24/08/03 新しい短編を追加しました。ファンタジー+1

温和で姉想いの優秀な義弟に激重執着クリ調教で快楽堕ちさせられました♡

Skebでご依頼いただいた小説です。
病弱な貴族の一人娘が、血のつながらない義弟に激重愛情を抱かれて溺愛、更にクリ調教されるお話

「エリファ、お前に縁談がきているんだ」

 にこやかな表情を浮かべた父に、私はとうとうこの瞬間が来てしまったかと内心で息を吐いた。
 ……せめて、弟がここにいなかったのが救いだ。優しい彼は、きっと私の結婚に酷く反対するだろう。これまでも何度か上がっていた縁談に対しては、優秀な弟が全て却下の意見を出していた。

「相手はメイドロフ伯爵――今年で五十歳になるが、既に子どもが二人いる。鉱山を所有しているし、お前にとっても悪くない縁談になるはずだ」
「そう、ですか。えぇ……お父様がお決めになったことでしたら、私は……」

 オルディエント侯爵家――私の実家は、代々王宮の財政を担当している文官の家柄だ。
 そんな家に生まれた私は生来体が弱く、子どもを産める可能性は低いと早い段階で医師に告げられていた。
 ……貴族の令嬢にとって、子を産めないというのは致命的な「欠陥」である。家のために嫁ぐことが当然とされているこの国で、私はその勤めを果たすこともできない。

「その、クリスは……クリスハートには、このことは……」
「あの子には直前に伝えるつもりだ。お前のことになると、クリスはいつも頑固になるからな」

 お父様はそう笑って、クリスにもいい縁談はないものかと執事と話し始めた。

「そろそろクリスにも身を固めてほしい頃合いだが――あの子は未だに、自分の出自のことを気にしているようなんだ。なにも心配はいらないと言っているんだが、自分に貴族の令嬢との婚姻は恐れ多いと言い出してな」

 困ったものだと眉を寄せる父の様子に、私は弟ができた日のことを思い出す。
 ――私の可愛いクリスハート。彼はある日、父に連れられてこの屋敷へとやってきた。

(雪の降る、寒い朝だったっけ)

 オルディエント侯爵家は、跡継ぎに恵まれなかった。
 私を産んだ母は若くして亡くなってしまい、そんな母を愛していた父は決して後妻を娶ろうとはしなかった。
 だが、家の存続のためには跡継ぎが必要――そこで、父は一人の少年を孤児院から引き取ってきたのだ。
 その少年こそがクリスハートだった。
 表向きには父方の遠縁から養子縁組したということになっているが、実際は身寄りのない孤児であったらしい。それでも彼は優秀で、王太子殿下の学友を務めた後はその右腕として手腕を振るっている。
 侯爵家の跡取りとして申し分ない才覚と技能を身に着けた、文武両道の自慢の弟――彼のおかげで、先ごろ体を壊した父も随分と安心しているようだった。

「それではお父様、私はこれで」
「あぁ。それではメイドロフ伯爵には、私から連絡を入れておこう」
「……ありがとうございます」

 頭を下げて、呼び出されていた父の部屋を後にする。
 婚約の話自体は、それほど悪いものではない。恐らく父も、敢えて成人した跡継ぎがいる家柄を選んでくれたのだろう。
 私がたとえ子を産めなくとも、肩身の狭い思いをすることがないように――私のような欠陥品の娘にも、父はいつだって優しかった。

「結婚、かぁ」

 そんな未来は早い段階で諦めていたので、なんとなく不思議な気持ちだ。
 昔からことあるごとに熱を出し、部屋から出られない日々を送っていた。
 そんな私を弟はいつも気にかけてくれたし、成人した今になっても嫁き遅れた姉のことをとても大切にしてくれる。

(そろそろクリスも自由にならなくちゃ……それに、こんな私でも必要としてくれるなら)

 二十五歳で初婚というのは、この国の貴族としてはかなりの晩婚だ。
 未亡人になった貴族が再婚するような年齢のため、元々少なかった私への縁談はもっと少なくなった。
 それに比べて、二歳年下のクリスはこれから爆発的に縁談が増える時期だ。
 王立の最高学府を王太子殿下に次いだ次席で卒業――更にその執務補佐官として成果を上げている彼に、結婚を申し込んでくる家はとても多い。
 けれど、父が言ったように……彼は未だ、自分の出自に不安を抱いているらしい。

(優しくて頭がいい子だから、その分色々なことを考えてしまうんだろうけど……)

 クリスは侯爵家の次期当主だ。
 出自のことを今更蒸し返してくる人間はきっといないだろうし、そうなっても父があれこれと根回しをしているはず。
 となると――やはり彼が気がかりだというのは、私のことなのだろう。
 病弱な私がいつまでも屋敷にいるから、彼は自由になることができない。大切で大好きな弟のためにも、私は他家へ嫁ぐ必要があるのだ。

「姉さん、ただいま」
「クリス……! あなた、お仕事はどうしたの?」

 考え事をしながら廊下を歩いていると、ふと目の前が暗くなった。
 何事かと顔を上げると、そこにはさらりとした金髪を結い束ねた弟――クリスハートが立っていた。

「殿下が狐狩りに行きたいっていうから、少し早めに切り上げてきたんだ。相手は僕じゃなくてガレアッツァ公爵令嬢なんだけど……お前は邪魔だって追い返されてしまったよ」
「そうだったの……お帰りなさい、クリス」

 すらりとした長身に、眩いブロンドの髪、それと思慮深い緑色の瞳。
 弟は、およそ外見において完璧と思えるほどに美しかった。

「クリスが狐狩りに同行したら、周囲一面狩りつくしてしまいそうだもの」
「いくら僕でもそんなことはしないよ。ちゃんと殿下の分は残しておくし、見せ場も用意する。でも多分、殿下はそういうところもお見通しなんだろうな」

 残念だと笑うクリスは、私に縁談がきていることを知らない。
 そして、私がそれを了承したことも――恐らくしばらくしてから父が告げるのだろうけれど、こちらからそれを言うことはしないと今決めた。

「そうだ、姉さん。お土産があるんだ……王都で今流行ってる物語を揃えたから、姉さんにプレゼントしたくて」
「も、物語?」
「そう。王宮に出入りしてる吟遊詩人がね、こっそり教えてくれたんだ。道ならぬ恋に落ちた騎士と姫君の物語――父さんに見つかったら怒られそうだから、こっそり用意したんだよ」

 クスクスと笑うクリスは、私の前でだけは年よりもずっと幼い仕草を見せる。
 普段は職務で気を張り詰めているからかもしれないが、家族として私に気を許してくれているのだろう。

「もう、クリスったら……でもありがとう。せっかくだから大切に読ませてもらうわ」
「あぁ――今度お茶でも飲みながら、感想を聞かせてよ。女の人が好む物語って、どういうものかよくわからないから……」

 笑う時に白い肌を微かに赤らめる弟が、私は可愛くて仕方がない。
 こんな彼を、早く自由にしてあげたい。
 私から解放されて、彼もまた素敵な奥さんと幸せな家庭を築いてほしかった。

「そうね……今度また、二人でお茶をしましょう」

 にっこりと微笑み返すと、クリスは花が咲くように笑う。
 こんな幸せな時間がいつまでも続けばいいのに――不相応なそんな願いにぎゅっと蓋をして、私もまた彼に笑い返したのだった。

● ● ●

「クリスハート様、ご帰還でございます。……お嬢様、お出迎えはいかがいたしましょうか」
「私も行くわ。それと、あなたはクリスの部屋にハーブティーを用意してあげて……きっと疲れていると思うから、よく眠れるように」
「かしこまりました。すぐに準備を行います」

 結論から言うと、クリスはしばらくの間王宮に缶詰めになっていた。
 なんでも、王太子殿下がとある貴族が薬物売買に加担していることを見抜いたらしい。その証拠と裏取りをするために、クリスは数日間王宮で寝泊まりをしながら仕事を行っていたようだ。

「クリス! お帰りなさい……疲れたでしょう」
「姉さん……ん、ちょっと眠いけど……父さんに報告をしないと」

 ふらふらで帰ってきた弟の目の下には、うっすらとした隈ができていた。
 彼ほどに優秀な人物でも、これほど疲弊することがあるのか。
 若干の驚きを隠せないまま弟に駆け寄ると、彼は眉を下げて困ったように笑った。

「先に休んでからの方がいいんじゃ……」
「でも、父さんはそろそろ領地に向かうだろう? 一応仕事を終わらせたって言っておかないと、きっと心配すると思うんだ。……自慢の息子って、思ってもらいたいしね」

 毎年夏になると、死んだお母様のためにお父様は領地に帰省する――なんとしてでもそれまでに報告を上げたかったというクリスは、ふらついたままお父様が待つ執務室へと向かっていった。

「クリス……」

 彼は、少し頑張りすぎるきらいがある。
 父の後継にふさわしい人間であろうとしているのか、あるいは自分の出自にコンプレックスを抱いているのか――クリスが文武両道でとても優秀な人間であるというのは、周囲が認めている。それなのに、まるで自分を痛めつけるように修練を重ね続けているのだ。

「あれでは体を壊してしまうわ……クリスが倒れたら元も子もないじゃない……」

 姉として、あの子にしてあげられることはなんだろう。
 父の期待を一身に背負い、王太子殿下のために身を粉にして働く弟の姿に胸が痛くなる。

「お嬢様……クリスハート様のご命令で、お嬢様のお部屋にお茶のご用意をさせていただきました。疲れが残っているので、是非お嬢様と語らいたいとのことで」
「クリスがそう言ったの?」

 先ほどハーブティーを用意してほしいと告げた執事が、申し訳なさそうな顔をして声をかけてきた。
 本当ならばすぐにでも休んでほしいけれど、それが弟の頼みだというのなら断れない。それが彼の安らぎに繋がるのなら、少しの間は話を聞いてあげたかった。

「は、はい――」
「わかったわ。部屋で待っているから、クリスとお父様のお話が終わったら、彼を私の部屋に連れてきて」

 最近家で働き始めた若い執事は、深く頭を下げてクリスの元へと向かった。
 自室に戻ると、そこには執事の言葉通りティーセットが用意されている。これからやってくる弟のためにお茶請けも用意してもらい、できるだけ人も遠ざけた。
 普段は私がクリスに頼りっぱなしだ。せめて今日くらいは、静かに彼の話を聞いてあげたい。
 そうしてしばらくすると、控えめに部屋のドアがノックされた。

「姉さん……その、入ってもいい?」
「えぇ、もちろんよ。……お仕事お疲れ様。お茶とお菓子を用意したから、ゆっくりしてちょうだい」

 心なしか、自慢の金髪もくすんで見える。
 疲れ切った表情を浮かべたクリスは、扉を開くとするりと部屋の中に入ってきた。
 やっぱり、仕事がそれほど忙しかったのだろう。横顔は悲壮感が漂っていて、明らかに尋常ではない雰囲気だ。

「お疲れ様。……お仕事、本当に大変だったのね」
「あぁ――仕事はね、ある程度の目途はつけたんだ。いくつかの貴族が薬物の流通にかかわってて……殿下がそれを突き止めなかったら、きっとひどいことになっていたと思う」

 二人分のお茶をティーポットからカップに注ぎ、私は彼の話に聞き入った。
 クリスの話は半分ほどしか理解できなかったけれど、とにかくその薬物というものが危険であるらしい。

「一時的に体の自由を奪う薬なんだ。少量を医療目的で使うのは問題ないけど、これがまた大量に見つかって……明らかに医療目的じゃないから摘発対象になったんだけど、貴族が絡むと色々厄介だ」
「そ、そうなの?」
「あぁ。家同士の利権が絡んでるからね。でもそれも、無事に摘発できた――本当に疲れたよ」

 困ったように笑いながら息を吐くクリスの話を聞きながら、私もティーカップに注いだお茶を飲む。
 心が落ち着くように、優しい香りのハーブティーを選んでもらったのだ。きっと彼も気に入るだろう。

「クリス、あなた少し頑張りすぎじゃない?」
「そうかな? これくらいじゃまだまだだよ……姉さんや父さんに恥はかかせられないし、殿下の補佐を務めるなら今よりもっと頑張らなくちゃ」
「そんなことを言って、体を壊したらどうするの? それに、あなたは私にとって――今でも十分自慢の弟よ」

 真面目で誠実だから、クリスはいつも無茶をしてしまう。
 最高学府への入学を決めた時だって、遅くまで勉強に励んでいた。
 侯爵家の人間としてしっかり振舞おうと、剣術や行儀作法まで徹底的に叩き込まれた彼に、これ以上の無理をさせたくはなかった。

「……じゃあどうして、突然結婚なんて決めたの?」
「え?」
「父さんから聞いたよ。……姉さんはもうすぐ、メイドロフ伯爵と婚約をして家を出るって」

 ふと、顔を上げたクリス――その表情は、いつも浮かべている柔らかな笑顔の面影すらなかった。
 深い緑色の瞳でじっとこちらを見つめている弟の表情は、まるで別人のように冷たい。

「僕がオルディエント侯爵家の当主になれば、姉さんが嫁ぐ必要はないだろう? 体の弱い姉さんが、慣れない環境で無茶をする必要はない。その為に僕は――」
「ま、待ってクリス! 違うの……婚約のことは、私からお父様にお受けするっていう話をしたの」
「どうして? だって、姉さんは……その……」

 悲しげに眉を寄せたクリスの視線が、そっと私のお腹の辺りに下がっていく。
 恐らく彼も、私が子どもを産める体ではないという話は聞いていたのだろう。

「そうね。私はきっと、嫁いだ先で子どもは産めないし……きっとそれを期待されてはいないと思うの。でも、クリスみたいに優秀な人を、いつまでも私の側に縛り付けておくことはできないわ」

 弟はもう二十三歳。王国貴族としてはまだ若いが、娘を結婚させたいという貴族だってたくさんいるだろう。
 無論お父様もそのつもりでいるだろうし――そうなれば、病弱な姉の存在など足手まといにしかならない。

「……足手まとい? 誰が――まさか父さんが、そんなことを姉さんに……」
「違うわ! ……お父様は、私のことをとてもしっかり考えてくれたと思うの」

 きっと、私は幸せになれる。
 お飾りの妻でもいい。どこかの貴族の家でじっとして、いずれ国王の右腕になった弟の姿を遠くから見れるのなら、それでよかった。

「――それで? 姉さんは遠くに行って、僕だけがこの家に残るのか? ……あなたのいないこの家を、僕は継がなければならないのか?」

 それは、今まで一度も聞いたことがないほど冷たい声だった。
 これがあの、優しいクリスのものなのか――そう思えるほどに、まるで別人のような低い声だった。

「クリス……」
「足手まといなんかじゃない。迷惑なんかじゃない……! 僕がなんのためにこんなことを――」

 美しいクリスの顔が、ぐしゃりと歪んだ。
 ――その瞬間に、私の体からふわりと力が抜けていく。

「ぁ、……ク、リス」
「僕があなたを守るよ。他の誰でもない、弟である僕が――姉さんを守らなくちゃ。……初めて会った時に、姉さんがそう言ったんだよ」

 いつもと同じ、柔らかい声。
 それがどことなく遠ざかっていく感覚とともに、温かいなにかが頬に触れた。

(そう、だっけ……初めてクリスに会った日……?)

 確か、あれはひどく寒い冬の日だったはず。
 父に手を引かれてやってきたクリスに、私はなんて言ったんだっけ、

「姉さん。僕の姉さん……他の男に嫁ぐなんて寂しいことを言わないで。あなたを守るためなら、僕はどんなことだってするから――」

 クリスの声が、頭上から聞こえてくる。
 傾いた体を弟が抱き留めてくれたのだと気付くまで、時間はかなりかかった。体の端が痺れて動かないのも、思考がまとまらないのも、その理由がわからない。

「だから、姉さんはなにも心配しなくていいんだ」
「だ、め……わたし、わたしは……」

 回らない舌を懸命に動かそうとすると、残念そうな溜息が聞こえてくる。
 体に浮遊感を覚えたのは、きっとぐったりとした私の体をクリスが持ち上げたからだろう。

「強情だな。……そんなに伯爵家に嫁ぎたかったの? 彼らは王太子殿下のお怒りを買った犯罪者だよ?」
「は、なに……なにを……」
「僕も父さんに聞いて初めて知ったんだ。……姉さんに教えてあげるよ」

 数歩歩いて、柔らかいものが背中に当たる。
 未だぼんやりとした感覚だけれど、少し前よりは大分周囲の状況がわかるようになってきた。
 ――体は、まだうまく動かない。

「メイドロフ伯爵は捕縛された。跡継ぎの息子ともども……件の薬物の流通にかかわっていたみたいなんだ」
「そ、そんな――ぁ、うそ……」
「嘘じゃないよ。僕が捕らえた」

 クリスが言っていることの意味が、あまり理解できない。
 メイドロフ伯爵が捕らえられた……? それも、王太子殿下が捜査していた薬物の件で――一気にもたらされる情報を処理できなくて、何度か瞬きを繰り返す。

「難しいことを考えるのはやめようか。とにかく姉さんは、もう伯爵と結婚なんてしなくていいんだよ」

 柔らかい布――恐らくはベッドだろう――の上に横たえられた私の体は、再び浮遊する。
 クリスが私の体を後ろから抱きしめる形で抱えなおしたのだ。

「クリス……?」
「僕はずっと姉さんと一緒にいるんだ。僕だけが、姉さんのことを守ることができる男なんだよ」

 耳元で囁かれる声は、どことなく甘ったるい響きを孕んでいた。
 まるでいつものクリスのものではないみたい……嫌な予感がして身をよじろうとすると、彼はぐっと私を戒める腕に力を込めた。

「――体、うまく動かないよね。安心して。ほんの少し摂取するくらいなら、体にはそこまで影響を及ぼさないはずだから」
「なに、を……や、クリスっ……」

 冷たい唇が首筋に這っていく。
 やけに緩慢なその動きを知覚して、私はぶるっ……と体を震わせた。
 いけない――このままじゃ、なにかとてもよくないことが起きてしまう。
 くすぐったいような、恐ろしいような、妙な感覚が湧き上がってくるのに、しっかりと体を抱き留められて身動きが取れない。
 指先すら気怠くて動かせない私は、されるがままになるしかない。

「ぁ、ぅうっ……」
「温かい――僕はどうしても体温が低くて、子どもの頃はよく姉さんの部屋で一緒に寝ていたよね。覚えてる? ふわふわのベッドで、家族と一緒に眠るなんて、あの頃の僕には夢みたいだった」

 長くて骨ばった、男らしい手が――ドレスの上からお腹をなぞる。
 だけど、その声には確かに欲情の色が滲んでいた。ゴクリと喉を鳴らす音すら、やけにはっきりと聞こえて寒気が走る。

「遠くになんていかせないよ。もうすぐ僕は侯爵家の当主になる――そうしたら、誰も僕たちのことを邪魔しない。父さんだって、メイドロフ伯爵のことを伝えたら婚約の話はなかったことにするって言ってたし」

 そろりとドレスの裾がめくり上げられて、いよいよ嫌な予感が現実になる。
 ヒュ、と喉を鳴らした私は、唯一自由になる口を使って何度も弟の名前を呼んだ。

「や、やめて! クリス、だめ――こんなこと、っ……」
「どうして? なんで姉さんはそんなに僕のことを拒絶するの……?」
「そんなの……わ、私たちは姉弟で」
「血なんて一滴も繋がってないじゃないか。……姉と弟っていうのは、あくまで対外的な関係性にしか過ぎない」

 彼と出会ってからの十数年、ゆっくりと築き上げてきた関係性が、そんな一言でガラガラと崩れ落ちる。
 いつもは剣を持つ少し乾いた指先が完全に裾を持ち上げるのが直視できなくて、私はふいと目を反らした。

「ん――姉さんの肌は柔らかくて気持ちいいね。温かいし、傷一つない」
「や、だっ……クリス、お願いだから……」

 愛しそうに耳朶を食んでくる弟の体を引きはがそうとしても、どうにもならない。
 カリ、と前歯で耳たぶを噛まれると、妙な痺れが体に走り抜けていった。

「ッあぁ……♡」
「あんまり暴れないで。……父さんが様子を見に来ちゃうかも」

 その言葉に、サッと血の気が引く。
 そうだ――誰も、この部屋で起きていることを感付かせてはいけない。もし誰かに見つかったら、私だけではなくてクリスまで罰を受けてしまう。

(なにか、気の迷いかもしれない――クリスは疲れていて、それで……)

 有望な弟の未来を、私のような出来損ないが潰すわけにはいかない。
 そう思うと、一気に体から力が抜けた。頭上からは嬉しそうに喉を鳴らすクリスが私の顔を覗き込んでいる。

「そう、力を抜いて。僕はなにも姉さんのことをいじめたいわけじゃないんだ。……大好きな姉さんに、いっぱい気持ちよくなってほしいだけなんだから」
「や、ぁあっ……」

 巧みな指先が、ドロワーズを脱がせて下着を簡単に解いてしまう。
 衣擦れの嫌な音とともに、太腿に外気を感じて喉が締まるような感覚を覚えた。

「あ、あっ……♡」
「怯えないで――あれ、でもここ……少し濡れてる? ほら、指でなぞっただけで音が聞こえてくるの……聞こえるかな」

 くちゅ……♡と小さな水音が鼓膜を揺らして、羞恥で顔が熱くなった。
 違う。こんなこと、こんな間違った行為で体が反応するなんて、絶対にあってはいけないことだ。

「違う、のっ……ぁ、やっ♡だめ、クリス、ぅっ……♡♡」

 ドレスの裾に手を突っ込んだクリスが、かすかに湿り気を帯びた淫裂をなぞり始める。
 そろそろと探るような、触れるか触れないかで繰り返される愛撫に、いつしか私の体はびくんっ♡びくんっ♡♡と小刻みに跳ね始めた。

「んぁ♡あっ……♡♡は、ぁん……♡♡」
「あは、すごい……少しずつ気持ちよくなってきてるのかな? まんこどんどん濡れてきたね」

 恥ずかしい言葉を耳元で囁かれると、そこから波状に熱が広がっていく。
 なんとかしてこの行為をやめさせたいのに、いつしか私の腰は揺れ、甘ったるい声が唇からこぼれ落ちた。

「やだ、ぁっ♡あ♡だめ――やめて、クリスハートッ……♡」
「強情だなぁ……そんなに僕に触られるのは嫌? 貴族でもない男に体を触られるのは……」

 違う――違う。そんなこと、一度だって思ったことがない。
 クリスは私の大切な弟だ。背の高さが私のそれを越し、声が低く、華奢だった体つきが成人男性のそれに変わっても――たとえ血が繋がっていなくても、私にとっては大切なたった一人の弟だったのに。

「ちが、ぁっ♡」
「違う? 本当に……? じゃあ、僕が触ってもいいよね……? 姉さんのことをいっぱい気持ちよくして、僕の側から離れられないように――」

 こりゅっ♡と足の間のなにかに触れられたのと、身を焼き焦がすような快感が一気に駆け抜けていったのは、その時だった。

「ッお゛♡♡」
「あ、やっぱり――クリトリス触られるの、気持ちいいんだね? 今イったの、僕にもわかったよ」

 クスクスと笑うクリスが、指先を弄う――その度に、こりっ♡こりゅっ♡♡と何かを押し潰しているのだ。

「ッひ♡く、ぅんんっ♡♡♡あ゛♡ぁんっ♡なにっ……♡ッぁあっ♡」
「なに、って――これ、わかる? 僕が今触ってるところ――女の人が気持ちよくなるためだけにある場所なんだって」

 かりゅっ♡♡くにゅぅ♡♡カリカリカリッ♡♡ぎゅっ♡ぎゅっ♡♡♡
 足の間にある、快感を得るためだけの器官――その場所を執拗に指で転がされたり、摘ままれたりするたびに、私の体には底知れない快楽が身を苛んでいく。

「ほ♡ぉお゛ッ♡♡んぁ♡や、ぁあっ――♡♡」
「こーら、そんなに大きな声出したら、執事が様子見に来ちゃうよ? ……僕は姉さんとなにをしてたって、どんな姿を見られても構わないけど」
「ん゛ぃ、ぃっ……♡♡♡」

 ガクガクガクッ♡♡と腰を揺らしながらも、なんとか唇を食い締める。
 だめ――ここで、誰かが来たら。そうしたらクリスが咎めを受けてしまう……。

「ら、ぇっ……♡クリス♡くりす、ぅ……♡♡」
「一生懸命我慢して可愛いね……♡姉さんがクリいじめられるの好きだって、知らなかったよ」

 微かに呼吸を荒くしたクリスは、私の体をそっと抱え上げてベッドの上にあおむけで寝かせてくれる。
 息をするのも辛いほどの快感にさいなまれた私は、四肢をだらりと弛緩させながらもったりとした部屋の空気を吸い込んだ。

(あたま、くらくらする……♡♡こんなに気持ちいいことがあったなんて――♡)

 未知の領域の快感を与えられ、無防備な私の体はすっかりいうことを聞かなくなってしまった。
 いけないことだとわかっているのに、下腹部がまるで期待するかのようにジンジンと疼きだす。

「は、ぁん……♡♡ん、や――♡」
「大丈夫だよ。今日はずーっと、姉さんのことを気持ちよくしてあげるだけだから……大きく脚広げてみようね。そう、足の形がひし形になるように、膝曲げて……」

 蕩けた脳内に、クリスの声が染み込んでくる。
 私は糸でつられた人形のように彼の言いなりになって、淫らな形に足を開いた。

(私……今、どんな格好してるんだろう♡下着もつけないで、クリスにおまんこ見られちゃってる……♡♡)

 禁忌の行為だと、頭の中では理解している。
 なのに体が――本能が、どうしてもこの先を求めていた。
 もっと触れられたい。気持ちよくなりたい。クリスに――クリスハートに求められたい。頭の中が、どんどんその考えでいっぱいになっていく。

「姉さんは可愛いね……昔から僕のお願いは、なんでも聞いてくれたもんね」
「や、ぁ――」
「お願い、どこにもいかないで……姉さんの側にいる男は僕だけでいいって、そう言って」

 開いたもう片方の手が、私の指を絡めとる。
 いつもひんやりしているクリスの指先がほんのりと温かくなっていることに気付いた私は、なけなしの理性を総動員して首を横に振った。
 こんなことは間違っている。
 姉として、弟の間違いを正してあげなければ――。

「……そう。どうしても僕のことを拒絶するんだね。気持ちいいのに勝てないくせに、変なところは強情っぱりなんだから」

 ひどいな、と小さく呟いたクリスが、ぎしりと音を立てて覆いかぶさってくる。
 その目元には深い悲しみと寂しさ、そして欲望が入り混じった光が宿っていた。

「でもいいよ。姉さんのそんな所だって、僕は愛してる」

 そっと太腿に触れたクリスは、ぐっとその場所を押し込んできた。

「ッん……♡」
「好きなんだ――間違ってることくらいわかってるよ。僕を拾って育ててくれた父さんにも悪いと思ってる。でも、もう自分のことを抑えられない」

 あらわになった恥丘に、クリスはつぅ……と指を這わせる。
 ほんの少し指先が肌を掠めていくだけで、まるで触れられるのを待っていたかのようにその部分がヒクつき始める。

「ん、はぁっ……♡」
「クリトリス勃起してきたね……んっ♡小さくてプリプリしてて、すっごく可愛い♡」

 ちゅ♡ちゅぅっ♡♡と膨らんだ淫芽に吸い付いてきたクリスが、丹念にその場所を舐めしゃぶり始める。
 指先で捏ねまわされた時とは違う、舌先から伝わってくる熱にくらくらと眩暈がした。

「あ、ぁっ♡ひぁ♡♡や、んんっ……♡♡」

 ちゅっ♡ちゅぱっ♡♡♡ぢゅるるるっ♡ぢゅ~~~~~♡♡
 たっぷりと唾液を絡ませた舌が絡みついて、吸い上げられるたびに頭が真っ白になる――♡

「やめ、ぁっ♡クリス……♡♡んぁっ♡きもちっ……♡だめぇ♡んひ、ぃっ♡♡♡」
「弟にクリフェラされるの気持ちいい? 腰ヘコヘコってして……おまんこずーっとくぱくぱしてるね♡ほら……溢れるくらい蜜が滴ってきた。我慢しなくていいんだよ?」
「ん゛、ぃっ♡♡」

 ぢうぅぅっ♡♡♡と強くクリトリスを吸い上げられて、腰が一気に震えてしまう。
 感じちゃいけない――わかっているのに、押し寄せる快感に抗えない……♡

「ぁ、あっ……♡」
「ん、ちゅ♡可愛い勃起クリトリス――姉さんのクリちんぽ、僕がいっぱい気持ちよくしてあげるね……♡」

 ぷちゅぅっ♡♡と音を立てて淫芽をしゃぶられる。
 ねっとりと根元から舐め上げるように舌を動かされるともう駄目で、自分の中で大きくなった熱が爆ぜるのにそう時間はかからなかった。

「ぁひ♡♡あ゛♡ぁ♡クリス♡クリス、それっ……♡あ♡ぁんっ♡♡」
「ん、ふ……ぁ、むぅっ♡」

 跳ねる腰を押さえつけて、クリスは懇ろにその場所を責めたててきた。

「だめ♡あ♡なんか、くるぅっ……♡♡ッひ♡ンっ♡あ、ぁ――♡♡♡」
「あ……もしかしてイきそう? それなら、イく、って言わなくちゃだめだよ。ちゃんと、気持ちよくてクリイキしちゃうって言わないと……」
「ふ、ぇっ……♡♡」

 たっぷりの唾液で濡れ光るクリトリスを、クリスは指でぐっと押し潰した。
 その瞬間、堰き止められていた大量の快感が一気に頭の中へと流れ込む……♡

「あ♡イく♡イくぅっ♡♡♡クリイキ♡イっちゃう♡♡きもち、よくてぇっ……♡♡」
「誰がイかせてくれたのかな? 姉さんのクリトリスをいじめて、気持ちいいのいっぱいにさせたのは?」
「クリス♡♡クリスハートですぅっ♡わたしのっ♡♡私のこといっぱい♡気持ちよくしてくれたのはぁっ♡♡あ゛♡イ、くうぅぅっ♡♡♡」

 とめどない快感と愉悦に、いやらしい質問の答えが口をついてしまう。
 やがて激しい喜悦の波が去ると、私はぐったりしたまま荒い呼吸を繰り返すことしかできなくなってしまった。

「ッふ♡んぅ……♡♡」
「盛大にイっちゃったね――静かにしなくちゃ、って言ったのに」
「ぁ――そん、な……♡私……♡♡」
「大丈夫だよ、そんな顔しないで……できるだけの人払いはしておいたからさ」

 やや乱れた長い金髪をかき上げて、クリスがうっとりするような微笑みを浮かべた。
 一方で私は、下半身だけ着衣を乱された情けない格好で、体を震わせながら横たわることしかできない。

「姉さんにこれだけのことをしてあげられるのは、僕だけだよ。誰よりあなたのことを知ってるんだから――他の男じゃ、こんなことはできない」

 そっと身をかがめたクリスは、私の体に毛布を掛けてから優しく笑う。
 未だ気怠さと、身の内側に残った熱が消えやらない中で、彼は部屋を出ていこうとしていた。

「今日は――このくらいにしておいてあげる。使った薬の効果ももうとっくに切れてるだろうし……もし父さんにこのことを言っても、僕は姉さんを恨んだりしないから」

 クスクス笑う弟の声が、どんどん遠ざかっていく。
 混乱と疲弊にまみれた私は、それを名残惜しく思いながらもずるずると眠りの淵に墜ちていったのだった。

● ● ●

「クリス、エリファのことを頼むぞ」
「はい、父さん。……その、残念なことはありましたが、姉さんはしっかりと僕が守るので」
「お前がそう言ってくれると心強い――エリファ、先日も言ったが、あまり気落ちをしないように」
「……はい」

 数日後、父は所領へと旅立つため馬車に乗っていた。
 お母様の命日が近づいていること、更にオルディエント侯爵領の農繁期が重なっていることもあり、毎年この時期には屋敷を空ける。
 その間は実質クリスがこの屋敷の主となる。お父様としても、ある程度クリスの運営能力を見込んで屋敷を空けているのだろう。

「クリス、お前が私不在の間にうまくこの家を回すことができたら――私はそろそろ、この屋敷をお前に任せようと思うんだ」
「――それは、その……僕でいいんですか?」
「お前だからこそ任せられる。王太子殿下の元で研鑽を積んだお前ならば、このオルディエント侯爵家の運営を任せても誰も文句はないだろう」

 お父様はそう言って、クリスを激励する。
 年齢的にも、そろそろ職務を返上して領地に戻りたいと思っているのかもしれない。お父様も忙しい方ではあるので、お母様が眠る所領の屋敷でゆっくりとしたいという気持ちも、わからないではなかった。

「それに……今のエリファのことを任せられるのもお前だけだ。婚約予定だったメイドロフ伯爵があのようなことになって――」
「はい、それは……申し訳ありません。僕が出過ぎたことをしたせいで」
「お前のせいではないさ。どのみち、そのような家に嫁いでいればエリファが不幸になった。お前は姉を守り切ったんだ。胸を張りなさい」

 申し訳なさそうに目を伏せるクリスの表情を見て、私は言葉を発することができなかった。
 ――違法薬物の流通に携わったメイドロフ伯爵は、正式にその爵位を奪われることになった。
 当然のように私との婚約は解消となったのだが、私が不安に思っているのはそこではなかった。

(クリスと、ほとんど屋敷に二人――)

 あの悪夢のような出来事から数日、クリスは何事もなかったかのように私に接してきた。
 よくできた優しい弟――あまりにも普段と態度が変わらないから、私の方が挙動不審になってしまったほどだ。

「それでは行ってくる――秋口には一度こちらに戻るから、それまで屋敷のことを頼んだぞ、二人とも」
「……はい、お父様。旅のご無事をお祈りしております」

 遠ざかっていく馬車に頭を下げる。
 やがて蹄の音も遠くなったが、どんよりした気持ちは晴れないままだ。

「姉さん、日差しが強くなってきたよ。気分が悪くなったら困るから、早く中に入ろう」
「……え、えぇ」

 優しく手を差し伸べてくれるクリスは、いつもと変わらない。
 どこまでも穏やかで優秀な、私の自慢の弟。血は繋がっていなくても、とても大切な家族。
 そう考えれば考えるほど、なぜか体の芯が熱を帯びる。狂おしいほどの快感と、底知れない期待感が身を焦がしていくのがわかった。

(間違ってる……こんなことを考えるなんて、私は……)

「――姉さん? どうしたの……もしかして、気分が悪い?」
「え? あ、いえ……」

 きょとんとした表情を浮かべたクリスが、慌てて近くに立っていた執事を呼んだ。
 まだ若いその執事は、ちらりと私とクリスの顔を見比べて、そっと頭を下げる。

「君、姉さんを部屋に連れて行ってくれ。それと冷たい飲み物を――カーテンを閉めて、日光が入らないようにしてくれないか」
「かしこまりました。……お、お嬢様、こちらへ」

 てきぱきと指示を出すその姿は、まさしく父が期待を寄せる侯爵家の当主にふさわしい。
 けれど、一方で私はぼんやりとした心地を覚えたままだった。
 彼の指先が、唇が、体に触れるあの感触を思い出してしまう。

「僕も後で様子を見に行く。……くれぐれも、姉さんのことを頼んだよ」

 すれ違いざま、クリスがふとこちらを見つめてくる。
 美しい緑色の瞳が細められると、体の奥底がゾクッ……と震えるのがわかった。

「お、お嬢様、お加減はいかがでしょう……医師を呼んだ方がよろしいでしょうか」
「大丈夫よ。クリスが心配性なだけだから――飲み物だけを置いたら、下がってくれて大丈夫。面倒をかけてしまってごめんなさいね」

 まだ仕事に慣れていないのか、執事は身を縮ませてぺこりと頭を下げた。
 冷たい飲み物と氷嚢を用意してくれた彼は、最後に部屋のカーテンを閉め切ってからまた一礼し、部屋を出て行ってしまう。

(やっぱり、あの日のことはなにかの間違いだったのよ。……そう、クリスだって、普段と何も変わらないんだから……)

 少し体を休めようかと、寝台の上に腰かける。
 大丈夫だ。きっと――私が普段通り接していれば、あの日のことはなかったことになる。
 身中で疼く熱を押し殺しながら頷くと、ほとんど同じタイミングで扉がノックされた。

「姉さん――その、大丈夫? 中に入ってもいい?」
「……え、えぇ。大丈夫よ」

 聞こえてきた弟の声に一瞬驚いたものの、断るのも妙だからと入室を許可する。
 するとクリスは、不安げな表情を浮かべてそろそろと部屋の中へ入ってきた。

「体調はどう?」
「問題ないわ。あなたは少し過保護すぎるんだから……少し休めば平気だから、クリスももう戻っていいわ」

 努めて、いつものように彼に接する。
 私にとっても彼にとっても、あの時のことは一度の気の迷い――自分にそう言い聞かせて、渦巻く熱が表に出ないよう、必死で表情を取り繕った。

「そう……でも心配だな。姉さんはそうやって、全部一人で抱え込もうとするだろう?」

 長い金髪を肩のあたりで軽く結ったクリスが、ふっと首をかしげる。
 すると、その豊かな髪がはらりとこぼれ落ちた。その仕草に、なぜか強い喉の渇きを覚えてしまう。

「あ……」
「体、辛いんだよね? ……この前の気持ちいいのが忘れられないけど、こんなこと誰にも言えないし――ね、そうでしょう?」
「……なんのこと? 私は……」
「隠しても無駄だよ。僕は姉さんのことだったらなんだってわかる――ずっと一緒にいたんだから、ね?」

 私が腰かけているベッドに、クリスはゆっくりと近づいてくる。
 彼の言っていることの意味を理解したくない……そう思いながらも胸が強く脈打っているのは、きっとその言葉が図星だからだ。

「姉さんは今まで、あんな風に体を触られたことなんてなかっただろう? 気持ちいいことを覚えて、貪欲になっちゃったんだね……?」
「ち、違うわ! そもそもあんなこと、間違って――ッんっ♡」

 慌てて反論しようとした私の唇を、クリスがぱくっ♡と食んで塞ぐ。同時に柔らかくうねる舌先が咥内に潜り込んできて、ぞわぞわと体が震えた。

「んん゛ぅっ♡ん゛っ♡♡ちゅ……♡♡んぢゅ♡んんぁっ……♡」

 舌で咥内を蹂躙されて、頭の中が真っ白になる。
 ようやく一度呼吸をする暇を与えられたかと思うと、次の瞬間には再び唇をついばまれてしまった。

「は、んんっ……♡♡んちゅ♡は、ぁっ……♡」

 ちゅ♡ちゅぷ♡♡ぢゅるるっ♡♡♡ちゅぅうっ♡♡
 体の熱を引きずり出されるかのような、濃厚なキス。
 しっかりと体を掻き抱いてくるクリスに抗うことができなくて、私はたっぷりと唾液を啜られ、口腔内を犯され尽くした。

「んは、ぁっ……♡やっ……♡♡」
「ん――姉さんの口の中、すごく狭いね。やっぱり僕とは全然違う……舌も柔らかくて、あったかくて……」

 声に欲望を滲ませたクリスは、常には涼しげな目元にとろんとした熱を帯びさせていた。
 陶酔したような表情は、弟の初めて見るものだった。濡れた唇を舌で舐る姿に、なんとも言えない凄艶さを感じてしまう。

「クリス……お願いだから、こんなこと――」
「……父さんが僕にこの屋敷を任せてくれたら、いつでもこうしてキスができるね。あなたをたくさん愛してあげることだってできる……想像して? この部屋で、また気持ちいいことができるって――」

 私の体を抱き寄せたクリスが、耳元でそんなことを囁いてくる。
 間違っていると――そう叫び続ける理性が、柔らかい男の声で押さえつけられていく。

(また……またあんな風に、気持ちよく……?)

「姉さんが僕に体を委ねてくれたら、僕はあなたにどんなことだってしてあげる――愛してる人のためになんでもしてあげたいっていうのは、当然の感情だろう?」
 
 クリスの手が、そっと肩に伸びてくる。
 薄い質感のドレスを解き、指先がつぅ……と顎を撫でてきた。

「今日もね、きっと姉さんが好きだと思って――少し道具を用意してみたんだ」
「そ、そんなもの……必要、ない……」
「本当? 声が期待で上ずってるけど……」

 クス、と小さく笑ったクリスが、もう一度唇をついばんでくる。
 触れるだけ、ただそれだけのキスなのに、一度熱がついた体は大仰なまでに震えあがり、快感を敏感に拾ってしまった。

「ん、ふぅっ……♡♡」
「僕に任せてくれないか。きっと悪いようにはしないから――ね?」

 れろぉ……♡と唇を舐められて、拒絶することができない。
 頭の中ではけたたましいほどの警鐘が鳴っているのに、体は彼から与えられる快楽に従順であれと叫んでいる。

(気持ちよく……また、あんな風に気持ちよくしてもらえる……?)

 理性の箍を外して絶頂を極めた感覚を思い出して、思わず喉が鳴る。
 またあんな風に――いや、あれ以上の快感を、クリスが与えてくれるなら。

「沈黙は肯定と受け取るよ」

 その問いかけにも、答えは返せなかった。
 するとクリスは、小さく笑って懐からいくつかの道具を取り出した。

「言葉はいらないよ。全部僕がしてあげる――足、少し開くね?」

 柔らかい声でそう語りかけてくる弟が、ゆっくりと私の太腿を掴んで足を開かせてきた。
 スカートは裾をめくり上げられ、私は再び恥ずかしい体勢になって素足を晒してしまう。

「あ、すごいなぁ――もう下着の上からわかるくらい濡れてる……ほら、音聞こえる?」

 ぬ゛ち♡ぬ゛ち♡♡と下着の上からおまんこを擦り上げられると、体の中で渦巻いていた熱が一気に頭をもたげてくる。

「ん、ぅうっ♡♡あ♡それっ……♡♡ぁひっ♡」
「クリトリスぐりぐりされるの、好きだもんね……? 覚えてるよ。ここ触られて、僕にクリフェラされてイっちゃったのも――」

 くりゅっ♡♡と指でクリトリスを押し潰されて、腰が大きく跳ねる。
 背を反らして快感に耐えようとしても、そこには弟の逞しい胸板があった。

「あ♡だめ♡♡♡そこ触っちゃ……ッは、ぁあっ♡♡♡」

 下着越しにクリトリスを刺激されただけでも、眩暈がするほどの快感が込み上げてくる。
 けれど布越しの愛撫では、いまいち決定打に欠ける――いつしか私はいやらしく腰を振り、より感じる場所を彼に触れてもらおうとしていた。

「下着の上からじゃ物足りないだろう? 今日は姉さんに気持ちよくなってほしくて、僕も色々なものを用意したんだ」
「ぅ、なに……?」

 熱っぽい声で私の名を呼ぶクリスは、懐からいくつかの道具を取り出した。
 その手に握られていたのは小さな筆と――なんだろう、ぷにぷにとして柔らかい物体だ。

「ふ、筆……? なんでそんな――」
「すぐにわかるよ。ほら、下着はもう用済みだから、脱いじゃおうね――」

 水気を帯びて重たくなった下着を引き下ろされると、ずちゅ……♡と淫らな水音が聞こえてきた。
 それすらも私の勘脳を刺激するには十分で、これから何をされてしまうのかという期待感がむくむくと自分の中で大きくなっていく。

「あー、すごいな……こんなにクリ充血させて、わかる? 姉さんの勃起クリちんぽ……これ、すぐに皮剥けちゃいそうだね?」
「か、かわ?」

 皮を剥く、とはどういうことだろう。
 もしかして痛みを伴うのではないか――そんな不安は、あっという間に掻き消えてしまう。

「怖がらないで。すぐに気持ちよくなるから」
「ん、ひぁっ……♡あ♡なにっ――♡♡♡」

 ぷりゅっ♡とクリトリスに触れた指先が、にわかに動き始める。
 一瞬何が起こったのかと思ったが、包皮に包まれたそれをクリスが剥いてしまった瞬間に、敏感な部分が外気にされされた。

「ッあ゛♡♡」
「ほら、綺麗に剥けた……プリプリしてて綺麗だね?」

 笑みを深くしたクリスが、そのまま手に持っていた筆の穂先を足の間に滑り込ませる。
 皮を剥かれて過敏になったその部分を、そろりと筆先が撫で上げた。

「っひ、あ゛ぁっ♡♡♡なんっ――ぉ゛、っ♡」

 すり♡すり♡♡と優しく筆でクリトリスを刺激されて、頭の中でバチバチとなにかが弾けていく♡
 指で触られる時よりも力が入ってないのに、それより格段に強い刺激が体を駆け抜けていった。

「は♡ぁんっ♡♡あ♡あっ♡あっ♡♡♡なにこれっ♡ンぁあっ……♡クリトリス♡こんな、ぁっ♡♡♡」
「筆で触られるの、くすぐったくて気持ちいいでしょう? ほら、いやらしい腰振りダンス♡僕にもっと見せて――」

 すりすりすり♡♡と更に淫芽を嬲られて、私は腰をガクガクと震えさせた。
 クリスが言う通り、とても卑猥なダンスを踊っているかのような状況も、最早自分の力ではどうすることもできなかった。

「あ♡ぁは♡♡だめぇっ……♡クリトリスきもちいいの♡これ♡くすぐったくて♡♡は♡ぁんっ♡♡ん゛んぅ♡♡」

 快楽の波がどんどん大きくなって、押し流されてしまいそう。
 必死にそれを耐える私をあざ笑うように、クリスは更に刺激を続けながら私の唇を食んだ。
 キスとクリトリスの快感が結びついて、胸の奥が苦しくなる。

「ん♡んちゅ♡♡は♡はぅ、うっ……♡♡」
「姉さん――もっと舌出して♡自分から僕の舌に絡めて……ん、んっ……」

 言われた通りに、自分からクリスのそれに舌を絡める。
 従順にしていれば、彼は私が望むままの快感を与えてくれた。

(キス、きもちいい♡こんなの♡恋人同士のキスみたいなっ……♡♡苦しい♡ずっと胸が、っ……♡♡気持ちいい♡♡気持ちいいのにっ♡)

 唇を重ねるごとに、胸の奥がどんどん苦しくなる。
 強く抱きしめたいような気持ちに駆られて、なぜだか泣きたくなってしまうのだ。

「ん、ちゅ……姉さん。姉さん、好き……」

 唇が離れると、クリスは荒い呼吸の合間にそんなことを言う。
 だめだ――今そんな風に愛を囁いたら、堕ちてしまう。愛してはいけない、私の大切な弟なのに、一人の男の人として彼に恋してしまう。

「最初から、ずっと――この人と一緒に生きていきたいって、思ってたんだ。貴族に拾われただけでも奇跡みたいな人生だったけど……姉さんのおかげで生きる目標ができた」
「クリス……」
「あなたに見合う男になる。その為なら僕はどんなに危険なことも、どんなに汚れた仕事だって喜んで行ってきた」

 クリスの――そんな決意を、初めて聞いた。
 幼い頃から彼は苦も無くあらゆる知識を吸収していった。侯爵家を継ぐための教育は勉学だけではなく兵法や剣術などにも及んだが、彼はそれすらも貪欲に学び、やがては与えられた師を凌駕していった。

「全部、あなたのためだよ。病弱で、子を孕むこともできない、僕の大切な――可愛いエリファ……♡」
「っ、ん……♡」

 名を、呼ばれただけで――体が甘く反応してしまう。
 まるでその響きが媚薬のように耳朶に絡みつき、私の心を強く揺さぶってくる。

「名前呼ばれて、体反応しちゃった? ……ふふ、エリファ――ほら、ここにこうしているのは、あなたの弟なんかじゃない」

 違う違うと首を横に振ろうとしても、体に力が入らない。
 薬を盛られているわけでもないのに――まるで私自身が、彼のその言葉を肯定し、受け入れているようだった。

「あなたに焦がれている、一人の男だ。そしてあなたはそれを受け入れようとしている、ただの女。一対の……雄と雌が、愛しあおうとしているだけなんだよ」

 ぎゅっ♡とクリトリスを摘ままれて、熱が爆ぜる。
 軽くイってしまった私は、けれど貪欲により強い快感を求めてしまっていた。

「クリス、ハート……わたし、ぁ、もっ……♡♡」
「ねぇ見て、姉さん。これ――中がヒダヒダになってて……んぢゅ♡こうやってちゃんと、唾液で濡らしてから……」

 不意に筆をおいたクリスが、もう一つの玩具を取り出した。
 小さな円筒状のそれは、どうやら中に空洞があるらしい。舌先をそこにねじ込んでうっとりと唾液を絡ませるクリスの姿が、どこまでもいやらしかった。

「や、ぁ……♡♡」

 ぢゅ♡ぢゅるっ♡♡♡ぢゅぷぢゅぷ♡♡ずろぉ……♡♡
 突き入れていた長い舌が引き抜かれると、孔と舌先を透明な糸が結んでいた。

「これで、姉さんのこともーっと気持ちよくしてあげる……♡でもその前に、一回イっておこうね♡」

 さっきのじゃ足りないだろう?
 そう呟いたクリスが、すっかり勃ち上がったクリトリスを親指と人差し指で扱き上げてきた。

「ひぉ゛ッ♡♡♡」
「筆だけじゃ足りないよねぇ……こんなにエッチで敏感なクリトリス♡指でしーこしこってして……♡」
「や、ぁあっ♡ぁんっ♡ほ♡ぉ゛ッ♡♡らぇっ♡それっ♡♡♡指でクリトリスしこしこしちゃ、ぁっ♡♡イく♡イくのぉっ♡♡♡」

 くにゅっ♡くにゅっ♡♡しこしこしこっ♡ぷぢゅっ♡♡♡
 戯れるようにクリトリスを指先で扱き上げられて、視界が一気に塗りつぶされる。
 ガクッ♡ガクッ♡♡と腰を跳ねさせて絶頂を極めた私に、クリスは先ほど唾液を絡めていた円筒をひらつかせた。

「まだだよ――姉さんがいっぱい気持ちよくなって、僕にもっともっとっておねだりできるようになるように……クリオナホも使ってあげる」

 ずちゅ、んっ♡♡
 たっぷりと捏ねまわされ、弄りつくされたクリトリスが、ぬかるんだ円筒の中にずっぽりと吞み込まれていく。

「ん゛、ぉおっ♡♡ぁふっ♡あ゛♡あっ♡♡♡」

 剥き出しになった肉芽が、円筒の中の細かい襞にぞりぞり♡と擦りつけられて、途端に全身が躍動した。
 快楽を感じるためだけに存在するその場所を、無数の柔襞が舐め上げるように刺激してくる。

「ふ、ぅうっ♡ぉ゛ッ♡♡♡なん、ぁ、あっ♡♡」
「クリオナホ、気持ちいいでしょう? 敏感なエリファのクリちんぽに、こうして……グリグリ押しつけながら、ゆーっくり揉んであげると……」
「やめ♡ぇ゛っ♡♡あひっ♡あ♡またイっちゃう♡ん゛ぁ♡ぁ゛ッ♡♡」

 ぬっち♡ぬっち♡♡と徹底的に淫芽を責め立てられて、快楽を逃がすこともできない。
 逞しいクリスの腕はしっかりと私の体を縫い留めていて、どれだけ激しい絶頂を迎えても決して放してはくれなかった。

「は♡ぁんっ♡♡イく♡また♡♡♡またイっちゃうの♡ぉ゛♡ぉ゛~~~♡♡♡」
「いいよ――姉さんがクリイキしてるところ、僕に見せて……すごくえっちで、トロットロのイき顔……」

 ゴクッ♡と喉を鳴らしたクリスが、一度私の体を抱えなおした。
 その間にもにゅぷにゅぷにゅぷっ♡♡とクリオナホを動かされ、身動きが取れないままひたすらイき続けるしかない。

「ひ♡♡ンんっ♡ん゛っ♡♡♡」
「すっかりクリイキが板についてきたね――ねぇ、姉さん……これ、見てくれる?」

 少しだけ上擦った声で、クリスが私の名前を呼んだ。
 気怠い体を動かして声がした方を見上げると、そこには既に限界まで怒張した――彼の肉棒が突き出されている。

「ッ、ぁ……?」

 ゴク、と、思わず唾を呑み込んでしまった。
 だって、あんなに――クリスのおちんぽ、あんなに大きくて……♡

(太、いぃ……♡男の人のって、あんなに……♡♡)

 その猛々しい形に、思わず目が釘付けになる。
 秀麗な顔立ちのクリスには似つかわしくないほどに雄々しくて、グロテスクなその形から、目が離せない。

「なんで、これっ……」
「姉さんがこんな風にしたんだよ? あんなにいっぱい善がって、ずーっとイきっぱなしで……あんなところ見せられて、勃たない男なんていないでしょう?」

 深く息を吐きだしたクリスは、片手でゆるゆると肉茎を扱き始めた。
 既にお腹につきそうなほど勃起したそれが、ヒクンッ♡と小さく揺れる。

「ッふ、ぅ……♡ン、見て――姉さん♡ねえさん……♡」

 ずち♡ぬ゛ちっ♡♡と音を立てながら自分のおちんぽを扱くクリスは、熱のこもった目で私のことを見下ろしていた。
 その呼吸が荒く、浅くなるにつれて、下腹部が甘く疼いてくる。

(クリスのおちんぽ……あんなに腫れて、可哀想……)

 口の中に唾が溜まって、それを飲み下すとお腹の内側がかぁっと熱くなった。

「ク、クリス……?」
「ナカに――姉さんの膣内に、挿入れたい……♡とろっとろの、イきたてまんこ……♡」

 掠れた声に、私は思わず想像してしまった。
 あの手で組み敷かれ、あんなに大きく勃起したおちんぽで膣内を押し開かれる――腰骨がそわそわとし始めて、唇がわなないた。

「姉さんは……僕が欲しくない? クリトリスだけじゃなくて、ナカで――僕のことを、受け止めてくれないの……?」

 弱々しい言葉に、子どもの頃のクリスが脳裏をよぎる。
 ――だめ。これ以上はいけない。この一線を越えたら、きっと私たちは姉弟に戻ることができなくなってしまう。

(でも――そう、私たちは血なんて、一滴も……)

 浅ましい考えが、頭をもたげ始める。
 そうだ、クリスが言っていたように――私たちは最初から、血なんて繋がっていない。ただの男女、一対の雄と雌が、お互いに触れたいと思っている。

「お願い、姉さん……」

 絡みつくような声に、屈してしまったのは私の方だった。
 求められるがままに足を開くと、クリスはパッと表情を明るくして、私の体を寝台の上に縫い留めた。

「ん、ぁっ♡」
「嬉しい――嬉しいよ、エリファ」

 名前を呼ばれただけで、頭がくらくらする。
 私の名は、彼に呼ばれるために存在していたんじゃないか――そう思えるほどの快楽が、低く囁かれるたびに湧き上がってきた。

「ふ、ぅ♡んぁ……♡♡」

 仰向けに押し倒された私の服を鮮やかに脱がせたクリスは、ぴと♡と濡れた先端をクリトリスに押し当ててきた。
 そして、ゆっくり腰を動かされる――イったばかりのその場所にずりずり♡とおちんぽを擦りつけられると、その熱さに火傷してしまいそうだった。

「あ♡ぁんっ♡♡ん゛♡んっ♡これっ――ふぁ♡ク、クリトリス、にっ♡おちんぽごしごし、され♡あ♡♡」
「ん、気持ちいいね……♡僕のちんぽと、姉さんのクリちんぽ♡キスしてるみたいで……♡♡」

 ずち♡ぬち♡♡♡ずりゅっ♡♡ぬちぬちぬちっ♡♡ずちゅっ♡♡
 お互いの性器を擦りつけ合うだけで、どうしようもなく気持ちよくて愛しい気持ちになる。
 だけど、それだけじゃ足りない――この熱いものを、たっぷりと淫蜜に満ちたおまんこに突き入れてほしい。
 そんな欲望が、どんどん自分の中で大きくなっていく。

「は♡ぁんっ♡あんっ♡♡クリス、ゥ……♡」
「ほしい? 僕のちんぽ、姉さんに挿入れてほしい? ……それならおねだりしないと。どこに、どんな風に欲しいのか――」

 吐息交じりの声が、ついに理性を押し潰した。
 気持ちよくなりたい♡クリスの――クリスハートのモノになって、二人でぐちゃぐちゃになるまでセックスしたい……♡♡♡

(もう、いいや……戻れなくても、私は)

 子も産めない私を愛してくれる男が、彼の他にいるだろうか。
 こんなになるまで私のことを求めてくれる人は、きっとクリスの他にいない。

「ク、リス……♡クリスのおちんぽ♡お姉ちゃんのおまんこに……ト、トロトロで、いっぱいイっちゃったけど♡♡エリファの処女まんこを、クリスの太くて大きなおちんぽで♡♡ずっぽりハメてください♡♡♡もうクリスなしじゃいられないくらいに――い、いっぱい♡おまんこ犯して♡♡私のこと、を……クリスのモノにしてください……♡♡♡」

 もう、戻れない。
 歓喜と期待に震える声で告げると、肉槍の先端がずぶずぶと突き立てられた。

「ひ、ぅうっ……♡んっ♡あぅっ♡♡」

 ぬ゛ぢ♡ぬぷぷっ……♡♡ごりゅ♡ぬ゛ッ♡ずぷずぷずぷっ♡♡♡
 狭く深い蜜孔を、一気におちんぽでこじ開けられていく。
 鈍い痛みはほんの一瞬で、そこから先は鋭い快楽だけが私の体を支配していた。

「ぁ゛、ぁっ♡♡クリス♡んっ♡クリスのおちんぽ♡挿入ってる♡♡」
「は――姉さん……」

 震える息を吐いたクリスが、ゆるゆると律動を刻み始める。
 緩やかなそれは、まるで私に自分の形を覚えこませようとしているかのようだった。

「んぁ♡ぅ、っ……♡♡あつい♡クリスのおちんぽ♡♡熱くて♡おまんことけちゃいそう♡♡♡ンぁあっ♡」
「とけて――それで、一緒になれたらいいのにね。僕と姉さんが、ずーっと一つになって……♡」

 ぬっぷぬっぷ♡と膣奥を軽くノックされるたびに、彼のことを愛しく思う。
 クリスはずっと、こんな思いに耐えていたのだろうか。こんなにも切ない、こんなにも苦しい思いを抱えて、今までそれをおくびにも出さなかった。

「大好き――好き、姉さん……」

 うわごとのように呟きながらずこずこっ♡とおまんこを擦り上げてくるクリスが、徐々にその抽送を激しくしていく。

「ンぅっ♡♡あ♡はぁっ♡♡♡はげし、ぃっ……♡♡」
「だって、姉さんが――ッ、こんなにナカ締めてくれるからっ……♡熱くてトロットロの処女まんこ♡僕のちんぽに甘えてきてみたい……♡」

 そう囁かれて、おまんこが名残惜しげにクリスのおちんぽを締め付けてしまう。
 媚肉を容赦なく穿たれて甘イキを繰り返した私は、いつしか彼の腰に自分の足を絡めてしまっていた。

「ほ、ぉ゛ッ……♡♡♡」
「あ、くっ――すごい締まったね。ここ、いっぱい気持ちいいのかな?」

 ずりずり♡♡ぐちゅ♡ぐちゅっ♡♡♡ぬ゛っ♡ぬ゛っ♡ぬ゛っ♡♡♡
 一番感じる場所を擦り上げた尖端が、何度も何度も同じところを刺激してくる。
 的確に弱点を突き上げながら、クリスは空いた手で更に下腹部を押し込んでくる。

「んぁあっ♡♡らめ♡くりひゅ♡♡それっ♡♡ぉ゛♡上から子宮押さないれ♡お゛ッ♡お゛ッ♡♡イっちゃう♡あんっ♡♡あっ♡♡」
「イけ♡イけ♡♡自分が今、誰に抱かれているか思い出しながらイって♡クリスハートの――弟のちんぽで気持ちいい場所いっぱいいじめられながらイっちゃうんだよね? もう姉さんのまんこは、僕専用の精液ミルクタンクだもんね?」

 ずっちゅ♡ずっちゅ♡♡ぐちゅ♡♡どちゅどちゅどちゅどちゅっ♡♡♡
 激しくおまんこを穿たれて、背中が仰け反る。

「あ♡ぁっ♡♡そうでひゅ♡エリファは♡エリファはクリスの専用おまんこです♡♡♡」

 自分で認めてしまうと、そこから先堕ちていくのは容易いことだった。
 体がブルッ……♡と大きく震え、どぷりと愛蜜が溢れ出す。クリスに犯されているのが嬉しくて、目尻に溜まった涙が溢れてシーツに落ちた。

「じゃあ、ずっと……ずーっと僕の側にいてくれるよね? これからも……どこにも行かずに、僕の側に――」
「んっ♡い、ます♡ずっとクリスの側から、離れないからぁ♡♡」

 快感を極め、悲鳴じみた声を上げた瞬間に、突如どぷっ♡♡と熱いものが弾ける。
 それがクリスの精液だと理解するまでに、やや時間を要した。

「は♡ぁあっ……♡♡クリスの、びゅーって出てる……♡♡♡ん、ふぅううっ……♡♡」

 無遠慮に放たれた白濁液に身を震わせると、なおもクリスが腰を揺さぶってくる。芯を失ったはずの肉杭が再び熱を取り戻すまで、それほど時間はかからなかった。

「あ♡またっ♡♡おちんぽまた大きくなってる……♡♡」
「ずっと焦がれていた言葉を聞けたんだ。一度なんかで、満足するはずない……」

 喉で低く唸ったクリスが、白い肌を上気させて舌なめずりをする。
 その仕草に、また子宮がきゅんっ♡と疼く――一回なんかじゃ足りないのは、私も同じだった。

「これからもずっと、僕の側にいてね。姉さん……」

 囁かれた声と与えられるキスを、無条件で受け入れる。
 ――最初から、私の幸せは外になんてなかった。こうしてクリスに抱きしめられ、その腕に閉じ込められていることこそが幸せだったのだ。
 へにゃりと微笑んだ私は、再開した律動に合わせて腰をくねらせる。ひどく、目の前の男のことが愛おしく思えた。