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パチパチと、焚火が小さく爆ぜる音がやけに響いていた。
ここは魔王大本営に最も近い、小さな村の外れ――二年にも及ぶ魔王討伐の旅は、もうじき終わりを迎えようとしていた。
「……なんだ、聖女様。眠れないのか?」
「うん……これまでのこととか、色々思い出しちゃって。それに――」
焚火の近くで番をしてくれているのは、タンクのエルケイド。
彼とは魔王討伐の旅で出会い、一年ほど一緒に旅をしてきた。私たち勇者パーティの中でも、耐久に優れた彼は最も頼りにされている。
明るくて人当たりもよく、子どもも大好き。荷物もたくさん持ってくれるし……なにより、彼がいなければ私はこの旅を続けることができなかったかもしれない。
「……なんだ、また勇者様か?」
「うん……その、最後の夜だから、って――」
「しゃーねぇなぁ。若いってのはいいもんだけど、それにしたって聖女様のことを考えてなさすぎだぜ」
焚火の番をしていたエルケイドは、自分の隣をそっと指して人のいい笑みを浮かべた。
座れよ、と勧められるがままに腰を下ろすと、炎の温かさで少しだけ気持ちが楽になる。
「聖女様……アンタ、これから先はどうするつもりだ?」
「どう、って……」
「俺たちは明日、魔王を倒す。負ける事なんか考えてらんねぇし、先のことでも考えようや。ほら――なんかやりたいことはねぇのか?」
エルケイドの声は、どこまでも優しい。
パーティで一番の年長者――といっても、二十代の後半あたりだろうか――ということもあり、彼はこうしてよく私の話を聞いてくれた。
(これから、か……もう帰る家もないし――)ぃ゛
故郷の村は、魔王に焼かれてしまった。
生き残った私と幼馴染みは、神託を得て勇者と聖女となり旅に出たけれど……あれから二年、彼との関係は大きく変わってしまった。
「……昔はね、村の――好きな子と結婚して、一緒に暮らしていくんだって思ってたの。でも……もう村はないし、勇者様だって――」
小さな頃の、淡い憧れ。
このところ戦いばかりの毎日ですっかり忘れていたけれど、そんなことを考えていた頃もあったっけ。
泣き虫の私の手を引っ張っていってくれた幼馴染みの顔を思い出す――だがその瞬間、甘ったるく鼻にかかった声が私たち二人の鼓膜を叩いた。
「あぁんっ♡勇者様っ♡あっ♡すごっ……激しいぃっ♡♡」
……メリッサの声だ。
半年ほど前、道中の酒場で出会った『遊び人』という職業の美女に、勇者様は瞬く間に恋に落ちた。
それまで村の皆の敵を討つため、一心不乱に魔王城を目指していた勇者様は――それからいつでもメリッサをそばに置き、ことあるごとに体を重ねるようになったのだ。
「……あー、そうか。悪かったな……いや、これからいくらでも時間があるんだ。聖女様だってまだ若いんだし、戦いが終われば好きなように生きれるだろ」
ゴホン、とごまかすように咳払いをしたエルケイドが、ニカッと人のいい笑みを浮かべながら肩を組んできた。
――彼のこういう、男女を問わずに気安いところには感謝している。おかげで、一人で悩むことがかなり減った。
「ううん、いいの。……でも、そうだよね――王都の神殿に戻っても、私はもう用済みだし……これからのこと、考えなくちゃ」
「おう、そうだな。魔王を倒したら俺もお役御免だ――そうだ、一緒に旅でもしねぇか? 聖女様がいてくれりゃ、どれだけ怪我しても心配いらねぇし」
「エルケイド……お願いだから怪我はしないようにしてほしいなぁ」
体が頑丈だからか、エルケイドはよく突っ走ってしまう。
私は後方支援、メリッサはあまり戦闘そのものが得意ではないので、戦うのは勇者様と彼の二人になりがちなのだが――タンクというジョブ以上に、彼は前に出たがる節があるのだ。
「いくらエルケイドが頑丈でも、怪我をすると痛いし……一緒にいる私まで辛い気持ちになってくるから」
「辛い? なんで聖女様が辛いんだよ。……俺はほら、痛いのも割と平気だし――おい、そんな顔すんなって」
……確かに、エルケイドは強い。
多分、耐久力だけを見れば勇者様よりも――けれど、体の大きな彼は戦いで出血する量も多く、その度に胸が締め付けられるというか、どうしようもなく申し訳ない気持ちになるのだ。
私にできるのは、あくまで攻撃を弾いたり、傷を癒すことだけ。
戦うことができない自分の無力さを、勇者様や彼が怪我をするたびに感じることになる。
「エルケイドが怪我をするところ……見たくないの。仲間だもん」
「……そう、か。あー……そうだな、うん。悪い、そこまで頭が回ってなかった」
大きな手が、ぽんぽんと頭を撫でてくれる。
盾や戦斧を持つその手はゴツゴツしていて肉厚で、もし自分に年の離れた兄がいたら――そんな気持ちを抱かせた。
「……エルケイド、明日――勝とうね。全員で……絶対、生きて魔王を倒そう」
「あぁ? そんなの当たり前だろ――安心しろ、聖女様。アンタのことは俺が絶対に死なせねぇからよ」
ニカッと笑ったエルケイドの笑顔が、今の私にとってはこれ以上ないくらいに安心をもたらしてくれる。
「そうだ――なぁ、俺……アンタに言いたいことがあるんだ。魔王を倒したら……近くの酒場で一杯やりながら、その話をさせてくれよ」
「……うん」
甘い嬌声と荒い吐息が聞こえないわけではない。
でも、私たちは――少なくとも私にとっては、今こうしてエルケイドと話す時間が救いであり、最後の夜にふさわしい穏やかなものになった。
そして翌日――定刻通りに村を出た私たちは、最後の決戦地である魔王城へと突入した。
予測されていた戦力は、魔王軍配下の一万の兵士――だが、いざ中に突入すると、出てくるのは弱々しい魔物ばかり。
妙だとは思ったが、もしかすると魔王城の最奥である玉座に集まっているのかもしれない。慎重な足取りで奥へ奥へと歩みを進めていくと、メリッサがうんざりしたように肩をすくめた。
「もぉ~、魔王城ってジメジメしてるし陰気くさぁ~……ねぇ勇者様、そろそろ休憩しません?」
「そ、そうだな――メリッサがそう言うなら……」
勇者さんがそのまま足を止めようとしたので、私はとんでもないと首を横に振った。
「勇者様、今の状況で歩みを止めている余裕はないと思います。ここは魔王城の奥、いつ襲撃があるか――」
「俺も聖女様に賛成だ。奴さんの本丸に乗り込んでおいて疲れたから休憩ってのは、さすがに考えなしすぎるぜ」
今まで敵の姿が見えなかったからと言って、ここで休んでいいという理由にはならない――私だけでは話を聞いてもらえなかったかもしれないが、エルケイドが加勢してくれたことで勇者様もぐっと鼻白んだ。
「だ、だが……ここで体力を温存しておかないと、来る魔王との戦いが……」
「バカ野郎、この戦いで温存できる体力があるなんて本気でも思ってんのか? だとしたら、朝までしっぽりやってたテメーの体力のなさと頭の悪さを恨みな」
あけすけなエルケイドの言葉に、メリッサも勇者様も何も言えなくなる。
私は昨日あのまま寝てしまったが、エルケイドは寝ずに火の番をしてくれていた。ということは、あの二人の声を最後まで聞いていた……そう考えると、いつもよりやや乱暴な彼の様子に納得もしてしまう。
だが、メリッサはそれで引き下がらなかった。
「で、でもぉ……」
「いいから進むぞ。これが最後の戦いなんだ。……聖女様、索敵頼む」
「は、はい――えぇと……! こ、この先に強い魔力反応あり……勇者様、おそらくこれは……」
そこまで言うと、勇者様は流石に魔王の喉元へ剣を突き付けている状況に気付いたらしい。
剣を抜いた勇者様が、エルケイドと目配せをする。
「……わかった。このまま進もう……エルケイド、後ろを頼む。彼女たちを守ってやってくれ」
「了解」
四人で顔を見合わせて、ゆっくりと前へ進んでいく。
そして私たちは――そう、魔王を倒したのだ。
呆気ないほど簡単に、魔王の首を落とした。
確かに魔力と防御力はこれまで戦ってきた魔族の比ではない。だが、二年前あまりに強大だと思っていた魔王は――あまりにも呆気なく、然程の抵抗もなしにその命を落としたのだ。
「や……やったか……?」
「すごい、勇者様! あたしたち魔王を倒したんですよぉ!」
必殺の聖なる斬撃で魔王の首を落とした勇者様は、肩を大きく上下させながら信じられないといった表情で魔王の亡骸を見下ろしている。
メリッサはそんな彼に駆け寄り、豊満な胸を押し付けるようにギュッと抱き着いた。
「ほ――本当に倒したんだ……! 俺たちが……む――村の皆の敵を……!」
ハッと我に返った勇者様が、剣を捨てて雄たけびを上げる。
私はその光景を眺めながら、あまりの呆気なさと現実感のなさに言葉を失っていた。
(……本当に? だって、魔王は――あんなにも簡単に村を……みんなのことを――いくら勇者様が鍛錬を積んだからって、こんなにも呆気なく……?)
ドッ、ドッ……と心臓が強く脈打つ。
魔力索敵をしても、先ほどまで空間を支配していた禍々しい魔王の魔力は感じられない。
エルケイドも勇者様も無傷ではない。だから、魔王城を離脱する前ん゛い゛早く回復しないといけないのに……何故だか足がすくんで、うまく動けなかった。
(いや……これでいい。いいんだ――魔王は倒した。これでようやく、世界が平和になる……)
勇者様が魔王を倒したのは、喜ぶべきこと。
それは十分すぎるくらいわかっているのに――なぜか、嫌な予感がする。
「あれぇ? 聖女様、どぉしたんですかぁ……? もしかして、せっかく勇者様が魔王を倒したのに嬉しくないの?」
「いえ……そんな、ことは――」
妙な違和感を覚えながらも、メリッサの言葉に首を横に振った。
そうだ。嬉しくないはずがない。だって、これは――……。
「メリッサ!」
ぐるぐると渦を巻く思考からハッと我に返ったのは、少し緊張した勇者様の声が聞こえたからだった。
ぎゅっとメリッサのことを抱きしめていた勇者様が、顔を真っ赤にしていきなり叫び始めた。
「お願いだ……王都に帰ったら、俺と結婚してくれないか……!」
「まぁ――嬉しい…♡もちろんですぅ勇者様♡♡王様に祝福していただきましょうね♡」
そう、まるで幸福な花嫁そのものといった表情で頷いたメリッサが――一瞬ギラリとした光を目に宿したのに、気付いてしまった。
恐らく彼女は、最初からこの瞬間のことを――……。
「勇者様の功績を考えれば、爵位――最低でも伯爵くらいはもらえますよねっ♡そしたらあたしは伯爵夫人……♡♡王都に二人のためのお屋敷を建てましょ♡♡」
「あ、あぁ……! メリッサがそう望むなら」
二人きりの甘い雰囲気が、禍々しい魔王城の中に漂う。その光景は正直に言って異様だった。
鈍く胸が痛むのを感じた私は、勇者様を直視できずに顔を背けて小さく唇を噛む――こんな結末を迎えることは、とっくにわかっていたことなのに。
(あぁ、でも……わかっていても、辛いな)
引っ込み思案な私を、活発な彼はどこへでも引っ張っていってくれた。
村で二人きりの生き残りになり、途方に暮れる私を「王都を目指そう」と泣きながら励ましてくれたのも彼だった。
ずっと、ずっと彼のことが――勇者様と呼ばれるずっと前から、好きだったのだ。
勇者様の心がメリッサに向いているのはわかっていた。
私はただの幼馴染みで、メリッサのような華やかな美しさや豊満な体は持っていない。村を出た時のまま、私は勇者様に気持ちを伝えることもしなかった。
(だったら――仕方がないこと、なのかも)
幸せそうにメリッサを抱きしめる勇者様から目を背けた私は、なにか言おうとエルケイドの方を向いた――その瞬間。
キュインッ、と小さく音が聞こえ、目の前が真っ白になる。それが魔力を帯びた攻撃であると理解した瞬間には、魔王城の一角は玉座ごと吹き飛んでしまっていた。
「っ……勇者様! メリッサ!」
慌てて障壁を展開したが、間に合うだろうか――なにが起こったのかわからないままの私は、反射で体を動かして膨大な魔力の矢を防いだ。
「ぐ、あっ……!」
「勇者様、大丈夫ですか……!?」
「あ、あぁ――助かったよ……けど、これは一体……」
舞い上がった土煙と埃がおさまると、その場に尻もちをついた勇者様と、ぐったりと床に倒れているメリッサが目に入った。肩が上下しているところを見るに、障壁の発動は間に合ったらしい。
「超高濃度の魔力反応――こんな一撃……」
一国の対魔族装備ですら、数日の時間と数十人の魔術師を集めてようやく同程度の威力を出せるかどうかだろう。
エルケイドは無事かと視線を巡らせると、彼は何事もなかったかのようにその場に立っていた。
(いや――違う。今の攻撃は……)
ぞわ、と背筋が粟立ち、冷たいものが肌の上を流れていく。
これは単なる勘だ。この二年、魔王を倒すために戦ってきた私の勘――そう、この魔力はとても似ている。
エルケイドの魔力に、あまりに似ているのだ。
「エル、ケイド……?」
「あぁ――クソ、失敗か。今なら油断してるから、サクッといけると思ったんだが……まだ首が繋がってるじゃねぇか」
あーあ、とうんざりしたような声を上げたのは、エルケイド本人だった。
ゴキ、と首を鳴らしたエルケイドが、けだるげな表情で深く息を吐く。冷たく吐き捨てた声は、昨日話を聞いてくれたエルケイドのそれとは遠くかけ離れていた。
「出力下げると面倒くさくてダメだな。いっそのこと――辺り一帯を焼き払えばよかった」
ガラン、とそれまで装備していた大きな盾を放り投げたエルケイドが、一歩、また一歩と歩いてくる。
これまでほとんど魔力を感じられなかった彼の体に、非常に高濃度の魔力を――それも、魔王に似たものを感じる。
「あ、あなたは誰です……エルケイドじゃ、ない……?」
「あぁ? ひでーこと言うなよ、聖女様。一緒に旅した仲じゃねぇか」
思わず口からこぼれ落ちた問いかけに、エルケイドは冷たく笑う。
こちらを見つめる瞳はどこか無機質で、作り物めいている――放たれる強力な魔力は、温厚で豪放磊落なエルケイドのそれとはまるで別人だ。
「我が名はエルケイド。……エルケイド・ザルヴァトーレ・イグドラース」
エルケイドはそっと両手を前に差し出し、空間を抱きしめるようにして笑う。
冷たく、深く――水底のように静かで、悲しい魔力の雰囲気に、私は息ができなくなった。
「魔王を生み出し、神の加護を焼き払う――お前らの言葉で言うところの、邪神だ」
太陽のように笑う彼の――いや、太陽のようだったその笑顔が、まるで蝕まれるように陰っていく。
吐き捨てられた言葉は、私たちの想像をこれ以上なく大きく裏切ってきた。
「邪神……? エルケイド、お前……!」
目を見開いた勇者様が、剣を抜いてふらりと一歩進み出た。
ぐったりとしたメリッサを庇うように剣を構えた勇者様は、ギリッ……と奥歯を噛んで一気に攻撃の体勢を整える。
「よくもメリッサを!」
勢いよく地面を蹴り上げた勇者様は、渾身の力で聖なる加護を受けた剣を振り下ろす。
だが、エルケイドはそこから微動だにしなかった。
「……あー」
間延びした声を上げた彼は、ゆるりとした動作で右手を掲げてみせる。
ガキンッ! と鋭い音がしたかと思うと、不可視の盾が勇者様の一撃をこともなく受け止めていた。
「軽ィんだよ、テメーの剣は」
ニヤッと笑ったエルケイドが、剣を受け止めた指先を横に薙ぐ。
その瞬間、勇者様の体が軽々と吹っ飛んでいった。
「ぐあっ……!」
「ゆ――勇者様……!」
玩具のように壁に叩きつけられた勇者様に、エルケイドがゆるりと歩いて近づいていく。
体が動かず、先ほどのように障壁を張ることができない。魔力での拘束を解くために解呪を試みるが、圧倒的な物量で体を押しつぶされているような感覚に陥る。
「弱い弱い……好きな女の前でくらい気合入れたらどうだ? なぁ、『勇者様』?」
「っ……うぐ――」
エルケイドの長い足が軽く勇者様を小突き、その度に彼は小さなうめき声を上げる。
……このままでは本当に、勇者様が死んでしまう。
「や、やめて……エルケイド! 勇者様になんていうことを――く、ぅっ……!」
ギリッ……! と気合を入れると、ようやく腕を動かすことができた。
勢いのままに障壁を張るが、それすらも紙のように軽く破られてしまう。エルケイドがもう一度腕を翻すと、今度は私の体が吹っ飛んだ。
「く、ぁあっ……!」
「聖女様――死にたくねぇなら余計なことはしない方がいい。……それともなにか? アンタが俺の相手をしてくれんのか」
ニタリと笑ったエルケイドの表情は、絶対的な強者の余裕に満ちていた。
壁に叩きつけられる前に障壁を張って衝撃を相殺したが、立ち上がるのが恐ろしいと思えるほどの威圧感に眩暈を覚えてしまう。
(――勝てない)
全身から脂汗が滲み、本能的な恐怖で足がすくむ。
エルケイドの見た目は何も変わらない。なのに、息を吸うことさえ――彼に許されなければできないような気がする。
(これが、邪神……? 魔王を生み出した――)
彼の言っていることが真実だとは思えない。
けれど圧倒的な力を差を前に「邪神」という言葉が真実味を帯びていく。
「おう、起きろ勇者。テメーが魔王ブチ殺したんだから、責任もって俺と殺し合ってくれよ。なぁ」
「ぅ゛、あっ……」
瓦礫の中をいともたやすく進んでいくエルケイドは、壁に叩きつけられた勇者様を軽く蹴り上げながらそう嘲笑う。
「こっちはもう千年暇を持て余してんだ。叙事詩に描かれる英雄と邪神の対決を夢見て、魔王の力を調整しつつお前が育つのを待ってやったのに――お前はその女に夢中で、俺の期待を裏切り続けた。神の慈悲を無碍にした不敬千万、お前の命で贖ってもらう」
「っ……!」
うんざりしたように吐き捨てたエルケイドが、もう一度すっと右手を上げる。
まずい。このままだと、確実に勇者様は殺される。
頭の中にそんな未来を思い描いてしまった瞬間、私はエルケイドの元へと駆け出した。
このまま腕の一振りで、肉の塊にされてしまうかもしれない。そんな恐怖を振り払って、両腕が回らないほど太いエルケイドの腰にしがみつく。
「ま――待って!」
「なんだよ聖女様。邪魔するんじゃねぇ……俺はアンタのことは結構気に入ってんだ。こんな雑魚には勿体ねぇくらい――あんたはいつも真剣だった。あの旅の間、俺がコイツらを殺さなかったのは……アンタがいたからだ」
金色の瞳が、じっとこちらを見下ろしている。
すっと目を細めて笑うその笑顔は、いつも豪快に笑うエルケイドのそれとは全く違う――恐怖でカチカチと歯が鳴るのをそのままに、震える腕で更に彼の体にしがみついた。
「それとも、なんだ? アンタが俺の相手をしてくれんのか? 聖女様との一騎打ちなら……まぁ悪くはねぇ」
「っ……それ、は」
これだけ強大な相手と戦って、勝てるはずがない。
戦闘特化の勇者様が一撃だったのだ。回復や補助魔術ばかりを習得してきた私が、邪神と名乗る相手と戦って対等に渡り合えるはずなどない――けれど、このままではみんなが死んでしまう。
(勇者様、も……メリッサも――)
曲りなりにも、この魔王城まで旅をしてきた。
そんな彼らを見捨てることは、どうしてもできなかった。
「……わ、かり――ました」
「お?」
「……あ、あなたとの一騎打ち――勇者様に代わり、私があなたと戦いましょう……」
カチカチカチ、と絶えず歯が鳴り、恐怖で涙が滲む。
エルケイドと相対し、余裕の笑みを浮かべるその姿を睨みつける。
だが――二人の間に流れた空気を引き裂くように、狂ったような叫び声が響き渡った。
「う、うわぁあぁぁっ!」
声を上げたのは勇者様だ。
壊れたばね細工のように跳ね起きた勇者様は、血だらけの格好でメリッサの元に駆け寄り、ぐったりとした彼女の体を引きずっていく。
「に――逃げるぞメリッサ! 今のうちだ!」
「ん、ぅ……?」
ずり、ずり……と動けないメリッサを引きずりながら、勇者様はこちらを振り向くことなく逃げていく。
エルケイドはその光景を眺めながら、決してその後を追撃しようとはしなかった。
「勇者、さま……」
「残念だな、聖女様。あの腰抜け――とうとうアンタを捨てて逃げやがった」
残された私は、呆然としたまま遠くなっていく後姿を眺めているしかできない。
――一度もこちらを見ることなく行ってしまったその姿に、最早嘆く言葉も見つからなかった。
「可哀想に。アンタはいつだってアイツを想ってた。……恋心以上に強く、アイツのことを守りたいと思っていたのになぁ?」
「今更――あなたと交わす言葉は持たないわ。どうせこれから殺されるのなら――」
「あ? 殺すなんて言ってねぇぞ、俺は」
金の瞳がギラリと輝いた瞬間、まるで時間が巻き戻るかのように損壊した壁や床、天井が修復される。
ほんの十秒ほどの間に、瓦礫の山と化した一室は絢爛でありながらも禍々しい魔王の玉座へと変貌した。
「な……こ、これは――」
「そんなに難しいことはしてねぇよ。な、聖女様」
頭二つ分高い位置にあるエルケイドが、カラカラと笑い声をあげる。
私は恐怖で今にも倒れてしまいそうなのに、その余裕に腹が立った。
(やっぱり、どうあがいても私は……エルケイドに、勝てない)
彼の一挙手一投足が、私にその現実を突き付けてくる。
たとえここで命を賭けた一撃を放ったとしても、恐らく彼は指先一本でそれを跳ね返してくるだろう。
呼吸をするように、歌を歌うように、邪神エルケイドはすべてを蹂躙する。言葉にせずとも、そんな未来は簡単に予想することができた。
「それでも、私は――」
「おっと、そんなに殺気立つなって。俺はアンタのことは結構気に入ってるんだぜ? なぁ――人間っていうのは、本能的に死を怖がる生き物だ。アンタがそんなに震えてるのは、俺という死の予感に直面しているから」
すっと私を指さしたエルケイドが、ニヤニヤと余裕ぶった笑みを向けてそんなことを言う。
図星を言い当てられた私は、ただ彼のことを睨みつけるほかなかった。
「怖いだろ? 逃げたくて仕方がないだろ? だったら――今少しばかり、俺が助けてやらんこともない」
「戯言を……! あなたに助けを乞うくらいなら、ここで死んだ方がマシよ」
「なーぁ、寂しいこと言うなよ。仲間だろ?」
気安く伸ばされた手が、ぽん、と私の頭を撫でるように触れた。
ほんの少し前まで頼もしさを覚えていたその手は、今はただ恐怖と嫌悪しか感じられない。
「っ……!」
このまま、頭を握りつぶされてしまうんじゃないか。
そんな不安を押し殺しながらエルケイドを睨みつけると、彼はニカッと快活そうな笑みを浮かべ、何度か頭を撫でてきた。
「――聖女様。アンタ、このまま俺のものになってみないか? 神の聖なる加護を得た女を犯したらどうなるか――前から気になってたんだ」
「な――馬鹿げたことを……! その言葉、神への度し難い冒涜だと――」
「ははッ、知ってて言ってるに決まってンだろ。なぁ……純粋無垢で、勇者とあの女の乳繰り合いにも耐えられなかった、可哀想な聖女様」
分厚い手のひらが、グリグリと頭頂部に押し付けられる。
侮辱とはまた違う、愛玩するような傲慢さがおぞましくも腹立たしく、お腹の奥底がカァッ……と熱くなった。
「だが――アンタが相手をしてくれないなら、俺にだって考えがある。昨日立ち寄ったあの村……ガキがそれなりにいたな。身重の女も、働けねぇ老父もいた」
「な……」
風の流れを投下のような気安さで吐き出された言葉に、目を見開いた。
彼は一体、何を言っているんだろう。
「皆殺しだ。呼吸の一つで村を焼き滅ぼし、肉片一つも残さん。滅ぼした村から魔物を生み出し、隣の村も襲わせてみるか」
その言葉のおぞましさに怖気が走る。
仮にこれが神だというのなら、なんと禍々しく自分勝手な生き物なのだろう。
全身の毛穴を針で突き刺されるような緊迫感に晒されながら、私は怒りに強くこぶしを握り締めた。
「ふざけた冗談を言うな……!」
「あ? 冗談だと思ってんのか? 俺はいつだって本気だ――容易いことなんだよ。お前が思っているより、俺は呆気なく命を握りつぶせる」
声を張り上げると、分厚い手のひらから伸びる指先に力がこもった。
彼の手の中にすっぽりと納まる私の頭が鷲掴みにされ、言葉通り簡単に握りつぶされそうになる。
「全てはお前次第だ。聖女……身の振り方がわからないほど愚かではあるまい?」
頭を撫でていた手が、ゆっくりと頬に触れる――そのまま顎を指先で捉えられて、無理矢理上を向かされた。
「っ……ひ、卑怯者……」
「お前ら人間の尺度で神を推し量るなよ」
糖蜜のように甘い笑みを浮かべながら、エルケイドが選択を迫る。
屈辱のあまりぎゅっと目を閉じた私の脳裏には、立ち寄った村々で向けられた笑顔や励ましの言葉が浮かんでいた。
ここでエルケイドの手を振り払ったら、恐らく私は死ぬ。
だが、私の心はきっと高潔なままだろう。
けれど――その後。私が無責任に命を手放した後で、守るべき人々の尊厳が凌辱され、命を踏みにじられるとしたら。
「……約束して。村の人たちには、絶対に手を出さないと」
「無論。神は契約を尊重する……お前が俺にすべてを明け渡すと言うなら、ここで奴らは殺さない」
エルケイドのことを睨みつけながらそう吐き捨てると、彼はにんまりと笑って私の頭を乱暴に撫でてきた。
馬鹿げている。そう思うのに、彼の言葉は全て本気だという確信があった。
「さて――まずは宣言してもらおうか。お前が俺にその体を明け渡し、所有の権利を委ねると」
「……いいわ。好きになさい」
「――不敬であるな」
ふぅ、とエルケイドが息を吐く。
その瞬間――私の体は、まるで押しつぶされたかのようにその場に崩れ落ちた。体全体に重石が乗せられたように、呼吸すら困難になるほどの重量が一気に全身へとのしかかる。
「ぐ、ぅっ……! ぁ゛が、っ――」
「俺が、お前を愛玩してやる。そう言っているんだ――聖女よ、神の加護を得たお前ならばその意味がわかるだろう? 寵愛を賜る側が、『好きにしろ』だなとという軽薄な言葉を使うか」
「っ、あ゛……」
ギリギリと心臓を鷲掴みにされているかのような痛苦が広がり、目に涙が溜まる。
怖い――怖い。死にたくない。こんなところで、惨めたらしく殺されたくなんてない。
ガタガタと情けなく震えながら、油の切れた機械よろしく体を動かす――自然と跪くような体勢になり、冷たい床にひたりと額がくっついた。
「っ、お゛――お、おねがい……しますっ……! これ、までの――これまでのご無礼を、伏してお詫び申し上げますッ……。邪神、エルケイド様――お、御身のお慈悲を、どうか――どうか、身どもにお与えください……」
いつの間にか、私の両目からはボタボタと大粒の涙が溢れ出ていた。
屈辱的な言葉を言わされた怒りよりも、死なずに済んだという安堵が一気に押し寄せる――何度も体を上下させながら伏して荒い呼吸を繰り返すと、頭上から豪快な笑いが降り注いでくる。
「ふ、ははは! はは、そうだ――言えるじゃないか。なぁ……素直な女は嫌いじゃないぞ」
「ぁ――」
ぐっと身を屈めたエルケイドが、私の肩を持ち上げて無理矢理視線を合わせてくる。
金色の瞳が私の目を覗き込んできて、まるで頭の中をすべて読み取られているみたいだ。
「いい子だ。――このまま服を脱ぐ許可を与えてやる」
「……あ、り――がとう、ございます……」
欲を滲ませた、ねっとりとした笑みに不快感がこみ上げてきた。
けれど、ここで彼の機嫌を損ねれば大量の人間が死ぬ。私に選択の権利など残されてはおらず、震える手で服の装飾をほどいていった。
「っ……あ、の」
「うん、どうした?」
「その――な、なにをすればいいのかが、いまいちわからず……」
ぷつん、と白い装束のボタンを外したところで、私はそう呟いた。
男女が体を重ねるのは、そこに愛があるからだ――聖女として、一人の女性としてそう信じて生きてきたが、小さな村を出て旅を続けていた私はその手の知識があまりに薄い。
万が一にも機嫌を損ねて村々を襲われてはかなわない。そう思って、恥を忍んでエルケイドへ問うてみた。
すると彼はニヤニヤと笑いながら、軽々と私の体を抱え上げる。
「ひっ……!」
「あー、そうか。聖女様は処女だもんなぁ――よし、いいだろう。俺が愉しむ前に、お前には肉の悦びを教えてやる」
逞しい腕に抱きかかえられ、両足が宙に浮く。
彼は上機嫌に笑いながら、修復したばかりの玉座に腰を下ろした。
「ちいせぇ。……前から思ってたけど、聖女様――体ちいせぇ割に胸はでけぇよな」
「なに、をっ……ん、ぁ――やっ、触らないでっ……!」
私を膝に乗せたまま、エルケイドは上機嫌に左の乳房を揉みしだいてきた。太い指先がむにゅう……♡と胸元に沈み込むのに身を捩って抵抗すると、太い腕でぐいっと腰を引き寄せられる。
「んぅっ……」
「触らねぇと何もできないだろ? 抵抗するのは勝手だが、それで割を食うのが誰かってことを――よく頭に入れておけ」
「そ、れは……っく、ぅ――」
ふにゅ♡ふにゅ♡♡と、脱げかけの服の上から大きな手のひらで胸を揉みしだかれるが、触れられても何も感じない。
それどころか、これまで頼りにしていたエルケイドという男に対しての嫌悪感と憎悪ばかりが募っていった。
「あんまり緊張してると、感じられるものも感じられねぇぞ?」
「んん――あ、ぁ♡」
ふ~♡と耳に息を吹きかけられて、かくんッ♡と体から力が抜けた。
逞しく丸太のように太い腕でしっかりと体を固定され、もう片方の手でふにふに♡♡むにゅん♡と胸を揉みしだかれた。
(あ、ぁ――これ……体に力、入れておかないと――変な声でちゃう……!)
断じて気持ちいいわけではない。
それなのに、体を触れられるたびに小さく声が漏れてしまって、それがエルケイドを喜ばせているという事実が耐えがたい。
「唇噛むな。……強情だな、聖女様? ほら――メリッサみたいに媚びた声出して、必死に腰振ってみろ」
「そんな、こと……っん♡」
頭の奥にこびりつくような、メリッサの嬌声を思い出してしまう。
私もあんな風に――そう思った瞬間、喉がぎゅっと締めつけられた。
「……怖いか?」
「……ん」
柔らかい声が耳の真横から聞こえてきて、柔らかく優しい声に頭の中がぐちゃぐちゃになる。
何も変わらない――声はいつものエルケイドなのに。
昨日の夜まで私の話を聞いて、優しく慰めてくれた仲間なのに――どうして、こんなことになってしまったんだろう。
「可哀想にな。……いっそのこと、まともな感性など失ってしまえば楽になる――勇者のことにしろそうだ。お前の慈悲深さ、情の深さがお前自身を苦しめる」
「違っ……あ、あ♡おっぱい触ら、ないで――」
ちゅ♡ちゅっ♡♡と耳の横に何度か唇を押し付けられ、わざとらしく音を立てられる。
嫌だと思っても、まるで慈しむように何度も頬や耳元にキスをされる。そのうちに体の奥がじんわりと熱くなって、いよいよ抵抗する気力が薄れてくる。
(だめ――こんな、の……せめて心だけは、神への忠誠を――)
奥歯を噛み締め、自我を保つために右手を握りしめた。
エルケイドは私のささやか抵抗に気付いたようで、クツクツと喉を鳴らしながら柔らかく顎のラインをなぞってくる。
「んー、さすが聖女様だ。なかなか隙がねぇ――お前みたいな小娘なら、抉じ開ければあっという間なんだけどなぁ」
コレ使うか、と小さくため息をつき、エルケイドが虚空に視線を向ける。その瞬間、どこからともなくつるりとした軟体が姿を現した。
まるで植物のツタのような触手が一本、私の前に揺らめいて――プシュッ♡となにかを吹きつけられた。
「んぅうっ……な、なにこれっ……!」
香水のように甘い香りが漂って、思わず顔をしかめる。
肉を溶かす酸性の噴霧だとしたら、恐らくこの瞬間に私は死んでいただろう。
「なぁに、そう心配するなよ。体の緊張を解く、ちょっとしたおまじないみたいなもんだ」
「や――うっ……は、ぁ……」
甘ったるい匂いを嗅がないように息を止めたが、そんなことが長く続くわけもない。
ゲホゲホと咳き込みながらもバッチリと吹き付けられたものを嗅いでしまった私に、エルケイドは優しく囁いてきた。
「大丈夫――そう怖がるなよ。俺はお前を殺したいとか、むごたらしく犯してやりたいなんて思ってない。――ただ、お前が快感に喘ぐ姿が見たい……な? いい子にしていたら痛みも苦しみも与えないから……無駄な抵抗はやめてさっさと体を明け渡してしまえ」
柔らかな言葉には、言外に「お前が拒めば痛苦と屈辱を与える」という脅しが含まれていた。
生温かい舌が耳の輪郭をなぞり、体がびくりと震える。屈辱的で、これ以上ないほどに不快なはずなのに、次第に体の奥が熱を持っていく。
「ん、はぁ……♡あ、うそ――んんっ♡♡」
やがてむにゅぅっ♡と分厚い手のひらに乳肉を押しつぶされると、媚びるような甘ったるい声が唇からこぼれ落ちた。
違う――こんな、気持ちよくなんてない。
頭の中では必死に拒んでいるのに、柔い刺激を与えられた体は熱を逃すことができなくなっていた。
「……お前に吹きかけたのは、淫魔の体液を煮詰めた高濃度の媚薬だ。いくらお前が聖女として鍛錬を積んだとて、これほどの媚薬には抗えない――魔族ですら悶えるような代物だぞ? 生娘にどうこうできるものか」
「淫魔、の――」
はぁ……♡と息を吐いただけで、体が燃えるように熱くなる。
特にお腹の奥――じりじりと肌が汗ばんでいくのを感じながら、私はエルケイドの腕の中でわずかに身じろぎをした。
「ん、ぅ……♡♡あ♡い、や――」
「考えるな。ヒトが神に抗えると思うか? ン? ほら――体が熱いだろう。服を脱がせてやろうな」
エルケイドの声、が――頭の中で、ぐぁん、ぐぁん、と反響する。
太い指先が、聖なる加護を得た着衣を一枚一枚脱がせていって――あっという間に、私の体を覆うものは下着一枚にされてしまった。
(あ……服、脱がされちゃった……)
はふぅ……♡♡と熱い息を吐き出すと、再びエルケイドの手が左の乳房をむにゅむにゅと揉みしだいてくる。
「あ♡あ、ぅっ……♡♡♡んふ、ぅ♡くぅっ、ぁ♡♡♡は、ぅんっ♡♡」
「あぁ、もう声我慢できなくなってるな――どうせなら、もう片方の乳首も可愛がってやるからな……♡」
「や、ぇ……♡♡お゛ぉ♡」
ぐにゅぅっ……♡♡と形が変わるくらい強くおっぱいを揉まれたかと思うと、先ほど私に媚薬を吹きかけた触手がもう片方の乳房に吸い付いてきた。
「ひ……や、ぁあ♡♡やめ、ん♡お゛ッ……♡♡ふ、ふぅうっ♡♡♡」
むにゅ♡むにゅんっ♡♡♡と柔らかく胸を揉むだけではなく、カリカリカリ♡と爪で細かく乳首を引っ掻かれる。
触手の先端が吸い付いてきた右側の乳房も、乳輪のあたりにプツプツプツッ♡と小さな針を何度も突き刺してきた。
針を刺されているのに、その部分は全く痛くない――それどころか、次第にその場所がジンジンともどかしく疼き始める。
「んぅ♡♡ふ、ぅうっ……♡お゛、ぉほ♡♡なにこれっ――あ、ぁ♡」
「ん? どうした?」
「お、っぱいがっ――んぁ♡熱くてっ……♡♡♡は、ぁあっ♡あ♡プツプツ刺されてる、とこぉっ……♡」
今すぐ、思い切り掻きむしってほしい。
思わずそう考えてしまうほど乳首がむず痒くなり、私は更に激しく体をくねらせた。
すると、それまで懇ろに乳房を揉みしだいていたエルケイドがニタリと笑う。
「おー、乳首辛いのか? よしよし――じゃあ、俺が思いっきり引っ張ってやろうな。ほら、ぎゅ~♡」
「ん゛ぁ、あぁ……♡♡ちが、う♡♡ひ、ぅあ♡そっちじゃな、ぃいッ♡」
ぎゅぅううぅっ♡と、触手が刺激を与えるのとは逆の乳房を思い切り引っ張られる――♡
下着の布越しでもわかるくらい乳首が伸びて、痛いはずなのに妙な気持ちよさが腰のあたりから広がっていった。
(なに……なんでっ……こんな風に乱暴にされて♡♡乳首引っ張られてるのに♡♡♡痛くない♡気持ちいいなんてっ……♡♡)
にわかには信じたくない――私は今、エルケイドの手で確かに快感を与えられているのだ。
目に涙を溜めながらいやいやと首を振っても、彼はその責めを止めようとはしなかった。
ぎゅうっ♡と胸の先端を摘まみ上げたかと思うと、次は指の腹でぐりぐりぐり♡♡と押し込んでくる。それだけでもおかしくなってしまいそうなくらい気持ちいいのに、もう片方の乳首は触手に甚振られ、堪えようのない熱を宿してしまっていた。
「んぉ♡♡ほ、ぉ゛……♡♡♡ちが、ぅ♡違うのっ……♡♡♡やだ♡そっちじゃない……♡♡かゆい、のぉ♡♡♡左の方なの……♡♡」
「聖女様は案外欲しがりなんだな? 右だけじゃなくて、左の乳首も引っ張ってほしいってか」
クカカッ、と豪快に笑ったエルケイドが、更に強く乳首を摘まむ――♡
「ひぎゅ♡」
「だが、まだダメだ。お前は何度も俺に抵抗しようとした――これは神罰だ」
「しん、ばつぅ……?」
プツプツプツッ♡とひっきりなしに乳首を刺激され、もうまともに思考することもできなかった。
早く、この狂おしいほどにむず痒い乳首を引っ張ってほしい。掻きむしって、思い切り欲を発散させたい――そんな考えで頭がいっぱいになって、柔らかく胸を揉みしだかれても抵抗もできない。
「んは、ぁ♡♡あ゛、ぁ♡や――もぉ、我慢できないの……♡♡助けて、ぇ♡エルケイド――……♡」
「ダメだ。――まだ、こっちもたくさん可愛がってやるから……♡」
ぬ゛ろぉ……♡♡と、彼の分厚い舌が引っ張られてジンジンと熱を持った乳首を舐め上げてきたのはその時だった。
ザラザラとした舌が敏感な朱蕾に擦れて、同時に触手でぢゅ~~~♡♡と乳房を吸い上げられる。
「ん゛ぉおおおっ♡♡ぃひ、ぁ♡♡やら、っ♡あ゛♡吸っちゃダメ……♡♡♡んぅ♡乳首吸わ、ないでぇ♡あぁ♡♡あ♡ンっ♡♡♡」
「あーあ、服の上からでもわかるくらい乳首でっかくなっちまったなぁ? 処女だとは思えないくらい、赤くてぽってりしたエロ乳首……♡♡ほら♡見えてるかー?」
「や……やだ、見たくない……ぁ♡」
卑猥な言葉で揶揄されて、ぽろぽろと両目から涙が溢れてくる。
こんな卑怯なことをされて、感じたくないのに快感を得てしまう。自分の浅ましさが情けなくて、今すぐ消えてしまいたかった。
「ん♡ふぅ……♡♡やだ、ぁあっ……♡♡♡エル、ぁ♡舌、でぇ……ザリザリしない、で♡♡♡んっ♡」
ちゅぱ♡♡ちゅるっ……♡♡ぢゅぽ♡ぢゅぽっ……♡♡♡ぐぢゅ♡ぢゅ~~~♡♡♡
丹念に乳首を舐め上げられ、時折思い出したかのように同じ場所を吸い上げられる。
細かい針を何度も突き刺してきた触手も、今はエルケイドの動きに連動するかのようにぢゅぽぢゅぽ♡と乳首に吸い付いてきていた。
(おっぱい、吸われて……♡♡こんな、気持ちよくなんてなりたくないのに……♡)
一方的かつ無理矢理に与えられる快感の逃し方すらわからなくて、荒い呼吸を吐き出すばかり。
そんな私を抱えたまま、エルケイドはちゅぱっ♡♡と胸元から唇を離した。
「……なぁ、聖女様? これじゃ辛いよな――下着の上から乳首弄られるばっかで、ほら♡もっと触ってくれ、って勃起してる」
「ち、がっ……」
「違くねぇだろ。それともお前は、神の言葉を偽りだと断ずるのか?」
低い声が囁かれ、ひくんっ♡と下腹部が疼きだす。
(な、に――お腹、が……?)
恐怖とはまた違う、妙な疼きに不安を覚えながら、私は目を伏せて首を横に振った。
そうだ……彼は、強大な力を持つ邪神。逆らえば私だけではなく、近隣の村の人々までが犠牲になってしまう。
「め、……滅相も、ございません――」
「だよな? じゃあ、自分の口でどうして欲しいか言ってみろ」
「っ……は、い。あ――お、おっぱい、が……んっ♡♡なんか、変で……」
「はは、男を煽る言葉も知らないのか? 仕方がねぇ――叡智を与えてやろう」
べろりと分厚い舌で一度だけ乳首を舐めてきたエルケイドが、私の顔の前で手のひらを見せてきた。
なにかされるのかと思ったが、痛みも苦しみも襲ってこない……ただ、金属をこすり合わせるような音が一瞬聞こえたような気がした。
「ん、ぇ……? なにを……」
「なぁに、すぐにわかる。――それより、もう下着もいらねぇよな? これじゃ肌にくっついて気持ち悪いだろう」
「え――ん、ぁ゛♡」
ぢゅぽんっ♡♡と吸い付いていた触手が乳房から剥がされ、鈍い快感で腰が揺らめく。
そのままエルケイドは張り付いていた薄い下着を引きはがすように脱がせ、ついに私は一糸まとわぬ姿になってしまった。
(……乳首、すごい……♡♡♡)
裸体を見られるのは恥ずかしかったが、それよりも先に目に飛び込んできたのは赤くぽってりと腫れあがった自らの乳首だった。日焼けしていない肌の白さが、赤く充血した蕾の淫猥さを更に引き立てている。
「肌、白くてきれいだな。……だから余計に汚したくなる」
「ひ――や、ぁあっ……♡あぅ、ん♡♡♡ひっ……♡」
いやらしい笑みを浮かべながら、エルケイドはクリッ♡クリッ♡♡と小刻みに乳首を捏ねまわしてきた。
触手は足元に絡みつき、ねっとりとした粘液が肌にまとわりつく。
「やめ……ん♡♡ん゛んぅっ……♡♡」
「……もう一度機会を与えてやる。自分の口で、この腫れあがったエロ乳首をどうして欲しいのか言ってみろ」
ぎゅうぅぅっ♡♡とキツく乳首を抓られるのと同時に、再び低い命令が鼓膜を叩く。
目を閉じ、何度も頷きながら、私は彼の機嫌を損ねまいと口を開いた。
「お゛、ぉ♡♡♡ほ、ぅ゛ッ……♡♡ん゛ァ♡は、はい――エルケイド、さま……♡♡♡しょ、処女の癖に乳首だけで気持ちよくなっちゃった、私の聖女おっぱい……♡♡もっと、エル、ケイドさまに――い、いじって、ほしっ……♡♡♡弄ってほしい、です♡」
口が、勝手に動く。
これまで頭の中に思い浮かんだこともないような卑猥な言葉が、つらつらと――まるで用意されていた芝居の台詞のように唇からこぼれ落ちていくのだ。
(なにこれ……こんな言葉、どうして――)
私の意志とは関係なく、唇が言葉を紡ぎ出す。
エルケイドは満足したように分厚い唇を歪めると、たぷんっ♡♡と下から乳房を持ち上げ、両手でぞれぞれの乳首をこねくり回してきた。
「ん゛ひ、ッ……♡♡あ、エルっ……♡♡ひ、あっ♡乳首すごっ……♡♡♡」
カリカリカリ♡♡くにゅっ♡と乳首を引っ掻き、押しつぶすその力加減はこれ以上なく巧みだった。
しつこく触れられているだけで腰のあたりが疼いて、頭の中に口にするのも憚られるような言葉が次々と浮かんでくる。
(叡智って――こんな言葉が……?)
娼婦でも使わないような言葉が、記憶の中に刻み込まれていく。
快感を与えられながらエルケイドによって教えられた言葉と意味を知る度、おぞましくて頭の芯が痺れてしまう。
「乳首も立派な性感帯になってきたな? ……男も知らねぇのに、これだけ乳首で善がれるなら才能だぞ」
「ひぅ♡や――やだ、そんな才能っ……ッは、ぁあ♡♡♡子宮疼く、ぅ……♡♡んっ♡だめ♡あ、あっ♡♡♡チクイキ、しちゃうからぁっ……♡♡」
「お? そんな言葉も覚えたのか――いいぜ、このまま愛してやるから、思う存分チクイキキメてろ」
乾いた声で笑うエルケイドが、ぎゅううぅぅっ♡♡と両方の乳首を引っ張る――♡
その瞬間、頭の中でバチッ♡バチンッ♡♡と火花が爆ぜたような気がした。
「ッん、お゛ぉ~~~~ッ♡♡♡ほ、ぅ゛ッ♡♡ンん゛ぅううっ……♡♡」
びくんっ♡♡びくびくっ♡と体が強張ったかと思うと、閉じていたはずの足の間からぶしゅぅっ♡♡と透明な液体が迸る。
同時にガクッ♡ガクッ♡♡と腰が前後にヘコつき、子宮のあたりがぎゅ~~~♡と切なく収斂するのが伝わってきた。
「っひ♡お゛、ぉおお゛……♡♡ッふ、うぅうっ……♡♡」
「おーおー、潮まで吹いて盛大にイき散らしたな~♡」
自分の体にどんな変化が起こったのかわからないまま、私は体を駆け巡る快感に身を任せるしかない。
不随意に全身が跳ねるのを止められないまま、未知の恐怖でついエルケイドの体にしがみついてしまう。
「や、ぁ……♡♡これダメ、ぇ♡あ゛♡お――おまんこ苦しぃい……♡んは♡あ♡あ、あっ♡あ゛♡♡♡」
「イったのも初めてか? ン? 自分で触ったりしなかったんだなぁ……あー、可愛い」
快感と恐怖でボロボロと涙をこぼす私の頬に、エルケイドが優しく唇を落とす。
頭の中がぐちゃぐちゃになって、今はそのくちづけだけでもひどく縋ってしまいたい気持ちになった。
「ここ――切ないよな? 一回も触ってないのに潮吹きまでさせられちまって……」
「ぁ、あっ……♡♡そこは――んッ♡」
すり……♡♡と、彼の太い指が私の下腹部のあたりを這う。
ジクジクと甘ったるい疼きを宿す子宮の真上を、優しく、やさぁしく撫でられて――なんだかとても穏やかで、安心したような心地を覚えてしまう。
(なんで……こんな、おかしいのに――エルケイドに触られて、嬉しいなんて――)
抗えないほどの絶頂を迎えて、体には抵抗する気力も残っていない。
これは、彼に屈したわけじゃない。ただ疲れただけ――頭の中でそう言い訳して、柔らかく張り出した胸筋に体を預けてしまった。
「は、ぁ……♡」
「よしよし。そのまま、楽にしてていいぞ……足開けるか?」
「あ、し……」
こく、と頷いて、言われた通りに足を開く。すると、濡れそぼってびちゃびちゃになった内腿に柔らかく触れられた。
「ぁ――だめ、ぇ……♡♡んぁ♡ふ、ぁあっ……♡♡」
次の瞬間、エルケイドの中指がぢゅぶぶぶぶっ♡♡と濡れた膣穴に突き立てられた。
柔らかな媚肉を押し広げながら、ぐぢゅ♡♡ぐぷっ♡と果実を潰すような音が響き渡る。
「くふ、ぅうっ……♡♡あ゛、ぁ♡指……あ、ぁあっ♡♡」
「せーめぇまんこ♡俺の指だけで処女膜ブチ破れんじゃねぇか? ……あーこら、逃げんな。腰引いたら殺すぞ」
物騒な脅し文句を囁かれながら、ぢゅぽ♡くぽっ♡♡と小さな膣口を指先でほぐされる。
異物を咥えこんだおまんこはぎゅうぎゅうとその指先を締め付け、卑猥な音を奏で続けた。
「は、ぁあっ……♡♡太い、のぉ♡ん゛ぉっ……♡♡やぁ♡エルケイド、っ♡♡指動かす、の♡止めてぇっ……♡♡♡んぁ、またっ♡♡気持ちよく――ン、ぁあっ♡」
ぢゅぶ♡ぬぽっ♡♡と少しだけ指先を折り曲げて淫蜜を撹拌され、蜜壺が歓喜にわななく。
おまんこ全体がぎゅうぎゅうと指先に絡みついて、もっと奥にほしいとねだっているようでもあった。
「無論。好きなだけ悦くなっていいんだぞ――俺はお前が、理性と信仰をかなぐり捨て、本能のまま俺を求める姿が見たい。……そうだ、どうせならこっちの穴も拡げてやろうな♡」
「え――あ、ア♡♡やだっ! こ、来ないでっ……ひっ……」
ずるずるずる……♡♡と水っぽい音を響かせながら、先ほど私の胸を弄んでいた触手が這いずり回る。
足首でとどまっていたはずの柔らかな体が、うねうねとした奇妙な動きで太腿、そして臀部へと伸びてくる。
柔らかい尻たぶをぺちんっ♡と一度だけ叩いた触手の先端は、そのままむっちりとした肉に包まれた窄まりに狙いを定めた。
「いやっ……あ、ぁあっ……♡♡だめ♡ダメぇえぇっ……♡♡」
悲鳴じみた懇願もむなしく、つるりとした触手の先っぽが後孔にぢゅぷんっ♡♡と呑み込まれていく。
指先とはまた違う、柔らかいけれど確実に太い――その質感と大きさに、体がぶるりと震えた。
「かはっ……♡♡ぁ゛、え♡あ゛ッ♡あ゛、ぁ……♡♡♡」
「おー、入った入った♡こっちの方は慣らしてなかったのに――十分すぎる素質があったみたいだな」
「おご、ッ♡♡ほぉ゛……♡」
お腹の中が重くて、エルケイドが何を言っているのかもよくわからない。
はっ、はっ、と荒い呼吸を繰り返すばかりの私をしっかりと抱えながら、エルケイドは更に甘く囁いてくる。
「さっきの気持ちよくなるガス、な……? アレ、お前のナカで出してやる。そうしたらもう苦しくない――いいだろ?」
「っふ、ぇ……♡♡は、ぃ……?」
ぎゅぽ♡ぎゅぽ♡♡と狭いアナルを抉じ開けられながら尋ねられた言葉が何を意味しているのか、この時の私はよくわかっていなかった。
ただ――求められたから頷いただけ。
むしろ私は、この絶望的な愉悦から逃れられるのだとばかり思っていたのだ。
……だってエルケイドは、いつだって私のことを助けてくれたから。
「そうかそうか……じゃあ、後ろの孔も立派な性感帯にしてやろう、な♡」
「は――ぇ゛♡♡」
ぷしゅっ♡と小さな音が、どこかで聞こえた気がした。
――その瞬間。触手が突き立てられた後孔がキュンキュンキュンッ♡と熱く疼き始める。
「っほ、ぉ゛おっ……!? お、ん゛ッ♡♡にゃ、にっ……♡あ゛ァ♡あ、はぁぁっ……♡♡♡」
「おー、すっげぇ♡ほら、わかるか? お前の腹の上……しっかり淫紋が刻まれて、俺のモンだって証が浮かんできてる」
ここ、とエルケイドが指したのは、お尻の方ではなく下腹部――そこには、まるで焼き印を押しあてられたかのようにうっすらとした印が刻まれていた。
(これ、は……神聖文字……?)
神々の時代に使われていた文字に酷似した、けれど内容までは読み取れない文字が文様のように刻まれている。
「これは淫紋――魔術の一種だ。お前が絶頂を迎え、俺に心を明け渡すたび……この淫紋は光り輝き、大きさを増す」
「な……」
「この淫紋が完全に定着した時、お前のすべては俺のものになる」
甘く――柔らかな声が、鼓膜を犯す。
ぞわ……♡とお腹の奥から温かいものが広がり、それが下腹部に収束していくのを感じた。
(解呪、できない……すごい魔力量で、体に根付かされてる……?)
これまで培ってきた魔術のノウハウは、一切通用しない。
直感的にそう感じた私は、きゅう……♡とお腹の奥の疼きを抱えながらゆっくりと息を吐いた。
そう――この快感に抗うには、自分を強く持たなければ。そうすれば、エルケイドとていつかは隙が――……
「ん゛んぉおっ♡♡ッほぉ゛おぉっ……♡」
ぢゅぽんっ♡ぐぽ♡ぢゅぷぢゅぷぢゅぷ♡♡と、後孔に突き立てられた触手が怪しく蠢きだす。
乳首よりもずっと敏感になったアナルを激しく責め立てられて、唇から悲鳴まじりの嬌声が迸った。
「んご、ぉ♡ぉ゛ッ……♡♡ッひ、ぁ♡あぁぁッ……♡」
「おー、アナル犯されて気持ちいいんだな♡♡顔真っ赤にして、必死に腰ヘコヘコ動かしちまって……あー、聖女様のエロい顔見てたら、俺までちんぽイラついてきた」
「ぎ、ぃ゛♡ひ――や、ぁあんっ♡♡」
ぐにゅうぅぅっ♡♡と大きな手のひらでおっぱいを押しつぶされ、同時にぢゅっぽぢゅっぽ♡♡とお尻を犯される。
小さく窄まった菊孔は、まるでおまんこになったかのように熱くヒクつき、きゅうきゅうとひっきりなしに触手を締め付けていた。
「ゃ゛、や゛め、ひぇ……♡♡あ♡あ゛♡♡
「後ろグポグポされながら甘い声上げてヨガってるくせに、いまさら何言ってんだよ。安心しろ――前も寂しいだろうから……コレで思いっきり突いてやるからな♡」
「は、ひぇ……?」
必死にエルケイドの体にしがみついていた私は、そこでようやく目にすることになる。
ずるんっ……♡と取り出された、屹立する威容――およそ頭の中で想像していた男性のそれよりも、二回りも三回りも大きい肉幹が目の前にそびえたっていた。
(お、っき……♡♡なにこれ♡なにこれっ……♡♡こんなの知らない♡こんなに大きなおちんぽっ……♡♡♡私の中に……?)
にわかには信じられない。いや、信じたくない。
子どもの腕程の太さと長さを誇る雄の象徴に、恐怖と期待が膨れ上がった。
「さぁ、聖女様。自分で足開いておねだりしてみせろ。触手と一緒に、前も後ろも俺でいっぱいにしてやる……嬉しいだろ?」
「だ、れが……あ、ぁ゛ッ……♡」
流石にそんなわけないだろう――必死に抵抗しようとしたのもつかの間、また先ほどの金属音が頭の中を満たしていく。
「――嬉しい、だろう?」
「……く、ぅ♡は――い。うれし、です……♡♡エルケイドさま、に……処女♡奪ってもらえてっ……♡私の体♡エルケイド様のものにして頂けて♡♡♡すごく嬉しいですぅ……♡」
鼻にかかる甘ったるい声で媚びを売りながら、私はにへぇ……♡とだらしのない笑みを浮かべた。
口が勝手に動く。本心じゃないとわかっているだろうに、エルケイドはなぜか嬉しそうに唇の端を吊り上げていた。
「体勢変えような。苦しくないようにしてやるから――両手で俺の方に掴まれ。そう――尻を後ろに突き出して」
ねっとりとしていて、それなのにどこまでも優しい声で名前を呼ばれる。
その度に胸が締め付けられ、同時にきゅぅん♡と下腹部が収斂した。
「っ、く……ん♡は、はい……♡♡これでよろしいでしょうか……?」
言われた通りに体を動かした私は、エルケイドの首に両腕を絡ませ、お尻を突き出す情けない体勢を取った。
はっ♡はっ♡♡と熱い息を吐きだすたびに、目の前がくらくらしてお腹の奥が熱くなる。
「上出来だ。さっき慣らした分、まんこの方はもう大丈夫そうだな?」
「ん゛んぉおっ♡♡」
ぐぢゅんっ♡♡と指先がもう一度、乱暴に膣壺へと突き立てられる。
ぐぽっ♡ぎゅぽ♡♡と太い中指で再びおまんこのなかをかきまぜられたが、先ほどのような強い異物感は感じられない。むしろ――もっと触ってほしい、もっと奥を突き上げてほしいという、浅ましい欲求が思考を塗りつぶしていった。
「は、ぁんっ♡あ゛♡♡おまんこきもち、ぃ♡ンぁ♡♡♡は、ぅうっ♡もっと……♡エルケイド様♡♡♡もっとおまんこぉっ……♡」
「男に媚びるのがうまくなってきたな。――いいだろう。たっぷりと堪能するといい」
ビキッ♡ビキッ♡♡と血管を張り巡らせた、長太い肉竿。
先端からはひっきりなしに先走りをこぼしたその長大な楔が、指先と入れ替わるように無抵抗の膣口に突き立てられた。
「あひっ、ひぃいっ……♡♡ッぃ゛、ひぅっ♡あ♡あぁあっ……♡♡」
ずぢゅ♡ずぶぶぶっ……♡♡ずぢゅ♡♡ぬ゛ぶ♡♡ずりゅぅっ♡♡♡ばぢゅんっ♡♡♡
あまりに熱い――体の内側から溶かされてしまうんじゃないかと思うほどの灼熱の欲望に、腰から背中のあたりがゾワゾワゾワ♡と震えあがった。
「ぉ゛、ッ……へぇ♡♡ッへ、ぇ゛♡あぅ、うッ♡♡♡」
「ぐっ……んぁ、狭ぇっ……な!」
ば、ヂュんっ♡♡♡と一度奥まで突き上げられて、空気の塊が唇から押し出された。
エルケイドの極太おちんぽは、み゛ぢっ……♡と閉じられた隘路を力づくで押し開き、丸く太い切っ先でむちゅ♡♡むぢゅっ♡と子宮口までを責め立ててくる。
(なに♡なんでこんな奥まで、っ……♡♡お腹熱い♡おまんこぎゅ~~ってするの止まんないッ……♡♡)
肉襞を思いっきり引っ張られながらピストンを繰り返される感覚は、未知であり甘美だった。
とちゅっ♡とちゅっ♡♡と軽く奥を突き上げられるだけで、とろけたような声が唇からこぼれるのを止められない。
「んは、ぁあ♡あ♡んぁ……♡♡きも、ち……♡あ、ひ♡♡♡おまんこきゅ~ってする……♡♡あ♡ンぁ、あ♡」
「はは――邪神に処女膜破られてブチ犯されながら、挙句出てくる言葉は『きもちいい』か。……お前のそういうところが魔性なんだよ」
「ん゛ぉほ……♡♡」
ずぶんっ♡♡と再び深いところを突き上げられたかと思うと、今度は後孔に突き立てられていた触手がにゅっぽにゅっぽ♡♡と律動を開始した。
前と後ろの穴を一緒に犯され、快感以外の感覚がすべて置き去りになる。
「だめ、だめっ……♡これぇ♡あ、ぁっ♡♡お尻、も♡おまんこもぉっ……♡♡ぐりぐりどちゅどちゅ、って♡あ゛♡いや、ぁあっ♡♡っく、ひ♡またっ……♡♡あぁ、ッ♡またイく、っ♡♡イく♡んぅうっ♡♡♡」
ガクガクッ♡と腰が震えた瞬間、頭の奥の方が弾けるような快感が押し寄せる。
だが、触手もエルケイドもそんなことで動きを止めてくれるほど生易しくなどなかった。
「はは――俺の許可を得ずイったのか? どうしようもねぇ淫乱聖女様だなオイ♡」
「は、ひぃっ♡♡ご、ぇっ♡♡ごめんなひゃ、ぃ♡あ♡あぁっ♡♡♡エルケイドしゃまの、ぉ゛♡♡♡許可なくイってぇっ……♡ごべんなしゃ、あ♡♡またっ♡また気持ちいいのくるぅっ……♡♡」
パンパンパンパンッ♡どちゅっ♡ぬぴぷっ……♡♡ずぷっ♡ずりゅんっ♡♡♡
容赦のない抽送でおまんこをどちゅどちゅ♡と突き上げられ、あっという間に快感の限界が押し寄せる。
一度目よりも二度目、二度目よりも三度目――その感覚は短く、より鮮烈になっていった。
「お、イきそうか? じゃあしっかりイクイク宣言しような……♡しっかり言えたらご褒美たっぷり注いでやるぞ……♡♡」
「ごほ、うび……♡♡」
――今、頭の中に思い浮かんだことを口にしたら。
そしたら、ごほうびがもらえる。
頭の回らなくなった私は何度も頷いて、下腹部に軽い力を入れながら口を開いた。
「はい……♡♡偉大なる、邪神♡エルケイド様っ……♡♡♡イく♡もぉっ♡♡ぉ゛、ほぉっ♡♡♡おまんこイきますぅ♡お尻もぉっ♡♡ンぁ♡おまんこみたいにぢゅぽぢゅぽ犯されてイく♡イぐ、ぅっ~~~♡♡」
「そーか、んで……誰に犯されてイくんだ?」
「っ……エルケイド、さま♡ですぅっ……♡♡♡今まで一緒に、っ♡旅を続けてきた――な、仲間だと思ってたエルケイドさまのおちんぽで♡♡♡おまんこパコパコされてイきます♡♡や、あ゛♡♡もう限界、でぇっ……♡♡」
なかなか絶頂許可が下りず、私はばぢゅ♡ばぢゅ♡♡と腰をひっきりなしに上下させながらエルケイドに懇願した。
こんな淫らな言葉がスラスラ出てくるなんて、自分でも信じられない。ただ――今は彼に縋るしか、私が助かる方法はないのだ。
「ぃ゛、きたいぃっ……♡♡♡おねがい、します♡エルケイド様ぁ……♡♡イかせて♡♡♡前と後ろでぇ♡思いっきりアクメしたいですっ……♡♡」
「――いいだろう。許可する」
快感で頭が焼き切れてしまう寸前で、低い声が鼓膜を甚振ってくる。
「……イけ♡」
「ッ、んんん゛ッ……♡♡あは、ぁあぁっ♡♡あ゛、ひぃっ♡♡イく♡イくイくイくぅううっ……♡♡♡」
びくんっ♡♡と体が大きく跳ねた刹那、お腹の中にどぷぅっ♡♡と熱い液体が吐き出される――菊蕾に突き立てられた触手からなにかを注ぎ込まれた私は、そのまま頭の中が真っ白になるような深い絶頂を刻み込まれた。
「ん゛くぅ……♡♡ふ♡ん、む゛ッ♡」
ビクビクと体を震わせながら、背中を弓なりに反らして絶頂を極める。
ぎゅっと目を閉じて深い愉悦を味わおうとすると、不意に唇へ柔らかいものが押し当てられた。
「ちゅ、むぅっ……♡♡んふ、ぅ♡んぅ♡♡♡ぢゅ、っ……♡♡」
分厚い舌が口の中に潜り込んできて、その時ようやくエルケイドにキスされていることに気が付いた――ぱっくりと唇を食まれ、唾液を絡めた舌が蛇のようにうねって歯列をなぞってくる。
「んん……ッ、ちゅ♡♡は……♡」
「聖女様は、口の中もちいせぇのか。……ッ、はは――おら、もっと腰振れっ……♡♡お待ちかねのご褒美、ッ♡♡♡しっかり注いでやるから腰休めんな♡」
「ん、は……♡♡はひ、ぃ♡」
もう、エルケイドが何を言っているのかもわからなかった。
頭の中が焼き切れそうになりながら、命じられたままぱんっ♡ぱんっ♡♡といやらしく腰を上下に動かす。
一度液体を吐き出した触手は力なく萎れ、後孔からズルンッ……♡♡と抜け落ちていった。
栓を失いぽっかり♡と空いたその場所からは、注ぎ込まれた粘性のある液体がボタッ♡ボタッ♡♡とこぼれ落ちていく。
「ッひ、ぁあっ……♡♡んぁ♡ず、っとぉ♡ンッ♡♡イって……♡あぁ♡♡おまんこキュンキュンしてるぅっ……♡♡」
「く――はは、出すぞ……♡お前が搾り取るんだ、聖女――全部お前の中に射精すからな……!」
ばぢゅっ♡ぐぱんっ♡♡と腰を大きくグラインドさせたエルケイドが、ひときわ低い唸り声を上げる。
「ぐ、ぉ゛お゛おっ……♡」
びゅぷぷっ♡♡どぷっ♡びゅ♡♡♡びゅるるるるっ♡♡♡ぶぢゅ~~ッ♡♡だぷっ♡どぷんっ♡♡♡
お腹がずっしりと重たくなるくらい、勢いよくそれを――精液を子宮の中にぶちまけられた。
あっという間に満たされて、質量を増した下腹部が淡く輝く。刻まれた淫紋が光を放つ様はこれ以上なく淫靡で、おぞましい予感に体が震えた。
「……こういう時はなんていうんだ? なぁ――口に出して感謝を述べるくらいはするべきだろう」
仲間に裏切られ、邪神に体を弄ばれ……挙句の果てに純潔を奪われた。
絶望で目の前が真っ暗になりながら、私の表情はとろけたように笑みを形作り、体は目の前の美しくも逞しい裸体に絡みついた。
「ッ……ありがとう、ございます――エルケイド様……♡」
挑発的な笑みを浮かべるその唇に自らくちづけると、一気に全身から力が抜ける――……。
このまま目を閉じたら、この悪夢から覚めないだろうか。
まだ私たちは旅の途中で、メリッサと勇者様の様子に呆れながら、やれやれと苦笑するエルケイドがいて――そして、私は。
「これで終わると思うなよ。お前は――これから永劫、俺の腕の中で微睡み続ける運命だ」
劇薬のような甘さを秘めた声が、鼓膜を掠めていく。
涙は流れない。その代わり、糸が切れたように呆気なく、私の意識は暗闇へと堕ちていった。