん♡んぅっ♡♡や、やぁっ……♡♡」
「わかるかい? エマニュエル――今から君は、ここで私に犯されるんだよ。とろとろの、誰も触ったことがない処女まんこを……私に捧げてくれるね?」
ぎゅっと抱きしめられて、ルシアン様との距離が一気に縮まった。
服一枚ずつを隔てているのすらもどかしいと思うほどに、お互いの体温がより密接に絡まっていく。
震えた息を吐きだしながら小さく頷くと、陰唇に擦りつけられていた切っ先がぬぷぅっ♡♡と割り入ってきた。
「ッく、んんっ♡♡ぁ゛、あう、ぅっ……♡」
ずんっ♡と体の芯に響く圧迫感と、鈍い痛みが視界を揺らす。
突き立てられた肉茎に絡んだ蜜がボタボタと音を立てて床に落ちるが、ルシアン様はそれに構う様子もなく一気に腰を進めてきた。
「あ゛ふ、ぅ♡」
「狭いな……苦しいとは思うが、今一瞬のことだ。我慢をしてくれ」
みぢっ♡と膣窟をいっぱいに満たすおちんぽの感触に、体の震えが止まらない。ルシアン様はそんな私のことをきつく抱きしめ、小刻みに腰を動かしてくる。
お腹の中がずっしりと重くて、足の間が鈍く痛む――それでも、細かい律動を繰り返されるたび、徐々に小さな快楽が芽吹いてくる。
「ん♡んぁっ♡♡なにこれ、ぇっ……♡♡」
ずちゅ♡ぬ゛っ♡ぬ゛っ♡ぬ゛ぷぷっ♡♡♡ぐぽ♡ぐぽっ♡♡ぐぽんっ♡♡♡
徐々に激しくなっていく抽送に、おまんこの中がうねうねと悦ぶように収斂する。最初は痛いばかり、苦しいばかりだと思っていた行為を繰り返されるうちに、いいしれぬ気持ちよさが子宮の辺りから広がっていった。
「あ♡ぁんっ♡♡ふか、ぃっ♡ぁふっ♡♡あ♡あっ♡♡」
「声に艶が混じってきたね――痛みはあまり感じていないのかな? よかった……じゃあ、ここから君のよく感じる場所を探さなくちゃ」
ルシアン様は両手でぐっと私の腰を掴むと、そのままぬ゛る……♡とおちんぽを引き抜いてきた。
「あ、っ……」
お腹の中を埋め尽くすようなその質量があっさりとと抜き取られて、思わず名残惜しげな声が漏れる。
「そんなに切ない声を出されたら、歯止めが利かなくなってしまう。……ねぇエマニュエル、君は――その体全てで、私を受け止めてくれるね?」
「……はい、う、受け止めま――ッお゛、ぐっ♡♡♡」
どぢゅんっ♡♡♡ばちゅっ♡♡ぬ゛ぽっ♡♡ぱんっ♡ぱんっ♡ぱんっ♡♡♡
言葉を言い終わるか終わらないかのうちに、ギリギリまで抜かれたおちんぽで一気に奥を突き上げられる――♡♡
「ん゛っ♡んぅ♡♡あふっ♡♡あ♡しゅご♡♡♡はげ、しっ♡♡♡あ♡あっ♡♡ルシアン様♡♡だめ♡そこ♡そこだめ、ぇっ♡あ♡」
「ん――ここ?」
ずちっ♡♡と亀頭が掠めた一点で、ひどく感じ入ってしまう。
足腰に力が入らなくなった私は、まるで縋るように重たい書棚に手を突いた。突き上げを受けるたびに、古びた書棚はギシギシと不穏な音を上げる。
「あ゛♡♡んぁ♡ら、ぇっ……♡♡」
「正直に言ってくれないとわからないよ? ――さぁ、エマニュエル」
名前を呼ばれて、きゅんっ♡と下腹部が熱くなる。
最早痛みはこれっぽちも感じなくなっていて、一突きされるごとあえかな声が唇から押し出される。
「は、んんっ……♡♡」
「どこが気持ちいいのか、私に教えてくれるね?」
ごちゅっ♡♡ぬぢゅっ♡♡と濡れた音を立ててピストンを繰り返されて、目の前が滲んでいく。
古いインクの香りが、甘くいやらしい情交の匂いに上書きされていくのを感じながら、私は必死に言葉を紡いだ。
「そ、そこぉ……♡今ぐりぐりって♡おちんぽの先で♡♡ぐりぐり触れれてるところ♡♡そこ、ですぅっ♡♡♡あ♡エマ、の♡♡一番気持ちいいところ♡♡お゛ッ♡♡もっと♡もっといっぱい触って……♡♡♡」
口から溢れた唾液がこぼれるのも構わずに、私は甘ったるく媚びた声でそう告げる。
すると、ルシアン様はより強く腰を掴み、激しい抽送を繰り返した。
「ほ、ぉ゛ッ♡♡♡ん゛ぁ♡お゛、ほぉっ♡お゛っ♡♡んぉ♡♡」
ぎしっ♡ぎしっ♡♡と書棚が揺れる音と、悦い場所を突き上げられる愉悦が結びついていく。
「従順なのはいいことだよ。エマニュエル……わかる? ここ、お腹のところ……この辺りまで、私が入っている――」
陶然とした声音を出しながら、ルシアン様は私の下腹部をすりすり♡と撫でてきた。お腹の皮膚の下にぽっこりとした感触を覚えながら、甘い愉悦に身を任せる。
「ん、ふぁっ♡♡あ♡ぁッ♡♡るしあ、さまっ……♡♡」
心が伴わない行為のはずなのに、その甘やかな刺激は胸の奥を締め付けてくる。
まるで、こうして抱き合っていること自体に幸せを覚えているような――本来、こんなことは愛しあう人びとだけが許されていることなのに。
「いいね……いつもとは違う、甘く媚びた声で名を呼ばれると……柄にもなく昂ってしまうよ」
「は、ンんっ♡♡や゛♡はげしぃ♡♡♡ぁふぅっ♡」
満足げに呟いたルシアン様が、奥を穿つ強さとスピードをどんどん上げてくる。
疼く子宮を躊躇なく突き上げられて、体が喜悦に震える――虚しいだけとわかっていたも、浅ましい本能がどうしても快感を逃したくないと彼のことを締め付ける。
「ん♡んふ、ぅっ♡♡♡ぁ♡あっ♡♡い、きそ……♡♡」
徐々に膨らむ熱に突き動かされるままにそう呟くと、ルシアン様はそれを許すと言わんばかりに最奥をぐりぐりっ♡♡と刺激してきた。
後ろから強く胸を揉みしだかれ、次第に理性と悦楽の境が曖昧になっていく。
「あ♡♡あんっ♡♡♡や゛、ァッ♡♡イく♡イく♡♡ぁ、ルシ、ッ……♡♡♡」
名を呼び終わるか終わらないかのうちにゾクゾクッ……♡と体が大きく震え、体の中で熱が爆ぜる。
感じたことがないほどに大きな快楽の波濤を受け止めて、私は背を反らし絶頂を極めた。
「んぁ♡ぁ……♡♡ッく、んん……♡♡」
一瞬体を強張らせた後、弛緩した体がふらりと傾くのを、ルシアン様がしっかりと抱き留めてくれる。
「ッ……あ、あ♡♡ま、ってぇ♡ッぁ゛♡だめ♡い、今動いちゃ♡♡♡ッは♡あんっ♡♡♡」
「もう少しだけ我慢しておくれ。私が、君の中で果てるまで――」
――だが、それで行為は終わりではなかった。
さらに激しさを増した抽送を、イったばかりの敏感な体に叩き込まれる。
子宮口までをぬこぬこっ♡♡♡と激しくノックされ、私の体は再び絶頂まで押し上げられた。
「あ♡ぁふぅっ♡♡♡お゛ッ♡お゛♡イく♡♡またイかされちゃうぅっ♡♡♡や゛♡ゆる、しっ♡♡♡ルシアン様♡♡♡ぁ、ぁ゛~~~♡♡♡」
ぬ゛ぱっ♡♡ずちゅっ♡♡♡ずこっ♡ずこっ♡ずこっ♡♡ぬぷんっ♡♡♡
スパートに入ったルシアン様が、徹底的に膣奥を突き上げ、やがてぴたりと動きを止めた。
「――エマニュエル」
「ぁ、ぅううっ♡♡♡」
ッびゅ♡♡びゅるるっ♡♡♡どぷっ♡どぷっ♡♡♡びゅぷぷっ♡♡♡
名前を呼ばれたかと思うと、途端にお腹の中で熱が爆ぜた。
大量の精液を勢いよく流し込まれて、目の前がチカチカと明滅する。
「は、ぉ゛ッ……♡♡♡ぁふ♡ン、ぁ……♡♡」
たっぷりと精液を注ぎ込まれた私は、そのままルシアン様の腕にもたれるようにして脱力した。
ぐったりと動けない私を、ルシアン様は向き合うような形で抱きしめてくれる。
「んっ……♡」
ちゅぷ、と小さな音を立てて触れた唇は、やがて透明な糸をつないだまま離れていく。
それがプツリと途切れると、彼はとても満足そうな顔をして微笑んだ。
「あらためて……これからよろしくね、エマ」
甘く微笑む声に、胸が締め付けられる。
始まりと同時に終焉を感じさせる関係――胸に重たいものを感じながら、私はぎゅと彼の背中に腕を回した。
● ● ●
「性急で申し訳ないね、エマニュエル?」
あの日――初めてルシアン様に求められた日から、私たちの関係は大きく変化した。
彼は時折、人気のない場所で私に声をかけてくる。表向きは非常に友好的な関係の……彼の友人として。
けれど、本意はそこにはない。微笑まれるたびに疼く胸を押さえつけて、私は幾度も彼の求めに応じていた。
「っ、くぅ♡♡♡」
「ここのところ、魔術学の研究で実験棟に籠っていてね――ずいぶん無茶をしてしまったせいで、我慢が利かなくなってしまった」
教室棟の奥――あまり使われない研修用の空き教室を掃除するようにと先生に頼まれていた私の元に、数日間の実験を終えたルシアン様が声をかけてきた。
そこから先はなし崩しで、空いた教室にもつれ込んだ私たちは裸で抱き合っている。
「んぅ♡ふ……♡♡♡ぁ♡ルシアン、さま……♡♡」
「君も、ちゃんと期待してくれているんだね。こんなに濡れて……私がいない間、寂しかった?」
ちゅ♡ちゅぅっ♡♡とキスを交わしながら、物陰に隠れるようにして抱き合っている。
お互いの性器を手で愛撫しながら、舌を絡めて唇を押しつけあう。蕩けるような口腔愛撫だけでも私の体は昂ってしまって、足の間からはひっきりなしに愛液が滴っていた。
「さ、びしかった……です♡ぁ♡んんっ……♡」
彼と関係を持って数か月。
幾度となくルシアン様の元に呼び出されて体を重ねた私は、彼が名前を呼ぶだけではしたなくおまんこを濡らしてしまうようになってしまった。
相性で呼ばれている時はまだいい。
けれど、エマニュエル、と本名で呼ばれると、お腹の中がじんわりと熱くなって鼓動がどんどん早くなる。
(まるで、犬みたい……)
そう――犬。飼い犬だ。名前を呼ばれてしっぽを振り、餌をねだる子犬のよう。
そんな考えが頭をよぎるたびに、自分の立場を痛感させられる。
――私は決して、彼の恋人にはなりえない。こんなに淫らに躾けられて、彼の隣に並ぶ資格など失ってしまったに違いない。
「エマニュエル? ぼんやりとしているみたいだけど、どうかしたのかな」
「んん……ぁ、なんでも――」
耳元で囁かれて、ふるふると頭を振った。
これから先のことを考えると、いつも憂鬱な気持ちになる。
それを振り払うように、私は自分から彼にくちづけた。舌先を絡めて戯れるような動きを見せると、ルシアン様は私の後頭部を手で押さえ、激しく咥内を蹂躙される。
「ん゛む゛っ♡♡♡ふ、ぁあっ♡♡んちゅ♡ぢゅっ♡♡♡」
ちゅぱっ♡♡ちゅるるるっ♡♡ぷちゅっ♡♡ぢゅぱっ♡ぢゅっ♡♡♡
口蓋を舐め上げられて、頭の芯が痺れる。それまで考えていたことが全て霧散してしまうくらい激しくて甘いキスに、体じゅうが悦びを覚えるのがわかった。
(この♡このキスだめ♡♡なにも考えられなくなる♡恋人同士みたいなキス♡♡こんなのっ……♡♡)
ちゅぱっ♡♡と音を立てて唇が離れると、ルシアン様は私のことを手近な机の上に横たえた。
机二つ分を並べた不安定で硬いベッド――その上に体を横たえた私の足を掴んで、ルシアン様が舌なめずりをする。
「なんだろうね……こうしてみると、本当に君に無体を強いているような気がする。机の上に、美しい銀髪を散らばして……涙を浮かべて頬を赤らめているところを見ると、どうしても――」
ごくっと喉を鳴らしたルシアン様が、足を開いたトロついた涎を垂らすおまんこを指でなぞる。
先ほどの手淫でたっぷりと潤んだその場所を晒されて、恥ずかしさで頬が燃えそうなほどに熱くなってしまった。
「や……♡」
「自分が悪いことをしているような、背徳感を覚えてしまう。……でもその背徳感が、たまらなく私を煽るんだ」
くちゅ♡♡ちゅっ♡♡ぢゅるるるっ♡♡
しっとりと呟いたルシアン様が、そのまま涎を垂らすおまんこに唇を押しつけ、ぢゅるぢゅるっ♡♡とその蜜を啜り上げる。
溢れてくるものを音を立てて啜られると、鼓膜を犯されているような妙な感覚を覚えた。
「ぁ♡♡ぁんんっ♡ぁふ♡♡は、ぁっ……♡♡だ、めぇっ♡♡あ♡イ、っく……♡♡」
びくんっ♡♡と体を跳ねさせてあっけなく絶頂を極めた私に、ルシアン様は一瞬口腔奉仕を止める。
体の内側で熱が爆ぜる感覚は思ったよりも小さく、一度達したことで余計に感覚が鋭くなってしまった。
「クンニだけでイってしまうなんて……エマニュエルはとても淫蕩な淑女になってしまったね……?」
「ご、めんなさ、っ……♡♡ぁ♡もうし、わけっ……♡♡ございま――ッんぁあっ♡♡♡」
息も絶え絶えになりながら謝罪の言葉を口にすると、ぢゅるるるっ♡♡と水っぽい音を立ててクリトリスを啜り上げられた。
膣口を舐られるのとはまた違う、鮮烈な愉悦に腰が跳ねる。
その度に、机がガタガタッ♡と音を立てて揺れた。
「こらこら、大きな音を立てたら誰かが来てしまうよ……私は構わないけどね。君と愛しあっているところを見せつけてやればいい」
「ッだめ♡あ♡♡それはっ……♡♡それ、だけはぁっ……♡」
恐ろしい言葉に、首をふるふると振って口を紡ぐ。
けれど、ルシアン様はそんな私を更に追い詰めようと、ぽっちりと膨らんだクリトリスを根元から舐め上げた。
「ん゛ぉ゛♡♡♡ほ、ぁっ……♡♡や゛、ぁんっ♡ル、ルシアンさまっ♡♡だめ♡は、ぁん゛っ♡♡♡」
「ん……可愛い……♡♡もっとたくさん乱れておくれ――んぅ♡ぅ……♡イって♡いっぱいクリフェラしてあげるから……たくさんイこうね、エマニュエル♡♡」
「ッひ、ぁ゛あっ♡♡♡」
ぢゅるぅっ♡♡ぢゅ♡ぢゅぅううっ♡♡♡ちゅぱっ♡♡ちゅ~~~♡♡ぬ゛ちゅっ♡♡
主張する淫芽を、まるでフェラチオをするみたいにぢゅぱぢゅぱ吸われてる、っ……♡
がくがくがくっ♡♡と腰を震わせる私は、最早甘ったるく喘ぐことしかできなかった。
暴力的とさえいえる快感を叩きつけられ、それでもルシアン様は私のことを手放してはくれない。
懇ろに淫核の根元を舐め上げ、ぢゅるっ♡と音を立てて舐めしゃぶられた私は、あっけなく二度目の絶頂を極めてしまう。
「ぉ゛♡♡ッほ、ぉおっ♡♡♡」
へこっ♡へこっ♡♡と情けなく腰を振って果てる私の姿は、どれほど滑稽なことだろう。
快感と情けなさで涙ぐむ私に、体を起こしたルシアン様が頭を撫でてくれた。
「たくさんイけて偉いね。実験があれこれと忙しくて――ずっと君のことを夢想していたんだ。さぁ、エマニュエル」
ずいっと腰を突き出されたかと思うと、ルシアン様のおちんぽが眼前にそびえたっていた。
傘の張った、とても大きくて長い肉茎――なにも言葉にはされなかったが、私はそっと口を開いて舌を出し、ゆっくりとそれを舐め上げる。
「ん……♡♡んふ、ぅっ♡♡ぢゅっ♡ぁ♡♡おちんぽ……♡♡ルシアン様♡ルシアン様の勃起おちんぽ♡♡んぅっ♡♡」
ちゅっ♡ちゅぱっ♡♡にゅぷっ♡♡ぢゅぽ♡ぢゅぽっ♡♡
裏筋から先端までを丁寧に舐め上げて、亀頭を咥えこむ。
喉奥までのストロークを満たす長いおちんぽに満足してもらおうと、必死で唾液を絡めて頭を前後に振った。
(すごい♡♡久しぶりの王族おちんぽ♡もうこんなに大きくなって……♡♡)
最初は口淫なんて恐ろしくてできなかったけれど、これでも随分と板についてきた。
れろ♡れろ♡♡と舌を動かして、喉奥をきゅっと締める。
ゆるゆると腰を動かし始めたルシアン様は、軽く私の頭を押さえてきた。
「は……上手に、なったね……♡エマニュエルの口まんこ♡すごく温かくて、柔らかい……」
ぬぷ♡♡ごぷぅ♡とゆっくりと咥内を犯されて、頭の芯がビリビリと痺れてくる。
この行為にお互いの気持ちを寄り添わせたところで、後が虚しくなるだけ――そう思っているのに、いつだって彼に求められたら断れない。
王族と貴族という立場の違いだけではない……いつしか甘く求められることを、私自身が望んでしまっていた。
「ん、ぷぁ……♡♡ぁふ、ぅ……♡♡」
唾液でてらてらと濡れたおちんぽを咥内から引き抜いて、自分からくぱぁ♡とおまんこを開いて見せる。
そうするようにと躾けられたわけではなかったが、ルシアン様は口淫の後の挿入を好んだ。
「く、ください……♡♡ルシアン様のおちんぽ♡エマのおまんこにいっぱい欲しいです♡♡」
「おねだりもすんなりできるようになったね……そうだね――今日も君のお腹を、私で満たしてあげる」
はっ♡はっ♡と短く呼吸を繰り返して、軽く腰を掲げてみる。
すると、ルシアン様はぴとっ♡と膣口におちんぽを押し当て、そのままぐっと腰を進めた。
「ん゛、ぁあっ♡♡あ♡あつ、ぃ♡♡♡ん゛ぅ、うっ♡♡」
ぬぶっ♡♡と熱い剛直を突き立てられると、一気に最奥をノックされた。
最初は息苦しさを覚えていた挿入も、今となってはただ快感を覚えるだけ――やや乱暴に膣窟を暴かれる感覚にも愉悦を覚えてしまい、私はヒクンッ♡と腰を揺らした。
「んぁ♡♡ひぁ、ンッ♡♡♡」
ぬ゛ち♡ぬ゛ちっ♡♡ずちゅずちゅずちゅっ♡♡♡ごりゅっ♡♡
深い場所を穿たれるごとに、その激しい動きのせいで机がずりずりと動いてしまう。
手心加えず、徹底的なピストンを繰り返すルシアン様の腰に足を絡めると、彼はにっこりと笑って結合部に手を伸ばしてきた。
「必死に締め付けてきて……可愛いね。わかるかな……私を求めて、君の子宮がこんなところまで降りてきている」
薄い笑みを浮かべたルシアン様がが、私の下腹部をそっと手のひらでなぞる。
すると、いいしれぬ感覚と震えがせりあがってきて――きゅうぅっ♡♡とおまんこが締まった。
「ん、ぉ゛ッ♡♡ぁ♡おなか、や、ぁっ……♡♡」
お腹の上から子宮を刺激され、更に膣奥をこつっ♡こつっ♡♡とノックされる。
力任せの抽送というよりは、ねっとりと執拗に快感を与えるための律動を刻まれて、より深い快感に飲まれていってしまう。
「ぉ゛、ッ~~~~♡♡♡」
「っく……は、最高だよ、エマニュエル」
名前を呼ばれるたびに、体が甘く反応してしまう。
より深い絶頂を覚えた私の体をさらに追い詰めようと、ルシアン様はゆっくりと、けれど確実に腰を打ちつけてきた。
「ほ、ぁっ♡♡ッん♡お♡おっ♡♡♡」
ぬ゛~~~ちゅっ♡♡ぬ゛~~~ちゅっ♡♡と、じれったく焦らすようなピストンを繰り返されて、頭の中が蕩けてしまう。
おちんぽの形がわかってしまうくらいに緩やかな律動は、激しく突かれる時よりも決定的な快感に欠ける。けれど、体重をかけられてたっぷりと膣窟を蹂躙されるその感覚に、私の体はひどく興奮を覚えてしまうのだ。
「んぅ♡お腹♡♡お腹コリコリされるの弱い、のぉっ♡♡♡ぉ゛♡ッあ、ぁ゛~~~♡♡♡」
体の上から子宮の辺りに触れられ、膣内をゆっくりと蹂躙されるのはたまらなく愉悦を覚えてしまう。
深く、何度もイき続けるうちに体はぐったりと弛緩していったが、ルシアン様は逆にどんどん抽送のスピードを強めていく。
「あ♡♡やぁあっ♡♡だめ♡また、ぁっ♡イっちゃう♡あ♡イく♡イくぅっ♡♡♡」
「神聖な教室の中で何度もイってしまうなんて、エマニュエルはとても淫乱だな……まぁ、私が君にそうさせているのか。――最高だよ」
低くて艶めいた声が鼓膜を揺らすだけでも、頭の中でパチッ♡と火花が散るような気がした。
「は♡♡や、もぉっ……♡♡イくの、やだっ♡♡♡こんな♡ぁ♡あっ♡♡♡」
ぬぢゅぬぢゅっ♡♡ぱちゅっ♡♡ぬ゛ぢっ♡♡ぬこっ♡ぬこっ♡♡♡
水っぽい音を奏でながら何度も奥を突かれて、軽イキを繰り返す。
ルシアン様も限界が近いらしく、やや性急な動きを見せながら、そのまま乱暴に唇を奪われた。
「んむっ♡♡ぁ♡んんんっ……♡♡」
柔らかく舌を食まれる感覚は甘く切ないもので、私はこの行為にいつも妙な苦しさを覚えていた。
求められるがままにキスをされる度、どうしても彼への気持ちが抑えられなくなる。
わかっている――私がルシアン様にそんな気持ちを持つなんて間違っているって、頭ではわかっているのに。
「は……ッ、エマ、エマっ……」
切羽詰まった声で名前を呼びながら、ルシアン様がさらに強く腰を打った。
高められた体の内側ではあっけなく熱が爆ぜ、どぷどぷっ♡とたくさんの精液が注ぎ込まれた私の体を、彼はきつく抱きしめる。
「ッく、んっ……♡♡」
お腹の中に注ぎ込まれた精液は、粘っこくて重たいような気がした。
数日抱き合っていなかっただけ――それだけなのに、私の体は哀れなほどに疼いて彼を求めてしまうのだ。
「は、っ♡♡ぁふ♡♡ぁ……♡ア、っ♡♡」
濃厚なセックスの余韻で体をビクビク震わせる私を抱きかかえながら、ルシアン様は何度も額や唇にキスを落としていく。
まるで宝物を愛でるように優しく触れられると、頭の中がじんわりと痺れて錯覚してしまいそうだった。
――私は、彼の宝物なんかじゃない。
学生生活が終わるのと同時に終焉を迎える、かりそめの関係。期待をするだけ虚しいことだとわかっているのに、ひどく胸が切なくなった。
「いきなりこんなところで、悪かったね。本当なら私を君の部屋に呼び寄せたかったんだけど……我慢ができなくて」
「い、いえ……ルシアン様が謝るようなこと、では」
衣服を整えても、まだお腹の中がじんわりと熱い。
寮まで送るというルシアン様のお言葉を固辞して、私は一人で校舎の中を歩く――こんな風に関係が変化してからは、彼との交流も最小限にするようにとどめていた。
(お腹の中、まだ熱い……)
ふわふわと、足元がおぼつかない。
妙な感覚を覚えながら歩いていると、前の方から背の高い男の人が歩いてきた。
「――おい、シャロンドール公爵令嬢」
「……は」
制服を改造した豪奢な服装に、ルシアン様と同じオリーブの瞳――よく整ったその顔立ちは、私も見覚えがある。
「ニコライ、さま……」
ルシアン様の三つ年下の異母弟――第二王子のニコライ様だ。
立場的には側妃の子となるが、未だ王位継承者の指名がされていない状況では、このニコライ様を王として推挙する声も上がっている。
「ご、ごきげんよう。いかがなさいましたか?」
「いや、目に入ったから声をかけて見ただけだ。……お前、アレだろう? 我が麗しの兄上とよくつるんでる……」
ニヤッと笑うニコライ様の表情は、なるほど美しいと言えるのかもしれない。
けれど、率直に言って私はこの方が苦手だった。
元々ルシアン様の婚約者であったティオゾ侯爵令嬢を略奪し、自分の恋人とした――ルシアン様本人は仕方がないことだと言っていたが、そのこともあって少し心証が悪い。
「ふぅん、ルシアンはお前みたいな女がいいのか。清楚系、っていうのか? 確かにリアーナとは違うな……」
アッシュブロンドの髪の間からこちらを見つめる目は、どことなくギラついていて恐ろしい。
顔の造形は似ている方だと思うが、印象が違うだけでここまでも変わるものなのか。
すっと細められた目が恐ろしくて後ずさると、ニコライ様はカラカラと笑って大きく一歩詰め寄ってきた。
「いいね、今まで俺の側にはあんまりいなかったタイプだ。……お前、今日俺の部屋に来るといいよ。どうせ兄上ともよろしくやってるんだろう? 王族もう一人相手をするくらい、未来の武勇伝を一つ増やすと思って――なぁ?」
「な……で、できかねます! そのような、こと……」
下卑た口ぶりの言葉に、思わず反論する。
すると、ニコライ様は目に見えて機嫌を悪くしたようだった。眉の間に稲妻を走らせた彼は、やや乱暴な口調のまま更に私との距離を詰める。
「なに言ってるんだ? 王族から伽を命じられたのなら、民はそれに従う義務があるだろう。公爵令嬢であるお前が、自らそれを破るのは――懲罰ものだな」
サディスティックに笑うニコライ様が腕を伸ばす――殴られるのではないかと身を固くした私の耳に届いたのは、よく聞きなれた優しい声だった。
「では私が、その申し出を却下しよう。……ニコライ、彼女から手を離せ」
「……兄上」
「聞こえなかったか? 彼女への狼藉は、友である私が許さないと言ったんだ」
背後から聞こえた声は、紛れもなくルシアン様のものだ。
どうしてここに彼が――そう思う間もなく、そっと肩を抱き寄せられる。ルシアン様は私を守るように経ちながら、普段は見られないような厳しい表情でニコライ様を睨みつけていた。
「ル、ルシアン様……なんで……」
「先ほどの君の様子が、どうにも気になってね。体調が悪いんじゃないかと思って」
ちらりとこちらを見たルシアン様は柔らかく微笑んでくれたが、それも一瞬で消えてしまう。
半分とはいえ、血のつながった弟に向けるとは思えないほどの冷たい視線に、相対するニコライ様も後ずさった。
「ニコライ、お前は昔からよく私のものを欲しがるね。……弟だと思って見ないふりをした来たことも何度かあったが――彼女に関しては見過ごせないな」
「……や、やはり兄上はシャロンドール公爵令嬢がお気に入りで? それは失敬……なに、戯れですよ。今度も、可愛い弟の我儘だと思って見逃してください」
やや早口になりながら、ニコライ様も引いてはいない。
確か、このお二人は母后同士も――ニコライ様の母である第二妃のアルデラ様も、王妃様を嫌い抜いていると聞いたことがある。
どちらも、いずれ王となる資格を持つ人物。
その間に挟まれた私は、生贄の子羊のような気持ちになりながらじっと黙っているしかなかった。
「――許さない、と言ったら?」
二人の間にしばし流れていた静寂を打ち破ったのは、そんなルシアン様の一言だった。
軽やかではあるが、決して優しくはない口調でそう一刀両断した兄に、ニコライ様がゴクリと喉を鳴らす。
「わ、わかりましたよ! 兄上のお気に入りこれ以上手を出して、叱責されるのはごめんだ……いやでも、これなら兄上がさっさとリアーナを手放しのも納得がいく。……アイツ、なにかと口うるさいですもんね?」
ニヤニヤ笑いを浮かべたニコライ様は、そのまま来た道を引き返すように踵を返した。
ようやくその背中が見えなくなったころ、私は安堵のあまり体から力がぬけてしまう。
「あ……」
「おっと……エマ、大丈夫かい? その――弟が迷惑をかけたね」
ふらついた体をしっかりと抱えられて、安堵のため息が出た。
本当に――ニコライ様と相対した時は、どうなることかと思ったほどだ。
「い、いえ……あの、ど、どうしてルシアン様が……」
「さっきも言ったが、純粋に君のことが気になったんだ。足元がふらついていたみたいだったし……ただ、声をかけるのも憚られて」
眉尻を下げたルシアン様は、そっと私の髪を掬い上げる。
彼と対照的な、銀色の髪の毛。それを指先で弄んだ彼は、深く息を吐いた。
「少し、ゆっくりと話せるところに行こうか」
そう言うなり、ルシアン様はそっと私の手を握ってくれた。指先から伝わってくる体温が、恐怖に冷え固まった体を少しずつ温めてくれる。
「寮にある私の部屋まで――少し遠いけれど、歩けそう?」
「え、い、いいんですか? ルシアン様のお部屋って、その……男子寮ですよね?」
「あぁ、私には個室が宛がわれているから大丈夫。誰も、君を咎めたりはしないから」
気持ちを宥めてくれるような優しい声に背中を押されて、こくんと頷く。
――普通、この学院の寮というのは二人で一つの部屋を使うことになる。これはどれほど高位の貴族であっても例外ではない。
もちろん、親の派閥とかそういったことは考慮されることもあるけれど……そもそも私が男子寮に向かうことも問題だ。
ただ、ルシアン様はそれらすべてを「問題ない」と言って片付けてしまった。
「王族に個室が宛がわれているのは、警備の面の問題があってね」
「あ、そうですよね……確かに、よからぬ輩が部屋に入ってきたら……」
「そう。それと――まぁ、この体質の問題かな。父上も、何度か母上を部屋に呼びだしたことがあると聞いたよ」
きゅっと手を握られたまま、他愛のない話をして寮へと向かう。
時間帯的には寮内もかなりにぎわっているはずだが、ルシアン様の部屋がある一角は驚くほどに人気がなかった。
「……静かな場所、なんですね」
「そうなるように、入学時に志願したんだ。あまり人の多いところは好きじゃないし……友人が訪れてくれる分には構わないんだけれど、それ以外の人間が顔を出すこともあるからね」
煩わしい、と口には出さないが、時々ルシアン様は他人との交流を倦んでいるような節が見受けられた。
特にそれは、婚約者であるティオゾ侯爵令嬢を奪われた時から、より顕著になったようだった。
「できるだけ多くの人々と交流したいとは思うんだが、時々疲れてしまってね。……あ、でも女性を招いたのは初めてかな。ティオゾ侯爵令嬢は、ついぞこの部屋に入れなかったから」
「ど、どうしてですか? だって、侯爵令嬢は――」
「彼女を部屋に呼ぶと、やれ調度品が気に食わないとか、窓の向きに納得がいかないとか、話が長くなってしまうからね。そういった点では、彼女はニコライと馬が合うのかもしれないけれど」
苦笑しながら、ルシアン様はそっと私に椅子を薦めてくれた。
柔らかくもしっかりとした造りのソファに腰かけると、彼は立ち上がってお茶を淹れようとする。
「今日はランクルスもエイボリーも実習終わりだからね。ここにはしばらく誰も来ない……使用人も、必要とあらば下がらせよう」
ルシアン様はそう言うと、部屋仕えの使用人にちらりと目配せをした。
王族に付き従う優秀な使用人は、お茶を淹れた後一礼をしてさっと部屋を出て行ってしまう。
「お気遣い、ありがとうございます」
「もとはと言えば私とニコライの問題に巻き込んでしまっただけだ。……君はなにも悪くないよ」
ルシアン様の表情は複雑だ。
なにか言いたげに口を開いては、すっとそれを閉じてしまう。
「……ニコライの母君と私の母の仲が芳しくないのは、君も知っているだろう」
「え? ――あ、あの」
「いいんだ。身内の恥ではあるが、人々によく知れ渡っていることは理解している」
静かにティーカップを傾けたルシアン様が、深く息を吐いた。
母親同士の確執が、異母兄弟である二人の関係性にもつながっている。きっとルシアン様は、それがなければもう少しニコライ様に歩み寄ることができるのだろう。
「私の母は子爵令嬢……それも三女だった。王宮での侍女仕事中に父に見初められて王妃となったが、その立場が低いのが問題でね。対してニコライの母親は公爵家の出身だ。貴族たちの中にも、血統に優れたニコライを王にという声が大きい」
「で、でも……王妃様の子どもは、ルシアン様だけですよね? それに、その……私は、ルシアン様が国王陛下になられた方が……」
ニコライ様を見た時、一目で感じたあの嫌な予感。
あれがなんだったのか、言葉にするのは難しい。顔立ちは似ている部分もあるし、多少ひどい言葉を投げかけられはしたものの、一見してニコライ様も華やかな雰囲気を纏う方だ。
……なにに対して、私はあれほどまでの嫌悪感を抱いたんだろう。
「そう? 嬉しいことを言ってくれるね。……うん、父上も私を王位継承者に任命するつもりでいるようだ。貴族同士の派閥の問題でニコライの母を側妃にしたらしいが――少しね、奢侈が過ぎる人みたいで」
なんだか、聞いてはいけない話を聞いているみたいだ。
立場的に、恐らくお父様にはそういう話が多く入ってきてはいるのだろう。だが、そのほとんどが私には伝えられない――必要とあれば教えてもらえることもあるが、女性がそういった噂をあれこれと口にするのははしたないと言われて育ってきた。
「周囲が焚きつけていることもあって、ニコライは私に対してあまり……いい印象を抱いていないようでね。王族という立場も相まって、自分はなにをしても許されると思い込んでいるみたいだ。……本来は、王族こそが民への奉仕者であるべきなんだが」
――ルシアン様の仰っていることは、正しい。
それは政治に明るくない、女性である私でもよくわかる。貴族や王族がある程度の特権を保証されているのは、自らの思うままに振舞うためではない。
「そう、ですよね。私たちが特権を持っているのは、民への奉仕、国の守護を行うから……父からも、そう言い聞かされて育ちました」
「シャロンドール公爵は厳格な方だから、余計その考えが強いだろうね。貴族として、彼はとても模範的な人間だ。……そういう人間の側にいると、私も非常に心が穏やかになるよ」
「あ、ありがとうございます。ルシアン様にそう言っていただけるなんて、父も喜ぶと思います」
ぺこりと頭を下げると、ルシアン様はそっと私の手に自分の手を重ねてきた。
存外と熱い手のひらにびくっと肩を跳ねさせると、ルシアン様が顔を覗き込んでくる。
一瞬で詰められたその距離に、ひゅ、と喉が鳴った。
「シャロンドール公爵だけじゃない。……君のような考えを持った人が私の近くにいてくれれば、もっと嬉しいんだが」
「……あ、あの」
縋るように下げられた眉尻と、真摯に見つめてくる視線から逃れられない。
私は彼のこういうところに弱いのだ。婚約者を奪われた彼との関係を承諾したのも、王族の特権というよりこの表情に押し切られたと言っていいかもしれない。
「ニコライに、君を奪われると思った。……王族の要請を断れば、確かに懲罰ものだ。だからあの時点で、君に拒否することはできなかったわけで――本当に、間に合ってよかったよ」
ぎゅっと手を握られたかと思うと、そのまま抱きしめられてしまう。
そうだ――確かに私は、本来あの場でニコライ様の誘いを断ることはできなかった。咄嗟のことで思わず拒絶の言葉を口にしてしまったが、王族からの伽の要請を断れば一族もろとも断罪されてしまう。
「……ルシアン様」
「彼が何を欲しても、私から誰を奪おうと、できるだけ寛容でいたつもりだ。だが……君だけは絶対に渡したくなかったんだ」
――それは、他に同じような人間を探すのが億劫だからだろうか。
ルシアン様が多くの女性と関係を持つことになったら、それはそれで学院内のスキャンダルとなってしまう。
それならば、相手はできるだけ少なく絞った方がいい。だから、きっと彼は私のことを必要としているのだろう。そこにあるのは、甘い恋心なんかじゃない。
「君は、私のものだ。いいね……ニコライに奪われてはいけないよ」
「……はい」
これが、恋人同士の会話ならばどれほど甘く切ないものだっただろう。
けれど私は彼の一番にはなりえない。あと一年と少し、ほんの短い学校生活が終われば、きっとルシアン様は新たな婚約者を迎えて妻にするはずだ。
「いい子だ。――柄にもなく狭量なことを言ってしまってすまない。でも、私にはもう、君しかいないから」
そのまま、柔らかく唇を塞がれた。
授業に戻らなくちゃ、と頭のどこかで冷静な私が囁いたが、背中に回される腕が嗜好を絡めとる。
決して逃げられないほど強く抱きしめられているわけではない。
だが、閉じ込めるように抱きしめられたらその手を振りほどくことができなかった。
「ぁ……んんっ、ぁ♡」
ちゅっ♡ちゅ♡と軽く唇を重ね合わされて、鎮まったはずの熱がぶり返してくる。
先ほど狂おしく求められたばかりの体は簡単にその潤みと熱さを取り戻し、くちづけだけで頭の芯が蕩け始めた。
(だめ、こんな……流されちゃ……)
柔らかいソファが微かにたわむ。
徐々にくちづけが深くなり、舌が歯列をなぞる動きだけで、体の中全てを暴かれているような気持ちになってきた。
「んむ♡ちゅ……♡♡ぁ――だ、だめっ……♡今日は、もうっ……♡♡」
「なぜ? 一日に一度しか求めあってはいけないという法はない――何度でも、私は君を求めるよ」
うっとりするほど美しく微笑んだルシアン様が、唇を離すと軽く耳の軟骨を噛んでくる。
こりゅっ♡と音を立てて耳の縁を食まれ、甘美な痺れが背筋を駆け抜けていった。
「あふ、ぁ……♡♡」
「規則が許すなら、君のことをこの部屋に閉じ込めておきたいくらいだ。ずっと――私と一緒に、ずっと抱き合っていたい」
にゅぢゅ♡♡ぬぢ♡♡ちゅ♡ぢゅるるっ♡♡こりゅっ♡こりゅっ♡♡
耳の形を確かめるように舌を這わされて、戯れるように耳朶や軟骨を前歯で軽く噛まれる。
性感帯への刺激とはまた違う、もどかしくも甘い感覚。
頭の奥が何度も揺さぶられるようなその愉悦に背をくねらせると、ルシアン様は喉を鳴らして制服のボタンに手をかけた。
「だめ、ぇっ……♡ぁ♡ゆ、許して――今日は、も、っ……♡♡」
一日に二度も彼と抱き合ったら、燃え上がる体の熱を押さえきれなくなってしまう。
ふるふると首を振ってなんとかその手から逃げようとしても、ルシアン様はあらわになった下着すら外し、まろびでた乳房を持ち上げてしまう。
「駄目という割に、乳首が期待して尖っているみたいだけど――説得力がないね、エマニュエル」
クスクスと笑われるのも恥ずかしかったが、体の方は隠しようがないほどに昂っている。
円い乳房の先端はツンと尖って上向いており、朱赤に色づいていた。ルシアン様の長い指先でその場所を転がされると、むず痒いような感覚が湧き上がって腰の辺りが震えてしまう。
「んぁ♡♡あ♡ひ、ッく……♡♡」
「どこもかしこも敏感だね――快感には抗わない方がいい。無理をしても辛いだけだろう? ただ、与えられるままに受け止めるんだ」
快感に震える私を抱き留め、ルシアン様は耳元でそっと囁いてくる。
たまらずにこくこくと頷くと、彼はそのままきゅっ♡きゅっ♡♡と乳首を摘まみながら、首筋に舌を這わせていった。
「ッく、ンんっ……♡♡♡ぁ、ル、ルシアンさま……♡」
「自分で、制服を全て脱いでごらん。できるね、エマニュエル?」
オリーブの瞳が、妖しくきらめく。
ぞくぞくっ……♡と得も言われぬ感覚を覚えた私は、命じられるままに残っていたボタンに手をかける。
それと同時に、足の間からこぷっ♡とトロついたものが溢れ出てきた。
「っは♡♡んんっ……♡」
力の入らない足を叱咤して立ち上がり、震える手で制服を脱ぐ。
残っていた下着も取り去ってしまうと、腿を伝って溢れ出してきたものが自分の愛蜜だけではないことに気が付いた。
「これはこれは……先ほど注いだ分が溢れてきてしまったみたいだね」
やや白濁したそれは、柔らかな太腿の曲線を伝って落ちていく。
まるでルシアン様に染め上げられてしまったような錯覚を覚えて、私はきゅっと唇を噛んだ。
「ご、ごめんなさ……」
「そんなことで謝らないで。……溢れた分は注ぎなおせばいい。そうだろう?」
素裸になってしまった腰を手繰り寄せられて、ルシアン様の膝の上に座らされる。
溢れてきたもので衣服が汚れてしまうことが気になったが、それもほんの一瞬だった。
「さぁ、エマニュエル。私の指を、君の悦い場所に導いてごらん」
ルシアン様の声は、まるで魔法のようだった。
差し出された手を取り、言われるがままに疼く花襞にその手をそっと押し当てた。
「んぅ……♡♡ぁ、あっ♡」
大きな手が、割れ目の上をゆっくりとなぞる。
中指をくぷりと突き立てられると、先ほどたっぷりと注がれた欲望が蜜と絡まり、どんどん溢れ出てくるのがわかった。
「はふ、ぅっ♡♡んぁ♡ゆび、すごいっ……♡♡」
私の弱い場所なんてとうに心得ているだろうに、ルシアン様は敢えて指先を動かすことはしなかった。
気持ちいい場所に触ってもらうためには、私が腰を動かすか、彼の指先をそこに導くしかない。
ゴクリと喉を鳴らして顔を上げると、こちらを見つめるルシアン様と目が合った。
ふっと目を細められると、まるで胸の奥を鷲掴みにされたような気持ちになる。
「ぁ、あっ♡んんっ……♡ぁ、ちが、っ……♡♡ここじゃ、ッん♡♡♡」
強く命じられたわけでもないのに、腰が揺らめいてしまう。
それでも的確に感じる場所を刺激することができなくて、もどかしさが頭をもたげてきた。
「は♡♡ぁう♡う、うごいて♡♡ここじゃないの、っ♡♡エマの気持ちい場所……もっと、おくっ……♡♡」
「奥……では、この辺りかな?」
「ほぁ♡♡あ♡そこ、っ……♡」
ぐちっ♡♡ぬちゅっ♡♡くちゅくちゅくちゅっ♡♡ぐぷ♡♡♡
切なく懇願をすると、ようやくルシアン様が指先を動かしてくれる。
すぐさま悦い場所を指先で探り当てられ、私は彼にしがみついてその愉悦を貪った。
胸がふるんっ♡ふるんっ♡♡と揺れるのも構わずに腰を振り、自ら彼の唇に自分の唇を押しつけた。
「んむ♡ふ、ぁ……♡♡んちゅっ♡♡♡ぁ、もっ……♡」
もっと、彼に求められたい。
それが虚しいことだとわかっているのに、本能がどうしようもなくルシアン様のことを求めてしまっていた。
(もっと♡もっと欲しい♡♡おまんこぐぽぐぽってかき混ぜられたい♡おまんこの奥まで♡いっぱいルシアン様のおちんぽで犯されたい……♡♡♡)
頭の中が、そんな考えに塗りつぶされる。
こんなに心の中を搔き乱されたら、私は今後どうやって生きていけばいいのだろう。
いずれ正式な妻を迎えるであろうルシアン様を想いながら、他の男性のものになるんだろうか。
誰かに抱かれている時に、この人を思い出してしまう――そんな惨めな未来を思い浮かべて、目頭がツンとした。
嫌だ――考えたくない。他の誰かに抱かれている自分のことも、ルシアン様が他の女性をこんな風に抱くところも、想像したくない。
「……エマ? どうした? もしかしてどこか、傷をつけてしまったとか……」
突如俯いた私を怪訝に思ったのか、ルシアン様がふっと顔を覗き込んできた。
心配そうなその表情で、はっと我に返る――私は今、なんて身勝手なことを考えていたんだろう。
「気分が悪いのかい?」
「いえ……なんでも、ありません」
ふるふると首を振って自分から唇を押しつけると、ルシアン様は私のことなどお見通しだとばかりに下唇を噛んできた。
「む゛、ぅっ♡♡んぁ♡んちゅ♡♡ちゅぱっ♡♡」
ぢゅるっ♡ちゅう、ぅっ♡♡♡ぢゅ♡ちゅるるっ♡♡ぷちゅっ♡
咥内をめちゃくちゃにかき回され、唇の端から唾液が零れ落ちてきた。
呼吸をするのも苦しいくらいに深くくちづけられながら、次第にかすんでいく思考の中で、狂おしく彼を求める。
「エマニュエル」
きゅんっ♡と下腹部が疼く、低くて甘い声。
自分の名前なのに、それはまるで呪文のように私の体を苛んできた。熱を湛えた下腹部に手を当てながらこくりと頷くと、ルシアン様は膣内に埋められていた指先をクッと動かした。
「ん゛ぁッ♡♡あ♡んぉ、おっ……♡♡」
くぷくぷと蜜壺の中をかき混ぜられて、体全体に熱が広がっていく。
波状に押し寄せる快楽を耐えようとするものの、その動きはとても巧みだった。
「ぁ♡あんっ♡♡ぁ♡きも、ち……♡♡ンぁっ♡♡♡」
唇からは、箍が外れたように甘い声が漏れ出てしまう。
やわらかな胸をルシアン様に押し付け、首に腕を回しながらその快感を享受していると、ややあってその指先は動きを止める。
ぬぽぉ……♡と蕩けた蜜を纏わせた指先が抜き取られると、ルシアン様はあろうことかその指先を自らの口元に運んだ。
「ん……もう膣内は、すっかり準備ができているようだね」
「あ、ぁっ……♡だめっ、だめですルシアン様! そんな、ぁっ……♡♡♡」
ちゅぱ、とわざとらしく音を立てて濡れた指先を舐るルシアン様は、目元だけで微笑むと自らも制服を寛げた。
「期待に目を輝かせているのは君の方だ。……お預けなんて、寂しいことは言わないでくれよ?」
制服のスラックスから取り出された屹立は、先ほどいいだけ熱を放ったとは思えないほどに熱くそびえたっていた。
腰を浮かせるように命じられた私は、おずおずと膝立ちになる。
また――あんな風に雄々しく勃起したおちんぽに犯されてしまう……♡
物欲しげになる喉の音を聞いてか、ルシアン様は至極優しく腰を撫でてくれた。
「――そのまま、私のことを離してはいけないよ」
「え……ッぉ゛、おっ♡♡」
ルシアン様の肩を掴む私が、彼を見下ろす形になる。
突如放たれた言葉に目を丸くすると、次の瞬間ぐぷっ♡♡と音を立てておちんぽが突き立てられた。
「ッあ♡♡♡ぁ、あんっ♡♡いきな、りぃっ♡♡深い♡深いとこまでキてるぅっ♡♡♡」
一気に貫かれたことで、足に力が入らなくなる。
そうすると自重で腰を落とすしかなくなり、ずぷずぷずぷっ♡♡と太いおちんぽが子宮口まで一直線で押し上げてきた。
「ぁ゛♡ぁふっ♡♡ッは♡♡ルシ、ルシアンさまっ♡♡♡これだめ♡すぐイきそ、っ……♡♡」
「おっと、まだイってはいけないよ。エマニュエル、君は我慢ができる子だろう?」
まるで幼子を諭すようにそう笑ったルシアン様は、ぐっと私の腰を抱き寄せる。しっかりとその場所を手で支えた彼が何をしたいのか、一瞬理解ができなかった。
「ッ……なに、あ、あぁっ♡♡♡」
「よ、っと――暴れちゃだめだよ。このまま……ん、っ♡すごいな……こうすると、君の一番深いところまで、たくさん感じることができる……♡」
ぐっと腰を抱いたルシアン様は、あろうことかそのまま立ち上がり――私のことを抱えたまま、緩く腰を動かし始めた。
「あ♡♡ぁ゛おっ♡♡ひ、ぃっ……♡♡」
ずちゅっ♡♡ぬ゛っ♡♡♡ずっちゅ♡ずっちゅ♡♡ずちゅっ♡♡♡ぬぷぬぷっ♡♡♡
足が地面につかない不安定な体勢のまま体を揺さぶられて、瞼の裏側で星が散った。
深い――私の一番深い場所を、懇ろに暴かれているような気配。
いつもしたことがない体位ということもあって、快感とパニックがないまぜになる。
「ぁふ、ぅンっ♡♡や゛……これ♡これすご、ぉっ……♡♡♡深い♡♡一番奥までおちんぽ届いてるぅ……♡♡♡」
「気に入ってくれて嬉しいよ。そんなに表情を蕩けさせて、ナカをうねらせながら私を求めてくれるなんて……」
立ったまま交わる方法があるなんて、今まで知らなかった。
腰を持たれて、ぬぷっ♡ぬぷっ♡♡と下から突き上げを受けるたびに、ルシアン様の体に押し付けた胸が微かに揺れる。
「あ♡ぁん゛っ♡♡好き♡これ好き、ですぅっ♡♡♡ナカごりごり擦れてっ♡♡おまんこきもちぃ……♡♡」
こつっ♡こつっ♡♡と子宮口を亀頭でノックされるのも、たまらなく悦い。
貪欲な体は突き上げを受けるたびに喜悦にわななき、まるで吸い付くように先端を求めてしまっている。
「は、ぉ゛っ♡♡お♡ぉ゛、ッ♡♡♡もっと♡もっといっぱ、ぃ……♡♡」
抜き差しを繰り返されると、まるで出ていかないでと言わんばかりに膣内が収斂した。
より強く体を抱きしめられると、突き立てられたおちんぽの形がわかるほどにお互いの体が熱を宿しているのがわかった。
「あぁ――君の望むままに与えよう。……見てごらん、エマニュエル」
ちゅ、と頬に唇を押しつけたルシアン様が、ふと視線を逸らす。
つられて横を向くと、そこには身だしなみを確認するための姿見が設置してあった。
「ん、ぁっ……♡♡」
姿見を認めた瞬間に、中がぎゅっ♡♡と収縮した。
そこに映っていたのは、裸のまま陶然とした表情でルシアン様の腰に足を絡ませる自分の姿――赤らんだ頬から血の気が一気に引いていくのを感じて、ごくりと唾をのんだ。
「やぁ、ぁ――」
「顔を背けないで。自分がどれほど淫らに咲き乱れているかを、よく見るんだ。そして誰が君を抱いているのか……誰が君に、そんな表情をさせているのかを、よく覚えて」
低く笑う声とともに、ずぬ゛っ♡♡♡と奥を穿たれる。
「お゛♡♡♡あ、っ♡あぁっ♡♡♡だめ♡ルシアンさま♡♡やだっ♡や、ぁんっ♡♡♡」
「もっと寄こせとねだったのは君の方だ。……ほら、自分が犯されているところをよく見て……♡」
ぬぢゅっ♡♡ぐぷっ♡♡ぬ゛ッ♡ぬ゛ぷっ♡♡ぬ゛っちゅぬ゛っちゅ♡♡どちゅっ♡♡♡
急激に、抽送の強さと速度が上がっていく――貪るようにガツガツと腰を動かされて、視界が大きく揺れた。
「あぇ♡♡ぁ゛ッ♡ぁんっ♡♡♡も♡ぁッ♡♡イく♡♡ぁ♡も、だめっ……♡♡」
ガクガクガクッ♡♡と激しく腰を震わせて絶頂を極めても、ルシアン様はまだ強い律動を止めなかった。
私の力ではどうにもならない――完全にルシアン様に体を支えられているので、ひたすら激しいピストンを受け止めるしかない。
「ぁ゛♡い、ひぁ♡♡♡らめ♡♡イった♡イきまひ、たぁっ♡♡♡ぁ゛♡また♡♡いっぱい突かれたら♡♡♡またイく♡♡お♡お゛、ッ♡♡♡」
「ふふ――イくたびに、中がぎゅっ♡ぎゅっ♡って締まるね? 君が甘えてくれているみたいで、すごく愛しい……」
ずぬ゛♡♡と奥を突かれたまたイっちゃう……♡
「りゃ、ぇっ♡♡♡お゛ひ♡ひ、ぃっ♡♡♡」
体の芯が燃えるように熱い。
視線を動かすと、ひどく艶めかしい表情の女と目が合った。――媚びるように頬を紅潮させて腰を振り、結合部からボタボタと蜜を垂らすその女は、本当に私なんだろうか。
(すごい♡鏡の中の私、すごく気持ちよさそう……♡♡)
鏡の中の自分はひどく幸せそうだ。
こんな表情を、私も浮かべているのだろうか――そう考えると、お腹の中がじわじわと熱くなってくる。
「ぁ♡♡ん゛っ♡激し、ぃっ♡♡ぁ♡ルシアン様♡ルシアンさまぁっ♡♡♡」
名前を呼ぶだけで、胸が苦しい。
いやだ――終わりたくない。この関係性にいつか終わりがくるなんて、考えたくもない。
分不相応で身勝手な願いのまま、私は自分から腰を振って彼を求めてしまう。
いつから、私はこんな風になってしまったんだろう。彼に出会うまで、これほど強烈な感情を他人に抱いたことなんてなかったのに。
「――エマ」
ぐちゅんっ♡♡と水っぽい音を立てたかと思うと、ルシアン様が私の名前を呼ぶ。
いつもの――友人としての愛称で呼ばれているのに、どんどん体が反応してしまう。
(好き、なんだ……ルシアン様のことが、好き……)
今まで必死に目を背けていたその事実が、急激に胸に迫ってくる。
いけない。彼はきっと、学生時代の戯れ――或いは一時の後腐れない関係として、私を選んだはず。
それなのに、私は心から彼を愛してしまっていた。
終わりがくるってわかっているのに、どうしようもなく彼のことを求めてしまう。
「エマ……私のものだ。いいね? 君のことは、誰にも渡さない」
ニコライにだって、と、小さく呟かれた声とともに熱が爆ぜる。
どぷどぷと注がれる、愛しく熱い欲望の奔流――勢いよくそれを子宮に流し込まれながら、私はぎゅっと彼の体にしがみついた。
このまま、時間が止まってしまえばいいのに。
そう泣き叫びそうになりながら、ぎゅっと唇を噛む。
――震えるまま吐き出した声が快感によるものだったのか、はたまた抑え込んだ慕情に夜のものだったのかは、私さえもわからないままだった。
● ● ●
最終学年に上がってから、私とルシアン様が会う機会は格段に減った。
――というのも、彼は何度か父である国王陛下から呼び出しを受けていたからだ。当然授業や研究にも顔を出せない。私と会うのも週に一度あればいい方で、一月丸ごと顔を合わせないということもあった。
それでも、時間がある時は彼の元に呼び出される。
ニコライ様に声を掛けられた時から、彼と会う場所は学内の他の場所ではなく、もっぱらルシアン様の部屋になっていた。
「卒業パーティのことで、君話があるんだが」
久々の逢瀬の後――情事後の気怠い空気の中、シーツを纏う私に声をかけてきたルシアン様は、乱れた金髪を軽くて手櫛で直していた。
「は、はい……」
「私と一緒に出てもらえないだろうか。……エマしか頼める相手がいなくてね」
胸の中が、重石が乗せられたように苦しくなった。
じきに訪れる卒業式の後、私たち卒業生はパーティに参加する。
……このリオンダグラス王立学院は、貴族同士の交流の場。その場限りの恋人もいれば、婚約者とともにその卒業パーティに出席する人もいる。
(でも、私は……)
ごく、と、小さく喉が鳴った。
この関係も、もうじき終わり。生家に戻った私は、きっと似たような家柄の男性に嫁ぐのだろう。
「エマ?」
「え? えっと……その、ルシアン様は――私でいいんですか?」
「むしろ、君以外に誰を誘えばいいのかわからないな。それに――卒業パーティで、君に話しておきたいことがある」
目を細めるルシアン様の顔を見ていることができなくて、ふいっと顔を背ける。
恐らくは、この関係の解消を命じられるのだろう。……いずれ来る未来だと思ってはいたが、いざその瞬間が目の前に迫ると、どうしようもない焦燥感を覚えてしまう。
「私とともにパーティへ出席してくれるね?」
だが、そう言われて断ることはできない。
どのみち終わりがくる運命だった。その瞬間が、とうとう訪れるだけ。
捨てないでくれと、醜く追いすがることなどできはしない。ぎゅっと唇を噛んだ私は、持てるだけの勇気を振り絞って顔を上げた。
「――わかりました。楽しみに、していますね」
私は今、上手く笑えているだろうか。
素肌に触れるシーツを手繰り寄せて、力いっぱい握り締める。
砕け散りそうになる心をなんとか抱き留めて、別離のための決意を胸に刻み込んだ。
――そこから卒業パーティまでの間は、息をするだけでも胸が痛むような日々だった。
実家からは久しくお見合いをしろという命令も飛んできていない。両親も諦めてしまったのか、あるいは卒業後に改めて婚約者を見繕うつもりなのか、ルシアン様と関係を持ち始めた頃にはあれほどしつこかった茶会の誘いなども途絶えていた。
きっと学院を出たら、あの日々がまたやってくるのだろう。
この国の貴族女性は、家の庇護がないと生きていくのは難しい。
実家はお兄様が継ぐことが決まっているので、両親としても早く私に嫁いでほしいと思っているはずだ。
予定されていた全ての授業が終わり、三年間続けた図書委員の活動も終えた。
花が散るように一つ一つの学校生活に区切りがついていく中で、ルシアン様への想いだけが断ち切れない。
(……どんな人が、彼の奥さんになるんだろう)
将来的に私が嫁ぐとしたら、辺境伯家か侯爵家、あるいは同格である公爵家の可能性が高い。
そしてそれらの家は、総じて王家との繋がりが強い。
公爵家の大半は王族の血が流れているし、どうあっても王族とのかかわりを断ち切ることはできないのだ。
それはつまり、間近でルシアン様と――彼が選んだ妻の姿を、側で見なければならないことになる。
そんな未来が待ち受けていると思うと、今から憂鬱で仕方がない。かといって彼の邪魔をしたいわけではないので、今までの関係を明かすことはしたくなかった。
(いっそのこと、修道院にでも入ってしまえば……って、きっとお父様が許してくれないものね)
静かに、ただ彼への想いだけを募らせ、幸せだった瞬間を思い返して生きていく。
そんな生き方も、恐らくは歩ませてはもらえないだろう。
溢れ出しそうになる想いに蓋をして、時が過ぎ去っていくのをただ待っている――卒業パーティのその日まで、私はただ息をして過ごしていた。
「エマ! あぁ――いいね、とても綺麗だ。そのアメジストの首飾りは、君の瞳の色と同じだね。とても透き通って清廉で……」
いざ卒業パーティの当日となると、誰もが浮足立っていた。
そしてそれは、恐らくルシアン様も変わらない。
着ているディープブルーのドレスと、美しく結い上げた銀髪、瞳と同じ色のネックレスまでひとしきり褒めたたえた後で、彼は私の手を取った。
「行こう、エマ。……ずっとこの日を待ち望んでいたんだ」
言葉は出せず、微笑みを返すだけで精いっぱい。
パーティの最中も、正直に言えばなにをしていたのかがよく思い出せないほどだった。あと少しで、彼との別れの瞬間が来てしまう。
そう思っていた矢先、ふと私たちの前に現れた人がいた。
……ニコライ様だ。
「ニコライ、お前もパーティに出席していたんだね」
「兄上こそ――やっぱりシャロンドール公爵令嬢と参加か。ふぅん、なるほど――地味だ地味だと思っていたが、こうして着飾ってみれば案外光るものだ」
ニヤニヤ笑いのニコライ様の側にいるのは、ティオゾ侯爵令嬢ではなかった。
どうやら彼はその時々で傍らに侍らせる人間を取り換えているらしく、今彼の側にいるのはロッテンマイン伯爵令嬢という軍人の家系の女性だった。
「それより兄上、このところ忙しくされていたみたいだが。とうとう配属される地方都市でも決まったのか?」
「あぁ――そのことで、一つ発表があってね。ちょうどいい機会だからと、学長に言って時間をもらったんだ」
「……なに?」
怪訝そうに眉を寄せたニコライ様の前で、ルシアン様はぱんっと両手を叩いた。
すると楽団の演奏が止まり、人々が何事かとこちらに視線を向ける。
――私は、思わず一歩後ずさった。
そこにいるのは、友人のルシアン様ではなかった。この国の第一王子、いずれ国を担うであろう王族の姿を見て、自然と息をのむ。
「――私、ルシアン・クロード・デュ=ソリエは、ここに王命をもって第一王位継承者にとなった。ここに居並ぶ諸君を証人とし、正式に王太子として立つことを宣言する」
「な……」
水を打ったように、場が静まり返る。
これまでルシアン様とニコライ様、どちらが正式な王位継承者であるのかは明言がされてこなかった。
全ては二人がこの学院を卒業してから決められると、誰もが思っていたに違いない。
「エイボリー、証書をここへ」
「かしこまりました、ルシアン殿下――こちらを」
卒業パーティという、あらゆる貴族の子女が居並ぶ場所での発表――それは、彼が正しく現国王の後継であると告げるにはふさわしいと言えた。
だが、傍らに立つニコライ様は目を向いて、信じられないと言わんばかりの表情を浮かべている。
「国王陛下の直筆にて、ルシアン殿下の立太子についての勅命でございます」
深く腰を折った侍従のエイボリー様が、粛々と事実を告げる。
国王陛下の署名が入れられたその勅命には、たとえ王子であるルシアン様やニコライ様でも逆らえない――隣から、ギリ、と歯噛みする音が聞こえた。
「それに伴い……私は正式に、ティオゾ侯爵令嬢との婚約を破棄する。昨年彼女に婚約の破棄を告げられていたが、私の方で承認していなかったのを思い出した。令嬢、これで満足かな?」
軽やかな口調でそう告げるルシアン様の視線は、ある一点へと注がれていた。
そこに立っているのは、一年前彼に別れを告げたティオゾ侯爵令嬢――婚約者だったルシアン様を捨て、ニコライ様との交際を宣言していたはずだ。
「お、お待ちくださいませ、わたくしは……」
「君はニコライを愛していたんだったか。どうする、ニコライ? お前にも確か婚約者がいたはずだが」
ゆるりと、今度はニコライ様に視線を向ける。
……その口元が微かに笑みを湛えていることに、私は気付いてしまった。
「こ、婚約者? そのようなこと……どれほどの女性と関係を持たれても、本命はわたくしのみと仰っていたではありませんか!」
だが、ルシアン様の言葉に声を上げたのはニコライ様ではない。ティオゾ侯爵令嬢の方だった。
「お前こそが将来の王妃だと……そう言ってくださったから、あなたがどれだけ周りの女を取り換えようと口出しはいたしませんでしたのに!」
金切り声を上げる侯爵令嬢に、それまで黙っていたニコライ様が口を開いた。
不機嫌そうに、心底の侮蔑を込めた視線が令嬢を射抜く――私は恐ろしくなって、思わずルシアン様の手をぎゅっと握りしめた。
「口うるさく我儘なだけ、精々伽が上手いくらいの女を王妃になどできるか。側妃でももったいないくらいだ。家格や品性だけなら、そこにいる兄上のお気に入りにすら劣る――それなのに王妃を望むだと? おこがましいにも程がある」
チッと低く舌打ちをしたニコライ様は、吐き捨てるようにそう言った後でルシアン様のことを睨みつけた。
「兄上、先ほどから聞いていれば、これはなんの茶番劇だ? 父上からの勅令? そんな話、俺は一度だって聞いていないぞ」
「当たり前だろう。父上の中で、お前はとうに後継者としての資格を失っていた。従弟のクレアニス卿の方がよほど適性があると言っていたほどだ」
この一年、ルシアン様は幾度となく王宮に呼び出されていた。
それは次期国王としての選出と、そのための根回し――更に国王陛下が持つ権限のいくつかを彼に移譲するための手続きが必要だったのだという。
「父上はもう、お前に期待をしていない。……王族という身分を笠に着て努力を怠ったお前には、王族としての責務を果たせないとお考えだ。学院を出たら臣に下るようにと命令が出されるだろう」
すっと目を細めたルシアン様が、すっと左手を上げる。
すると、少し離れた場所に控えていた数人の男性たちがニコライ様の腕を掴んだ。
「私も、何度もお前に歩み寄ろうと思ったが――素行も直らない上に努力もしない。……残念だよニコライ、君の処遇は追って下されるだろう。兄として、君が平和な土地へ派遣されることを祈っているよ」
「お、おい! 放せ……母上は――母上は俺こそが次代の王だと……兄上!」
「どうやらニコライは少し興奮しているらしい。別室で休ませてあげてくれ」
ルシアン様がそう告げると、屈強な男性たちによってニコライ様は連れ去れ荒れてしまう。
残ったティオゾ侯爵夫令嬢も、ぼんやりとした面持ちを浮かべて黙り込んでいた。
――一体、この短時間で何が起こったのだろう。
ルシアン様が第一王位継承者を名乗り、ニコライ様がどこかに連れていかれ、ティオゾ侯爵令嬢は崩れ落ちた。
ぽかんと口を開ける私は、くるりとこちらを振り返ったルシアン様を見て小さく跳ね上がった。……まさかこのまま、別れを告げられるというのか。
「そしてもう一つ……私はこの場で、シャロンドール公爵令嬢エマニュエルに婚約を申し込みたい」
「――は」
形のいい唇から紡がれるのは、別離の言葉だとばかり思っていた。
一瞬言われた言葉が理解できず、その場にはしばしの静寂が流れる――ようやく声を出すことができた時には、その声音は情けないほどに弱々しいものだった。
「わ、たし……ですか?」
「君以外に誰がいると? 学校生活の中で、私が傷ついた時も悩める時も側にいてくれた――清廉で欲のない君こそが、この国の次期王妃にふさわしい」
すっと差し出された手を、取ることができない。
てっきりこの関係は今日で終わりだと思っていた――学園を去る時が夢の終わりだと、何度も何度も自分に言い聞かせて、それでも抑えきれない思いをようやく封じ込めたのに。
「私とともに生きてくれないか、エマ」
その言葉で、堰を切ったように様々な気持ちが溢れ出してくる。
これまで必死に抑えていたものが、思考を、心を、体全てを絡めて身動きが取れない。
「あ――そん、な……私、今日で最後だろうって、ずっと思って……」
上手く回らない舌を必死で動かし、力の入らない指先で口元を押さえる。
堪えきれずに溢れ出した涙は、ぽたりと音を立てて床へと落ちた。
「最後? ……あぁ、君はずっと、なにかを堪えているようだったね」
「だ、だって……まさか、こんなこと――」
声が震えて、頭の中が真っ白になってしまう。
思いもよらなかった言葉を投げかけられた私は、震える指先でようやく彼の手を取った。冷たく、血の気が失せていた爪の先がようやくほの薄い桃色を灯す。
「本当に、私でいいんですか……?」
「君がいい。いや――君でなくてはならない。私の側にいて、共にこの国を守るのは……エマでなくては」
誤解をさせていたならばすまなかった。
その言葉がルシアン様の唇から放たれた瞬間に、私の涙腺は応えきれなくなってしまった。
子どものようにしゃくりあげる私を、苦笑したルシアン様が抱きしめてくれる。
万雷の拍手に包まれながら、私はぎゅっと彼の背中に自らの腕を回したのだった。
それからパーティはつつがなく進行したが、私とルシアン様は二人でその会場を抜け出し、寮にある彼の部屋へとやってきた。
というのも、泣きじゃくった私のメイクが崩れてしまい、治せなくなってしまったのだ。
「も、申し訳ありません……」
「気にしていないから大丈夫だよ。泣かせてしまった私も悪いところはあると思うし……その、そこまで君を追い詰めていたとは」
ヒリヒリする目元を濡らした布で冷やしながら、淹れてもらった温かいお茶を飲む。
甘い香りがついた紅茶を飲むと、ほんの少し心が落ち着くようだった。
「……学院を出たら、すべて終わりだと思っていたんです。ルシアン様には、それに見合った方が新しく――婚約者として定められるのだと」
「その『見合った人』が自分だと思わないところが君の美徳だけど……でも、申し入れを受け入れてくれてよかった。あれだけ格好をつけてフラれたら今度こそ立ち直れなかったかもしれない」
私の隣で同じようにお茶を飲みながら、ルシアン様は小さく笑う。
肩にそっと頭を乗せてきた彼は、実のところ一年の頃から私をなんとかして婚約者にできないかと考え込んでいたらしい。
「ティオゾ侯爵令嬢との関係はとっくに破綻していた。彼女は将来の王妃となる可能性が高かった女性だが、そのための教育をしっかりと受けてはくれなくてね。家庭教師を何人辞めさせたことか――それに比べると、君はとても勤勉だ。素行は問題ないし……何より、私が一緒にいてとても楽しかった」
甘えるようにすり寄ってきたルシアン様は、そのままティーカップを置いて私の肩を抱き寄せる。
今日が終わってしまえば、二度と触れることはできないと思っていた――だからこそ、その体温をとても愛しく思う。
「ニコライは野心的な男で、私が持っているものは何でも欲しがっていた。結果としてティオゾ侯爵令嬢と彼が結びついてくれてよかったのかもしれないね」
すっと目を細めたルシアン様が、柔らかく頬にキスを落としてくる。
触れるだけのそれはくすぐったくて、心を綻ばせるほど優しいものだ。
「エマ――ここで君を抱きたいと言ったら……怒る?」
「お、怒ったりはしません、けど……でも、ドレスが」
「あぁ、美しい色だよね。本当に……深い、どこまでも深い青だ。君の豊かな知性を表しているようでとても似合っているけど……でも、そうだね。私はきっと、このドレスを汚してしまうだろう」
そう言いながら、彼は背中にあるファスナーを一息に下ろしてしまった。
そのまま下着を外されはしたものの、ドレス自体は脱がされない――その行為に、私は初めて彼と体を重ねた時のことを思い出した。
「や、ぁっ……」
「責任は取るよ。同じ色のドレスを贈ろう……君の銀髪によく似あうロイヤルブルーのドレスだ。父上に謁見する時に、それを着てくれると嬉しいな」
柔らかい口調でそう言いながら、彼の手は背筋をなぞりながらお尻、そして桃へと下ってくる。
決して生地が厚いとは言えないドレス越しに触れられて、それだけで体がぞわぞわしてしまう――堪えていた感情が溢れるのと同時に、なぜか肌の感度まで上がってしまったように思えた。
「あ、ぁっ……♡ルシア、さま……♡♡」
「苦しい思いをさせた分、たくさん気持ちよくしてあげる。……君が私の側からいなくなってしまわないように、しっかりと繋ぎ止めなければ――ね」
ちゅ、と唇を軽く啄まれたかと思うと、ドレスの裾をたくし上げられて素肌の太腿に触れられる。
下着の奥はじんわりと湿りけを帯び始め、期待感で声が上ずっていた。
ルシアン様もそれに気づいているらしく、まるで焦らすように内腿を撫でてくる。
「んぅ♡ぁ……♡♡も、ぁのっ……♡♡♡」
皮膚の薄い、柔らかい場所を撫でられ、人差し指の爪でカリッ♡と引っ掻かれる。
すると、お腹の奥からどぷ♡と温かい蜜が溢れ出してきた。性感帯に触れられているわけでもないのに、恐ろしいほどの快感が一気に吹きあがってくる。
「あ♡ぁっ♡♡」
「下着に蜜が滲んできたみたいだ。……もう触れられたがって、期待してしまっているのかな?」
じわりと濡れた下着の上から、既に熱を帯びている割れ目を指でなぞられる。
ぬち♡ずちっ♡♡と濡れた音を響かせながら、ルシアン様は丁寧にその場所をなぞり上げていった。
「ぁ、んんっ♡ふぁ♡あ♡や、これっ……♡♡」
布地の上からの愛撫はもどかしく、つい腰がくねってしまう。
触れてほしい場所に直接触れてもらえないというのは、これほど歯がゆいものなのか――いつしか私の体はソファに横たえられ、ドレスの裾を大きくめくり上げられたまま情けなく腰を揺らめかせていた。
「ん、ぉ♡♡お、ッ♡♡やだ♡や♡♡ルシアンさま♡♡♡」
「うん? 触られるのが嫌なのかな?」
「ちがいま、ぁ♡♡ぁうっ♡♡も♡もっと♡♡直接触ってくだ、さ……♡♡」
ぐちゅぐちゅと、布越しの水っぽい音が鼓膜を犯してくる。
へこ♡へこっ♡♡と腰を揺らしながら懇願すると、ルシアン様はくいっと指を下着に引っ掛け、そのまま引き下ろした。
「んぅっ♡♡」
潤んだ蜜口が外気に晒され、思わず声が出た。
だけど彼は、それを気にした様子もなく――更にドレスをたくし上げ、物欲しげなその場所に直接指で触れ始めた。
「は……もうトロトロになってる。ほしがりだね、エマニュエル」
「ご、ごめんなさい……♡触られて♡が、我慢できなくなっちゃいました……♡♡」
「いいんだよ。君をこんな風に変えたのは私なんだから――あぁ、クリトリスも大きくなっている」
陶然とした表情を浮かべたルシアン様が、主張を始めた淫芽を親指で押しつぶしたのはその時だった。
瞬間的に、狂おしく熱が爆ぜる――気持ちを抑え込んでいた衝動か、いつもよりも峻烈なまでの快感が一気に体を駆け抜けていった。
「お゛、ッッ♡♡ぁ♡や゛ぁあっ♡♡♡」
くちゅっ♡♡ぐぷ♡ぐぷっ♡♡にゅちっ♡♡♡こりゅ♡♡こりっ♡♡
割れ目に指を一本突き立てられ、同時にクリトリスを指で刺激される。
一気に二種類の快感を与えられた私は、打ち上げられた魚のようにソファの上で体を跳ねさせた。
「ひぁ♡イ、く♡♡これ♡♡これ弱いの♡♡クリちゃんとおまんこ♡いっしょにいじめられてイく♡♡♡」
「まだだよ――不安にさせた分のおわびをしなくっちゃ……」
イきそうになる体を抑え込まれ、ぢゅっ♡♡とそのままクリトリスを吸われてしまった。
温かい舌でゆっくりと淫芯を舐られた私は、腰を突き出すようにして深い絶頂を極めてしまう。
「ひ、ぉ゛♡♡♡ぉ゛く、ゥうっ♡ん゛っ♡イ♡イくのっ♡♡あぁっ♡♡ン、イく♡イく♡♡おまんこイっちゃう♡♡♡お゛♡お゛、ッ~~~♡♡♡」
ぢゅるるっ♡♡ぢゅぷっ♡ちゅ♡♡れろ♡れろっ♡♡♡ちゅぱ♡ちゅっぱ♡♡♡ぢゅ~~~~♡♡♡
徹底的にクリトリスを舐めしゃぶられて、その度にびくっ♡びくんっ♡♡と体を震わせてイき果ててしまう。
息も絶え絶えになって何度も絶頂を繰り返す私を、ルシアン様は逃がしてはくれない。しっかりと腰を押さえられて、溢れ出した愉悦の逃げ場所が与えられなかった。
「ぁ♡♡♡らめ♡やだぁっ♡♡♡イく♡イきたくないのに♡♡こんなに気持ちよくなったら壊れちゃうのにぃっ♡♡♡」
「壊れられたら困ってしまうな……まだ私も満足していないし――これから先、たっぷりと時間をかけて……一生君を愛しつくすつもりなんだから」
ちゅぱっ♡と音を立てて唇が離れただけでも、軽くイってしまった。
喉を反らせる私を見下ろしながら、ルシアン様はやや乱雑に自分が来ていた服を脱ぎ捨てた。夜会用の燕尾服が、ばさりと音を立てて床に落ちる。
「やっとだ――やっとみんなの前で、君を求めることができた。もう逃がしてあげないよ。私のことが嫌いになっても、絶対に繋ぎとめて君を愛し抜く」
低く、耳朶に絡むような声でそう囁かれただけでも、子宮がきゅんっ♡きゅんっ♡♡とわななくのがわかった。
「エマニュエル、君はもう……私のお嫁さんになるって、誓ってくれるよね?」
こくこくと何度も頷くと、彼は屹立した肉杭を取り出して、それまで指で嬲られ続けた淫裂にそれを押し当ててきた。
「たくさん頑張った甲斐があったよ。周囲の男たちを遠ざけるのも、婚約者をニコライにけしかけたのも……全部全部君のためだ」
ずち♡♡ずちゅ♡ぬ゛っち♡ぬ゛っち♡♡ぐちゅぐちゅ♡♡くぷっ♡
はしたなく涎を垂らすその場所におちんぽを擦りあてられて、視界が明滅する。
(早く犯されたい♡このおちんぽで奥までいっぱい愛されて、ルシアン様のお嫁さんになりたい♡♡)
頭の中を埋め尽くす淫蕩な考えを見透かすように目を細めたルシアン様が、ぴと♡と先端を押しつけてきた。
溢れ出した蜜が絡んで、ぐちゅぐちゅと淫猥な音が響きわたる。
「受け入れてくれて嬉しいよ。……もう絶対に逃がさない」
「お゛ぁ♡あ♡ぁんんっ♡♡」
ずにゅっ♡♡ずぷ♡ぬぷぷっ♡♡♡ごちゅ♡ごちゅんっ♡♡♡
隘路をみっちりと肉棒で埋め尽くされて、媚肉が媚びるように肉幹に絡みついてくる。
「はぇ♡入って♡♡入ってる♡♡深いとこまで♡ルシアン様のおちんぽでお嫁さんにされちゃう♡♡♡」
「うん――うん、そうだよ。エマは、私のお嫁さん」
ずちゅ♡ずちゅっ♡♡と律動を刻みながら、まるで私に言い聞かせるようにゆっくりと言葉を紡いでくる。
一度、二度と奥を刺激されるたびに、幸せで気持ちよくて仕方がなくなってしまう。
薄く口を開けると、すぐさま舌をねじ込まれた。熱いルシアン様の下は蛇のようにうねって咥内を凌辱し、同時に深く膣奥を抉ってくる。
「ん゛むっ♡ちゅ♡♡ぢゅるっ♡♡ん、ふぅうっ♡♡♡ぁ……♡」
角度を変えながら何度もくちづけを交わし、お互いを狂おしく求めあう。
誘われるままに舌を絡めて陶酔の淵に立つ私は、彼と出会ってから胸に募らせ続けた思いをぶつけるように強くルシアン様の体を抱きしめた。
「ぁふ、ッ♡♡すき♡好きですぅっ♡♡♡ずっと――ずっと、好きだった……♡♡」
キスとキスの合間に放った声に、ルシアン様がすっと目を細める。
奪うようなくちづけの後、彼は軽く私の唇を舐めてからゆっくりと瞬きをし、乱れた髪を優しく撫でてくれた。
「知っていたよ。知っていた……君が慎ましくも懸命に、自分の気持を押さえていたことを」
全ての準備が整い、万全の状態で私のことを求められるようになるまで――全ての不確定要素を排除するまで、彼は待ち続けたのだという。
「何度も君の体だけを求める、不誠実な男だと思っただろう。だけど……君までニコライに奪われるわけにはいかなかった。その為に、私は王冠を掴みとると決めたんだよ」
「ルシアンさ――ぁ♡あっ♡♡」
ぬぷぬぷっ♡♡ぱちゅんっ♡♡♡ずちゅ♡ずちゅぅっ♡♡ぐぽぐぽぐぽっ♡♡♡
激しく奥を突かれて、背中が仰け反る。
胸を突きだすような形で快感に耐える私を見下ろしながら、ルシアン様は更にピストンの速度を上げていった。
「あ♡♡ぁん゛っ♡♡お゛♡お、ッ♡♡♡」
「幸せ――とても、とても幸せだよ、エマ」
何度も何度も唇を落としながら、ルシアン様は呪文のように囁いてくる。
逃げないようにとしっかり指を絡めて、深いところまで交わった私たちは、どこまでも一つに重なっていくようでもあった。
「絶対に、誰にも渡さない。――もう私に歯向かってこれるような人間はいないと思うけれど」
ぬ゛ぷっ♡と膣奥を突かれて、甘い声が出る。
快感が思考に靄をかけて、もうなにも考えられなかった。
「愛してるよ、エマニュエル――この国の王冠を、愛の証明として君に捧げよう」
目蓋に唇を落とされた瞬間、お腹の中で愛しい熱が弾ける。
時間をかけて、ゆっくりと彼に堕とされた体は、それでもなお熱をもって収斂し続けていた。
「ん、ぅ……♡♡るしあん、さま……♡」
蕩けた思考を塗りつぶすように、甘いくちづけを受け止める。
砂糖菓子の楔に繋ぎとめられた私は、ひたすら彼の愛だけを与えられて生きていくのだろう。