24/08/03 新しい短編を追加しました。ファンタジー+1

冷徹貴族様にお買い上げされた癒しの聖女は、今日も重すぎる愛を注がれています♡

Pixivリクエストにてご依頼いただいた小説です。
貧民出身で冷遇されている聖女様と、そんな聖女様を見事お買い上げしたものの、恋心が理解できない貴族様のお話

 男爵家出身である筆頭聖女のミリエム様が、シュトラウス子爵にお買い上げされるらしい。
 どこかで聞いたその話を思い出しながら、私――グレイス・フォーリアは馬車に揺られていた。

「聖女様、もうそろそろ到着ですよ」
「そうですね。リッター峠……野盗の被害が大きいと聞きましたが、討伐は大丈夫でしょうか」
「ブラックウェル公爵閣下の次男、ヴェリント伯爵が討伐隊を率いているそうですよ。恐らく、そちらはご心配には及ばないかと」

 介添えの修道女は、そう言ってにこやかな笑みを浮かべる。
 私が所属している中央聖堂は、国中からある能力の素養を持った女性が集めらていた。人を癒す力を持った「聖女」と呼ばれる少女たちを集めて、国や個人からの要請に従いその聖女たちをあちこちに派遣しているのだ。
 かくいう私もその『聖女』のうちの一人――今日は要請を受けて、王都のはずれにあるリッター峠に向かっていた。

「しかし――まさかグレイス様お一人での派遣とは思いませんでした。普通はこういう時に、数名の聖女様がまとめて派遣されるものでしょう」

 修道女の言葉に、なんと返せばいいのかがわからない。
 というのも、教会所属の聖女たちは皆、リッター峠に向かうのを嫌がったのだ。
 貴族出身の聖女たちは、奉仕活動に消極的だ。市民出身の聖女たちもあまりそういったことは好きではなく、お鉢が回ってきたのは貧民街出身である私――とはいえ、怪我人の救護は大切な聖務である。

「またグレイス様お一人に、聖務を押しつけたのでしょう」
「いいんです。こういうことは、嫌いではないので……」

 どんな扱いを受けても惨めだと思ったことはない。貧民出身の聖女である私は、五歳の頃から十四年間この教会で奉職している。慣れたというわけではないが、いちいちそういう扱いで傷つく段階を過ぎてしまった。

(屋根がある家で眠れて、温かい食事が食べられる――それだけで十分よ。これ以上を望んじゃいけないわ)

 たまたまた癒しの力の素養があったことは、恐らく私の人生で一番の幸運だっただろう。でなければ、今頃きっとどこかで野垂れ死んでいたはずだ。

「聖女様、到着いたしましたよ」

 御者がそう声をかけてくる。

「は、はぁい……」

 馬車を降りると、そこにはのどかな田舎の風景が広がっている。
 本来ならば穏やかな峠道なのだろうが、周囲を注意深く見ると、あちこちに荒されたような形跡が見て取れた。

「聖女様! 中央教会の聖女様ではございませんか?」
「は、はい――中央教会から派遣されました、グレイス・フォーリアと申します」
「おぉ……ありがとうございます! さっそくではありますが、怪我人の治療にお力をお貸しいただきたく……」

 駆け寄ってきた老人に手を引かれて、怪我人たちが集められている簡易的な療養所へと足を踏み入れる。

「野盗どもに狙われ、襲われた者たちです。ヴェリント伯爵様のおかげで討伐隊が来てくださいましたが、村人には怪我人も多く……」
「わかりました。すぐに治療にあたります――まずは怪我の重い人のところへ連れて行ってください。それから、子どもや老人、体力のない方の治療を優先します」

 大量のお湯を沸かしてもらい、手順に沿って治療を開始する。
 ――聖女の力は、決して万能なものではない。最低限傷口を塞ぎ、本人の生きる気力を元にした治療しか行えないものだ。

「私の声は聞こえますか? 大丈夫、傷口は私が塞ぎますからね……あなたはゆっくり呼吸をして、そう――少しずつ痛みが消えていくのがわかりますね?」

 傷の深い人は、意識を失わないように声をかけ続ける。
 そこから当人の生きたいという意思を引きだし、癒しの力で回復力を増大させるのが目的だ。

(かなりの人数だけど、軽傷者も多い――これなら、私一人でもなんとかなるかもしれない……)

 基本的に非武装の村民ばかりなので、大怪我を負うほど深追いをした人も多くはないのだろう。
 数人の重傷者を癒し終えた後、子どもたちの治療に入ろうとすると、建物の扉が大きく開いた。

「急患だ! そこを退け!」
「ど、どうされたのですか――この方は……?」

 突如、数人の兵士が、一人の男の人を担ぎこんでくる。
 一応自分の足では歩けているようだけれど、身に着けている軍服が大きく切り裂かれていた。

「ヴェリント伯爵閣下だ! 賊の討伐中に不意打ちにあい負傷を――広域にわたる魔術の使用中だったため、普段よりも出血が多い……おい、貴様教会の聖女だろう! 今すぐ閣下の治療を行え、いいな!」
「……まずはお怪我の状態を確かめさせてください。伯爵様、私の声が聞こえますか?」

 服は派手に切り裂かれているが、出血自体はあまり多くない。止血もしっかりとされていたので、伯爵様には手近な椅子に腰かけてもらうことにした。
 そっと声をかけると、彼は無傷の左手をそっと上げた。

「……貴様らの声が五月蠅くて、聖女の声が聞こえん。下がれ」
「は、しかし……」
「下がれと言ったのが聞こえなかったのか。煩わしい」

 地の底から響くような声でそう告げる伯爵様の様子は、彼を運んできた兵士たちの方が立ち竦むほどだった。
 意識がなくなると暴れたり、パニックに陥ったりする人も多いので、それがないだけでもありがたい。

「意識ははっきりしているようですね。……では、このまま少しお待ちください」
「な――おい、まず閣下の治療を優先しろ!」
「伯爵様のお怪我は、確かに大きなものです。ですが既に緊急での止血が済み、ご自身の意識もはっきりしているご様子……体力もおありのようですから、先に子どもたちの治療を優先させてください」

 軍服を着ているということは、恐らく彼も修練を積んだ軍人だろう。
 一方で子どもたちの治療は一刻を争う。傷つけられた傷口が膿んで発熱している子は、早急に処置をしなければ間に合わないだろう。
 なおも口を開こうとする兵士に反論しようとすると、さらに低い声が鼓膜を打った。

「やめろ。……聖女の言っていることは正しい。まずは子どもの治療に当たれ――刀傷程度ならば慣れている」
「しかし、閣下……」
「王国民の命は、全て国王陛下のものだ。俺個人の命と比較するべくもない……貴様らはもう下がれ。俺をこれ以上煩わせるな」

 震える息を吐いた伯爵様は、そのまま部下の軍人たちを睨みつける――鋭いまなざしから放たれる眼光はあまりに恐ろしく、哀れな兵士たちはそのまま一礼して建物から出て行ってしまう。

「……ありがとうございます、伯爵様」
「礼はいい。貴様は手を動かせ――少し休むが、俺の治療に当たる際には声を掛けろ」
「かしこまりました」

 恐らくは美しい烏羽色の髪が、土埃で汚れている。
 青白い顔を俯けたまま休みだした伯爵様に頭を下げて、私は子どもたちの治療に専念した。

「――よし、傷口はこれで大丈夫。後はしっかりとお薬を飲んだら、数日でよくなるわ……」

 体力のない老人や女性の治療を終え、最後に伯爵様の元へと向かう。
 容体の急変などはないかと気にかけていたが、彼はただ静かに椅子に腰かけているだけだった。

「……伯爵様、治療を行わせていただきます。お加減はいかがでしょうか」
「――気分は、特に。自動治癒を行う護符を携帯していたが、その効果が切れて痛みが出てきている」

 ぽつぽつと、けれど的確に、彼は自分の状況を私に伝えてくれた。
 教会が販売している自動治癒の護符は、聖女の持つ治癒の力を一時的に発揮できるようにしたものだ。非常に高価で、恐らく彼のような立場の人間でなければ持ち運ぶことなどできないだろう。

「あの護符は……値段の割に、効果があまり高くはないのです」
「だろうな。拝金主義者の神官どもがありがたがっているのを見て、どうもそんな気がしていた」

 憎々しげに吐き捨てた伯爵様の軍服とシャツを脱がせ、傷口を確認する。
 それでも多少は護符の効果があったようで、深く抉れている傷口は多少塞がりつつあった。

「伯爵様、どうかお気を確かに。傷口はこれから私が塞ぎますが、まずはあなたの生きる意欲が肝心です。……お体に触れることをお許しください」
「聖女が触れるのに許可がいるのか? 少なくとも他の聖女どもは無遠慮に触ってくるだろう」

 そっと傷口に触れてみると、そこからはまだ少量の血液が噴き出ている。
 若いので治りも早いが、それと護符の効果を合わせてもまだ足りないほどの傷を負っていたということだ。

「私は……下賤の生まれですから」

 この様子を見るに、もう少し早く治療して上げた方がよかったかもしれない。
 いくら体力があるとはいえ辛かっただろうと、自分の選択に陰りを覚える。

「平民か」
「いえ、それよりも下の……お嫌でしょうが、今だけ我慢してくださいね」
「別に――あの抹香臭い神官どもや、自らをいかに高く売るかしか考えていない他の聖女どもよりはよっぽどマシだ」

 眉を寄せて吐き捨てる伯爵様は、痛みに顔を歪めながらもとても冷静だった。
 パニックに陥られるとこちらも落ち着いた治療ができないので、その点は素直にありがたいと思う。

(でも、傷がなかなか塞がらない……)

 一見してそれほど深い傷ではなかったが、なぜか治りが遅い。
 複雑な傷口ならばその理由もわかるが、筋を絶たれたり骨を折られたりはしていないはず。

「――少し、治りが遅いですね。なにかお心当たりはありますか?」
「いや……ただの刀傷だ。広域にわたり監視用の風属性魔術を使用していたが、とっさに魔力を防御に回した。一応致命傷は防げているだろう」
「はい。……ですが、これは――」

 傷口に触れる指先が、どんどん冷たくなってくる。
 目の前がかすんでくるのを感じた頃には、傷口が塞がりにくい原因が彼ではなく自分にあることを理解した。

(そう、か……これは私の――)

 これだけの人数を一気に治療したことなんてなかったから、恐らく力を使いすぎたのだろう。
 だけどここで癒しの手を止めてしまうと、この人を救えない。ぎゅっと唇をかみしめて気合いを入れなおし、治療を再開した。

「……おい、大丈夫なのか? 顔色が悪いぞ」
「大丈夫です。絶対に、あなたの傷は私が癒します」

 それが、私がここに派遣された目的。私に与えられた使命だ。
 寂れた貧民街で転がっていた私を拾ってくれた、教会への恩返し。そう言うとなんだか大げさだが、せめてこの力が尽きるまで、与えられた使命を全うしたい。
 気合いを入れなおしたこともあってか、伯爵様の傷口が塞がる速度が上がっていく。

(もう少し……あと、少しだけ……!)

 ぱっくりと開いていた傷口が、するすると塞がっていく――ようやく綺麗に傷口が塞がったあたりで、汗がどっと噴き出してきた。

「……これで、治療は完了しました。ですがあまり大きく動かしたり、しばらくは重い荷物を運ばないように――して、それから……」

 ――それから、なにを言えばいいんだっけ。
 開いた唇から言葉が出なくなって、目の前が暗くなっていく。

(だめ……まだ、私は……)

 私は、何をしたかったんだろう。
 頭に浮かんだ言葉の答えすら出せないまま、ゆっくりと体が傾く。逞しい腕でしっかりと抱き留められた感覚も伝わらないままに、私はそのまま倒れこんでしまった。

「……聖女、か」

 そう、伯爵様が呟いた言葉ですら、意識を失った私の耳には届いていなかった。

● ● ●

「……あの、これは」
「アーサー様より、聖女様にこちらをお渡しするようにと申し使っております。……本日はこちらを身に着け、お部屋にいらっしゃるようにと」

 目が覚めたのは、硬い教会のベッドの上ではなかった。
 柔らかくて暖かい、見知らぬお屋敷の部屋の中。何事が起きたのかと目を丸くする私に、目の前で腰を折る若い女性が私の状況を教えてくれた。

「ここは、ブラックウェル公爵子息――ヴェリント伯爵アーサー・ブラックウェル様の邸宅でございます。……リッター峠にいらした聖女様を、アーサー様がこちらへ連れ帰られたのですが――覚えておりますか?」
「い、いいえ……なにも」
「左様でございますか。その――アーサー様曰く、教会から聖礼符をお求めになったとのことでございましたので……てっきりお話は聞き及んでいらっしゃったのかと」

 聖礼符という言葉に、心臓がぎゅっと鷲掴みにされたような気持ちになる。
 それは貴族や豪商が、聖女の身請けをする際に購入する札のことだ。名目上、聖なる加護を得たその札を購入したということになるのだが、実際は聖女そのものを買い上げ、自宅や別邸に囲うのが通例となっている。

(でも、ヴェリント伯爵って……あのヴェリント伯爵、よね?)

 神官様に対しても聖女に対してもやたらと辛辣だった伯爵様が、わざわざ聖礼符を求めるものだろうか。

「あのぅ、な、何かの間違いでは……?」
「いいえ、間違いなどではございません。……実のところ、わたくしどもも驚いておりますわ。アーサー様には既に婚約者の方がおりますし、元々教会には――いえ、このようなことを聖女様に言うべきではございませんね」

 ご放念くださいませ、と頭を下げる侍女が差し出してきたのが、今私の手元にある下着だ。
 これ以外は身に着けるなと言われて手渡されたのは、これまで身に着けたこともないような下着――いや、下着と呼ぶにはあまりに心許ない布だった。

「時間が来たらお呼びいたしますので、それまではこの部屋でお待ちくださいませ、聖女様」

 侍女はそう言って出て行ってしまったが、残された私はただただ呆然とするしかない。
 こういう時にどうすればいいのかという教育は、それとなしに受けていた。
 決して『購入者』には逆らわないことを幼い頃から厳命されていた私は震える手で渡された下着を身に着けていく。

「こ、これ……本当に下着……?」

 肌が透けて見えるほどに薄いランジェリーには、可愛らしいフリルがたくさんつけられている。ただ、見た目がほとんど裸のようなので逆にいやらしさが際立ってしまう。乳房を強調するように、縁取りのような装飾がつけられているのもかなり艶めかしい。
 極めつけはショーツの方だ。こちらもランジェリー同様に薄い布にフリルをあしらったものだったが、こちらにはなんとクロッチの部分が欠如していた。

(これでなにを……どこを隠せばいいの……!)

 あの見た目からして厳格無比という言葉が似合う伯爵様が、こんな不埒な下着を用意させたのだろうか。
 裸の方がまだマシのような下着を身につけさせられた私は、どうか時が過ぎませんようにと祈りながらベッドの隅で膝を抱える。

(買われた、からには……言うことを聞かないといけない。けど、あの伯爵様が……)

 私と伯爵様が言葉を交わしたのは、小さな村のたった一時だけ。
 それなのにどうして、彼は私を買い上げたのだろう。その疑問が尽きずに、頭の中が混乱する。
 やがて侍女がやってきて、私を伯爵様の部屋の前へと連れていった。扉をノックをすると、中から低い声が返ってくる。

「は、伯爵様……」
「入れ」

 短く命じる声は、記憶の中にあるヴェリント伯爵の声と同じだった。
 おずおずと扉を開いて中に入ると、部屋の中はとても温かい。大きなベッドと、同じくらい大きなソファに腰かける伯爵様が目に飛び込んできて、私は思わず息をのんだ。

「あ、あの」
「中に入ってこい。……聖女、ことの経緯は侍女から聞き及んでいるな?」
「は――あの、聖礼符をお買い求めになったとは、聞いておりますが」

 戦場でもないのに、伯爵様の眼光は鋭いままだ。
 視線だけで座れと促された私は、そっと彼の隣に腰かける。すると、伯爵様はじっとこちらを見つめてきた。
 ――あの時は顔を伏せていてわからなかったが、彼の瞳は抜身の剣に似た銀色をしている。

「そうだ。お前の身柄は俺が買い上げた……おい、まずは名前を教えろ」
「え? あ……えぇと、グレイスと申します」
「そうか。ではその名、これより俺以外の人間に呼ばせることを禁ずる」

 冷たく突き放すような声音でそのようなことを言われて、体がびくっと跳ねあがった。

「他人には聖女と呼ばせておけ。お前の名を呼ぶ人間はそう多くは必要ない」
「そんな……」

 名を呼ばせるなだなんて、無茶振りにも程がある。
 反論しようと口を開いたが、途中で冷静になって口を押さえた。幼い頃から叩きこまれた習慣が、ぎゅっと喉を締め付ける。

「どうした? 以前のように叱り飛ばしたりはしないのか」
「……わ、私は、あなたに買い上げられた身の上です。――聖女として求めてくださった方には恭順するようにという教育を受けてまいりました」

 不意に口を閉じたことに気付いた伯爵様が片眉を上げた。
 これはもう自分の体に染みついてしまったもので、自分の意思でどうにかすることは不可能だ。

「は、伯爵様――」
「来い。……聖女が持つ癒しの力は、性交でもって最大化されるんだろう? 今からその力を示せ」
「……は」
「俺に聖礼符を売りつけた神官が言っていたぞ。聖女の本来の力を引きだすためには、より深い交合によって効果を高めるらしいな」

 淡々とした口調でそう言われるとなんとも答えようがないのだが、神官様のいうことはあながち間違ってはいない。
 聖女の使う癒しの力は、対象の生きようとする力を使って発露するものだ。つまり、そういう欲求が最も高まる褥の中で、最大限に効果を発揮する。公にそのようなことを明らかにはしていないが、恐らく彼のように聖礼符を求める人間には説明を行っているのだろう。

「グレイス、貴様の仕事は俺を癒すことだ。今ここで理解しろ」
「……は、はい」

 あまりにぶっきらぼうな命令に思わずうなずくと、そのままベッドに押し倒された。
 気持ちの整理ができないままで組み敷かれる形になった私に、伯爵様は首をかしげて尋ねてくる。

「それで、貴様は男に抱かれた経験はあるのか」
「いいえ……その、貧民出身の聖女を欲しがる方もおりませんでしたから」

 他の聖女たちは、何度か他の男性に求められたことがあるようだった。
 けれど、生まれが賤しいという理由で私は誰からもお呼びがかからず――故に、これから先も誰かに求められることなどないと思っていた。

「男の触れ方も知らんというわけか。まぁいい――生娘であるのならば、泣き叫ばれてもかなわん。足を開き力を抜いて俺を見ていろ」

 矢継ぎ早に命令をされたかと思うと、伯爵様は着ていたシャツのボタンをいくつか外してそれを脱ぎ捨てた。
 ……確かに、肩のあたりにうっすらと傷痕が残っている。私の意識が途切れたせいで、完全な治療ができなかったのだろう。

「ぁ――ま、まず教えてください。その、患部に痛みは」
「ない。皮膚の内側が……特にこの、胸の辺りが疼く。逆に痛みがないせいで、それが気にかかって仕方がない」

 端的に現状を説明してもらえるのはありがたい。
 きっと傷口をしっかりと治療することができたら、その疼きも止まるだろう。

「わ、わかりました……それでは、あの――私を、お使いください……」

 ごく、と唾を飲むと、伯爵様がすっと目を細める。
 剣を握る指先が顎を捕らえたかと思うと、そのままぱくりと唇を食まれた。

「ん、むぅっ……♡♡」

 知っているのは、あいさつで交わすような触れるだけのキス。
 それとは全く違う、まるで食い荒らされてしまうんじゃないかと思えるほどに強引なくちづけを与えられる。

「く、ぅっ♡ん゛っ……♡♡はっ♡や――」

 息が苦しくなったタイミングを見計らって、唇が離される。けれど、こちらが息を吸いこんだ瞬間に再び唇を奪われ、咥内をかき回された。
 呼吸をする行為すらも支配されているような荒々しいくちづけは、恐怖とも快楽ともつかない震えをもたらしてくる。

「ぁ♡♡ぁんんっ……♡♡ふ♡んぅ♡」

 くちゅっ♡♡ぢゅっ♡♡ちゅぅうっ♡ぢゅるるっ♡
 分厚い舌で口の中をぐちょぐちょにかき混ぜられて、これまで覚えたことのない感覚がせりあがってくる。
 気持ちいい――キスがこんなにも苦しくて、心地好いものだなんて今まで知らなかった。

「はっ♡♡はぁっ……♡♡」
「なんだ、くちづけ一つでこの有様か――堪え性がないな、グレイス」

 低くサディスティックな響きで名前を呼ばれただけで、お腹の下の方がジンジンする……♡
 自分の体の変化に理解が追い付かず、ぼんやりと伯爵様のことを見上げているしかできない。

「清純な演技はすぐに見抜ける。……お前本当に抱かれた経験がないのか」
「そんな、あ、あるわけが……」

 不格好に上ずった声が、媚びているみたいで恥ずかしい。
 頭の中がぼんやりして上手く舌が回らず、言葉も上手く出てこなかった。なにか言わなくてはと思っていても、どうしていいのかがさっぱりわからない。

「伯爵、さま」
「無垢であろうが、何をすればいいかを知らぬほど無知ではあるまい。足を開けと言ったのが聞こえなかったか?」

 そう――夢物語のような、甘い関係ではない。これは彼の傷を癒すための治療行為で、私はそのためにここに連れてこられた。恋人でも何でもない、私は道具のようなものなのだ。

「……はい」

 そう思うと、少しは頭も冷静になる。
 言われた通りにゆっくりと足を開くと、彼の大きな手が太腿をぐっと掴んだ。

「抵抗はするな。したところで俺はこの行為をやめるつもりはない――苦しい思いをしたくなければ、今日のところは快感を享受しておけ」

 感情のこもらない言葉を、必死で嚥下する。
 つまりは、余計なことをするなというのだろう。ぎゅっと唇を引き結ぶと、開いた足の間を長い指先が伝う。

「ぅ、……♡」
「多少濡れてはいるか……これは? 痛みを覚えるか」

 くぷんっ♡と指先を一本突き立てられて、体が震える。
 何者も受け入れたことがないその場所を暴かれて圧迫感を覚えはするが、痛みはなかった。

「い、いぇ、っあ♡ん、ふっ……♡♡」

 懸命に首を横に振ると、一度だけ伯爵様がごくりと喉を鳴らした。

 けれど言葉はなにも与えられないまま、くぷくぷと蜜壺を指で攪拌される。

(こんな……♡卑猥な下着で♡クロッチの中に指入れられてる……♡♡怖い♡怖いのに♡♡お腹の奥がゾクゾクってするぅ……♡♡)

 恐怖と快感は、非常に親和性が高い。
 緊張を覚えれば覚えるほど、自分が今どんな格好で彼に体をまさぐられているのかというのを理解してしまう。

「んぅ♡♡ぁ♡あぅ、うっ♡♡」
「素養はあるようだな。……それとも、そのように躾けられたのか?」

 艶美な――それでいてどこか冷たいような表情を浮かべる伯爵様が、より深いところまで指先を挿し込んでくる。
 彼の指が悦い場所を探るように動くと、浅ましくうねる媚肉が指先を締め付けた。強い快感を求めて体がわななくのを止められず、目尻から生理的な涙が溢れてくる。

「ひぁ♡ん゛、ッ――♡♡♡や、は、伯爵さま……♡」
「なぜ泣く。――まだ、泣くようなことはなにもしていないはずだ」

 ぎゅっと眉を寄せた伯爵様が、自らの唇でその涙を拭ってくれた。
 存外と優しい触れ方に驚くものの、揺らめくように与えられる快感はその強さを増すばかりだ。

「は、ぁうっ♡♡んぁあっ……♡♡」
「――悦い場所を見つけたか? 俺の問いに答えろ、グレイス」

 詰問をしているような雰囲気ではなかったが、彼の冷たい口調にかかれば囚われて尋問を受けているような気分になる。
 心なしか上擦った声を聞きながら、私は諦めたように口を開いた。

「ぁ――はい、っ……♡ぁ♡そこ、ですぅっ……♡♡ん、ぁあっ♡そこ♡だめぇ♡♡」

 探り当てられた一点を、指先でぐりぐりぐりっ♡♡と刺激される。
 体を震わせてその愉悦に耐えようとしても、伯爵様は微かな笑みを浮かべながらしつこくその場所に触れ続けた。

「ぁ♡や♡♡やめ、ぇっ……♡♡お、お腹熱い♡♡や♡ぁんっ♡♡♡」

 がくっ♡がくんっ♡♡と腰を揺れて、頭の中がなにかで塗りつぶされたような感覚を覚える――浅い呼吸を何度か繰り返してその衝撃に耐えていると、頭上から感嘆したような声が聞こえた。

「これだけで達してしまうほど、快楽に弱かったのか――聖女というから、もっと反応の薄い石像のような女を想像していたが」
「は、ぇ……♡♡ぁ♡なに、いま――♡ぁ……?」

 イって、しまった……♡
 おまんこ指でぐちょぐちょにかき混ぜられて、気持ちよくて、訳の分からないまま絶頂に導かれた私は、はふはふと呼吸を繰り返しながら伯爵様を仰ぎ見る。

「わかるか、グレイス――白いお前の肌が上気して、ひどく淫靡に火照っているぞ」
「や、い、言わないで、くださ……ぁんっ♡♡」

 嗜虐的な笑みに、ゾクゾクしてしまう。
 イったばかりのおまんこがきゅんっ♡と収斂するのを感じて顔を背けると、彼は薄い唇をさらに吊り上げた。

「言うなと言われてもな――口に出さずとも、お前の体はそれ以上に雄弁だ。いじらしく乳首を勃起させ、快感を乞うているようだが」

 自分の今の状態を淡々と告げられて、羞恥で顔が熱くなる。
 すると、伯爵様は空いていた方の手を胸のふくらみに伸ばしてきた。

「ひぁあっ♡♡」
「安心しろ。痛みを与えるようなことはしない。女の悲鳴を聞いて昂るような下衆ではないからな」

 そう言いながら、彼の手は巧みに乳房を弄い始める。
 付け根の部分から、まるで絞り上げるかのような動きで指先を曲げられると、おまんこをかき混ぜられる時とは違う、どこか切ないような痺れが駆け上ってきた。

「あ、ぁっ……♡♡ビリビリする、ぅ♡」
「痺れ……? それは痛みか」
「ちが、ぁっ♡おっぱい揉まれるの♡♡きもち……♡♡は♡ぁっ♡♡♡」

 上擦った声で何とか応えようとすると、彼も私がこの行為に快楽を見出していることに気付いたらしい。
 幾度となく胸を揉まれ、その先端をカリカリ♡と爪でひっかかれる。

「あ、ひっ♡ひ♡♡♡ぁ……♡♡」
「腰が揺れるほど悦いか? 膣内も解れて――物欲しげにヒクついている」

 低い声に鼓膜を犯されるのすら、今の私は心地好く思えてしまう。
 いくら治療とはいえ、こんな行為は虚しいだけ――頭では理解しているのに、本能の部分を強く揺さぶられて抗えないのだ。

「そろそろ頃合いか――グレイス、舌を噛むなよ」
「え……? あ、ぁぅっ」

 ぼふん、と間抜けな音が聞こえたかと思うと、私の体はうつ伏せにひっくり返されてしまう。
 お尻だけを彼に突き出した情けない格好を取らされた私は、今からなにをされるのかと慌てて背後を振り返った。

「なんだ、自分が犯されるところを見たいのか?」
「ち、違……」

 違う、と声を上げようとして、私はそれを見てしまった。
 寛げられた彼の前履きから取り出された、雄々しいまでの肉杭――反り立った赤黒いおちんぽに、下腹部が痛いほどに疼く。

「それなら枕に顔を当てていればいい。もっとも――自らの純潔を穢される様をつぶさに見たいというのならば、止めはしないが」

 ずりゅっ♡♡とお尻に当てられた熱で、腰が大きく跳ねた。
 これが――これが、男の人のおちんぽ……♡

(わ、たし――本当に、今から犯されちゃうんだ……♡あんなに大きくて、長いおちんぽで……は、入るわけが、ないのにっ……♡♡)

 恐ろしい。なのにどこかで、彼に体を拓かれることを望んでいる自分がいる。
 たっぷりと解された蜜口からはぽたぽたと蜜が滴って、まるで彼のことを待ち望んでいるかのように下腹部が熱を宿していた。

「ぁ♡やだ♡伯爵さ、ぁんっ♡♡♡」

 ずりゅっ♡♡ぬちゅ♡♡ぬ゛ちぬ゛ちぬ゛ちっ♡♡♡ぐちゅんっ♡♡
 蕩けかかった淫裂に、ずりずり♡♡とおちんぽを擦りつけられる。
 今からこれでお前を犯すと言わんばかりに、彼は丁寧に自らの肉棒を押し当て、上下に揺り動かしてきた。

「お前に許されているのは、拒絶の言葉ではない。いいな――俺を受け入れ、癒すために存在しているのなら……自ずと、自分が発するべき言葉を理解しているはずだが」
「ぉ゛♡♡りゃぇ♡あっ♡あっ♡♡おちんぽ擦りつけちゃっ……♡♡♡はひ、ぃっ♡♡」

 だめ♡頭の中コレでいっぱいになる♡♡伯爵様のおちんぽ熱くて♡犯してもらうことしか考えられなくなっちゃう……♡

「違うだろう? ……これほどわかりやすく快感に喘いでいるんだ。お前の本質は、もっと淫らで艶やかなものだ――違うか?」

 ずり♡ずりっ♡♡と狂おしく熱杭を押しつけられながら、まるで魔法のような言葉が鼓膜に絡まってくる。
 不思議なことに、彼にそう言われると頷いてしまいそうになる。淫らな格好をして、腰を揺らして快感に耐えている自分は――今か今かと、彼に貫かれる瞬間を待っているんじゃないだろうか。

「ひゃ♡は――ぁ♡ぁあっ……♡♡そ、そうです……♡伯爵様のおちんぽ♡♡お、おまんこにずりずりされて……♡期待、しちゃってます……♡」

 そう認めてしまえば、後は早かった。
 はふはふと息を吐きながら、彼に犯される想像で頭がいっぱいになる――口元がへにゃりと笑みの形に歪むのを、我慢しきれない。

「グレイス、の――処女おまんこに……♡♡とろとろ初物おまんこに♡伯爵様の長尺おちんぽ♡♡奥までぐっぽり挿入れてください……♡♡♡」

 そう、これは治療行為だから。
 こうして私が体を差し出すことで、伯爵様の傷跡が癒えるのだから――自分に何度もそう言い訳して、ごくりと唾をのんだ。
 すると、はしたなく涎を垂らす蜜口に切っ先が押し付けられた。

「あぅ、っ♡」
「そうだ――しっかりと言えたじゃないか。従順で素直にしていれば、ひどいことはしない」

 ねっとりとした甘い声が、媚薬のように頭の中を搔き乱す。
 ぐっとお尻を掴まれたかと思うと、それまで焦らすように擦りつけられていたおちんぽがぬぷぬぷっ♡♡と突き立てられた。

「は、ぉ゛……♡♡ぁひっ♡あ♡♡♡あふぅうっ♡♡」

 ぬぢゅっ♡♡ずぷ♡ぬぷ♡ぬぷ♡ぬぷぅっ♡♡♡
 ゆっくりとゆっくりと――狭い膣窟を押し開くようにしながら、長いおちんぽが時間をかけて奥へと進んでくる。

「あ゛♡は、ぁあ……♡」
「随分と狭隘な――多少強引に貫くぞ。しばし耐えろ」
「え――あ゛♡ぁうっ♡は♡♡♡かふぅっ♡」

 ごちゅっ♡と鈍い音がしたかと思うと、内臓を押し上げられるような苦しさが襲い掛かってきた。
 力をこめて突き上げられ、狭い最奥までを一気に穿たれる――お腹の中は、彼のおちんぽの形がわかってしまうくらいいっぱいになってしまっていた。

「ぉ゛、ッっ♡♡あ♡くるし、ぃ……♡♡」

 お腹の奥が、ズンと重い……。
 それなのに体はビクビクと反応してしまって、少し腰を揺すられるだけでもまたイッてしまいそうなほど気持ちがいい。

(おかしい……♡こんなの♡♡思い切りおまんこ犯されてるのに♡頭の中ビリビリして……♡♡ずっとこうされるの、待ってたみたいに……♡♡♡)

「苦しい、か。――その割に、抜こうとするとナカが締まって……俺を離すまいとしているが」

 ぬ゛、ちゅっ♡♡ぬ゛、ちゅっ♡♡♡ぐぽ♡♡ぬぽんっ♡♡♡
 子宮口にキスをするように先端を押しつけてくる伯爵様に、おまんこがぎゅっ♡ぎゅっ♡♡と絡みついている。
 現に、ちょっとした抽送を繰り返されるだけでも頭の中がバチバチと爆ぜるのだ。心がついていかないまま、体だけが快楽に屈して従順になってしまう。

「あ♡ぁ゛あっ♡♡♡や♡ふか、ぃ♡おまんこ♡♡子宮口まで犯されてぇっ……♡♡ッひ♡ひあぁぁっ♡♡♡」

 ぢゅっ♡ぢゅぅう~~~♡♡♡ぬ゛ぢゅ♡♡ちゅぽ♡♡♡
 丁寧に丁寧に、最奥を犯されていく。
 意識すら快感に塗りつぶされてしまいそうになる私を染め上げるように、伯爵様は徐々に律動の速度を上げていく。

「はぁ♡あんっ♡♡ひぐっ♡ぅ♡♡♡」
「なぜ、だ――聖女を抱けば、この傷が癒えると……」

 やや掠れた声でそれだけ呟いた伯爵様が、強く腰を掴んでくる。
 暴力的な快楽を突きつけられた私は、髪を振り乱してその乱暴な愉悦に耐えるしかない。

「んぉ゛♡♡ぉ゛ッ♡ほ、ぁあっ♡♡♡やら♡おまんこ締めちゃう♡♡たしゅ♡ぉ゛♡たしゅけ、ぇっ……♡♡」

 無理矢理に近い形で体を拓かれ、貪るように抱かれているのに、体はどうやっても快感を拾い上げてしまう。
 逞しい体で組み敷かれること自体に恍惚とした感情を抱いた私は、自分の心までもを彼に縛り付けられてしまったような心地になった。
(わたし――こんなの、違う♡悲しいだけなのに♡道具みたいに抱かれて感じるなんて♡♡♡)
 自分が惨めで、憎たらしい。
 生まれだけでなく心も賤しいのかと、これまでひたむきに生きてきた自分の良心が吐き捨てている。

「グレイス」
「ん゛ぅ♡」

 後ろから体重をかけてくる伯爵様が、ぐっと耳元に顔を寄せてきた。
 微かに身じろぎをするだけでも、膣壁から生み出される快感がじりじりと身を焼いていく。

「はくしゃ、さ――♡」
「その『伯爵様』というのをやめろ。……名乗っていなかったか? 俺の名はアーサーだ」

 ぬ゛るぅ~~~♡♡と腰を引かれ、今度はゆっくりと雄芯を挿入される。
 乱暴に奥を突かれるよりも、より強く「犯されている」という自覚が芽生えてくるよな気がした。

「あ、さ……アーサー、さま♡」
「そうだ。これから先、俺を『伯爵様』と呼ぶことは禁ずる。いいな」

 こくこくと頷くと、アーサー様はするりと腰を撫でてくる。存外と優しい手つきは、褒められているんじゃないかと錯覚するほど穏やかだった。

「いい子だ。そう――従順にしていれば、快楽は与えてやろう。俺の体を癒す対価だ……存分に受け取れ」

 ばちゅんっ♡♡♡ごちゅっ♡♡ぬぽっ♡♡ぬぢゅっ♡♡ぐぽっ♡♡♡
 いきなり強くナカを抉られて、空気が押し出される。

「ほ、ぉ゛ッ♡♡♡ぉひっ♡や゛♡♡あぁあっ……♡♡」

 ぷしゃぁっ♡と堰を切ったように足の間からなにかが噴き出したのはその時だ。
 透明な液体が、突き上げられるごとにぷしぷしと吹きあがる。

「ひ、ぃっ♡♡や♡やらっ♡♡♡」
「なんだ、潮まで吹けるほどの素質をもっているなら――もったいぶる必要はないな。この淫蕩な体で、たっぷりと俺を癒してもらおう」

 こんなところで粗相をするなんて、ひどく叱責されてしまうに違いない。
 そう思って身を固くした私の耳に届いたのは、存外と愉悦が滲んだアーサー様の声だった。
 クッと喉を鳴らした彼は、何度も腰を打ちつけながら私の悦い場所を突き上げ、理性を打ち壊してくる。

「ほ♡ぉ゛ッ♡♡♡ぉ゛ぎっ♡い、ッ♡♡♡」
「突けば突くだけ――ッく、ナカが締まる。手酷く犯される方が好みか?」
「ちが♡ぁ♡ぁ゛あっ♡♡」

 ごちゅっ♡と奥を穿たれると、再び透明な液体を吹き出してしまう。
 その際に伴う快感は本当に頭がおかしくなってしまうんじゃないかというくらい鮮烈なもので、突かれるたびに揺れる胸の先端がシーツと擦れるのも興奮を覚えてしまう。

「や゛♡♡ゆるして♡ゆるしてくださ♡♡伯爵さま♡♡♡ッぁ゛♡まら♡まらイぐ、ぅっ♡♡♡」
「名を呼べと命じたはずだ。……グレイス――もう一度だ」

 ごりゅっ♡どちゅっ♡どちゅっ♡♡♡ぐぽんっ♡♡
 失態を咎めるように力強く穿たれ、目の前がパッと白ける。
 絶頂を繰り返しても緩められる気配のない律動に、私は壊れた機械のようになりながら何度も彼の名を呼んだ。

「ッほ♡♡ぉあ♡♡アーサー、さま♡♡♡あーさーさま♡ァッ♡♡♡」
「そうだ――忘れるな、それはお前を買った男の名前だ」

 愛しげに――きっと本人にはそのような気持ちはないのかもしれないが――背中を撫でられると、どうしようもなくなってしまう。
 浅ましい私の体は本能で彼に屈服し、慈悲を請おうと膣内を収斂させた。

「んぁ♡♡♡ぁ――や、んっ……♡♡アーサー、さまぁ……♡♡」
「この傷が癒えるまで、幾度でも俺はお前を抱く。……逃げようなどとは思わないことだ」

 どぷっ♡♡と吐き出された熱の感覚とともに、そんな言葉を掛けられる。
 射精の勢いのままきつく体を抱かれた私は、ぎゅっと目を閉じて唇を噛んだ。
 ――私は、道具だ。彼を癒し、ただ体を差し出すだけの道具。包帯や薬と同じで、いずれは使い古され捨てられるのだろう。

(だとしたら、私は……)

 体の奥だけが、甘く疼いている。
 冷え切った心に深く刺さった氷の棘は、朝がきても溶けることはなかった。

● ● ●

「ぅ……」

 アーサー様に買われて、数日が経った。
 明け方近くまで抱かれ、恐らく今は昼時だろうか――喉の渇きを覚えたが、水差しに水が入っていない。

「……部屋から出るなとは、言われていないし」

 恐らく人を呼べばすぐに来てくれるのだろうが、そもそもそういう生活に慣れていない。
 自分の身の回りのことは、せめて他人の手を借りることなく行いたい――そう思って部屋の外に出た私は、外に出るための扉を探し回った。

(井戸って、どのあたりにあるんだろう……そもそもここに来てから、外に出たことなんて一度も――)

 見慣れない屋敷の中をきょろきょろと見回しても、なぜか使用人の一人も見当たらない。
 この辺りにはあまり人はこないのか――そう思っていると、それほど離れていない場所からガシャンッと激しい音が聞こえてきた。

「――てくださいませ、シャローネ様!」
「使用人ごときが気安く話しかけないで! アーサー! アーサー様はどこにいるの!」
「ですから、現在は王宮にて職務を――」

 誰かが争い合う声が聞こえて、思わずそちらの方へ足が向いてしまう。
 なにかあったのかと顔をのぞかせると、床に倒れ伏した男性と彼に駆け寄る侍女、そして――眩い金髪を揺らした、気の強そうな女性が立っていた。

「いいから今すぐアーサー様に会わせなさい! わたしという婚約者がいながら、神殿から聖女を買い上げるなんて……!」
「恐れ入りますが、シャローネ様……そのようなことは……!」

 烈火のごとき勢いで侍女を責め立てるその女性は、こちらの視線に気づいたようにハッと顔を上げた。
 床にひれ伏して陳謝する侍女に一瞥くれると、彼女はずんずんとこちらに迫ってくる。

「ぁ……」
「お前――教会から来た聖女ね? ブルネットに、その貧相な顔立ち……話に聞いていた通りだわ」

 華やかな見た目にそぐわない低い声でそう告げて、彼女は私をきつく睨みつけた。

「シャローネ・アルデン。アルデン伯爵令嬢よ」
「……グレイス・フォーリアでございます。その、私は――」
「アーサー様を誑し込んだ女狐がいるって聞いたから、どんなに美しい聖女かと思ってみたら……あの方の審美眼も当てにならないのね?」

 シャローネ様は吐き捨てるようにそう言うと、倒れ伏した使用人の方に目を向ける。どうやら男性の方は怪我をしているらしく、顔を上げられない状態であった。

「屋敷も愚鈍な者ばかり。わたしがブラックウェル公爵家の一員になったら、あんな愚図どもみーんな解雇してやるのに」

 舌打ちせんばかりの態度でそう呟いてから、シャローネ様は再びこちらを睨みつける。顔立ちが美しいため、怒りをあらわにされるとひどく迫力があった。

「聖女なんて、結局金持ちに買われるための売女と同じじゃない。癒しの力って、男にしか作用しないものなのかしら」
「そ、そのようなことは――」
「どうだか。どうやってあのアーサー様を手玉に取ったのかは知らないけど、いい気にはならないことね。わたしがアーサー様の妻になったら、お前みたいな薄汚い人間は真っ先に追い出してあげる――いいえ、わたしに恥をかかせたんですもの。死んだ方がマシっていう目に遭わせてあげるんだから」

 毒の滴るような口ぶりでそう告げたシャローネ様は、それからすぐにどこかへ行ってしまった。
 突然のことに呆気に取られていた私だが、我に返って使用人の方を見る――倒れ伏した男性の元に駆け寄ると、様子を見ていてくれた侍女が申し訳なさそうに頭を下げた。

「この方はどうされたんですか?」
「その……シャローネ様に突き飛ばされて、調度品に頭をぶつけてしまい……」
「そうですか――わかりました。酷い外傷はないようなので、私が治療しますね」

 頭を打ちつけて起き上がれないとのことだったが、これくらいならば私の力で治せるはずだ。
 うずくまる男性の患部に手を当てて治療を始めようとすると、侍女は慌てて私を止めようとした。

「聖女様のお手を煩わせるわけには……!」
「大丈夫。これくらいなら――それに、怪我をした人を助けるのが私の役割です。シャローネ様が怒っていらした原因は、私なのでしょう?」

 そう尋ねると、侍女は口をきゅっと引き結んで俯いてしまった。
 ……やはり、原因はこちらにあるようだ。恐らく私がこの屋敷に連れてこられることがなければ、わざわざ彼女が乗り込んでくることもなかったのだろう。

「アーサー様は、ご自分にも他人にも非常に厳しいお方で――幼い頃から決められていた婚約者のシャローネ様とも、距離を取られておりました」

 確かに、あの二人が仲良く並んでいるところが想像できない。
 顔立ちは二人とも美しく、無言で寄り添われていると非常にお似合いだと思うが――如何せんアーサー様もなかなかに苛烈な性格をしている。

「ぅ、っ……」
「大丈夫ですか? ……意識ははっきりしているみたいですね」

 伏していた使用人の男性が、にわかに身じろぎをする。
 どうやら治療はうまくいったようだ。

「少し休ませてあげてください。少なくとも今日一日は、無理に体を動かしたりなどしないように」
「ありがとうございます……ですが、聖女様はどうしてここに?」

 ようやく動けるようになった使用人にしっかり休むよう告げてから、本来の目的を思い出す。

「じ、実は、お水をもらいに来たんです」

 喉の渇きのことをすっかり忘れてしまっていたが、思い出すとそれがまた蘇ってくる。
 すると、侍女の方がにっこりと微笑んで水差しを受け取ってくれた。

「それでしたら、お部屋にお持ちしますね。……その、ありがとうございます」

 深々と頭を下げられて、なんとも言えないような心地になった。
 そもそも私がここにいなければ、先ほどの彼が傷つけられるようなこともなかったのだ。

(私がこの屋敷にいると、こういうことが起きてしまう――)

 シャローネ様のことだって、アーサー様は理解しているだろう。或いは、愛人以下の道具のような存在をわざわざ知らせる必要はないと思ったのかもしれない。
 とぼとぼと部屋に戻りながら、私は重い息を吐いた。
 私はこのまま、ずっとこの屋敷で飼い殺されるのだろうか。そもそもシャローネ様がアーサー様と結婚したら、この身はどうなってしまうのだろう。

(教会に戻るの? ……戻ることなんて、できるのかな)

 一度買われた聖女がどうなったのかは、よくわからない。
 貴族の夫人となることもあれば、愛人として囲われることもあると聞く――けれど、その先のことは誰も教えてくれなかった。
 静かな部屋の中でただ黙って過ごしていると、ややあって先ほどの侍女が顔を出してくれた。
 手には冷たい水をなみなみと注いだ水差しと、小さな花束が添えられている。

「お水をお持ちいたしました。それとこれは――お心の慰めになるかはわかりませんが」
「あ、ありがとうございます……」

 小さな花束は、決して華美なものではない。
 けれど、小さく白い花が束になって咲いているのは、確かに見ていて心が慰められる。

「何かありましたら、すぐにお申し付けください。……先ほどの者も、大分体調がよくなってきたと申しておりました」
「本当ですか? よかった……」

 頭を打ったのでやはり安静にしていなければならないが、気分を悪くしていないのならば上出来だ。
 ほっと胸をなでおろして侍女にお礼を言うと、彼女は頭を下げて部屋から出ていった。
 もらった小さな花束に視線を落として、そこでようやく人心地ついたような気持ちになる。――なんというか、起こった出来事が嵐に遭遇したかのように怒涛の連続だった。
 今日はもう静かに過ごしていたい……そんな私の考えは、やがて近づいてくる乱暴な軍靴の音によって踏みにじられることになった。

「グレイス――扉を開けろ」

 普段は私を呼び出し、部屋に訪れることのないアーサー様の声が聞こえた。
 荒々しい靴音も相まって、なにか良くないことが起きるような予感が頭をもたげてくる。

「は……い、いかがなさいましたか」
「……シャローネがこの屋敷を訪ねたと聞いた。お前に聞きたいことがある」

 鋭い口調で命令されて、体を竦めながら扉を開ける。
 すると、昼間治療を行った使用人の男性が身を小さくしてアーサー様の後ろに立っていた。

「シャローネ様、ですか」

 ずかずかと部屋の中に入ってきたアーサー様は、部屋の椅子に腰かけるとその長い足を組んで私を睨みつけてくる。
 どうやら屋敷の人間が、彼のいない間に来訪者があったことを伝えたらしい。

「はい……その、お会いいたしました」
「なぜこの部屋から出た。この部屋から出ずとも不自由がないようにしていたが――使用人が職務を怠慢したということか?」
「ち、違います! その、水差しの水を全て飲んでしまって……水をくむくらいなら、一人でできると思って」

 謂れのない罪で使用人が叱責されるのは避けたい。慌てて言葉を返すと、アーサー様は心底不機嫌そうに眉を寄せる。

「その――婚約者様、なのですよね?」
「父上が決めた相手だ。口喧しく居丈高で、昔から性格が壊滅的に合わん」

 それもそうだろう、と喉まで出かかった言葉を、なんとか飲み下す。
 結局連れてこられた使用人は、犬の子を散らすように手を振ったアーサー様によって持ち場へ戻らされてしまったが――私は彼の前から逃げることはできない。
 銀色の瞳でまっすぐに射貫かれて、まるで今から異端審問にでもかけられるかのような気持ちになってしまう。

「あの女のことだ。どうせお前にも突っかかってきたんだろう」
「いえ、その……シャローネ様のお立場上、仕方がないことだとは思います」
「なぜ言い返さなかった。使用人たちから話は聞いたぞ――言われるがままに言葉を飲み込み、ただ罵倒を受け入れただけだとな」

 言い返せと言われても、シャローネ様からしてみれば私はポッと出てきた貧民出身の居候だ。

「なにも……あの方はなにも、間違ったことは仰っていませんでした」

 諦めたように首を振ると、アーサー様はチッと低く舌打ちをした。

「シャローネのことはもういい。あの女の処遇はこちらで決める――そろそろ父上も俺も、あれには手を焼いていたところだ。……だが、お前への質問はもう一つある」

 腕を掴まれ、強く引き寄せられたのはその時だ。
 ともすれば唇が重なってしまいそうなほどの至近距離で、彼は私から一切目をそらさずに言葉をつづけた。

「これは何の真似だ」
「は――なに、とは」
「このようなものを、俺はお前に渡していない。……あの花束は誰からもらったと聞いている」

 それまで釘付けだった彼の視線が、すっと横にそれる。
 つられるように視線をずらすと、そこには昼間もらい受けた小さな花束がちょこんと置かれていた。

「これは……」
「誰がお前に懸想をしている? 外の人間と会うことを許可してはいないから――この屋敷の者か」
「ち、違います! その……心の慰めにと、頂いただけです。私が部屋で暇をしているのだと思ったのでしょう」

 この場合、なんと言ったら正解だったのだろう。
 アーサー様の眉間の皺はどんどん深くなり、ギリ、と奥歯を噛む音が聞こえた。

「名前を言え。誰がお前に花を贈った――俺以外の誰が、お前に」

 低い、地を這うような声。
 力強く命令されるのとは違う、絞り出すようなその声はどこか苦しげだった。
 だけど私も、そのように言われては心が頑なになる。あの侍女は、私が置かれている状況を理解し憐れんでくれたのだ。

「言いたくない、です」
「――そうか。あくまでその者を庇うと……いいだろう。それならば俺にも考えがある」

 頑ななのは、アーサー様も同じだった。
 じっと私の目を見つめたまま、腕を掴んで離さない――それをぐっと引かれたかと思うと、体がベッドに投げ出された。

「お前が一体誰のものなのかを、しっかりと思い出させてやる必要がありそうだ」

 しっかりとベッドに縫い留められ、体をよじっても彼の腕から逃げ出すことはできない。
 逃がさないというのなら折檻でもすればいいのに、頬に触れるアーサー様の手は泣きたくなるほどに優しかった。

「もうどうすればいいのかがわからない――呪いのようだな、この疼きは」

 ぎゅっと自分の胸元に手を当てたアーサー様が、血を吐くような声を出す。
 なぜ――何故私の力が彼には効かないのか、その理由は私自身にもよくわからない。アーサー様がその傷を治したいという意思は伝わってくるのに、それこそ呪いのように塞がらないままだ。

「……お前の力を、信じていないわけではない。現にお前はあの日、あの刀傷をほとんど治してみせたのだから」

 困惑したような声を共に、唇を奪われる。
 最初は触れるだけのくちづけを繰り返されたかと思うと、唇の合わせ目を舌でなぞられた。請うようなその動きに、私もまた胸の奥が痛くなる。

「ぁ、んん……♡ふ、ぁっ……♡♡」

 キス一つで、体が震えてしまう。
 自分の体が、日を追うごとにアーサー様に作り替えられていくような心地さえ覚えていた。触れられるだけ、くちづけをされるだけで、陶然とした熱に体を苛まれてしまう。
 ドレスを簡単に脱がされた私は、これから与えられる甘やかな凌辱にほんのりと期待を覚えていた。

「グレイス、腕を出せ。……両腕だ」
「……?」

 ちゅ、と音を立てて唇が離れると、アーサー様はおもむろにそのようなことを言い出した。
 言われるがまま両腕を突き出すと、彼はそれを一つにまとめ上げてしまう。
 両腕で胸を挟み、柔らかいふくらみを強調するような形で腕を固定したアーサー様は、そのままご自分が身に着けていたベルトでそれを縛り上げてきた。

「っあ……な、なにを――ッく……♡」
「縛られただけで感じているのか? 声に愉悦が滲んでいるようだが」

 低い声で艶めかしくなじられ、体の芯が熱くなるのがわかった。
 酷い言葉を掛けられているのに、どうしてだかアーサー様にそう言われると震えを感じるほどの愉悦を覚えてしまう。

「や……ぁ、は、放してくださ……ッあ♡」
「許可できんな。今日は――このまま抱かれろ。淫らな格好で俺に媚び、喘いでみせるがいい」

 胸の谷間を強調するかのような姿勢を強要されて、羞恥で顔が熱くなる。
 けれど、アーサー様はそんなことをお構いなしに再び咥内をまさぐり、溢れてきた唾液を嚥下する。
 ごくっ♡と音を立てて唾液を飲み込まれるたびに、上下する喉仏が悩ましい。
 大きな手のひらはわざと胸には触れず、にわかに濡れ始めた秘裂をなぞり上げた。

「んぁ♡っ……は、ぁあっ……♡♡」

 くぷんっ♡と突き立てられた指先も、よく慣らされた蜜孔は簡単に飲み込んでしまう。すぐにもう一本指が挿し入れられて、バラバラと全く違う動きを見せた。

「ぁくぅ♡♡あ♡んひ、ぃ♡♡や♡やらぁ……♡♡や゛♡ッああ♡」
「嫌だという割に、自分から腰をくねらせているだろう。――どこに触れてほしい?」

 冷たい言葉の中に、そうして彼の側から歩み寄るような言葉を混ぜられると、途端に感覚がマヒしてしまう。
 ぞわぞわと背筋を駆け上ってくる倒錯的な愉悦が、私の唇から欲望を引きずり出してきた。

「ぁ――い、いつもの♡いつもいじめてくださってる――ッあ、ンんっ♡♡そ、こ♡そこれふ、ぅっ♡♡♡ぉ゛♡おひっ♡♡しょこ♡♡グレイスの弱いところ♡指でいじめてくだ、さ……♡♡♡」

 ぢゅぽ♡ぢゅぷぢゅぷっ♡♡ぬ゛ぷぅっ♡♡ぐぽ♡ぐぽ♡♡ぬぷんっ♡♡♡
 長い指先でぐぽぐぽ♡と膣内をかき混ぜられて、大量の淫蜜が溢れ出してくる。
 まるで洪水を起こしたかのようなその場所をいいだけ攪拌し終えると、アーサー様はゆっくりと指を引き抜いてきた。

「ひ、ぐっ♡♡ぉ゛、ッ……♡♡♡」
「名残惜しそうに絡みついてくるな……? やはり酷くされるのが好きなのか、あるいは快楽そのものが癖になったのか」
「ッひ♡♡♡」

 抜き取られた指先は私の愛蜜でたっぷりと濡れそぼっている。
 その濡れた指先で、アーサー様は勃起してきたクリトリスを押し潰した。

「ぁ♡♡や♡やらっ♡♡♡ぉ゛ッ♡やめ――♡クリトリス♡い、いじめちゃ……♡♡」
「なんだ、触れられるのは嫌か?」

 強すぎる快楽に首を横に振ると、アーサー様は一時的にその手を止めてくれた。
 快感の波が一瞬引いて、ようやく息をつくことができる――そう思ったのも束の間、彼は勃ち上がった淫芽に顔を寄せ、ぬ゛る~~~♡♡とその根元から先端までを舌で舐り上げた。

「あ゛、ぉ゛ッ♡♡♡や♡やめ♡♡ッあ゛♡アーサーさま♡やだ♡♡やだやだやだぁっ♡♡♡クリトリス舐めないで♡♡ぉ゛ッ♡咥えちゃらめ♡♡♡それ♡♡♡それされたらすぐ――♡♡♡」

 ぢううぅぅっ♡♡ぢゅるるっ♡♡ぢゅぱ♡ぢゅ♡♡♡ぢゅ~~~♡♡
 きつく――体が逃げられないように太腿を押さえながら、手心を加えずにクリトリスを吸い上げられる。
 頭の中でバチッ♡と火花が散るような音がして、世界が明滅を繰り返した。

「ぉ゛ぎゅ、ッ♡♡♡」

 大げさなまでに腰を跳ねさせて絶頂を極めた私を、アーサー様はなお解放してはくれない。
 大人の男性の力でしっかりと太腿を押さえつけられると私も逃げることができなくて、ひたすら淫芽を吸い上げられる。

「ほ♡♡ぉ゛ッ♡♡らぇ♡あ♡♡アーサー、しゃま♡♡♡だめれふ♡クリトリス♡♡♡唇でしこしこってしないれぇっ♡♡お♡おッ♡♡イく♡♡イくのぉ♡♡♡ッ♡イ♡ぁ、あ゛ッ~~~~♡♡♡」

 がくんっ♡♡がくっ♡♡♡と、まるで打ち上げられた魚のように腰が跳ねると、抑え込めなかった愉悦がどんどんせりあがり――足の間から透明な潮として吹きあがった。

「おひ♡♡ひっ♡♡あ゛♡あっ♡♡♡や、ぁぁ゛ッ♡♡イくイくイく♡♡♡らぇ♡おひお♡♡お潮ぴゅっぴゅってとまんなくなりゅ♡♡♡ぉ゛♡♡ほ、おぉおっ♡♡♡」

 ぷしゃっ♡♡ぷしゅっ♡♡♡と断続的に吹き上がる液体が、アーサー様の白い肌を汚す。
 咎めを受けるかと思ったが、それでも彼はなにも言わず、指で膣内の悦い場所を同時に責め上げてきた。

「や♡やみぇ♡♡まら♡♡イくの怖い♡♡こわいの♡♡♡や、ぁ゛~~~~♡♡♡」
「なにも怖いことなどあるものか。……誰に咎められることがあろう。ここにいるのは俺とお前だけ。――俺が許す。いくらでもイけ」

 ぢゅうぅっ♡♡とクリトリスを吸われて、またイってしまう――♡♡
 何度も何度も繰り返して絶頂に導かれ、シーツをずぶぬれにしてしまうほどに潮を吹いた私は、いつの間にかぐったりとベッドに倒れこんでしまう。
 それでも拘束された胸はそのまま――先端はジンジンと疼いて仕方がないのに、その場所だけには触れてもらえない。

「あ、ぁふ……♡♡ん゛♡ふぁ……♡♡」
「随分と蕩けた表情を見せてくれるようになったな。……だが音を上げるのはまだ早い。お前はまだ、自分の務めを果たしていないぞ」
「ぁ、え……♡♡」

 ずる……♡と取り出されたおちんぽに、目が釘付けになる。
 隆々としていて、血管がバキバキに張り巡らされた長尺勃起おちんぽ――アーサー様のそれを目にした瞬間に、下腹部が痛いほどにきゅんきゅんと疼く。

「ぁ……♡♡ま、ひぇ……♡♡♡だめ♡今それだめです……♡♡いまおちんぽ挿入れられたら♡わ、わたし――私壊れ、ぇ゛ッ……♡♡」

 はっ♡はっ♡♡と獣のような荒い呼吸を繰り返すと、頭上でアーサー様が笑った気配がした。
 滅多に笑うことがない人なので、本当に珍しい――そう思って顔を上げると、そのまま唇を食まれて咥内を貪るように蹂躙される。

「んむぅ♡♡ん゛っ♡ぢゅるっ♡♡ちゅ♡♡ちゅぱっ……♡♡♡んん……♡♡」

 キスだけで、おまんこからとぷっ♡とぷっ♡♡と愛蜜が湧き出てくる。
 幾度も絶頂を繰り返して快楽に屈服してしまった私の体がどうすればより悦ぶのか――アーサー様は、それを私自身よりもよく理解しているようだった。

「ふ、ぁっ……♡アーサー、さま――♡だめ♡だめです、ぅっ……♡♡」
「――拒むことは、許可していない。いいか、よく聞けグレイス」

 ねっとりとした色気を孕んだ声で囁かれて、肩が跳ねる。
 鼓膜が甘く痺れて、それだけであえかな声が唇からこぼれた。けれどアーサー様は、そんな私の耳元になおも囁きかけてきた。

「なにがあろうと、俺はお前を逃がすつもりはない。……諦めて、俺だけを見ていろ」

 むぢゅぅっ♡♡とおまんこにおちんぽの先端を押し当てられたかと思うと、一気に突き立てられる――たっぷりと蕩かされた膣内は、喜悦に震えながらも難なくその長大な肉棒を受け入れた。

「ほ、ぉお゛ッ……♡♡おひ♡おちんぽ♡♡アーサー様のおちんぽぉ、ッ……♡♡」
「そうだ――誰がお前を抱いているのかを忘れるな。無垢だったお前に、誰がこれほどの快感を教え込み……娼婦のように喘ぎ果てるほどの愉悦を叩きこんだのか」

 ぐぽっ♡♡ぐぽんっ♡♡と力強く奥を突き上げられて、また何度も軽イキを繰り返してしまう。
 一突きごとに頭が真っ白になっていって、特に弱い場所を突かれると再びぷしぷしと潮を噴き上げながら、何度もいじらしく雄茎を締め付けてしまう。

「ほぁ♡♡お゛ッ♡♡♡お゛♡むぃ♡♡無理ぃ♡それ♡それらめぇ♡♡♡奥の気持ちいいところ♡♡おちんぽごちゅごちゅってしないれぇ♡♡♡」

 ばちゅんっ♡♡♡ごちゅ♡♡ぱんっ♡ぱんっ♡♡ぱんっ♡♡♡
 肌と肌がぶつかる音が聞こえるたびに、ぷしゃっ♡ぷしゅっ♡♡と淫らな潮を吹きだしてしまう――唯一触れてもらえない胸の先端だけがどうしてももどかしく、身を捩ると逃げるなとばかりに体重をかけられた。

「お゛、ぉ゛ッ……♡♡♡」
「いいか、グレイス。たとえ誰が何と言おうとも、お前は俺のものだ。この屋敷から出ることは絶対に許さん――」

 誓え、と低く唸られて、最奥をぐりぐりぐり♡♡と刺激される。

「今ここで誓うんだ。決して、俺の目の届かぬ場所にはいかない――この屋敷から出ていかないと、誓え」

 ぬ゛ぱっ♡♡ぬ゛ぱんっ♡♡ぬぢゅっ♡ぬ゛ぷ♡♡ぐぽ♡ぐぽっ♡♡♡
 深い場所をたっぷりと蹂躙されて、頭の中で何度も星が散る。
 深く、抉るような抽送は先ほどの激しいものとは違い、頭の芯そのものを揺さぶられているような感覚を覚えさせた。

「は、ぇ゛ッ……♡♡ち、誓う♡誓いまひゅ♡♡♡いきませんから♡行きませんから許して♡♡♡どこにも――どこにもいか、ぁ゛ッ♡♡あっ♡あ♡だめ♡♡ピストンどんどん速くなっちゃ♡♡♡ほ♡ぉ゛おっ♡♡♡」

 上出来だと言わんばかりに、どんどんその速度が上がっていく。
 ぐっと身をかがめたアーサー様に舌を吸われて、体が大きく跳ねた。
 ……戒められたままのこの体勢では、彼を抱きしめることもできない。

「ぁ、んむ♡♡ん――はっ♡♡ゃ、ぁあっ……♡♡」

 どちゅっ♡♡どちゅっ♡♡と深く最奥を抉りながら、アーサー様はそれまで触れてこなかった乳首を思い切り抓り上げた。
 ぎゅっ♡ぎゅっ♡♡と緩急をつけてその場所を刺激されると、おまんこがぎちぎちっ……♡♡と肉棒を締め付ける。

「ほ、ぉ゛ッ……♡♡あ♡だめだめだめっ♡♡♡乳首つねっちゃ、ぁああっ♡♡」
「ッ――締めすぎだ、この……」

 アーサー様がぐっと息をのんだかと思うと、目蓋の裏がバチンッ♡と弾けた。

「ッぁ゛♡♡♡や♡ッあぅ、うっ……♡♡♡」

 どぷっ♡♡びゅっ♡♡♡びゅるるるっ♡♡ぶちゅっ♡♡ぬ゛、ぽっ♡♡
 たっぷりと膣奥に精液を吐きだされて、体の震えが止まらない。
 腕の戒めを解いたアーサー様は、ぴったりと体を密着させて――今度は後ろから、柔らかく胸を持ち上げ始める。

「あ……待って、くだ――ン、んんっ……♡♡」

 ごぷっ♡と溢れ出してくる精液の感覚すらも心地好くて、いけないと思っているのに身を委ねてしまう。
 ――結局その日も、明け方まで彼の腕から逃れることはできなかった。
 おっぱいも、おまんこも――お尻までたっぷりと調教された私は、結局昼過ぎになるまでベッドから動くことができなかった。

● ● ●

「ん、っ……」

 体が重たい。
 目を開けると、そこはいつも通りの静かな自室が広がっていた。

「あ……お、起こしてしまいましたか? 申し訳ございません」
「……いえ、大丈夫。少しぼんやりしていて……」

 部屋の中では、侍女が換気を行ってくれていた。
 冷たい水が飲みたいというと、彼女はすぐにそれを用意してくれる――一人で水差しが運ばれてくるのを待っていると、なんだか屋敷の中が騒がしい。

「聖女様、こちらを……どうかなさいましたか?」
「いえ……なんだか少し、屋敷が騒がしいと思って」

 厳格な性格のアーサー様は、静謐を好んでいる。
 使用人たちにもその考えはよく浸透しているようで、屋敷の中はいつも静かだった。

「それが、その……なんでもリッター峠で、また野盗の被害があったらしく――その件でアーサー様が、朝からこちらで職務を。後ほど王太子殿下の元に出向かれるとのことですが――」
「リッター峠で? ……先日、アーサー様たちが野盗を撃退したはずでは」
「はい……ただ、やはり残党が未だに悪さをしているとかで。教会からも聖女様が派遣されずに、民が疲弊していると嘆願書が届いたのです」

 侍女の言葉を聞いて、血の気が引いていくような心地になった。
 ――そういえば、神官長様も言っていた。リッター峠には他の聖女が行きたがらず、そのために私が癒し手として派遣されたのだと。

「……では、私が」
「そ、それはなりません! アーサー様より、聖女様の身の安全を確保することを最優先としろとの命令を受けております。教会側にも、きっと働きかけをしてくださっている頃でしょうし……」

 侍女の言葉に、私は明確な意思を持って首を横に振った。
 恐らく、教会側は聖女の派遣を行わないだろう。

「今から申請をしても、時間がかかるだけです。……アーサー様が王太子殿下の元に向かう時間帯はわかりますか?」
「え? ……ちゅ、昼食をとられたので、恐らくもう少しされたら――」
「わかりました。その――なにか乗り物を用意してもらえませんか? アーサー様が出た後で、リッター峠に向かいます」

 そう言うと、侍女は驚いた顔をしながらもおずおずと口を開いた。

「伯爵家のキャリッジは目立ちますが、荷馬車でしたらあまり怪しまれることはないかと……ただ、乗り心地については……」
「ありがとう……! 乗り心地なんて気にしないわ。目的の場所に到着さえすればそれでいいもの」

 侍女の心遣いに感謝をして、私はアーサー様が屋敷を発つのを待った。
 じっと窓の近くで外を眺めていると、やがて黒毛の馬が屋敷の門をくぐっていく。

「あ――」

 その瞬間、アーサー様がちらりとこちらを振り返った。
 数人の軍人を引き連れたアーサー様は、馬に乗ったままこちらを振り向いて動きを止めると、じっとこちらを見つめてくる。

「……ぁ、っと」

 もしかして、私のしようとしたことを見透かされているんじゃないだろうか――そんな気持ちになったが、彼は軽く手を上げると、すぐに屋敷の門から外に出て行ってしまった。

(もしかして……見送りをしたって、思われてる……?)

 屋敷からどうにかして出ていこうと企てている身なので、まっすぐにこちらを見つめられると申し訳ないような気持ちになってくる。
 とはいえ、彼の背中が遠ざかっていくにつれてその罪悪感も薄れていった。外に出るなと厳命されているが、事の重大さはアーサー様だってわかっているはずだ。
 叱責は、帰ってきてから甘んじて受ける。
 そう決意した私は、そっと屋敷の裏口から外に出た。侍女が手配してくれたのか、そこにはすでに一台の荷馬車が止まっている。
 その馬車に乗り込んでしばらく――リッター峠に到着した私は、以前訪れた時に怪我人を運び込んでいた建物の中へと足を踏み入れた。

「……あれ?」

 癒し手が足りないというから、前のように重傷者から軽傷者まででごった返しているのかと思いきや――建物の中には数人の男性がいたが、どう見ても怪我をしているような見た目ではない。

「アンタが聖女様かい?」
「え、えぇ……リッター峠で怪我人が出たと聞いて、ここにやってきました。あの、もしかして――どこか、怪我をしているのですか?」

 体格のいい男性たちは、なぜかこちらにじりじりと距離を詰めてくる。
 やはり怪我をしている気配はないし、なにかがおかしい――そう思って背後を振り返ると、バタンッ! と音を立てて扉が閉まった。

「な、っ――」
「いやいや、騙すみてぇなコトしちまって悪いな、聖女様。ただこっちも仕事なもんでな。おい、外見張り立ってろ」

 立ち上がった男性が、扉のすぐそばに立っている別の男性に指示を出す。
 指示を出された男性の顔は、どこかで見覚えがあるものだ。

「あ……なたは」
「……申し訳ありません、聖女様」

 この村での治療を行った際に、傷の手当てを行った人だ。
 一体何があったのかと声を掛けようとすると、彼は足早に建物を出て行ってしまう。

「一体何が――説明をしてください」
「説明って言ってもなぁ、俺たちも金で雇われただけなんですよ? 聖女を誘拐すりゃ、向こう三年分の税金を免除してくれるんだってよ。この辺りじゃ農作物が野盗に荒されて、今年一年食いつなぐのだってやっとなんだ」
「税金の、免除……?」

 そんなことを、一般の人間がおいそれと決められるはずがない。

「こっちだって生活がかかってんだ。アンタさえ差し出せば、俺たちは――お、ぁ? 何だこの揺れ……っと」

 ぐにゃ、と地面が歪んだのはその時だった。
 最初は眩暈でもしたのかと思ったのだが、足元から聞こえるメリメリとなにかがきしむような音に違和感を覚える。

「な――」

 ゴシャ、とかグシャ、とかいうすさまじい音が聞こえたその瞬間、地面から無数の――岩の槍が飛び出してきて床板におびただしい量の穴をあけていく。

(これは――魔術による攻撃……?)

 身を守ろうとした私はとっさのことにバランスを崩し、そのまま床にたたきつけられそうになった。
 自然現象ではまずありえない攻撃的な魔術に身を貫かれる想像をしながら、襲い来る痛みを待つ。

(あ、れ……?)

 だが、予想していた痛みはいつまで経ってもやってくることはなかった。代わりに腕に触れたのは、人間の体によく似た温もりだ。

「ぅ、……?」
「グレイス、おい! 目を覚ませ――」
「あ、あれ? どうして、アーサー様がここに……」

 鋭い声で名前を呼ばれて、反射的に目を開ける。
 王都にいるはずのアーサー様が、私のことを抱えている――にわかに信じられないような状況に目を瞬かせていると、彼は剣の色をした瞳に明らかな焦燥感を浮かべていた。

「まさか、今の土槍で怪我をしたのか……? 決してお前には当てないつもりだったが……」
「い、いえ……怪我はしておりません。ただ、少し驚いて……どうしてここに?」
「どうしてここにはこちらの台詞だ! 勝手に屋敷から抜け出し、挙句このような……」

 アーサー様の、薄い唇がわなないている。
 土ぼこりを上げて崩れ去った建物の中心では、私を閉じ込めようとした男の人が腰を抜かしてしまっていた。

「――心配、した。お前の姿がないと、使用人が……先日お前が治療を行った、あの使用人が俺を呼びに来たんだ。部屋付きの侍女に問いただしたら――お前が、リッター峠に向かったと」

 微かに声を震わせながら私を抱えているアーサー様は、深く息を吐くと首を何度か横に振った。
 地に足がつかない状態で抱えられている私は、ぽかんと口を開けたまま彼を見つめている。

「で、でも……リッター峠にはまだ野盗が残っているって」
「残党狩りは完了している。その件で、裏から糸を引いていた貴族の対応に追われていた」

 王太子殿下に呼び出しを受けたのも、その貴族の処遇を相談するためだったのだという。
 だが、もっと驚いたのは――私をここに呼び寄せた、その黒幕の正体だった。

「シャローネが……シャローネが侍女を脅して、お前をここに呼び寄せたらしい。自分が俺の妻になったら、聖女に情けをかける人間は全て排斥すると言っていたらしいな。……馬鹿げたことを」
「は、シャ、シャローネ様が……?」

 キッとこちらを睨みつけてくるシャローネ様の姿を思い出して、背筋が震える。
 屋敷に訪れてからたった数日で、そんなことができるなんて――改めて、この国における貴族の力の強さに震えが起こった。

「でもどうして、その……シャローネ様が、私をここへ?」
「……それはここで話すべきことではない。少し時間はかかるが、屋敷に戻るぞ。子細はそこで話す」

 半壊した建物の中を見回して、アーサー様は軽く息を吐いた。
 腰を抜かしたままの男性に一瞥くれたアーサー様は、私を抱えたまま彼の方にずかずかと近づいていく。

「おい」
「は、はいっ!」
「貴様らの現状は、我らも理解している。生産した作物を荒されては税金が払えぬというのも道理だ。……この件については国王陛下より、向こう五年の減税並びに一年間の免税の勅令が下るはずだ」

 淡々と、事務的な口調ではあったが――それは恐らくこの村にとって、最も寛大な措置であるはずだ。
 そもそもこの件もあって、アーサー様は何度か王太子殿下とともに国王陛下と折衝を行っていたらしい。

「布令を敷くまでに半年かかるところを、無理を通させてもらった。それゆえに諸事の連絡が滞ったことには謝罪する」
「い、いえっ! そんな、貴族様に頭を下げていただくなんて……」

 先ほどまでの威勢はどこへやら、恐縮しきりでぺこぺこと頭を下げる男性に、アーサー様は言葉を続ける。

「だが」

 ――いつも通りの、地の底から響くような声だった。

「聖女を拉致監禁しようとした、貴様らの罪は相応のものと知れ。酌量の余地はあれど、その罪科が消えてなくなることはない」

 厳しい口調でそう告げたアーサー様に、男性はぺたんとへたり込んだまま肩を落とした。
 村を荒され、やむを得ない事情もあったのだろう。
 自分たちが生きるためにどうすればいいのかを天秤にかけた時、私は彼らの選択を咎めることはできなかった。

(あ、そうだ……さっきの人……)

 仕事は終えたと言わんばかりのアーサー様が再び歩き始めた時、ふともう一人の男性のことが頭をよぎる。

「待って……アーサー様。下ろしていただいていいですか?」
「……どうした」

 そっと地面に足を下ろしてもらって、きょろきょろと辺りを見回す。
 すると、扉だったであろう木片の前で顔を青くしている男性を見つけた。間違いなく、先ほどの見張りの男性だ。

「少しだけ用が――そこのあなた。その……怪我は、もう大丈夫ですか? どこか痛んだり、傷口が開くことは」

 木片を踏まないように注意しながら近づくと、その男性はふるふると首を振る。

「あ、ありません。聖女様に治療をしていただいた時から、一度も……」
「それならよかった。傷がしっかりと塞がったかどうかが気がかりでしたから」

 アーサー様の胸が疼くというので、私の力が枯渇してしまったんじゃないかとも思っていたのだ。
 彼の傷が塞がったというのなら、その心配はないのだろう。

「……行くぞ。早馬を連れてきたが、どう見積もっても屋敷に着くころには夕方になる」
「は、はい! 今行きます……!」

 崩れ落ちて嗚咽を上げるその人のことを一度だけ見て、もう振り返らない。
 アーサー様は自分が連れてきた部下に手短に指示を出すと、私とともに黒いキャリッジに乗り込んだ。

「馬じゃ、ないんですか」
「お前を連れて遠乗りができるものか。……お前をここに連れてきた御者も捕らえた。ブラックウェル公爵家に連なる者が、揃いも揃ってシャローネの言いなりとは――嘆かわしいを通り越して情けない」

 チッと低く舌打ちをしたアーサー様の表情は、地獄の門番のように恐ろしかった。多分、夜中に見たら私も泣いてしまう。

「でもそれは……仕方がないことかと思います。だって、シャローネ様はじきに屋敷の奥様になるお方ですし――」
「却下だ」
「ま、またそんな……幼い頃から決められていた婚約者だと、あなたが仰ったじゃありませんか」
「だから、こっちから願い下げた。あろうことかシャローネは、件の野盗の黒幕に話を持ち掛けたそうだ。未だ聖女の身分であるお前を害そうとしたことも問題だが、よりによって俺が追っていた貴族にこの情報を漏らすとは」

 そう吐き捨てるアーサー様の言葉が理解できずに首をかしげると、彼はぎゅっと眉を寄せて答えてくれた。基本的に、こちらから質問をすれば彼はしっかりと話をしてくれる。

「は……それは、どういう……」
「野盗に峠を襲わせた貴族と、シャローネが通じていた。あの女の両親も、この話は聞き及んでいなかったようだがな。……今まで多少のことには目をつぶってきたが、これは国家に対する背信である。ゆえに、父上……ブラックウェル公爵から正式に破談の話が行くはずだ」

 相手の家の面目もあるから、これまでは極力穏便な対応をしてきたというアーサー様の父上――ブラックウェル公爵閣下も、これにはかなり怒り心頭であるらしい。
 王家の藩屏、国きっての重臣でもあるブラックウェル公爵は、彼女の行ったことを許すことができなかったという。

「元々あの女を妻にするなど、俺の性格では無理な話だ。この機会に父上と兄上に、お前を正式な妻に迎える話をするつもりでいる」
「は、はぁ……それは――って、えぇっ!? そ、そんなの……わ、私は貧民出身ですし……」
「生まれがどうあろうと、教会出身の聖女ならば問題はあるまい。生まれた時の身分が問題だというなら……殿下に掛け合ってみるか。これまでの功労として、断絶した男爵位くらいならば融通してもらえるだろう」

 とんでもないことを言い出したアーサー様に、こちらの血の気が引いていく。
 だって、それこそ彼の性格上――治療の道具であるはずの私に、いきなりこんな言葉をかけてくるなんて、天と地がひっくり返ってもあり得ないはずだ。

「……いや、違うな。順序が違う――俺は真っ先に、お前に謝罪をしなければならなかった」

 呆気に取られている私を見つめて、アーサー様はハッとしたように口元を押さえた。
 常に鋭い眼光を携えている彼の表情が、にわかに陰る。

「俺はそもそも教会が嫌いだ」
「ぞ、存じております……」
「抹香臭い神官の爺どもも、金持ちに買われることしか頭にない聖女もなにもかも疎ましく思っている」

 淡々とそう言われると、教会所属の聖女としては身をつまされる思いだ。
 しかも彼の言っていることを、私はありもしない噂だと否定することができないのだ。

「だが――お前は違うだろう。的確に怪我人の状態を見極めて行動をし、あまつさえ……自分を傷つけようとした人間まで気に掛ける。俺はそれが、なんとも理解しがたかったが」

 目を伏せたアーサー様が、ぎゅっと私の手を握ってきた。
 少し汗ばんだその手のひらが、彼がどれほど急いて私を迎えに来たのかを教えてくれる。

「お前が目の前から消えて、ようやく気付いた。全く愚か極まりない――俺は、ずっと」

 吐息が震えていた。
 苦しげに、けれど懸命に言葉を選ぼうとするその姿は強い懊悩を感じさせ、同時に彼の人間らしい一面を映していく。
 ……何故だか無性に、アーサー様のことを抱きしめたくなった。

「お前に触れたいと思っていた。……その理由がわからなかったんだ。一人の人間にこれほど執着したことなんて、今まで一度もなかった」

 揺れる馬車の中で、私たちはただ静かに見つめあっていた。
 周囲の人間と同じように接しようとして、それができずにいたアーサー様のもどかしさを――今になってみれば、そういうことかと理解することができる。

「許せ、グレイス。俺は幾度も……お前の心を傷つけただろう」

 絞り出すような言葉には、隠しきれない悔恨が滲んでいた。
 ここに来るまで、私を助けてくれるまでにどれほどの苦しみが彼の心を苛んだのかと思うと、ぎゅっと胸が締め付けられるようだった。

「許す、なんて」

 頭を下げたアーサー様のことを、そっと抱きしめてみる。一度肩が跳ねたが、アーサー様は特にそれを咎めはしなかった。

「謝るのは私の方です。……あなたのことを、一つも理解しようとしていなかった。どれほどあなたが苦しんでいたのかだって……」

 その苦しみを少しでも理解していたら、こんな風にお互いの気持ちがこじれることだってなかったはずだ。
 強く抱き合ったまま、私たちはしばらくの間言葉を交わさずにいた。触れあった熱が、何よりも雄弁にお互いの気持ちを教えてくれるような気がした。

● ● ●

 その日の夜――無事に屋敷へと戻ってきた私は、アーサー様の命令でお医者様の診察を受けた。
 とはいえ、特になにか酷いことをされたわけでもないし、外傷もどこにもない。
 部屋に戻って食事を摂り終えると、王宮で事の報告を行ってきたアーサー様が私の元にやってきた。

「……なんだと?」
「で、ですから――お屋敷の方々への処罰は、行わないでいただきたいのです」
「お前を屋敷から出した挙句に危険な目に遭わせた。それで咎めを受けないとなれば、他の使用人たちに示しがつかん」

 なにがあったのかと思うと、使用人の処遇についての話がしたいのだという。
 私にリッター峠での嘘の情報を流した侍女と私を連れだした御者に罰を与えるというので、私は思わず彼にしがみついた。

「外に出たいというのは、私が自分の意思で言ったことです。それに、シャローネ様のお言葉に彼らが逆らうということはできなかったはず――ど、どうしてもと仰るなら、私を罰してください」
「グレイス……お前、自分が言っている言葉の意味を理解しているのか?」
「十分に」

 そもそも、シャローネ様からの言葉に彼女たちが逆らえるはずがない。
 外に出させてくれと頼んだのはこちらだし、それで二人が叱責を受けるのはどうしても良心が痛む。
 そう言うと、アーサー様はフンと華を鳴らして腕組みをして――それから、ゆっくりと寝台に腰を掛けた。

「……いいだろう。お前の顔に免じて使用人たちへの処罰はなしとする。だが、そこまで言うのならばお前には彼らの代わりに罰を受けてもらおう」

 剣の色の瞳がまっすぐにこちらを射抜いてくる。
 一体どんな罰を受けるのかと思っていたが、なぜかアーサー様は唇の端を吊り上げ、こちらに手を差し出してきた。

「此方へ」
「……えぇと、罰を受けるのでは」
「そうだ。軽率に屋敷から出ていこうとしたお前には仕置きをせねばなるまい。使用人の分まで懲罰を受けるというからには、相応を覚悟してもらわなければ」

 そっと近づくと、彼はグイっと私の手を掴み、

「今日はこのまま――一切の拒絶をせずに、俺に抱かれてもらう」
「……は」
「『だめ』も『いや』もナシだ。今宵一晩、お前のすべてで俺を受け止めてもらおうか」

 ――それは、普段と大して変わらないのではないだろうか。
 とはいえ、真面目そうに引き締めた口元を微かにわななかせているアーサー様に、それを言うのは些か荷が重い。
 それに今日は――なんだか私も、彼に縋りたい気分だった。

「わ、わかりました。その……処罰ですから、甘んじて受け止めます」
「今度の約束は違えるなよ」

 出ていかないと約束しながらあっさり屋敷を抜け出した自分を咎めているのか、語尾にはかすかな力がこもっていた。

「お前、男物の服は脱がせられるか?」
「……多分、大丈夫です。治療の際に、服を脱ぐのをお手伝いしたことがあるので」

 そう答えると、アーサー様はにわかに唇を尖らせてから「やってみろ」と命じてくる。あまりにぶっきらぼうな口調に苦笑しながらシャツのボタンを外していくと、そこからは白い裸体が現れた。

「ん、と……こう、ですか」

 パサリと音を立ててシャツが寝台の上に落ちる。
 正直ここから先は自分でしてほしかったが――どうやら彼は、まだ満足していない様子だ。

「上だけを脱がせてなにができる」

 相変わらずぶっきらぼうな口調はそのままに、声に微かに滲む愉悦は普段の冷たい響きとはまるで逆だった。

「ぁ、う……そうです、けど」

 治療でしたことがあるとは答えたが、やはり治療行為と褥での行為というのは違うものらしい。
 羞恥で死にそうになりながら彼のベルトに手をかけると、つい先日それで縛り上げられたことを思い出してしまう。

(い、いや……あの時のこと、思い出しちゃう……♡)

 ぞわぞわと腰の辺りが微かに疼くような気がして、背筋が震えた。
 あの時は不本意な緊縛だったのに、教え込まれた快楽が徐々に頭をもたげてくる。

「どうした?」
「な、なんでも――ひぁっ♡」

 微かに震える指先でベルトに手をかけると、アーサー様が私のドレスを紐解いていく。
 長い指先で着衣をあっという間に解かれた私は、腰に波打つ布を纏わせてようやくベルトを外すことができた。

「ん、っ……」
「目元が潤んでいるな。また縛られたいのか?」
「そうじゃ、なくて……っ、し、縛られるのは嫌です。自由が利かなくなるのは……好きじゃありません」

 苦し紛れの言葉を、アーサー様がどうとらえたのかはわからない。
 ただ、彼は一言「そうか」と呟くと、それきりなにも言わなかった。

「あの……こ、このまま触って、いいですか」
「好きにしろ。いちいち許可を得る必要はない――お前のものだ」

 低く笑う声が、お腹の奥の方をそわそわさせてくる。言葉の意味を理解してしまうとその疼きはどんどん大きくなっていって、骨ばった指で背中をなぞられた瞬間に熱が小さく爆ぜる。

「ッん、ぁ♡ぁ♡やぁ、ンっ♡♡♡」
「いいな――今宵だけでいい。俺を拒むな」

 念押しとばかりに繰り返される言葉に、こくこくと頷く。
 今宵だけだなんて言わない。苦しみながら私を求めてくれたアーサー様のことを、できるだけ受け止めたいと思う。

「だいじょ、ぶで……♡ぁ♡でも、さ、触られたら――んァっ♡♡」

 すりすりと背筋を撫でられただけで、甘い痺れが襲ってくる。
 緊張がほぐれたこともあってか、普段より微弱な刺激でもおかしくなりそうなほどに感じてしまっている。

「あ、さ――様……♡きす……キス、してください……♡♡」

 小さく懇願すると、アーサー様は驚いたように目を見開いた。
 だがそれも一瞬で、すっと目を細めたアーサー様にそのまま唇を奪われる。

「ん、ぁ……♡んぅ♡む、ぅうっ……♡♡」

 ちゅっ♡ちゅるっ♡♡ぢゅ、ぱ♡ちゅぅううっ♡♡♡
 挿し込まれる舌先に自分から舌を絡めると、頭の中が真っ白になってしまうほどに気持ちがいい。
 普段のキスはもっと荒々しいような気がしたが、今日のそれはいつにもまして深く、絡みつくように私の理性を犯してきた。

「ぁ……♡ッは♡ぁんっ……♡♡」

 くちづけ一つで、情けないほどに蕩けてしまう。
 互いの唇から繋がった透明な糸が切れると、それを合図にしたかのように愛蜜がぽたっ♡と滴ってきた。
 既に下着すら取り払われた私の体は、キス一つで簡単に欲情してしまう。
 ――そうなるようにアーサー様に教え込まれたのだと理解した瞬間、ぶわっと一気に体が熱くなった。

「グレイス」

 短く名前を呼ばれただけで、知覚してしまう。
 私はこの人のものだ――この屋敷に連れてこられて体を暴かれた日、いや、もっと前……出会った時から、この人のものになる宿命だったに違いない。

「ここから先、お前は俺にどうしてほしい? 口に出して言ってみろ。……全て叶えてやる」

 剣の瞳が、胸を貫く。
 薄い唇で愛撫され、低い声で名前を呼ばれるだけで本能が彼に屈服したがっている。
 だけど、貪欲な私の体は――より強い快感を、より甘美な交合を求めてしまっていた。

「――ぁ、の」

 貞淑であれ、静謐であると教え込まれてきた価値観を、彼の手でぐちゃぐちゃに破壊される。
 淫らに喘ぎ、求めてしまっていいのだと告げる視線に堪えきれず、

「もっと……もっと、いっぱい触って――グレイスの、弱いところを……♡♡おまんこも♡クリトリスも……♡いっぱいいじめて、気持ちよくしてほしい、です……♡♡♡」

 みっともなく上ずった声を、アーサー様は笑わなかった。
 彼は私の腰を抱き寄せ、上機嫌に目を細める――今日一日で、今まで見たことのなかった彼の表情をいくつも見た気がする。

「――存分に」
「ひゃ、ぁぅっ♡♡」

 それまで背筋を優しく撫でていた手が、するすると腰のあたりに降りてくる。
 しっかりと腰を抱かれたかと思うと、空いたもう片方の手が足の間に潜り込んできた。

「んぁ♡ひ、ぅうっ♡♡♡ぁんっ♡あ……♡♡」
「既に十分なほど濡れているな? 普段もこれくらい従順であってくれればうれしいが」

 くぷっ♡と音を立てて指先を飲み込んだ蜜壺が、嬉しそうにその指を食い締めている。
 幾度となく暴かれたその場所は、難なく二本目の指先をも飲み込んでしまった。

「ぁ♡あっ♡♡んく、ぅうっ……♡♡は、すご……♡きもち♡きもちい、ぃ……♡♡」

 腰のあたりから生み出される快感に、あっという間に体から力が抜けていく。
 立っていられなくなった私の体を支えてくれたアーサー様は、私を自らの膝の上に座らせ――そのまま突き立てた指先をぐぷぐぷっ♡と動かし始めた。

「ん゛ぁ♡♡ふぁ、ぁンっ♡♡♡お腹、あつっ……♡♡♡」

 ぐぽぐぽとおまんこをかき混ぜられるたびに、淫らな蜜がぽたっ♡ぽたっ♡♡と滴ってくる。
 その音すらも鼓膜を犯し、ぼんやりとした心地のままで快感を覚えてしまうのだ。

「は、ぁんんっ……♡や゛、ぁあっ♡♡」

 ぐちゅっ♡と音を立て、弱い場所を探り当てられる。
 彼は私が感じる場所をしっかりと覚えているようで、的確にその場所を押し込まれると腰がガクガクと震えて余計に力が抜けていった。

「ぁ゛♡ぁえっ♡♡♡あ♡しょこ♡そこすきな、とこぉ……♡♡♡」
「知っている。お前の体のことならばどこだって――そういえば、クリトリスにも触れてほしいんだったな?」

 クッと喉を鳴らしたアーサー様が親指でぐりぃっ♡と淫芯を押し潰したのはその時だった。

「ッお、ぁ゛ッ♡♡♡」

 ぐりゅっ♡♡ちゅこっ♡♡♡ぐりぐりぐりっ♡♡
 親指で何度もクリトリスを押し潰されて、一気に快感の波濤が押し寄せる――♡
 体内の熱を高めに高められた状態で与えられる喜悦は私の体では処理しきれず、恥ずかしい透明な液体が飛沫を上げてアーサー様の体を汚していく。

「は、ぇっ♡♡ひゃ♡ごめ♡ごめんなひゃ♡♡ぁぅ♡♡♡イッ♡イっちゃった♡♡お潮吹いて♡♡♡ぉ゛、おっ♡♡」
「これくらいで謝るな――言っておくが、これきりで終わるつもりはないぞ。そうだな……これまでお前を不安にさせた咎を、俺も受けるとしよう」
「ふ、ぇ……♡」

 くぽぉ……♡と指先がゆっくりと抜き取られたかと思うと、アーサー様は濡れそぼったその指を自らの口元へと運び――ぢゅるぢゅると音を立てて、淫蜜ごと啜り始めた。

「ぅ、っ……♡♡」

 わざとらしく唾液と愛蜜が絡む音を聞かされて、どんどん呼吸が浅くなっていく。
 それと同時に、水っぽいその音が交合の時の音を彷彿とさせ――子宮が物欲しげにきゅんっ♡と疼いた。

「お前から許可を得るまでは、その体を犯さない。たっぷりと愛でて、お前の胎内に精を注ぎたいところだが――これは俺への罰でもあるからな。許可を得るまでは我慢しよう」

 ぐにゅんっ♡♡とクリトリスを弄いながら、さも残念そうな口ぶりでそんなことを言う。
 強烈な絶頂を迎えた私の体は、より強く快楽を受容するようになってしまって、彼の言葉に反論することもできなかった。

「んぉ♡♡ぉ゛ッ♡♡♡あ♡イ、っくぅ♡♡んひ♡ひ、ぃいっ♡♡♡イく♡イ、きゅぅうっ♡♡お、ぉひぃっ♡♡あ♡あっ♡♡♡クリトリスきもちいい♡♡♡アーサーさま♡また♡♡♡また気持ちいいのキちゃうの♡♡♡」

 ぷしゃぁっ♡♡と音を立て、腰をヘコヘコと情けなく振りながら、自分で気持ちいいところを擦ってもらおうと体をよじってしまう。

「ぁ゛ッ♡♡イくの♡♡♡またきひゃぅうっ♡♡♡ぉ゛ッ♡お゛ッ♡♡♡クリちゃんぐりぐりされるの♡好きになっちゃうぅっ♡♡♡」

 イっても、イっても、的確な淫芽への刺激は止まらない。
 それどころか彼は、力の入らなくなった私の体をしっかりと抱えたまま、尖りを見せる胸の先端にもぢゅるぢゅるっ♡と吸い付き始めた。
 前歯でコリコリコリっ♡と乳首を扱かれながら吸い付かれ、体が跳ねたタイミングでクリトリスを押し潰される――種類の異なる刺激から逃れられないまま、私は何度目かもわからない絶頂を迎えてしまった。

「ほ、ぁ゛あっ♡♡や゛♡♡ッあ、ぁんっ♡♡♡」

 強烈な快楽から、どうあがいても逃げられない――♡♡
 お腹の奥が熱いのに、今にでもいっぱいおまんこ突いてほしいのに、一番欲しいところにだけ熱が与えられない状態に、次第に耐え切れなくなってくる。

「はぅっ♡♡ぁ♡ま、ひぇ……♡♡アーサーさま♡♡♡それっ♡も、だめぇっ♡♡♡ぁううっ♡ッひ♡そっちじゃないの♡♡や、ぁっ♡♡♡」
「こっちじゃない、とは? では俺はどうすればいい……お前の口で、答えてみせてくれ」

 駄目押しとばかりにぢゅっ♡♡と乳首を吸われて、意識が一瞬白んでいく。
 早く――はやく、いつもみたいに犯されたい。
 あの長くておっきいおちんぽで、子宮口ガン突きされたい……♡
 頭の中がそれでいっぱいになった私は、ぎゅっとアーサー様の腕を掴んで首を振った。

「クリトリス、だけじゃなくてぇっ……♡♡お、おまんこ♡♡グレイスのおまんこ、いっぱいにしてほしい、です……♡♡♡アーサー様のおちんぽで、いっぱい犯されたくて♡♡ずっとお腹の奥、苦しいからぁっ……♡♡」

 触れなくてもわかるほど――下穿きのその下から布地を押し上げている熱塊に視線を落とすと、アーサー様がゴクリと喉を鳴らした。
 甘くねだるようにふくらみの頂点に触れると、じわりと先走りが滲む感覚がある。

「グレイスの、おまんこを……♡アーサー様で、いっぱいにして――子宮いっぱいになるまで、精液びゅっびゅってして、お、犯してください……♡♡♡」
「あぁ――そうだ。それでいい」

 ぐっと腰を抱き寄せられて、取り出された熱いおちんぽに肌がひたんっ♡と触れる。
 それだけでも軽くイきそうになってしまうのを堪えていると、アーサー様は自分の膝の上に乗るようにと指示を出してきた。

「ッは♡♡ぁ、っ♡♡♡」

 はふはふと荒い息をこぼしながら膝を跨ぐと、そそり勃つ切っ先が涎を垂らす蜜口に宛がわれた。

「っぁ゛、あぁっ……♡♡♡」

 ぬ゛、ぷぅっ♡♡♡ずぬ゛っ♡ごりゅっ♡♡ずっ♡♡ずちゅっ♡♡♡
 抱き合った体勢のままで打ち込まれる肉楔に、おまんこがきゅぅん♡と喜んで絡みつく。
 頭の中の、大切な場所が焼き切れてしまうんじゃないかと思うほどの愉悦の中で、私は必死にアーサー様の頭を掻き抱いた。

「ッひ♡お゛♡お、ぉっ……♡♡」

 お腹の中、アーサー様でいっぱいになってる……♡
 トロトロおまんこぐっぽぐっぽ犯されて、気持ちよすぎてチン媚び止まらない♡♡

「は、ぁあっ……♡♡」
「いきなりこれだけ締め付けるとは――随分と待ちわびていたようだな……!」
「ッん゛♡♡んぅ~~~~♡♡♡」

 ごちゅっ♡♡と最奥を突き上げられて、背中が弓なりに反りかえる。
 奥を突かれただけでイってしまった私の腰をしっかりと抱えたまま、アーサー様は何度も力強く腰を打ちつけてきた。

「あェっ♡♡ん゛♡は♡♡あーさ、しゃまぁ♡♡♡」

 いつもは組み敷かれるようなセックスを繰り返している体は、与えられる新しい快感に早くも屈してしまう。
 ぬ゛ろぉ♡とおちんぽを引き抜かれるたびにうねうねと媚肉が絡みついて、逃したくないと言わんばかりにいじらしく蠢動している。
 頭の中でバチンッ♡と音がして、気持ちいいこと以外なにも考えられなくなってしまいそうだ。

「ふ、ぁっ♡♡好き♡ぁ♡これイイの♡♡ん゛っ♡♡♡んぁあっ♡♡」

 ばちゅっ♡ばちゅんっ♡♡♡ぬ゛こぬ゛こぬ゛こっ♡♡♡どちゅぅっ♡♡♡
 ピストンにも、徐々に余裕がなくなっていくのがわかる。
 白い肌を微かに紅くしたアーサー様の様子は明らかに普段より興奮していて、あの厳格な人をこんな風にしているのが自分だと思ったら、途端に幸せな気持ちが込み上げてくる。

「ッ、グレイス――」

 低い――甘くて、蕩けてしまいそうな声。
 鼓膜を犯すようなその声に呼応するように私の方から唇を重ね合わせて、下を絡めた。
 体すべてが性感帯になってしまったかのように心地好い交合は、私にさらなる欲をもたらしてくる。
(もっと――もっと触れたい……♡もっと触ってほしい……♡♡)
 自分がそのようなことを望める身の上ではないとわかっているはずなのに、心がどうしようもなく彼のことを求めてしまう。
 愛情をまっすぐにぶつけられることがこれほど心地好いことだったのかというのを知ってしまって、より貪欲になってしまった。

「は♡♡ぁんっ♡♡もっと――もっとくださ、っ……♡」
「いくらでも――お前が望むだけ、与えてやろう」

 ちゅ♡ちゅぅっ♡♡と触れるだけのキスを繰り返して、アーサー様が囁く。
 彼は私の手をとると、しっとりと汗ばんだ自らの胸にその手を当てた。
 とくとくと繰り返される規則的な鼓動に、どこかで安堵する自分がいた。

「だから――ここで、二度と違えぬ約束を誓ってくれ。その体、その心、その魂に至るまで……神ではなく、この俺にすべてを預けると」

 真摯な視線で射貫かれ、心臓を鷲掴みにされたような心地に陥る。
 これまで私の誓いは、全て神に捧げるものだった――聖女として生きてきた私にとって、アーサー様への誓いはこれまで大切に抱いてきたものを手放すことと同義だ。

(でも、私は……)

 小さく息をのんで、口を開く。
 最初から、どこかでわかっていた――決して私を傷つけないように触れてくる不器用な愛し方も、それを理解できないと嘆く生真面目さも……彼を形作るそれらを、全て愛しいと思う。

「ぁ♡♡ちか、ぃ――ますぅっ♡グレイスは♡これからずーっと♡ずーっとアーサーさまのものです♡♡♡もう約束、っ♡破りませんから♡♡アーサー様のお嫁さんになります♡♡♡だからっ……だからぁっ♡」

 すり……♡と下腹部に触れると、どこまでアーサー様のおちんぽが入っているのかがよくわかる。
 深くまで突き立てられた肉楔に途方もない愛しさを感じながら、私は彼の腰にそっと自分の足を絡めた。

「アーサー様の精液……♡お腹の奥にいっぱい注いでください♡♡♡私のことを、アーサー様のものにして……♡♡♡」
「――言ったな」
「は、お゛っ♡♡♡」

 どちゅっ♡♡♡と下から力強い突き上げを受けて、一瞬呼吸が止まる。
 それでも彼に求められるのが嬉しくて、私はぎゅっとその体に抱き着いた。

「は♡♡んぁっ♡♡お゛く、ぅっ♡♡♡んぁ♡や゛、ぁあっ♡♡♡」

 愛しい人をどこまでも受け止める愉悦は、今まで感じてきた快感の比ではない。 汗ばんだ体同士を絡め合いながら、獣のようにお互いを求めあう――それが、今の私の何よりの幸せだった。

「ぁ♡♡あ、んんっ♡♡♡だして♡♡アーサーさま♡グレースの子宮にいっぱい♡♡♡特濃精液で種付けしてくらひゃ♡♡♡ん゛ぁ♡♡♡あ♡ァあっ♡♡」

 ぐりぐりぐり♡と奥を刺激され、またイってしまう――それとほとんど同時に、アーサー様が切なげに眉を寄せた。

「――グレイス、ッ」
「は、ぁぇっ……♡♡♡ふ♡ぅうっ♡♡あ♡しゅご♡♡♡お腹の中♡♡アーサー様のせーえきいっぱいぃ……♡♡♡」

 どぷぅっ♡♡♡ぶびゅっ♡びゅっ♡♡♡びゅるるるるっ♡♡どぽっ♡♡どぷぅっ♡♡♡
 低く名前を呼ばれたかと思ったその瞬間、たっぷりの精液がお腹の中に注ぎ込まれる――♡♡

「ンぁ♡♡も、っとぉ♡もっといっぱい♡♡アーサーさま――♡♡」

 ぶぴゅっ♡♡と音を立てておちんぽが引き抜かれても、体の熱は未だその疼きを止めてくれない。
 甘ったるく懇願すると、アーサー様は私の体をそのまま寝台に押し倒した。
 吐精したはずのおちんぽが少しずつ熱を取り戻していく様子に、思わず喉の渇きを覚えてしまう。

「あぁ――お前が満足するまで、幾度でも」

 情欲の滲んだその声に呼応するようにして、きゅぅ♡と甘く下腹部が疼いたのだった。