24/08/03 新しい短編を追加しました。ファンタジー+1

スパダリ上司の秘蜜の恋人~冷徹部長のえっちな溺愛が止まりませんっ♡~

Pixivリクエストにてご依頼いただいた小説です。
冷徹系上司が恋人の部下を溺愛して会社やホテルでいっぱいえっちするお話です。

「い、いかがでしょうか部長……」
「却下。君はロマンを追求しすぎだ。見てくれはいいが実用性が低いうえにコストがかかりすぎる。発想までは限りなく合格ラインだが、実用に耐えうる商品でなければ意味がない」

 鋭いまなざしでそう告げた部長――神戸諒二さんは、肩を落とす部下を見送ってからちらりと私の方に視線を向けた。

「加納、どうした」
「桶丸物産の矢追様がいらっしゃって、部長に取次ぎをとのことでした。アポイントは入っていないようですが、いかがいたしましょう?」
「そういう場合は君の方で断れと言ったはずだ。いちいち俺の許可を得なくていい」

 株式会社神戸プロダクツ――戦後の復興期に製糸工場から発展したこの会社は、今では複数の関連会社を持つ総合商社だ。
 私が三か月前に転属となった開発部は、その中で変人……いや、商品開発の精鋭が集まると言われている基幹の部署だった。

「どうせ先日、桶丸社長の前で製品の粗を並べ立てたのが気に食わんだけだろう。それに、俺は午後からマーケティング部と会議だ。スケジュールに空きがない」
「で、でも……どうしてお伝えしたいことがあるからと」
「必要ない。どうしても話をしたいというならメールで簡潔に送るよう伝えてくれ」

 神戸部長は、そう言うとパソコンに向かって厳しい表情を浮かべはじめた。
 こうなるとほとんどこっちの話は聞いてもらえないので、私は受付に連絡を取って今言われたことをそのままお伝えする。
 相手には申し訳ないと思うけれど、ウチの部長は基本的に誰に対してもこんな感じだ。
 三十歳で異例の開発部部長に就任した神戸部長は、名前の通り経営者一族の出身だ。現社長の甥で、二年前までは香港にある支社を一つ任されていた。
 それが、今の社長が体調を崩したことで本社に呼び戻されたため、今の副社長――つまり社長の息子さんを差し置いて次期社長か、とも目されたことがあったらしい。
 ただ、彼はそのことについて質問されると必ず嫌そうな顔をして、

「下らん。俺は開発畑が性に合ってる……最初から用意されたレールがあるというのも気に食わんな。必要なら独立して、自分で好きな事業を展開させた方がよっぽど面白いだろう」

 と言うのだ。実際、彼が開発部の部長に就任してからは業績も右肩上がり。厳しい人だけれど、しっかり結果を残しているので誰も逆らうことができないのだ。

「加納さん、大丈夫? 部長もあんな風に言わなくてもいいのにねぇ」
「あー、今井さん……大丈夫ですよ。部長がお忙しいのはわかってますから」
「それにしてもだよ。第一、加納さんがいなくなったら俺たち全員困るんだぜ? 君がここに来てくれて三か月、書類作業が楽になったったらないよ」

 ミルク味の飴を片手に声をかけてきてくれたのは、開発部のチーフマネージャーである今井さんだ。
 ヒット商品をいくつも世に送り出している彼は、にこにこと人当たりがよくて私のような事務方にも気さくに声をかけてくれる。

「そんな……私は元々あったちょっと手を加えただけです。少し情報が古くなっていたのを付け加えて、整理しただけで――」
「それをやってくれる人がいなかったんだよねぇ。俺たち、部長も含めてみーんな事務作業苦手だし――いやぁ、流石我らが開発部の女神 ミューズ!」
「は、恥ずかしいこと言わないでください!」

 確かに、開発部の皆さんは書類仕事が苦手なようだ。
 私が営業部に来た時、驚いたのはあまりに整理されていないその資料や書類たちだった。
 新卒でこの会社に入ってから三か月前まで過ごしていた営業部では、割と体系だって資料が残されていたのに対し、ここで共有されている情報は古い上にアクセスも悪い。
 というのも、それぞれのクライアント情報を個別で所有している人が多く、共有情報が更新されていないのが原因だった。
 今まで、開発部に配属された新人は半年持たないと言われていた。その都市伝説の正体は、きっとこの仕事環境のせいだったのだろう。一人一人が優秀すぎるのに、そこで得た情報を共有されないから新人さんが潰れてしまうのだ。

「だって、こんなむさくるしいところに来てくれたかと思ったら、あっという間に仕事しやすくしてくれちゃってさ。部長だって、なんだかんだ言いながら加納さんには感謝してると思うよ?」

 はいこれお礼、と机の上に飴を乗せて、今井さんは自分のデスクに戻っていった。
 仕事をしやすくするというのは、私たち事務方が行うべき仕事だ。幸い、コツコツした業務は大好きだし、事務は天職だと思っている。
 だからデータの整理は嫌いじゃないし、それで誰かに喜んでもらえるのがやりがいだった。

(まぁ、そのデータを集めるのが大変だったんだけど……)

 如何せん、開発部の皆さんは多忙だ。しかも、自分の世界に没頭してしまうとそれが終わるまでこちらの話を聞いてくれない人も多い。
 そんな中、三か月という短い期間でこれまでのデータを更新することができたのは、間違いなく部長のおかげだと思う。
 彼は自分が持っていた情報を細かく私に渡してくれて、必要があれば今井さんたちの手も貸してくれた。社内クラウドにアップロードされたそれは開発部の人間なら編集可能で、月次目標や顧客満足度の指標などもこまめにチェックすることができるようになった。

「加納、なにか今井と話していたようだが――トラブルか?」

 そんなことを考えていると、部長が何事かと声をかけてきてくれた。
 彼はよく周りを見ていて、なにかあるたびにしっかりと確認をしてくれる。厳しい人だけれど、地味な仕事でもしっかり評価をしてくれる人だ。

「いいえ、大丈夫です。今のところは問題ありません」
「そうか。じゃあ多少仕事を入れても大丈夫だな? 午後から俺についてマーケティング部との会議に出席しろ。議事録の作成を任せたい」
「わ、私で大丈夫でしょうか」
「問題ない。不明点があればその場で聞いてくれ。俺が答える」

 そう言われたら、私に断る理由はない。
 マーケティング部は開発部とはまた別の意味で忙しい人が多く、話も早口な人が多い印象だ。

 一応確認用のレコーダーだけは準備しておこう――デスクの引き出しを開けて小さなレコーダーを取り出すと、彼は少しだけ目を見開いた。
「なんだ、レコーダーを持ってるのか」
「あ……もしかして、録音ダメでしたか?」
「社外に持ち出さないなら問題はない。君がそういうことをする人間じゃないことは知っているからな」

 小さく頷かれると、仕事に対して信頼されているみたいで少し嬉しかった。
 会議は午後からということなので、それまでは自分の仕事を進める――といっても、前にいた営業部と比べると仕事ぶりは穏やかなものだ。

(営業部は、毎日戦争みたいな忙しさだったもんなぁ……)

 大企業の中枢を担う営業部隊のアシスタント――それが、三か月前までの私の仕事だった。
 いかにも体育会系っぽい雰囲気が支配している営業部だったけれど、それなりに営業部隊の人々にはよくしてもらっていた。
 ただ、そんな中で大きな仕事のミスをしてしまい開発部に転属となったのだ。
 新卒から毎日終電で帰るのが当たり前みたいな状況から一転、開発部は仕事さえ終われば早上がりだってして構わない。
 月に何度か残業が発生することはあるけれど、それでもほとんどは定時で帰ることができている。

「……ん?」

 ぱっ、と机の上に出したスマートフォンの画面が光る。通知には恋人からのメッセージが表示されていた。向こうも仕事中なのだから、返信は昼休みにしておこう。
(私生活の変化、大きすぎる……)

 開発部に来てから、私の生活は大きく変化した。
 再来週は部長や今井さんと一緒に出張が決まっているし、開発部はとても忙しいけれど仕事のやりがいは十分にある。
 人生って割と短時間で変わるものだなぁ、なんてのんきなことを考えながら、私は昼の会議に向けた腹ごしらえに食堂へと向かうのだった。

● ● ●

「――では、今回作成した議事録は、開発部加納の方からメールで展開させていただきます。後ほど質疑応答ありましたら、俺の方に連絡をお願いします」

 心配していたマーケティング部との会議は、それはそれはつつがなく終了した。
 マーケティング部を率いている安藤部長とウチの加納部長はかなり相性がいいらしく、二人の主導で会議自体は一時間もかからずに終わってしまった。
 議事録の作成も残っているが、部長がわかりやすく話をまとめてくれたおかげでそれほど時間がかかることもなさそうだ。

「さて……議事録の方は大丈夫そうか?」
「はい、大丈夫です。会議室は夕方まで取ってありますから、これを作り終わってから戻っても大丈夫ですか?」
「構わん。俺もどのみち、ここに少し用がある」

 会社支給のノートパソコンで手早く議事録を作りながら、用事があるという彼の方をちらりと見る。
 マーケティング部の人たちは既に自分たちの部署へと戻っており、手狭な会議室の中には私と部長しかいない。

「もしかして、WEB会議とかですか? だったら、私はいない方が――」
「いや、いい。むしろ君がいてくれないと困るんだ。……わかるだろう、千里?」

 トントン、と、長い指先が机を二度叩いた。
 機嫌がいい時の彼の癖――顔を上げると、切れ長の目が艶っぽく細められているのに気が付いた。

「……部長」
「零点だ。二人の時は何と呼べと?」

 ――キーボードを叩く手を止めて、ノートパソコンの電源を落とす。ほとんど完成した議事録は、今日中に提出しておけば問題ないはずだ。

「りょ、諒二……さん」
「いい子だ。どうせ神戸なんて苗字、この会社には吐いて捨てるほどいるんだし――仕事中も名前で呼んでくれて構わないんだがな? 営業部の部長も神部だろう」

 にっこりと唇を吊り上げた部長……諒二さんは、もう一度指先で机を二回ノックする。

「で、でも……さすがに会社で、諒二さんのことを名前で呼ぶのは――お付き合いしてること、バレちゃうから」
「俺は別に今すぐ公表したって構わない。君がことを大きくしたくないというから、仕方なしに口を噤んでいるだけだ」

 おいで、と言って軽く腕を広げた諒二さんは、じっとこちらを見つめて私がその腕に飛び込むのを待っている。
 だけど、ここは家でもホテルでもなくて会社の一室――それも、壁一枚隔てた向こうは沢山の人が行きかう廊下だ。

「待ってください、あの……議事録、つくらないと……」
「ほとんど終わってるんだろう? パソコンだって電源を切っている。――心配しなくていい、会議の後俺は直帰だと伝えてあるし、話が長引いたとでもいえば君だってそのまま帰れるはずだ」

 甘く、絡めとるような声音で。
 仕事の時はかなり厳しい発言も多い諒二さんだが、二人きりになるとその様相は一変する。

「う、う~……」
「ほら、早く。こっちにおいで」

 ――諒二さんと付き合うようになったのは、一か月ほど前のこと。
 色々ないきさつがあってお付きあいを始めたものの、彼の立場のこともあって交際していることは誰にも話していない。
 当然のことながら、外でデートをすることだって制限されてしまう。休日はどちらかの家で過ごすことが多く、会社ではお互い上司と部下という関係をしっかり守っているということもあって、触れあえる回数はかなり限られていた。

「千里」
「わ、かりました……! わかりました、から……」

 抱きしめてもらうことは、嫌いじゃない。むしろ大好きだ。
 少し苦いような彼の香りと、私がつけている香水がまじりあう瞬間。それが溜まらなく大好きなのだが、スーツ姿の彼に抱きしめられるのは少し罪悪感が勝ってしまう。
 とはいえ、このままでは諒二さんが引き下がることは絶対にない。
 根負けする形で彼の腕の中に飛び込むと、途端にぎゅっと体を抱きしめられる。

「んっ……」
「――千里」

 熱っぽい声をかけられて顔を上げると、そのままそっと唇を重ねられる。
 触れるだけのキスはどこまでも優しくて、私は思わずその背中に腕を回し、指先に力を込めてしまった。

「んっ……♡っあ、ぁっ……♡」

 ちゅ、ちゅ、と柔らかいキスが唇に落ち、抱きしめてくる腕の強さがどんどん強くなってくる。
 先週は諒二さんが出張で、休日は一緒にいられなかった――そのせいもあってか、キスだけで体の芯がどんどんと熱くなってくるような感覚になった。

「や、んっ……りょーじ、さん……♡」
「先週は寂しい思いをさせてしまったから、今週はたっぷり君との時間を過ごしたいと思っていたんだが……実は、それも難しくなった。伯父さんから連絡があって、一度香港の支社に顔を出す必要があってな」

 香港――彼が支社長を務めていた香港支社は、経営戦略的にもかなりの要所であるらしい。
 顔を出すというくらいだか出張になるだろうが、そうなると来週の半ばくらいまで時間がかかるだろう。

「……寂しい」
「それは――私も寂しいですけど、仕方がないことだと思います。社長命令なんですよね?」
「そうだ。……本当なら君を配偶者として連れていくことも考えていたんだが」

 それは――流石に、まだ時期尚早な気がする。
 もちろん、諒二さんのことは大好きだ。将来的には結婚とか、そういうのを考えなくちゃいけないこともわかる。
 でも、今は彼の邪魔をしたくない――私も仕事を覚え始めてきた頃だし、もう少し頑張りたい気持ちもある。
 だから、同棲とか結婚とかはもう少し待ってほしい。交際を始める時に伝えた私のお願いを、諒二さんは律義に守ってくれていた。

「俺だって、君が言いたいことは理解しているつもりだ。でも、しばらく触れられない恋人に多少触れたいと思う俺の気持ちまで無碍にはしないだろ?」
「それ、は……でも、せめて場所を考えてください……!」
「男の浪漫ってやつだろう? オフィスでの逢瀬っていうのは……ほら、千里だってドキドキしてる」

 そう言いながら、彼は私の左胸にそっと手を当てた。
 ほんの少し強く抱きしめられただけで、心臓がドクドクと力強く脈打ってしまう。……これじゃ、私が欲求不満みたいで恥ずかしい。

「諒二、さん……」
「使用中の会議室にわざわざ入ってくる奴なんていない。大丈夫だ――俺に全て任せているといい」

 そう言いながら、腰に回っていたもう片方の手がするりとお尻を撫でる。
 ストッキングとタイトスカートに包まれたその場所を撫でる手つきは艶めかしくて、思わず体がビクンと跳ねあがる。

「ひ、ぁっ……♡」
「ほら、あまり大きい声を出すと誰かに聞かれるかもしれないぞ?」
「だ、ってぇ……ン、ぃっ……♡」

 そう言いながら、やわやわとお尻を揉んでくるのだから諒二さんは意地悪だ。
 必死に口元に手を当てて声を押し殺そうとするけれど、彼を欲している体は従順にその快楽を受け取ってしまう。

「んくっ、ん、んっ♡♡」

 むに♡と柔らかいお尻の肉を揉みこまれるたびに、甘い痺れが頭の方へと駆け上っていくのがわかる。
 そのままスカートをたくし上げられて、ストッキングの中に骨ばった指先が侵入してきたらもう逃げられない。

「ぁ、ふっ……♡」
「蕩けた顔だ。君も期待していたんだろう?」
「ちが、ぁっ……や、ぁんっ♡♡」

 口答えするなと言わんばかりに、そっと添えられているだけだった右手にも力がこもる。
 左胸を軽く揉みしだかれながらショーツ越しにお尻を撫でられて、じりじりと頭の中を焼くような快楽が押し寄せてくる。

「だめぇっ……♡会社、でぇっ♡♡こんなっ……♡」
「そういう割に、声にも艶が出てきたんじゃないか? ほら――立っているのも辛いだろう。ここに手をついて、腰を突き出してみるといい」

 その方が体勢的に楽なはずだ、と教えられて、抗うことはできなかった。
 するりと離れていく体温を名残惜しく思いながら、言われた通り机に両手をつく。
 ほんの少しの愛撫ですっかり体から力が抜けきってしまった私は、体重を預けるように前傾姿勢を取った。彼が言う通り、お尻を突き出している形だ。

「うん、それでいい――そうだ、レコーダー持ってきてるんだろう? 出張中の慰めに、千里の声を録音したいんだが……」
「だ、だめっ! それは……それはだめ……! ほら、あのっ、まだ議事録完成してないし……お、お願いします……」

 そんな生き恥を晒すようなことなんてできるはずがない――そう思って懇願すると、諒二さんは至極残念そうな表情を浮かべてがっくりとうなだれた。

「……千里、どうしてもだめか?」
「だ、だめです。絶対だめ……は、恥ずかしすぎます。声だけなんて……!」
「――声だけじゃなければいいと」
「そうじゃないです……!」

 ここで引き下がったらもっとすごいことをされてしまう。
 そう思って食い下がると、諒二さんは深い深いため息をついて私の背中を指先でなぞった。

「ッあ……♡」
「わかった。君のレコーダーは使わない。これでいいだろ?」
「は、いっ……」

 背中、撫でられただけでゾクゾクする……♡
 声を震わせる私のジャケットを背後から脱がせた諒二さんは、それを手近な椅子に引っ掛けるとブラウスの上からゆっくり胸を揉み始める。

「んぅ♡はっ……♡♡んくっ……♡」

 柔らかく、けれど的確に快楽を与えようとしてくる手指の動きに、唇の端から声が漏れた。
 ここがホテルや自宅だったら我慢なんてする必要もないけれど、生憎と場所は会社の会議室――唇を噛みしめ、なんとか声が出ないように自制する。

「あぁ――いいな。本当に、いけないことをしているような気がする」
「ッひ♡だ、めぇっ……♡♡♡ぁ、おっぱい、そんな揉み方された、らぁっ……♡♡」

 むにぃっ♡むちっ♡むち♡♡♡たぷんっ♡
 ブラジャーとブラウスの上から触れる指先は無遠慮に柔肉を揉みしだき、持ち上げては落とす動きを繰り返す。
 直接的に肌に触れられないのがまたもどかしい。焦らすように乳肉を弄ぶ動きは、体の中で熾火のように広がっていった。

「は、ぁんっ♡りょーじ、さん……♡」
「あまり着衣を乱しても、この後が大変だろう? ……そうだな、今日はこのまましようか。それなら、終業時間ギリギリになっても身支度を整えることはできる」「この、まま……?」

 ぞくっ……♡と体が震える。
 そんな、服を着たままのエッチなんてしたことがない。ぐちゃぐちゃになってしまうんじゃないかとか、色々な考えが頭の中をよぎっていく。
 だけど、それ以上に――彼に与えられる快楽は媚薬のように私の体に広がり、体はすでに熱を持て余してしまっていた。

「で……できるんです、か?」
「もちろん。大丈夫……多少汚れてしまったら、まっすぐ俺のマンションまでくるといい。着替えもちゃんと用意してあるだろう?」

 甘い囁きが背後から聞こえて、抗うことができなかった。
 ブラウスのボタンを三つ外すと、彼がそこから手を差し入れてブラジャーを外してしまう。

「ひぁっ♡♡♡」

 ぷるんっ♡とまろびでた乳房の先端が、つるりとしたブラウスの生地に擦れて気持ちがいい。
 ほんの少しの刺激だけでしこりはじめた乳首は、ジンジンと熱を持ってしまっている。

「ぁ♡あっ……♡♡ッあ♡おっぱいきもち、い……♡」

 いつもと違う場所で彼に触れられている。
 それも、会社の会議室――罪悪感と背徳感がスパイスになって、いつもより強い快楽が与えられているような気持ちにさえなってきた。
 はふはふと荒い呼吸を繰り返す私の胸を揉みしだきながら、諒二さんはもう片方の手でサイドスカートを持ち上げた。

「本当だったら、これも破り捨ててしまいたいくらいなんだが……今日は我慢させてもらおう」
「きょ、今日、は……?」

 ストッキングのざらついた生地を撫でながら、諒二さんはそんなことを耳元で囁いてくる。
 お尻の丸いラインをなぞりながら囁かれる声は蠱惑的で、つい想像してしまう。無惨にストッキングを破かれて、荒々しく彼に抱かれる自分の姿――それを思い浮かべた瞬間、足の間からじゅわっ♡と蜜が溢れてくるのがわかった。

「一度くらい破ってみたいじゃないか。働いている最中の君は、いつでも一生懸命で真面目だから――俺の手で、ぐちゃぐちゃに乱してやりたい」

 いつもそう思っている、と付け加えられただけで、子宮の辺りがきゅぅんっ♡と疼く。
 この人は、全部わかっていっているのだ。私が彼のこういう言葉に弱いことも、それを直接口に出せないことも知っている。

「い、じわる……」
「その意地悪な男に惚れられたのが、君の運の尽きだ。さぁ千里――おしゃべりはここまでにしよう」

 そういうや否や、長い指先がショーツごとストッキングをずり下ろす。

「あ、ひっ……♡ひぁ♡や、あぁっ……♡♡」
「こらこら、声が外に漏れるぞ?」

 咄嗟に口元を手で押さえるけれど、それだけではもう堪えきることはできないだろう。
 いっそ裸の方がまだマシと言えるような格好にされて、お尻を突き出したまま彼に触れられる瞬間を待っているのだ。

「りょ、じ……さん……♡さ、触って♡も、我慢できない……♡♡♡おまんこ、熱いの♡♡諒二さんに触ってほしくて、もう……♡」
「あぁ、わかってる――俺もずっと、君に触れたかった」

 こんなところを見られたら、きっと私たちはお互いに大切なものを失ってしまう。
 わかっている。私はもとより、彼は立場もあって将来も有望されている人なのに――なのに、この状況にどうしようもなく興奮してしまっている自分がいた。

「お、犯し、て♡♡りょーじさんのおちんぽで♡千里のおまんこぐぽぐぽってしてほしい、の……♡♡♡も、我慢できない……♡♡」

 ゴク、と喉を鳴らした諒二さんは、背後からきつく私のことを抱きしめてくれた。
 そうすると、既に硬くなった彼の股間がぐりぐりっ♡とお尻に当たる。体がガクガクと震えて、下腹部が挿入を待ち望むように切なく疼き続ける。

「もちろん、今すぐ君のナカを滅茶苦茶にしてやりたいが――ここまで積極的な千里を見るのも久しぶりなんだ。なぁ、もう少しだけ……」

 そう言うと、彼はカチャカチャと音を立てながら着ていたスーツを乱し始める。
 背後なので諒二さんの姿は見えなかったけれど、音だけで与えられる情報が余計に私の官能を煽った。

「ぁう♡♡ん゛っ……♡ッく、ふっ♡♡ぁ、おちん、ぽ♡諒二さんのおちんぽだぁ……♡♡♡」

 やがて、ぴっとりとお尻に熱いものが当てられる。
 ドクンッ♡ドクンッ♡と力強く脈打つ彼の肉杭は、ゆっくりと割れ目に擦りつけられた。焦らすようにゆっくりとそれが動くと、溢れた蜜が幹に絡まって卑猥な音を立てる。

「ふ、ぁあっ……♡」

 ぢゅっ♡ぢゅるっ♡♡♡ぢゅぷぅっ♡♡ぢゅこっ♡ぢゅこっ♡ぢゅこっ♡♡♡
 濡れそぼったおまんこを徹底的に擦り上げてくる動きに、ガクガクと腰が揺れてしまう。

「ぁ゛♡♡ぁうっ♡ん゛ん~~~♡♡♡ッく♡むぅっ……♡♡」
「ッ……千里……」

 切なく名前を呼ばれただけで、バチバチと頭の中が痺れるのが分かった。
 早く犯されたい。早く彼と一緒に気持ちよくなりたい――ここまで来てしまうと、もうここがどこだとか、仕事の時間だとか、そんなことは考えられなくなってしまう。

「はっ♡♡諒二、さんっ♡♡♡はやくっ♡おちんぽ早く挿入れてぇっ……♡♡ずりずりって♡焦らすのだめ♡♡♡もっとおちんぽ欲しくなっちゃう♡♡♡」

 最早自分が何を口走っているのかもわからなくなった私に、諒二さんは笑いかけてくれる。
 敏感な乳首をキュッと指でつまみ、くにくにと引っ張ったり押し込めたりを繰り返しながら、熱が欲しいとヒクつく膣口に切っ先を押し当てるのだ。

「こんなにいやらしいおねだりができるようになったなんて、本当に――千里はいい子だ、なっ……♡」

 ごりゅっ♡♡♡ぬ゛る~~~♡どちゅっ♡♡ぬちゅっ♡ぬちゅっ♡ごちゅんっ♡♡♡

「ひぉ゛……♡♡♡ぁ゛♡あっ♡♡奥まで、一気に、ぃっ……♡♡」

 熱くて硬い諒二さんのおちんぽが、おまんこの奥まで全部入ってきた……♡♡♡
 蕩けて蠢動する肉襞を一気に擦り上げ、迷いなく最奥を突き穿つ動きに世界が反転する。
 強すぎる衝撃と快楽に、私は二本の腕だけで体を支えることができなくなっていた。
 机に突っ伏すような形で、お尻を高く突き出しながら――こんな恥ずかしい格好で犯されているという事実にも感じてしまう。

「ははっ……一気にナカが締まったな?」

 にゅちっ♡ぬぽっぬぽっぬぽっ♡♡♡ぐぷんっ♡
 小刻みに腰を動かして弱い場所を断続的に刺激し続けながら、諒二さんがむにっ♡とお尻を揉んでくる。

「や、ぁっ♡♡♡らめぇっ♡おまんこズコズコしながらっ……♡お尻揉むの♡♡♡気持ちよすぎる、からぁっ♡♡」

 声、我慢しないといけないのに……こんなに気持ちいいの、どうやっても我慢なんてできない……♡
 ずこっ♡ずこっ♡♡と力強くナカを突かれながら、なんとか唇を食い締めようとする。けれど、そうして私が力を入れるごとに膣内がきゅんっ♡と蠢動して、彼のおちんぽを締め付けてしまうことになった。

「や♡ぁぇ゛っ……♡♡らめ、なのにぃっ……♡♡♡」
「そうだそうだ――上手だぞ? うまく俺のことを刺激してっ……ナカをめちゃくちゃに突き上げられるの、好きだもんな?」
「す、きぃ♡好きです♡♡おまんこぐぽぐぽって♡気持ちいいところいっぱい突いてもらうの、好き……♡♡ひっ♡ぁ♡あっ♡♡♡」

 ぐぽっ♡ぬぢっ♡♡♡ずこずこずこずこっ♡♡ズンッ♡♡
 恥ずかしい言葉を口にした瞬間に、一番弱いところを突き上げられる。
 それと一緒にきつく乳首もつままれて、私は背中を反らしてそのままイってしまった。

「ぁ゛~~~~♡♡♡だめ♡これっ♡これだめぇっ♡♡♡ッひ♡おまんこと乳首♡いっしょに刺激されるのよわい、から♡♡♡」

 ガクンッ♡と一気に力が抜けた体を、諒二さんの腕が支えてくれる。

「はっ♡♡ッはぁっ♡♡♡」
「おっと、大丈夫か」
「ん……♡い、イっちゃい、ました……♡会社なのに♡♡会議室なのにイっちゃった♡♡♡」

 深い絶頂でまったく体に力が入らなくなる。
 そんな私を抱きしめたまま、諒二さんは薄く微笑んで唇を重ね合わせてきた。熱い舌が咥内に潜りこみ、ちゅぷちゅぷ♡と唾液をかき混ぜてくる。

「ん゛ぅ♡ん……♡♡ふ、はぁっ♡ぁっ♡♡」
「もっとイかせてやる。場所なんて気にならないくらい、たくさん気持ちよくしてあげるから――気絶するなよ?」
「へ……ッひ♡♡♡ぃ゛っ♡ッうンっ♡♡♡」

 ズンッ♡♡♡と最奥を一気に突き上げられたかと思うと、ぐりぐりと子宮口に亀頭を押し付けられる。
 目の前が明滅するような快楽に溺れそうになっている私を現実に引き戻したのは、無情とも思えるような電子音だった。

「ッ……♡♡」
「――神戸だ。あぁ、……言わなかったか? 今日は会議後直帰だ。……一応まだ社内にはいるが」

 深いため息の後に電話に出た諒二さんは、眉間にしわを寄せたまま電話の向こうの相手と会話を始めた。
 いや、それだけならまだいい。それだけだったら、私が黙っていればなにもわからないはずだ。
 だけど意地悪な諒二さんは、涼しい顔をして電話口に指示を出しながらゆっくりと腰を動かし始めたのだ。

「ッぅ……♡」

 ぬ゛~~~♡ともったいぶった動きでおちんぽを引き抜いたかと思うと、勢いよくそれを奥まで突き立てられる。

「ぉ゛、っ……♡♡♡」

 声、我慢しなくちゃいけないのに……♡
 明らかにこの状況を楽しんでいるであろう諒二さんは、もったいぶった抜き差しを繰り返しながらなおも私の胸を揉み続けている。

「……いや? 七階の会議室だが――あぁ。加納と一緒に議事録の作成中だ」
「りょ、っ……♡」

 涼しい表情を浮かべてそんなことを言う諒二さんとは対照的に、私は繰り返される抽送をどう堪えるかで精いっぱいだった。
 弱い場所を何度も何度も突きあげられて、目の端からボタボタと涙がこぼれ落ちる。

「んっ♡くぅっ……♡♡♡」
「いじめて? バカなことを言うな。俺がいつ加納を……あぁ。わかった、とりあえず後で一度顔を出す……」

 やっと、話が終わる――。
 緩やかな抽送で蕩かされた思考ではそれしか考えることができなくて、彼がスマートフォンを下ろした瞬間にため込んでいたものが決壊する。

「ッぁ゛♡♡♡は、ぁうっ♡」
「悪かったな。今井からだ――なんでも、俺が君のことをいびり倒しているんじゃないかと心配して連絡をくれたそうだ」

 心外だな? と低く笑った諒二さんが、そのままどんどんピストンの動きを強くしていく。

「んぁッ♡ぁ゛♡あっ♡♡♡」
「こんなに君のことを愛しているというのに」

 ぐぽっ♡ぐぽっ♡ぐぽっ♡♡どちゅどちゅどちゅっ♡ぬ゛ぱっ♡♡♡
 激しく責め立てられておまんこを突き上げられるたびに、目の端から溢れ出した涙が頬を伝って落ちていく。

「ぁ゛♡あっ♡♡だめ♡♡♡こんな激しくっ♡おまんこぐぽぐぽってされたらぁっ♡♡♡ひっ♡また♡イっちゃ、ぁあっ……♡♡♡」

 びくびくっ♡♡と体を震わせながら絶頂を極めると、それとほとんど同時に熱い精液が流し込まれる。
 びゅるびゅると勢いよく吐き出されたそれをお腹の奥に感じながら、強張った体を弛緩させる――諒二さんが受け止めてくれなかったら、本当にそのまま床に崩れ落ちていたかもしれない。

「はっ♡はぁっ♡♡♡」

 会議室で、セックスしちゃった――♡
 いけないことなのに。しかも仕事中に、こんなことをしてしまうなんて。
 絶頂の余韻が少し引いたところで、身なりを整えてくれる諒二さんのことを睨みつけてみた。

「……諒二さん、私の言いたいこと……わかりますよね」
「うん? 途中からは君も乗り気だっただろう――まぁ、電話中はよく耐えてくれた。君の可愛い声を今井に聞かれるのは業腹だからな」

 たっぷりとナカに吐き出された精液を綺麗に拭ってくれた彼は、最後にしっかりとブラウスのボタンまで留めてくれた。
 体に力が入らない私は椅子に座ったまま、ぐったりと彼に身を任せるしかない。

「も、会社でこんなこと……次からは絶対にしませんからね……!」
「つれないことを言うなよ――あぁ、それと」

 ニッと笑った諒二さんが、自分が着ていたスーツのポケットから小さな機会を取り出した。
 スティック状のそれを軽く操作したかと思えば、彼はそれを私の耳元に近づけてくる。

『はっ♡♡諒二、さんっ♡♡♡はやくっ♡おちんぽ早く挿入れてぇっ……♡♡ずりずりって♡焦らすのだめ♡♡♡もっとおちんぽ欲しくなっちゃう♡♡♡』
「……は!?」

 少し音質は悪いけれど、鼻にかかる甘ったるい声は確かに私のものだった。
 快楽に浮かされた自分の口からこぼれ落ちる言葉の卑猥さに、思わず血の気が引いていく。

「レ、レコーダーは使わないって……」
「君のレコーダーは使わない、と言ったんだ。一応こういう類のものはあれこれと持ち歩いているタイプでな……出張中も、これで寂しさを紛らわせてもらうとしよう」

 したり顔の諒二さんに、私は言葉が出なくなってしまった。
 もちろん私よりも一枚も二枚も上手な人であるのはわかっていたけれど――こんな、こんな子どもじみたことまでするなんて。

「……け、消してください」
「男の一人寂しい海外出張だぞ。多少の癒しは欲しいところだ……というわけで、消すことはできんな」

 上機嫌に笑う諒二さんには、きっともう何を言っても無駄だ。
 ぐったりとした体をなんとか持ち上げて、ノートパソコンを片手に会議室を後にする。今井さんに一度戻ると言ってしまったから、彼も開発部に顔を出す必要がある。

「あっ、遅いじゃないですか部長!」
「すまんな、議事録作成に時間がかかっていた。……加納、先ほどのものだが、マーケティング部の方に送っておいてくれ。内容は問題ない」

 短くそう指示を出すと、諒二さんは今井さんと一緒に自分のデスクに戻っていった。
 一応形だけはできている議事録だけど、これを送って大丈夫なものか――誤字などがないかを確認して、細かいところを補足していると、そのうち別の同僚がやってきて心配そうに顔を覗き込んできた。

「加納さん、……大丈夫? その、部長と会議だったって……」
「は、はい。大丈夫です、けど……どうかしましたか?」
「だって加納さん、目元腫れてるし――泣くほどあの人に怒られたの?」
「え……」

 部長厳しいから――そう言って心配そうな表情を浮かべている同僚の言葉に、思わず目元に触れる。
 そういえば、まだメイクもちゃんと直していない。

「こ、これはっ……」
「もし耐えられなくなる前に、誰かに相談した方がいいんじゃ……」
「だ、大丈夫ですっ! ちょっと、色々あって……」

 我ながら苦しい言い訳をなんとか口にすると、そのしどろもどろの様子がさらに同僚の心配を煽ったらしい。
 このままでは本当に、諒二さんが私をいびり倒しているように見えてしまう。

「……お前たちは俺のことを一体何だと思ってるんだ。俺がいつ、どこで、加納をいじめたと?」
「げっ、部長! いや見てくださいよ! 加納さんの目元……部長ったら、加納さんにばっかり厳しく当たって! 俺たち開発部の女神ですよ!?」
「お前たちの女神? 笑わせるなよ。彼女には期待しているが、泣くほど追い詰めたつもりはない」

 今井さんとの話を終えた諒二さんが、心の底から心外だと言わんばかりの表情で私たちの会話に割り入ってくる。

「そ、そうですよ! あの、ただ……会議室の埃が」
「えっ、加納さんアレルギーなの? それ大丈夫……?」

 なんとか話題を逸らすと、頃合いを見計らって諒二さんは帰ってしまう。
 私も議事録を作り終え、メールを送った後に定時退社することができた。

(でも、出張かぁ……)

 体はまだ少し熱っぽくて、情事の余韻を微かに残している。
 仕事だから仕方がないと思いつつも、週末に会えないと思うとやっぱり寂しい気分になる。

「……仕方ないよね。お仕事なんだし」

 彼が出張から帰ってきたら、また一緒に時間を過ごすことができるはず。
 そう自分に言い聞かせて、私はそそくさと帰路に就いたのだった。

● ● ●

「加納」

 諒二さんのいない週末を過ごして数日。
 火曜日には出張を終えて帰ってきた彼は、週末まで怒涛の勢いで自分の仕事をこなしていった。
 どうやら香港支社でなにかがあったらしく、それこそ仕事を親の仇のように潰して回っているのだ。

「加納!」
「は、はいっ!」
「今日残れるか? 営業部から回された仕事で、処理が終わっていないものがあるんだ」
「きょ、今日ですか」

 そして、金曜の午後。
 月末近いということもあって、普段は自由な雰囲気の開発部もどこかピリピリしている。クライアントへの大きなプレゼンも差し迫っているということで、諒二さんも朝から忙しそうだった。

「予定でもあるのか?」
「いえ――大丈夫です。でも、営業部からのお仕事って……?」
「特定のクライアントに回すデータを用意しろと言われてな。本当だったら自分のところで終わらせろと言いたいんだが……なにやら営業部でトラブルが起こっているらしい」

 営業部の部長は、諒二さんと同じく創業者一族の出身だ。
 つまるところ彼とは親戚関係なのだが、その口ぶりを聞くにあまり仲がいいというわけではないらしい。

「小さなミスで君を開発部に送り込んできたかと思ったら、処理が追い付かないと泣きついてきたんだ。ここで幸助……神戸営業部長に恩を売っておけば、後々こちらも無理を聞いてもらえそう、というのが本音でな。君には悪いが、営業部の勝手は俺よりわかっているだろう?」

 なるほど、そういうことか。
 いっそ清々しいほどの恩の売り付けに、私は小さく笑いをこぼした。

「わかりました、大丈夫ですよ。確かに、営業部のことでしたら多少お力になれるかと思いますし」
「悪いな」

 本当は、週末だから諒二さんと一緒に過ごせると思ったけど――この様子を見るに、なかなか難しそうだ。
 それならいっそ仕事を頑張って、すっきりとした気持ちで休日を迎えた方がいいだろう。
 そう思いながら、諒二さんから送られてきたメールの中身をチェックする。

「あれ、これって……営業部の成田さんが担当じゃなかったでしたっけ」
「ん? あぁ、俺も詳しいことは知らんが――君を追い出してから、仕事のやり方が古いものに戻ったという話を聞いている。効率が下がったとかで、今期の営業部はズタボロだ」

 メールの中身を覗きながら質問すると、諒二さんからそんな答えが返ってくる。
 成田さん――営業部の女帝と呼ばれているアシスタントの女性は、繁雑な業務を改善しようとすると「仕事で楽をしようという考えが間違っている」といって聞かない。
 それをなんとかして効率化しようと頑張ってきたのだが、とあるミスを発見されてしまった。直接的な自分のミスではないにしろ、これは問題だ――そういうことになって、営業部にはいられなくなってしまったのだ。

「大体、君の場合は自分のミスですらなかったんだろう。それをなすりつけて、ウチに送り込んできたんだ。今更仕事が終わらんから手伝えと言われても都合がよすぎる」

 明らかに機嫌が悪そうな諒二さんに向かって曖昧に微笑みながら、送られてきた仕事を確認する。
 従来通りのやり方だと少し時間がかかるので、以前はマクロを組んでいたのだが――今からそれを組みなおすのは少し骨が折れる。

「……予定もないし、大丈夫かな」

 たまに遅くなっても、今日はきっと帰って寝るだけだ。緊急の用事もない。
 じっくりと仕事に取り掛かることができる環境ではあるので、やれるところまで進めてしまおう。
 そう思って処理を進めていくと、いつの間にかその作業に熱中してしまう。
 営業部の方からお願いされた仕事は、少し前までやっていたこともあって予定していたよりも早く終わりそうだった。
 すると、そのタイミングで諒二さんから声がかかる。

「そうだ、加納――ついでに後で資料室に来てくれないか? 古い資料をデータ化したいんだが、こういうのは君の得意分野だろう」
「わ、わかりました! データ化するのは来週以降で大丈夫ですか?」
「問題ない。軽い資料のピックアップに付き合ってくれ」

 これは、本格的な残業になりそうな予感……!
 仕事をする手を少し早めると、今井さんがまた私に飴玉を差し入れてくれた。

「部長と残業かぁ……ご愁傷様……」
「ありがとうございます……! でも、資料のピックアップっておっしゃっていたので、それほど時間はかからないかと」
「いやぁ、あの部長と二人で残業っていうのが俺には耐えられないね……」

 前によっぽど詰められたことがあるのか、今井さんは「本当にお疲れ様」といってもう一個飴を多く置いていってくれた。
 確かに、商品開発の際のプレゼンやミーティングにおいての彼は相当厳しいと聞くし、今井さんのトラウマになっている部分があるのかもしれない。
 それと比較すると私の仕事はあくまで事務だし、そこまで過酷なものでもないだろう。

「えっと……とりあえず、これだけでもさくっと終わらせておかないと……」

 諒二さんはクライアントとのミーティングを終えて、どうやら先に資料室へと向かっているみたいだ。
 そんな彼を長く待たせるわけにはいかないので、先に頼まれた仕事を終わらせて営業部の部長宛てにメールを送っておく。

「よし……!」

 時間は現在17時。なんとか定時前にメールを送ることができたので及第点だろう。
 一応先に荷物をまとめてから資料室に向かうと、彼は大量の書類を机に積み重ねているところだった。

「お待たせしました……!」

「営業部からの仕事は終わったか?」
「はい、大丈夫です。神戸――営業部長宛にメールも送ってあります。今まで使っていたツールが使えなかったので、来月から同じようにお手伝いするのは難しいかもしれませんが……」

 既に私の所属は開発部に移されていて、営業部で使用しているツールは使うことができない。今回はたまたま私の方に時間があったけれど、来月もそうとは限らないのだ。

「わかった。それは俺の方から幸助に伝えておく。まったく、泣きつくくらいなら最初から手放さなければいいものを」

 忌々しそうにそう告げた諒二さんは、積み重ねた書類を段ボールに詰め込みながら深い息を吐く。
 スーツは脱いで椅子に掛けられ、腕まくりをして力仕事にいそしむ彼の姿は早々みられるものじゃない。珍しい格好に、つい胸が高鳴ってしまう。

「……君の能力を買っている部署は、ウチや営業部以外にもたくさんある。マーケティング部からも、先日の議事録がしっかりまとまっているのを評価されていた」
「え、そうなんですか?」
「あぁ。だが、俺は君を他の部署に渡す気はないからな……さて、この段ボールの中に、俺が本社に就任する前の取引データが入っている。スキャナーで取り込んで社内クラウドに保存しておいてほしいんだ」
「わかりました。他にまとめておくデータとかはありますか?」
「いや……一応検索しやすいように、わかりやすくラベルを付けておいてくれると助かるが」

 なかなかの量を誇るデータなので、それをすべてスキャンするのは時間が必要だ。来週でもいいと言っていたから、スキャナーが空いている時間を見計らって仕事を勧めさせてもらおう。

「それほど急いているわけでもないが、こういうデータはあった方が君も仕事が進めやすいだろう」
「そうですね、過去の案件とか探すのにいちいち資料室当たってると時間がかかりますし……じゃあ、これ私のデスクに運んでおきますね!」

 私が来たのが遅かったのか、それとも彼の仕事が早かったのか。
 ほとんど何もすることがなく仕事が済んでしまった。これは定時で帰れそうだ――そう思いながら資料室のドアに手をかけると、ふっと視界が暗くなる。

「諒二、さん?」
「まぁ……ここまでの話は建前だ。もちろんデータの整理は必要だが、本当にそれほど急ぎのものじゃない」

 ドアノブにかけた私の手に自分の手を重ねて、諒二さんはそっと背後から抱きしめてくる。
 嫌な予感がして背後を振り向くと、どこかサディスティックな色を宿した視線がこちらを見下ろしていた。

「本当は、明日――早くても今日の夜までは待とうと思っていたんだが……我慢にも限界がある」

 はぁ、と息を吐いた諒二さんが、ぐりぐりと私の方に頭を押し付けて甘えてくる。
 普段まずそんな姿を見せてくれるような人ではないので、驚きと期待感が一気に押し寄せてきた。

「だ、大丈夫ですか……?」
「大丈夫? これが大丈夫に見えるのか? ……香港に行っている間も、君の声を聞くことすらできなかったわけだし」
「それは――お、お仕事ですし。お忙しいのもわかってます、から」

 する……と、腰元に手が伸びてきたのは気のせいではないだろう。大きな手のひらがゆっくりと腰を撫でていく動きは、どことなく艶めかしい。

「諒二さんっ? あの、私――こ、これからデスクに、戻らないと」
「やるべき仕事は終わらせてきたんだろう? 君はそういう律義な性格の人間だ。……それに、今日は週末。今更資料室で埃まみれになりながら仕事をしたがる人間なんていない」

 声に艶が混じり始め、思わず体がぞくっと震える。
 腰を撫でていた手が徐々に下がり、スカートの裾をぐっと持ち上げたところで、私はなんとか首を横に振った。

「ここ、会社ですよ……だめ、です。もう流されたりしませんから……!」
「一度も二度も変わらないだろう。それに、そう言いながら声が期待で震えているぞ? 君も、寂しかったんだろう」

 つつ……ともったいぶった動きでお尻を撫でる彼の手は、やがてストッキングを捉える。
 今度こそ破られてしまうんじゃないかという危機感を覚える私の耳元で、彼はそっと私の名前を呼んだ。

「千里」
「っ……♡」
「千里。ずっと君に触れたかったんだぞ? もう限界だ……ただでさえ週末しか会えないのに、その週末にまで出張をねじ込まれるなんて――この一週間、どこで君を閉じ込め、犯してやろうかと考えていた」
「そん、なっ……仕事中に、変なこと考えないでください……!」

 あれだけ猛烈に仕事をこなしていて、更にそんな妄想まで膨らませているなんて、この人の頭の中は一体どんな動きをしているんだ。
 恋人の頭の中を見てみたい気持ちと、やっぱりものすごく後悔しそうだという気持ちがせめぎ合ってしまう。

「君はなにも考えていなかったのか? 俺がいない間、なにも?」
「それ、はっ……か、考えないわけじゃ、ないですけど――」
「先日のレコーダーの音声を聞いてしのごうとしたが、余計に気が昂るばかりだ。やっぱり、触れるなら本物の千里じゃないと」

 ちゅ、とうなじを軽く吸われて、背筋に震えが走る。

「ん、ぅ……♡」
「ここで、君に触れたい。大丈夫――誰も来やしないさ。この前だってそうだったろう?」

 やわく囁かれる言葉に、頷いてしまいそうになる。
 この前は会議室を使用するための予約を取っていたから人が近づかなかったにすぎないし、第一前回がよかったから今回も会社でセックスしていいという話にはならないだろう。

「せ、せめてホテルに……」
「だめだ。ここで抱く――ほら、もう下着だって濡れてるだろう?」

 くに、とストッキングの上からショーツを押し込まれて、その中心の熱さに気付く。じわりと微かに湿ったその場所は、確かめるように指で押されるたびに鈍い疼きを生み出してきた。

「ぁ♡あっ……♡だめ、ぇっ……♡♡」
「説得力がないな――こんなに物欲しそうな顔をしながら拒絶をしても、余計に俺のことを煽るだけだ」

 後ろから顔を覗き込まれ、そのまま唇が重なり合った。
 熱い彼の唇は、角度を変えて何度も私のそれを食む。

「んぅ♡むっ……♡んむぅっ♡♡♡ちゅ♡……ん、ちゅ♡」

 下唇を軽く食まれ、ゆっくりと舌が挿入されると、私の体からは簡単に力が抜けてしまう。それを見計らって、諒二さんの腕がきつく体を抱きしめてきた。

「は♡ぁむっ♡♡ん~……♡♡んはっ♡はーっ♡はーっ♡♡」
「キス一つでこんな風になってしまうんだ。君だって欲求不満だったはずだ……ほら、ここに座るといい」

 弛緩した体を抱きかかえられ、反論したくても上手く声が出せない。
 そうして私のことをオフィスチェアに座らせた諒二さんは、腕組みをしてなにかを考えるような仕草を見せる。

「りょ、じ……さん……?」
「いや――そうだな。少しいいことを思いついた」

 そういうや否や、彼は私の足を持ち上げ、左右のアームレストにその足を乗せてしまった。

「なっ……」
「うん、あとはこれを――確か、暗いのは大丈夫だったな?」
「え? だ、大丈夫ですけど……諒二さんっ!?」

 しゅる、と軽い衣擦れの音を残し、彼がネクタイを解いた。
 両足をアームレストに乗せている状態だけでも相当恥ずかしい格好なのだが、更にその解いたネクタイを目元に当てられ、目隠しをされてしまう。

「やっ……」
「あぁ――たまには、こういうのもいいな。本格的にオフィスで悪いことをしているような気分になってきた」

 ゴクリと彼の喉が鳴ったのを聞くに、今の私は恐らく相当卑猥な体勢なのだろう。足を閉じようとしても上手くお腹に力が入らないし、前が見えない不安で大きく体を揺らすことすらできない。

「大丈夫……なにも心配しなくていい。君のことを気持ちよくするだけだから」

 そう言って、彼は椅子のロッキングも外してしまう。
 視界が塞がれた状況で浮遊感が襲ってくると、何が起こったのかわからずに体が強張った。

「リラックスしてくれ。そう――いい子だ……そのまま、君はなにもしなくていい」

 長い指が、半分ほどずり下ろされたストキングを完全に脱がせてしまう。
 彼はこうしたものには非常に気を遣ってくれていて、破ってみたいとは言いつつも本当に一度も破かれたことはない。
 丁寧に爪先からそれが脱がされると、妙な解放感に体が震えた。

「ッう……や、待って……諒二さん、あのっ」
「ん? 見えないのは不安か? それなら――実況してやろうか。俺は今、まとうものがなくなった君の素足に触れている。……柔らかいふくらはぎを撫でて、太腿に――」

 彼の言葉と同じように、その手がゆっくりと爪先から足の付け根へと昇ってくる。
 爪も立てず、優しく触れるだけのその動きは見えないからこそ官能的で、気付けば私の唇からは甘ったるい声がこぼれてしまっていた。

「ぅ、あっ……ぁ、んっ♡」
「スカートも――汚してしまっては困るな。ショーツと一緒に脱いでしまえ」

 視界を奪われ、恥ずかしい格好で一枚ずつ服を脱がされる――ジャケットとスカート、そしてショーツを脱がされた私は、ひたすら彼の言いなりになってじっとしているしかない。

「りょ、諒二さん……私、今すごい格好してるんじゃ……」
「身に着けているのはブラウスだけだな。あぁ――ブラジャーも不要だ。これも取ってしまおう」

 余計なことを言ってしまった……。
 内心ものすごい勢いで後悔しながらも、どこかで期待している自分がいる。こんな、変態みたいな格好をさせられているのに、内心でドキドキしてしまっているのだ。

「……諒二、さん。あの――きょ、今日のブラジャー、なんですけど」

 フロントホックです、と小さく告げると、諒二さんが息をのむ音が聞こえた。
 別に、こうなることを予想していたわけじゃない。ただ、もしかしたら週末だし彼の家に泊まるかも――そう思って、少しかわいいデザインのものを選んだだけだ。

「なるほど? じゃあ……こうすれば、外れるわけか」
「ぁ、あっ♡や、ぁあっ……♡♡♡」

 くっ、とマグネットになっているホック部分に指をかけた諒二さんは、いともたやすくその戒めを外してしまった。
 それでも完全に下着を外すことはしないあたり意地悪だ。

「……すごい格好だな」
「だから、い、言ったじゃないですか……!」
「いやいや、褒めているんだ。いつもよりいやらしくて、可愛い。……本当に、立てなくなるくらいぐちゃぐちゃにしてやりたくなるよ」

 低く笑った諒二さんが、太腿をぐっと掴んでくる。
 足の間に顔を寄せたのか、とろりと蜜をたたえたその場所に軽く息が吹きかけられた。

「ぁ、ひっ……♡ひぁ♡あっ♡♡」

 熱い舌が、そのまま淫裂をなぞる――にゅぷっ……♡と水音を立てて挿入された舌先が、丹念に割れ目をなぞってきた。

「ひっ、くぅっ♡♡♡ん゛ぁ♡あっ♡あ……♡」

 ちゅぷっ♡ぢゅるっ♡ぢゅっ♡♡ぢゅるるっ♡♡♡
 浅い位置で動かされる舌が、蜜と唾液を混ぜあわせて卑猥な音を立てる。

「ぁ♡ぅんっ♡♡♡は♡ぁ゛うっ♡♡」

 自分がなにをされているのかが見えない分、想像ですべてを補うしかない。
 頭の中に思い描いた自分の姿は、あられもない格好でひたすら彼に愛撫されている――そんな自分を想像して、余計に体が熱くなった。

「り、りょぉじ、さんっ……♡はっ♡♡やら、ぁっ♡♡♡」

 体をもじもじとくねらせても、諒二さんはおまんこを舐める動きを止めてくれない。
 ちゅぷちゅぷと音を立てて愛蜜をかき混ぜる動きは、まるで蛇のようだ。
 抵抗できない私はひたすら甘ったるい声を上げながら、与えられる快楽に従うことしか許されていない。

「は♡♡♡はひっ♡もっ♡♡おまんこぐちゅぐちゅってぇ♡♡舐めちゃだめ♡舐めるのだめぇぇっ……♡♡」

 なんとか声の大きさを抑え、半泣きになりながら諒二さんに懇願する。
 すると、そのお願いを聞き届けてくれたのか、彼はぴたりと舌先での愛撫を止め、ふっと息を吐いた。

「んくぅ……♡」

 それだけでも体は昂ってしまうのだが、クンニをやめてくれたのはありがたい。
 ようやく一息つけるかと胸を撫で下ろした瞬間、艶めいた低い声が鼓膜をくすぐってきた。

「舐められるのは嫌なんだな?」
「い、いやっていうか……あの、め、目隠しされて、そこを舐められると――変な感じが、するんです」
「……そうか」

 妙に含みを持たせた返答の後、ほんの少しの静寂が流れる。
 ――一度この場をリセットして、それこそ近くのホテルとかに行くならなんの問題もない。ただ、ここが会社だということが一番の問題だ。
 ここで彼がその選択肢を取ってくれるなら、土日は起き上がれなくなるまで抱き潰されてもいい。
 そう固く心に誓った瞬間、楽しそうに弾んだ声が飛び込んでくる。

「じゃあ、指にしようか」
「は、ッぉ゛……♡♡♡」

 ぐぢゅんっ♡♡♡と突き立てられた指先が、ぬかるんだ媚肉をぬぢぬぢっ♡と刺激する。
 蕩けて熟れたその場所は、いきなり人差し指と中指を挿入されても難なく飲み込み、それどころか嬉しそうにきゅんきゅんと収斂を繰り返した。

「ぁ゛♡♡♡は、ひぃっ♡♡」
「うまそうに吞み込んでくれたな――気に入ってくれたようでなによりだ」

 ぐぢっ♡ぬぽっ♡ぬぽっ♡ぬぽっ♡♡♡ぢゅぷぢゅぷぢゅぷっ♡♡♡
 バラバラに動く二本の指先が、徹底的に私の弱い場所をなぞり上げ、撫で擦り、そして隘路を押し広げてくる。

「あ゛っ♡ぁ゛あッ♡♡♡らめ♡いきなりおまんこぐぽぐぽしないれぇっ♡♡♡弱いの♡そこっ♡指ぐりぐりしてるところだめなのぉ……♡♡♡」
 彼の指先が粘膜を掠めるたびに、腰が跳ねて椅子が揺れた。
 ガタガタと音を立てるそれを気にする余裕はない。卑猥なダンスを踊るように腰を揺らしながら、心のどこかで彼がもっと悦い場所を可愛がってくれるのを期待してしまっている。

「ん゛ぅっ♡♡♡ッくぅ♡あっ♡あ♡りょーじしゃ♡♡♡りょぉじ、さんっ♡♡♡」
「あぁ――ここにいる。大丈夫だ……君を気持ちよくしているのは俺の指先だ。見えていなくても、わかるだろう?」
「わか、りますぅ……♡諒二さんの指♡せ、千里のおまんこぐちゅぐちゅして♡♡気持ちよくしてくれてるの、わかります……♡♡♡」

 にゅぽ♡にゅぽ♡♡ぬぢぬぢぬぢっ♡♡
 リズミカルに指を動かされて、ぐっと喉が反った。視界を封じられるだけでこんなに気持ちがよくなるだなんて、今まで知らなかった。

「はっ♡♡ぁ゛うっ♡ん゛っ♡♡ンっ♡♡♡」
「具合がよさそうだ――じゃあ、こちらも一緒に触ったらどうなるかな」
「え――ぁ゛っ♡♡♡ひぁあっ♡ぁんっ♡♡ぁ゛っ♡♡♡」

 少し上ずった声のトーンでそう告げられたかと思うと、ビリビリとした鋭い快感が体を駆けあがってくる。

「や、やあぁっ……♡♡ク、クリトリスだめ♡♡♡ぃ゛♡あ♡♡ぁ゛あっ♡♡♡」

 ぢゅぷぢゅぷっ♡♡と中指と人差し指でおまんこの中を掻き回しながら、親指が敏感なクリトリスをコロコロと転がし始める。
 膣壺から与えられる刺激とはまた違う、鋭く強烈な快楽に身を焼かれた私は、ガタガタと椅子を揺らしながら激しい絶頂の波に浚われることになった。

「はっ♡♡♡ぁひっ♡♡ぉっ♡らめ♡♡クリちゃんとおまんこ♡♡♡いっしょにいじめないれぇっ♡♡♡」
「おっと、そんな大きな声を出したら本当に人が来るかもしれないぞ? 時間的に――警備の人間か。まぁ、俺は見られたところでどうということはないが……」
「だ、めぇっ……♡やっ♡やらっ♡♡♡ッお゛……♡」

 声、聞こえちゃう。
 我慢しないといけないのに、諒二さんの指先がそれを許してくれない……♡

「ッふ♡♡んぐぅっ……♡ッひ、ぃっ♡♡♡」

 必死に唇を噛んで声を我慢しようとしているのに、諒二さんはどんどん私の弱い場所を擦り上げ、クリトリスを押し潰してくる。

「や、ァっ♡♡やだ、ぁ゛っ♡あ♡♡あ゛♡ッ~~~♡♡♡」
 あまりの快楽に、頭の中が真っ白に塗りつぶされる――♡♡
 ガタガタッと椅子を揺らして絶頂を極めた私を更に追い詰めるように、諒二さんは自分のおちんぽをぐぷっ♡と一気に挿入してきた。

「ひぅ♡♡♡やっ♡おちんぽらめ♡♡一気に入れたら、ぁ゛っ♡♡♡イってるの♡今イってりゅ♡♡ん゛っひ♡ぃ゛っ♡♡♡」
「あぁ――ナカが、すごく締まっている。気持ちいいんだな、千里……?」
「イイ♡イきながらおまんこ突かれるのきもちよすぎる♡♡♡これらめぇっ♡♡我慢できない♡ん゛ぁ♡ぉ゛っ♡お゛♡♡♡ん゛ぉお゛ッ♡♡♡」

 ぐっぽぐっぽぐっぽ♡♡♡ぬ゛ろ~~~~♡♡♡どちゅっ♡ぬ゛ろ~~~~♡♡♡どちゅっ♡
 緩急をつけておまんこ突き上げられるのきもちよすぎる♡
 もう声なんて我慢できない♡♡気持ちいいのいっぱいで頭おかしくなりそう♡♡♡

「君の好きなクリトリスも、いっしょに触ってやろう……こんなにクリちんぽ勃起させて、そんなにちんぽ挿入れてほしかったのか」
「そう、れふぅっ♡♡♡りょぉじさんのおちんぽほしかったの♡♡寂しかったよぉ♡♡ん゛っ♡んぉ♡お゛♡♡♡ッほ♡♡」

 だって、丸ごと一週間の間彼に触れてもらえなかったんだ。
 寂しいし、切なかった。仕方がないことだってわかっていたけど、それでも寂しいものは寂しい。
 この手に触れてほしいと、体が熱を持て余すほど――私はもう、彼なしでは生きられなくなってしまっているのだ。

「そうか――それなら、とびきり愛してやろう。週末は俺のマンションから、出られると思うな」

 ずっちゅ♡ずっちゅ♡ずっちゅ♡♡♡ぐりぐりぐりっ♡♡♡
 ゆっくりと、まるで言い含めるように腰を動かしながら、諒二さんが甘く囁いてくる。

「わかりました♡わかりました、から……♡♡目隠し取って♡諒二さんのお顔、みたいよぉ……♡」

 いつまでも彼の顔が見られないのは余計に切ない。
 そう思って懇願すると、諒二さんはそっと目元を覆い隠すネクタイを外してくれた。

「ぁ……♡諒二、さん♡♡んんむっ♡♡」

 視界が明るくなった瞬間に荒々しく唇が奪われ、舌が上あごをずろぉ♡となぞる。
 それと同時に敏感なクリトリスをしこしこと指で扱きあげられて、私は言葉を発することもできずに絶頂を迎えることになった。

「ん゛んぅ~~~♡♡ん゛ぅ♡む゛、ぅっ♡♡♡んむ♡」

 逃げ場のない快楽に追い立てられながら、彼の背中に腕を回した。
 全身で諒二さんのことを感じながら、軽い絶頂を繰り返す――クリちんぽを絶えず刺激されながらのピストンは気が遠くなってしまうほどに気持ちよくて、中に回した指には知らずのうちに力がこもった。

「ッひ♡ん゛ぁ♡♡♡ぁ゛~~♡♡♡諒二、さぁんっ……♡」

 ぬごっ♡ぬごっ♡♡と気持ちいいところを突き上げられながら、私は必死に彼の名前を呼んだ。
 すると、諒二さんは私のことを抱き上げてきつく腕の中に閉じ込めてくれる。

「千里――舌を」
「んぇ……♡ん゛ぅ♡♡ん……ちゅっ♡♡♡ちゅぱっ♡」

 ぐちゅぐちゅと唾液をまぶしながら舌を絡めあい、お互いの体を強く抱きしめ合う。
 わずかに空いた体と体の隙間すら惜しいと思うほどに抱き合いながらも、諒二さんは徐々に抽送を強め、射精の準備を始めていた。

「ん゛ぉ♡お゛っ♡お゛♡♡♡ピストンしゅごい♡♡♡種付け間際のガチピストン♡♡♡会社でっ♡会社で種付けされちゃう♡♡♡気持ちいいのたくさんキちゃう♡♡」
「そうだ――まずは一度、君のナカにたっぷりと注いでやるからな、ッ……♡」

 そういうや否や、子宮を強く突き上げられて飛沫が流し込まれた。

「ッい゛……♡♡♡」

 どぷっ♡♡♡びゅるるるるッ♡ぢゅぽっ♡びゅくんっ♡♡♡びゅっ♡♡
 子宮の奥底に叩き込まれる精液の感覚だけでも、連続絶頂を繰り返した私の体は感じ入ってしまう。

「ん゛ぁ……♡♡♡りょーじさんのせーえき♡♡お腹にいっぱい……♡♡♡」

 熱い彼の欲望を受け止めながら、もう一度キスをする。
 寂しさを埋め合うようなセックスが一度で終わるはずもなく――結局そのまま会社でもう一回、そして彼のマンションで週末を過ごした。
 当然、その間部屋から出ることはおろか、ろくにベッドから出ることも許されなかったけれど――それはまた別の話だ。

● ● ●

「いやぁ、加納さんがついてきてくれて本当に助かったよ! ホテルの手配から新幹線のチケット、食事場所のリサーチまでお世話になりっぱなしで」
「いえ……ちょうど友達が大学時代に住んでいたので、美味しいお店を聞けたんです」

 予定されていた出張にやってきた諒二さんと今井さん、そして私の三人は、無事にクライアント先でのプレゼンを終えることができた。
 私がしたことは現場のサポートや諒二さんの秘書的な仕事ばかりなのだけれど、開発部のツートップが織りなすプレゼンテーションは門外漢の私であっても溜息が出るほどに素晴らしいものだった。

「今回は今井のプレゼンが決め手だな。来季、期待していいんじゃないか」
「いやぁ、俺はあんまり偉くなりたくないんですよ……現場が好きなんで、その辺部長の方でいい感じにしといてください」

 予約していたビストロでの夕飯を終えて、二人ともお酒が入って上機嫌だ。普段よりも雰囲気が柔らかいのは気のせいじゃないだろう。
 特に、諒二さん――黒豹、とも評される鋭い目つきが緩んでいるのはかなりレアだ。彼とお付き合いをして一緒にお酒を飲む機会もあったが、こういう表情はあまり見ることができない。

「つーか、今日のホテルって加納さんがとってくれたんだよね? 結構いいとこ止まらせてもらえたなって感じだけど」
「あ、それは――神戸部長が指定されたんです。定宿なんですよね?」
「あぁ。出張の際にはいつも使っているから、会社の方でも把握していたらしいな。経理からのおとがめはナシだ」

 指定されて予約を取ったホテルは、明らかにビジネス用とは思えない市内一番のラグジュアリーホテル――普通だったらものすごい顔をした経理課のお姉さんに叱られてしまうところだが、部長の定宿ということもあって難なく許可が出た。
 諒二さんと今井さんはともかく、私までこんなホテルに泊まれるとは思っていなかったので、若干恐縮してしまう。

「さっすが部長!」
「調子がいいな……まぁ、一仕事を終えたんだ。ゆっくり疲れを癒してくれ――それと、加納」
「は、はい」

 苗字を呼ばれたかと思うと、そっと彼が耳元で囁く。今井さんには聞こえないくらい小さな声だ。

「……荷物を置いたら、三十八階まで」

 そっと囁かれた言葉に、背筋がゾクゾクした。
 三十八階は彼が泊っているフロアだ。そこに呼び出されるってことは――目的は、言葉にされなくても理解できる。

「わかり、ました」
「え? どーしたんですか二人とも。なにナイショの話してるんです?」
「……君には関係ないことだ。今井、大分酔ってるだろ」

 今井さんと諒二さんが二人で話しはじめるけれど、私はもうそれどころではなくなっていた。
 普段彼の家に泊る時ならまだしも、出張先で諒二さんの部屋に読んでもらえるとは思っていなかったのだ。

(でも、せっかくだし……いいよね? 諒二さんが来いって言ってくれてるんだから……)

 今井さんには悪いけれど、期待感がどうしても大きくなる。
 ドキドキしたままホテルに到着すると、今井さんは更にラウンジで飲みなおすと言いだした。

「ね、加納さんと部長もどうっすか」
「いや、俺は遠慮しておく。君も俺がいると存分に酒を楽しむことはできないだろうし――俺は俺で、楽しみがあるからな」
「楽しみ? まぁ、じゃあいいですけど……加納さんは?」
「わ、私も……今日は疲れたので、休ませていただこうかなって」

 嘘はついていない。疲れているのは本当だし、一応休む――ことはできると思う。多分。
 今井さんに頭を下げると、彼は私と諒二さんを交互に見て目を瞬かせた。

「そ、そう? じゃあ……俺はラウンジいくんで! お二人とも、後はごゆっくり」

 にこっと笑った今井さんはそのままラウンジへと向かっていくが、残された私たちはお互いに顔を見合わせることになった。

「……諒二さん、今井さんになにか言いました?」
「俺はなにも。ただ、彼はとても――なんというか、目ざといんだ。情報の入手が早いというのは仕事でも非常に役に立つスキルだが」

 もしかして、今井さんはなにかに気付いてしまったのかもしれない。
 とはいえ彼がべらべらと私たちのことを話すような人でもないというのはわかっている。一度諒二さんと別れて自分の部屋に戻った私は、スーツを脱いで大きく息を吐いた。

「疲れたぁ……」

 いくらサポートとはいえ、クライアントの前に出るのは今でも緊張する。
 営業部の頃は裏方でのアシスタント業務が多かったし、開発部でも基本的には事務処理ばかりしているため、こうした場はあまり得意ではなかった。

(でも、うまくいってよかった……)

 誰かの役に立つことは、相手が誰であっても嬉しいだろう。
 だけど、その相手が諒二さんならなおさら――少しだけでも力になれてよかったと、心から思える。

「それに、こんなホテルに泊まれるなんて思わなかったし――本当に、諒二さんってすごい人なんだ……」

 大企業の創業者一族――今まで彼と付き合ってきて、それを強く感じる場面はあまりなかった。
 色々と独断で仕事を進めることが多い人だけど、それはひとえに彼の有能さの証左だ。家のことであれこれ言われるのは、恐らく諒二さんも好きじゃないだろう。
 でも、こういう――ちょっとしたところに、格の違いというか、立場の違いを感じることだってある。今更そんなことを考えてもどうしようもないけれど、ふとそれが頭をよぎる瞬間があった。

(不安が、まったくないわけじゃない。けど……)

 やっぱり、彼と一緒に生きる未来を考えたい。
 胸に微かな陰りを残したまま、シャワーを浴びて服を着替え、三十八階を目指す。

「……諒二さん、千里です」

 流石にワンフロア丸ごと押さえるわけにはいかなかったけれど、三十八階はスイートエリアだ。一部屋一部屋が大きくて廊下も広い。
 彼の部屋の前で待っていると、すぐに諒二さんが扉を開けてくれた。

「よく来たな。なにか飲むか?」
「いえ――って、諒二さんお風呂入ってたんですか?」
「あぁ。さっき社長から電話が入って、今日の成果を聞かれてたんだ。君が部屋に来る前に身支度を整えておきたかったんだが……」

 扉を開けてくれた諒二さんは、普段整えてある黒髪を水に濡らし、格好も上半身裸という驚くべき姿だった。
 基本的に他人に隙を見せたがらない人だけれど、私には割とこういうところを見せてくれる――その辺りは、純粋に信頼されていると思えるから素直に嬉しい。

「髪だけ乾かしてくるから、そこで少し休んでいてくれ」
「は、はい……わ、すごい景色――」

 地上三十八階、東京と違ってこの辺りはこれ以上高い階層のビルがあまりない。ほのかな間接照明で照らされた室内の雰囲気は落ち着いていて、のんびりと眼下の夜景を見渡すことができる。
 私が住んでいる独居者用マンションより広いんじゃないかというスイートルームは、一歩足を踏み入れただけではベッドルームもシャワールームも見えない作りになっていた。
 これを――いや、プライベートではこれよりグレードの高い部屋を定宿にしているというのだから、やっぱり諒二さんは規格外だ。

「お待たせ。……どうかしたか?」
「い、いえ……ちょっと、恐縮してるっていうか……諒二さんのすごさを感じていたというか」
「すごさ? 仕事で評価されるのはありがたいが――その表情を見るに、そっちの理由じゃないみたいだな?」

 なんで、この人はこんなにも私の気持ちに詳しいんだろう。
 そっと手を握った諒二さんは、大きなベッドのあるベッドルームに私のことを案内してくれる。
 二人で寝転んでも随分と余裕があるベッドの前には、広々とした夜景が広がっている。

「なにがそんなに不安なんだ?」

 ぱっと手が離れたかと思うと、すぐに肩を抱きしめられる。
 耳朶に唇を押し当てられ、鼓膜に甘い声を囁かれると、びくんっと体が跳ねてしまう。

「ぁ――あの、……あらためて、諒二さんが雲の上の人なんだなって、思ったと言いますか」
「は? なんだそれは……よく見てみろ。君と俺は同じ人間だ。その上、俺は欠点だらけだぞ? 君みたいにうまいこと書類を捌くのも苦手だし、会社の重役連中から生意気だと目もつけられてる」

 茶目っ気たっぷりに笑う諒二さんは、耳朶に押し当てた唇を首筋や肩に滑らせてくる。
 彼に触れられる瞬間を待っていた私は、小さく体を震わせながらお腹の辺りに力を入れた。どんどん、体の芯が熱く熱を宿しだす。

「それから、君には勝てない。なにをどうしても――どうやったって、君の前では冷静じゃいられなくなる。お預け喰らった犬よろしく、舌を出しておねだりするしかできないんだ」

 する……と胸元に手が伸びてきて、ゆっくりと柔い肉が揉みしだかれる。

「んぁ……あっ♡」
「もう声を我慢する必要はないぞ? 存分に喘いでくれ――ほら、自分でスカートをめくり上げて、服を脱ぐんだ」

 命じられるままに、私は自分が履いていたスカートをゆっくりとたくし上げた。
 もう後は休むだけだからと、ゆるやかなフォルムのワンピースを身にまとい――その下には少しだけ、いつもより大胆なデザインの下着を身に着けてきた。

「は♡ぁっ……♡♡諒二、さんっ♡」

 背中のファスナーだけ、彼の手を借りる。
 ジィッ……と音を立ててそれが引き下ろされると同時に、私はストンとワンピースを床に落とした。

「――随分といやらしい格好だ。この下着……自分で選んだのか?」
「は、はい……諒二さんに、喜んでほしくて」

 黒いレースだけで構成された、普段使いするにはあまりに頼りないランジェリー――その布の隙間や、なにも覆われていない二の腕や太腿には、数日前諒二さんがつけた赤黒いキスマークが浮かんでいる。

「いや、でしたか……? こういうの、その――はしたないって、思われても」
「そんなことはない。嬉しいよ――君が、俺のために選んでくれたんだ」

 薄いレースが重ねられただけ、たったそれだけの布地で守られたおっぱいをむにむにと揉みしだかれて、足の間に膝を割り入られた。
 無遠慮に胸を揉みしだく指先は時折乳首をきゅっと擦り上げて、その度に肩が小さく跳ねてしまう。

「ン、ぁつ♡♡♡おっぱい♡そんなに強くもんじゃ、だめ……♡♡ヒぁ♡あっ♡♡ぁんっ♡」

 むにゅっ♡むにむにっ♡♡こりゅこりゅこりゅっ♡きゅっ♡きゅっ♡♡♡
 布地の少ないブラジャーでは、先端の尖りまで隠すのは難しい。
 すぐに勃ちあがってしまったその場所を指先で扱きながら、諒二さんは濡れた舌先を耳に這わせてくる。

「は、ぁっ♡ンぅ♡ッく――♡♡♡」
「ベッドに行こうか。最近はオフィスで無理をさせることもあったから――今日みたいな日は、たっぷりとベッドで君を可愛がってやりたい」

 可愛がる、という言葉とともに、胸を揉んでいた彼の指先が下腹部に伸びる。
 そして、その指先が軽く子宮の辺りをトントンと叩いた。そのかすかな刺激だけで、足の間の潤みをより強く感じてしまう。

「ぁ――♡♡♡」
「さぁ、こっちだ」

 ベッドルームにやってきた時と同じように、腕を引かれてベッドの上に上がる。
 向かい合う形で寝台の上に座った私たちは、どちらともなく唇を押しつけあった。

「ぁむ♡むぅっ……んっ♡♡♡んは、ぁっ……♡んくっ♡♡ちゅっ……♡」

 ぴちゃっ♡ちゅるるっ♡♡♡ぷちゅっ♡ちゅるっ♡♡ちゅぱっ♡♡♡
 何度も唇を重ね、舌を絡ませながらお互いを感じ合う。
 彼が私の胸に触れるのと同じように、私も諒二さんの胸に手を押し当ててそのしなやかな筋肉の感触を楽しんだ。

「んっ……♡はっ♡♡♡ぁっ……♡」

 キスだけで、頭の芯が痺れてしまう。
 張りのある筋肉を手のひらで楽しんだ私は、そっとその手を下へ――半ば硬くなっている彼の股間へと這わせ、鎖骨にちゅっと吸い付いた。

「可愛らしい反抗だ」
「いつも、たくさん痕をつけられるので……でも、難しいんですね」

 私がつけた痕を彼に残したいと思っても、なかなか同じようにはならない。

「千里の体は柔らかいから、俺の体に痕をつけるより簡単だと思うが」
「それは――褒められてるんですか?」
「もちろん。それに、俺に痕なんてつけても面白くもなんともないだろう」

 でも、毎回キスマークと――酷い時には噛み痕までつけられる身にもなってほしい。
 流石に会社でした時は自重してくれたみたいだけど、アレが自重されての結果だと思うと毎回気が遠くなってしまう。

「……仕返しです。私ばっかり、いつも滅茶苦茶にされて……」

 股間に伸ばした手を、ゆっくりと動かす。
 小さく彼の肩が動いた気がするが、同時に乳首に舌を這わせてみるとぎゅっと眉が寄せられた。

「千里――」
「んっ……♡はっ♡♡もう、おちんぽ硬くなってますね……♡♡」

 下着の上から、形を確かめるみたいに手のひらを擦りつける。
 すりすり♡と何度か布に触れていると、くっきりと形がわかるほどにおちんぽが張り詰めてきた。それと一緒に、指先に伝わる温度も高くなる。

「んんっ……♡♡りょーじ、さんっ……♡」

 ちゅっ♡ちゅっ♡♡と軽く乳首を吸い、ぴちゃぴちゃといやらしい音を立ててその場所を舐る。
 男の人が乳首で感じるのかはよくわからないけれど、普段は余裕めいた表情を崩さない諒二さんが眉を寄せているところを見るに、それなりに弱い場所ではあるらしい。

「ん――諒二さん、かわいい……♡」
「あのな……あまり、調子に乗らない方がいいぞ、千里」

 低く、唸るような声でそう呟いた諒二さんが、片手でブラジャーのホックを外す。
 その瞬間、ワイヤーで持ち上げられていた乳房がぷるんっ♡と弾みをつけて飛び出してきた。

「ひぁっ♡♡♡」
「言っただろう? お預け喰らった犬と同じだと――飢えているんだ。一時だって、君を手放したくないと思うくらいに」

 ぐいっと腕を引かれたかと思うと、諒二さんの唇がかぷりと肩を食む。
 硬い歯で軽く噛み痕をつけられただけで、熱に浮いた私の体は大げさに反応してしまった。

「んぁ♡♡や――ぁんっ♡」
「ほら、お望みのキスマークだ――若干大きいが、君はこれが好きだろ?」

 痛いのと気持ちいいの、そのちょうど中間を責めてくる諒二さんの荒々しいくちづけに、思わず悲鳴が上がる。
 柔らかい場所をきつく吸い上げたかと思うと、今度は鎖骨に歯を立てられる。それを繰り返されて、子宮がジリジリともどかしく疼いた。

「ぁ、ひぃっ♡んぁ♡ぁ゛っ……♡♡♡だ、めっ♡噛んじゃだめぇっ♡♡♡そこ、見えちゃ――ぁあっ♡♡♡」
「見せつけてやれ。君が、俺のものだということを――もう君は俺なしでは生きられない体になってしまったと、会社の連中に知らしめてやればいい。そうすれば、身の程知らずに君に懸想する人間もいなくなるだろう」

 なんだろう、今日の諒二さんは――いつもより少し、余裕がない。
 口調はいつもと変わらないけれど、その雰囲気だったり、声のトーンだったりが普段と違うような、そんな気がする。

「んぁっ……♡諒二、さん……? ど、したんですか……?」
「別に、なにも?」
「なにも、じゃないです――いつもより顔が怖い気がします」

 元々の作りがいいから、彼が怒ると余計に迫力がある。
 目つきが鋭いというのもあるけれど、雰囲気がかなり威圧的になるのだ。

「この顔は生まれつきだ――と言いたいところだが、心当たりはある。今日のクライアント……あの中年男、君を見る目つきが卑猥だった」
「え、そ、そうですか? そんな感じはしませんでしたけど……」
「いいや、あれは完全に君をいやらしい目で見ていた」

 むっとした表情を浮かべている諒二さんの頬を軽く撫でて宥めてみるけれど、不機嫌そうな表情は変わらない。

「君は、自分の魅力に気が付くべきだ。俺が一体、日々どんな思いでいると――なまじ仕事もできるから、他部署からも声がかかる始末だし……」
「そ、それは……」
「できるなら、閉じ込めておきたいくらいだ」

 申し訳ないとは思うけれど、仕事は好きだしまだ続けたい。
 なにより、自分の仕事で諒二さんの手助けができるのが嬉しいのだ。

「閉じ込められてあげることはできませんけど……でも、こうして一緒にいることはできますよ」
「……わかってる」

 不承不承、といった表情の諒二さんが、深いため息の後に小さくキスをしてくれる。

「君が会社勤めをしていなかったらできないことばかりしてきたからな。会議室でのセックスもいい思い出だ」
「あ、あんなこともうしないでくださいね……! すっごくドキドキしたんですから……」

 流石にもう会社でのセックスはごめんこうむりたい。
 そう抗議すると、強張っていた彼の表情が花開くようにほころんだ。

「俺としては、かなり楽しかったんだが――こうして少し触れただけで、君の羞恥で赤くなった顔を見れたし」
「ッひ……♡♡♡」

 完全に油断していた私の胸を、諒二さんはむぎゅぅっ♡♡と強く揉んだ。
 その瞬間、体にビリビリと電気のような甘い痺れが駆け抜けていく。

「あ、っくぅ……♡♡ンぁっ♡ぁ゛♡♡♡」

 油断していた分、これまでよりずっと強い快楽が脳を揺らす。
 甲高い声を上げる私の様子に満足したのか、諒二さんは勃起しきった乳首に口元を寄せる。

「先ほどのお返しだ」
「待って――ま、ぁっ♡♡♡ッあ゛♡♡んぁっ♡ひ♡♡♡ぉ゛っ♡♡♡」

 ぢゅぱっ♡ちゅっ♡♡♡ぢゅるるっ♡♡♡ぢゅぷっ♡ちゅっ♡ちゅぱっ♡♡♡
 強く尖端を吸い上げられ、時折前歯で乳首を扱かれるともうたまらない。
 ピンと張られていたシーツを皺がつくほど握り締め、与えられる暴力的なまでの快楽に耐える――だけど、諒二さんはそれを許さないと言わんばかりにもう片方の乳房をきつく揉んだ。

「ッひあぁッ♡♡♡んあっ♡や♡♡それやらぁっ♡♡♡」

 目の前で煌めく夜景が、涙でぼんやりと滲んだ。
 突きつけられた強烈な快楽に抗えず、私は両目から大粒の涙をこぼし、唇の端からは飲みこめなかった涎がこぼれる。

「あ゛っ♡♡やぁっ♡あ♡あ゛っ……♡♡♡」
「まだ胸しか触っていないだろう? ほら――寂しそうにしている、こちらも愛してやらないと」

 濡れたショーツに指先が伸びて、これまた頼りない布地のクロッチ部分を押し込まれた。
 熱い蜜が溢れ出すそこは、指先の刺激で悩ましく収斂し、彼の熱を求めてしまっている。

「ひぅ♡♡♡」
「もうぐちょぐちょだ。ほら、音が聞こえるくらい――」

 くちくちっ♡と下着の上から音を立てておまんこを責める指先に、腰がくねくねと揺れ動く。
 たっぷり乳房を弄られて、すっかり私の体は快楽に従順になってしまった。甘い疼きに支配されて、唇からとめどなくあえかな声が漏れ出てしまう。

「ひぁ♡♡ぉ゛……♡♡んんっ♡は、ぁっ♡♡♡諒二、さ……もっと♡もっと気持ちよくして♡♡」

 布越しのもどかしい愛撫じゃ物足りなくて、自分で気持ちいい場所が当たるように腰を動かす。
 だけどそれだけじゃ到底望んでいる快楽には物足りなくて、より強い快感を求めるようにして体が更に動いた。
 いやらしいダンスを踊るようなその動きに、諒二さんがニッと口角を吊り上げる。

「どんどん蜜が溢れてくる――ナカに直接触った方がいいか?」
「さ、さわって♡♡♡千里のおまんこ、直接ずぽずぽして……♡♡も、おまんこ熱くて……っ♡♡諒二さんに触ってほしくて、ウズウズしてるの♡」

 くいっ♡くいっ♡♡と腰を揺らしながら、私は涙目で諒二さんに懇願した。
 すると、心得たようにショーツを引っ張った諒二さんがずるりとそれを足から引き抜いてくれる。

「ひぁ♡♡♡ぁっ♡さわ、ってぇっ……♡♡」
「あぁ――お望みどおりに」

 ぐぢゅんっ♡♡♡と指先が突き立てられたのは、次の瞬間だ。
 とろみのついた液体を指で掻き分け、長い指先が二本同時に挿入される――すっかりその行為にも慣れきったおまんこが、骨ばった指先の感覚を覚えて歓喜に収縮する。

「ん゛ぁあああっ♡♡♡ぁふっ♡ひっ♡♡♡はいって、ぇっ♡♡指っ♡ゆびちんぽはいってきたぁ……♡♡♡」

 待ち望んだ直接の刺激に、体が強張って喉がぎゅっと締め付けられるような感覚に陥る。
 それだけで軽くイってしまいそうになるのを堪えて、私は諒二さんの体にもたれかかった。そうしていなければ、腰が砕けて座っていることすらできないのだ。

「ん゛ぃっ♡♡ぉ゛、っ~~~♡♡♡はっ♡やぁあっ♡あんっ♡指♡指気持ちよすぎる♡♡♡諒二さんの手だけでイかされちゃうぅっ……♡♡♡」
「存分にイけ――ここなら、誰かが来る心配だってしなくていいだろう?」

 ぢゅぷっ♡ぢゅぽっ♡♡ずちずちずちずちっ♡♡ぢゅっぽぢゅっぽ♡♡♡
 激しく媚肉を擦り上げる指先に、私の理性の方が先に音を上げた。
 確かに――ここなら、諒二さん以外、誰も私のことを見てない、し……♡

「あ゛♡♡ぁあっ♡♡らめ♡ら、ああっ♡♡♡イく♡イくイくイくぅっ♡♡♡おまんこ指で弄られただけでイっぐぅうぅっ♡♡♡」

 気が緩んだその瞬間を見計らって、諒二さんの指先が弱い場所を一気に撫で擦る。
 その瞬間、透明な飛沫が足の間から勢いよく吹き上げる。

「ッひ♡♡♡ひぉ♡ぉ゛っ……♡♡」

 ぶしゃっ♡ぷしっ♡♡♡ぴゅっ♡♡ぷしゃぁっ♡♡♡
 色のない液体が弧を描いてシーツに吸い込まれていくのを、私は呆然と見ているしかできない。

「な、にっ♡♡ん゛ぁあっ♡♡♡あ゛っ♡止まらないのぉ♡♡♡おしっこもれちゃう♡♡♡ぁあっ♡やらっ♡♡♡りょーじさんっ♡♡りょーじさんみないれぇっ♡♡♡」
「大丈夫――ただの潮吹きだ。君が、俺で感じてくれているっていう証拠だよ」

 そう言いながら、諒二さんは濡れた指先をおまんこからちゅぷりと引き抜いた。
 その仕草だけでも気持ちよくて、私はガクガクガクッ♡と腰を揺らしながら絶頂を極める。

「ひぁあっ♡♡♡ぁあ゛っ♡♡ぁお゛っ♡♡お゛ッ♡♡♡」

 なおもぷしゃぷしゃと吐き出される潮が、シーツをぐっしょりと濡らす頃――大きな絶頂の波が去った私は、すっかり力を無くしてベッドに崩れ落ちていた。

「千里――大丈夫か?」
「ら、いじょぉぶ……れふ……っ♡♡♡」

 びくんっ♡びくんっ♡♡と不随意に体を跳ねさせながら、なんとか呼吸を整えようとする。
 すると、諒二さんは私の顔の前に膝立ちになり、屹立しきったおちんぽを突き出してきた。

「ぁ、あっ……♡♡」

 熱くて、ガチガチの恋人おちんぽ……♡♡もうフル勃起で、とっても苦しそう♡♡♡

「大丈夫なら――舐めて、慰めてくれるか?」
「は、い……んぁっ……♡♡むぅうっ♡♡♡」

 熱い切っ先に舌を伸ばして、亀頭をゆっくりと舐り始める。
 四肢を投げ出したまま、ぢゅぷぢゅぷと音を立てて肉棒にしゃぶりつく私を、諒二さんは満足そうな表情で見下ろしていた。

「ん゛んぅっ♡♡♡ぢゅっ♡むぅ……ッ♡♡♡れろ、ぉっ……♡♡」

 夢中になっておちんぽを頬張っていると、絶頂を極めた体が再び熱を宿し始める。
 知らずのうちに、私の右手は下腹部へと伸び――潤んだ蜜壺を、自ら慰め始めてしまった。

「んぁっ♡♡♡む゛ぅうっ♡ンっ♡ん゛ぅ……♡♡」

 ぢゅぽっ♡ぢゅぽっ♡ぢゅぱぢゅばぢゅぱっ♡♡♡れろぉ~~~♡♡♡
 竿の方まで丹念に舐め上げながら、蜜口に伸ばした指先を軽く動かす。

「ん、くっ――♡♡♡」
「こら……自分で触るのはナシだ。切ないなら、俺がもっと触ってやるから」

 嗜めるようにそう言うと、諒二さんはおまんこに伸ばした私の手をどけて、その場所に再び指先を滑り込ませた。

「ん゛、ッ……♡♡♡」

 ぢゅぷぅっ♡と音を立てて指先を吞み込んだそこは、潮まで吹いた余韻が未だ抜けきらない。
 ほんの少し内襞をひっかかれただけで膣奥が喜悦に震え、先ほどの熱い絶頂を想起してしまう。

「ん゛ぉ♡む゛っ♡♡♡んご、ぉっ♡♡♡」

 だけど諒二さんも、そちらにばかり夢中になるのは許さないと言わんばかりに腰を振り始める。
 ぢゅこぢゅこぢゅこっ♡♡♡とオナホのように唇でおちんぽを扱くことになり、その荒々しい動きで更におまんこの奥が潤む。

「ぁふっ……♡♡♡はーっ♡はーっ♡♡♡んは、ぁっ……♡りょ、じ……さ……♡♡♡」
「蕩けて物欲しそうな顔だ――このまま、君のナカに突き立てるぞ。いいな?」
「ふぁ、い……♡♡♡」

 今にも射精してしまいそうなくらい張り詰めたおちんぽを口から引き抜くと、諒二さんは先端をぴっとりと当てて、そのまま一気に最奥までを貫いてきた。

「あ゛、ぁっ♡♡♡ッひ♡♡お゛♡♡♡おっ♡♡ん゛ぉっ♡♡♡」

 完全に怒張しきったおちんぽが、おまんこの中ギチギチに満たしてる……♡♡♡

「おっきぃ♡♡りょーじさんのおちんぽ♡いつもより熱くておっきくなってるぅ♡♡♡」
「君が、そうさせたん、だっ……♡」

 どちゅっ♡♡♡みぢみぢみぢっ♡♡♡ぬごっ♡ぬごっ♡ぬごっ♡♡♡
 一番奥の気持ちいい場所をどちゅどちゅと荒々しく突き上げられて、その反動でおっぱいがぷるぷると揺れてしまう。

「あはっ♡♡ひっ♡♡♡これっ♡これすごすぎるぅっ♡♡♡おちんぽっ♡おちんぽ挿入れられただけでぇっ♡♡ん゛ぉ♡お゛っ♡♡♡入れられただけでイくぅッ♡♡♡」

 ばちゅっ♡ばちゅっ♡♡と力強くおまんこを突き上げる動きに、私は仰向けになったまま腰を浮かせてイき果ててしまった。

「んふぇっ♡♡お゛っ♡お゛っ♡♡お゛っ♡♡♡そんにゃっ♡らめっ♡♡♡らめぇっ♡♡♡これ以上イくのっ♡イくのらめっ♡♡♡おかしくなるっ♡♡えっちのこと以外考えられなくなっちゃう♡♡♡」

 先ほど指先でイかされた時よりも、ずっと強くて深い絶頂――♡♡
 突き上げられるたびに結合部からしぶく液体は、きっと愛液だけじゃない。

「ひっ♡♡♡ひぎっ♡ん゛ぁ~~~ッ♡♡♡らめっ♡イく♡まらイくぅっ♡♡♡」

 ぷしっ♡びちゃっ♡♡と水音を立てて潮を吹きながら、なおもズコズコと抽送を繰り返される。
 限界に達した私は涙を流しながら首を横に振るけれど、諒二さんがピストンをやめる気配はまるでない。

「やあぁぁぁッ♡♡♡とまらないのっ♡お潮っ♡♡♡突かれるだけで出ちゃう♡♡」

 恥ずかしいのと気持ちいいのでぐちゃぐちゃになりながらも、ごちゅごちゅと子宮口を押し潰される感覚に確かな幸福を覚えてしまう。

「りょ、じさん♡♡キス♡キスして♡♡♡」

 咄嗟に唇からこぼれ落ちた言葉は悲鳴に近いほど甲高かったけれど、諒二さんはしっかりとそれを聞き入れて唇を重ねてくれる。

「んぁっ♡むっ♡♡んむっ♡♡♡ぁ……♡♡すき♡♡だいすき♡♡♡ひぁあっ♡♡すき、なのぉっ……♡♡♡」

 一つ突き上げられるごとに、言葉が零れ落ちてくる。
 理性が完全に突き崩された状態で口走ってしまう言葉は、普段なら恥ずかしくて言えないものばかりだ。

「すき、ぃっ♡♡♡」

 立場とか、家柄とか、きっと私が彼に釣りあうものはなにもない。
 それでも心だけは――世界で一番、彼だけを愛していると証明できるものだから。

「あぁ――だが、俺も君に負けないくらい、君のことを愛している。これだけは誰も……誰にも、君にだって負けたくはない」

 ぎゅっと手を握られて、更にどちゅどちゅっ♡と強いピストンを刻まれる。

「俺の、ものだ」
「ッ~~~くぁ、ぁっ♡♡♡」

 低く囁かれながら最奥をぐりっ♡と突き上げられたのが、とどめの一撃だった。
 多幸感に満たされながら絶頂を極める私の膣内に、熱い精液が流し込まれてしまう。

「ぁ、あっ♡♡♡や、ぁあっ♡♡熱い♡せーえきはいってきてる♡♡♡ドクドクって♡諒二さんのせーしきてる、ぅっ♡♡♡」

 びゅ~~~♡♡♡ぶぢゅっ♡♡どぷどぷどぷっ♡♡♡びゅるるっ♡びゅっ♡♡♡
 奥の奥まで精液で満たされた膣内からおちんぽが引き抜かれると、それと一緒にがくんっ♡と大きく体が跳ねた。

「あっ……♡♡♡ぁはっ……♡♡♡」

 離れていく熱が恋しいけれど、もう指先一つも動かせない。
 わずかに目を細めると、諒二さんは優しく額にキスをしてくれた。
 ごぷっ……♡と逆流してくる精液の感覚に身を震わせながら、せりあがってくる幸福感に甘い吐息が漏れる。

「朝まで、こうしていよう。二人で抱き合って、離れないように」

 深い絶頂の余韻で、声を発することもできない。
 代わりにゆったりと笑みを浮かべて、私たちは再びくちづけを交わした。朝が来るまで離れない――つなぎ合った手と汗ばんだ体は、もう一度甘い快楽の中に堕ちていく。
 今まで感じていた不安をすべて打ち消すような抱擁とキスに満たされて、私は再び打ち込まれた楔に喜悦の声を上げたのだった。